工藤たちの悪事など知る由もなく、山本はこの件に関してはもう終わったものだと判断していた。
今野も山本に対して好きという感情を持っているらしく、それは十分山本にも伝わってきた。
告白しても振られないという絶対的な自信がついて、学校の帰り道、ファミレスでドリンクバーを飲みながら、
「俺、今野さんが大好きだ。付き合って欲しい」
と、告白したのだ。
「ありがとう、でも、私みたいな地味な子でいいの?」
確かに、今野は人見知りが激しく、地味で目立たないタイプではある。
山本はそんな地味なところにも惹かれたのだ。
「俺は今野さんの、そういう地味なところも大好きなんだ」
「それってさ、褒めてないよね?」
笑いながら今野はそう言った。
そして、
「じゃぁ、これからよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた。
「やった〜、俺絶対大事にするよ」
「ありがとう」
そう言って、2人の交際はスタートした。
交際がスタートしてから何度もデートを重ねた。
交際のことは2人の親も知っていて、互いの家を行き来する仲にまでなった。
でも、まだキスはしていない。
お互いが引っ込み思案な性格で、キスをしたいとは思っているのだが、言い出せずにいた。
2人のファーストキスは浩一の誕生日だった。
浩一の部屋で、誕生日プレゼントを渡した後、
「もう一つ、受け取ってもらいたいものがあるんだけど」
と、はにかみながら今野が言う。
「何かな〜」
と浩一が尋ねると、
今野は唇に人差し指を当てながら、
「キス、したいの。ダメかな?」
と、頬を赤らめる。
その質問には答えず、浩一は静かに唇を重ねた。
5秒ほどだったか、唇を離したあと、
「ありがとう」
と、今野が言った。
その頃、工藤たちは今野を拉致する計画を進めていた。
山本の家は一通りの少ない脇道をしばらく行った先にある。
それは、彼らにとっては好都合であった。
そして、この計画には工藤の兄も加わることになった。
理由は簡単だ。拉致するために必要な車を持っていたからである。
しかもワンボックスカーであり、工藤の兄が女好きであったのだ。
こんなに好都合が重なるなんて、神様は俺たちのすることを許してくれてるに違いない。
そんな勝手な解釈を行い、チャンスを今か今かと待っていた。
ある日曜日、山本の家に今野が行くところを見た工藤は兄に報告し、脇道に車を待機させた。
実行は帰りでなければならない。
行く時に拉致すれば、山本が不審に思い、バレる恐れがあるからだ。
今野にゾッコンな山本のことだ、知ればそれこそ俺たちを殺そうとするかも知れない。
確かに、戸川や古角を合わせれば4対1なわけだから、人数的には有利だが狂った男は何をするかわからないのだ。
バレないに越したことはない。
もうすぐ出てくるころだ。
今か今かと待ちわびた。
二人とも大きめのマスクを付けることで顔を隠していた。
午後4時を回った頃、今野がやってきた。
自転車だし、夕暮れまではまだ時間があるので、山本も送ることまではしないのだ。
今野が脇道にさしかかり、周りに人気のないことを確認してから今野の自転車を塞ぐように止まり、素早く後部のドアを開けて今野を押し込んだ。
「やめて、離して」
と、叫ぶ今野の顔にナイフを近づけ、
「騒げばどうなるか分かるよな」
と、脅した。
手足を縛り、口にガムテープを貼ってから、今野の、自転車を積み込み、車を発進させた。
工藤は戸川と古角に連絡し、途中で合流した。
続く