※この作品はR-18です。

新実優香がサキュバスの世界線   作:まさ(GPB)

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前回に引き続きエロなし。


回想:優香の覚醒3

「んんっ! 気を取り直して……」

 改めて拓哉を正面に捉える優香。先程と同じく真剣な彼女の顔に、拓哉も向き合う。

「えっと……色々あって私も混乱してはいるんだけど、単刀直入に言うね」

「お、おう」

 優香は一度、深呼吸をして、

「私は、拓哉が好き!」

 と頬を紅潮させながら言い切った。しかしこれだけでは終わらない。

「ずっと幼馴染のままでいるのは嫌だった……。どうにか恋人になれるきっかけがあればって、考えてて……」

「優香……」

「正直ね、私がサキュバスだって分かって――お母さんからサキュバスの話を聞いて、これだって、思っちゃったんだ。これってズルいよね」

 そう言い終わる頃には力なく笑う優香に、拓哉は思わず彼女の肩を抱きしめていた。

「ちょ、拓哉!?」

「――俺も、優香が好きだ」

 その一言で優香の顔が一気に熱くなる。それと同時に歓喜の感情で胸がいっぱいになった。

「嬉しい……。でも、それって幼馴染として? それとも女の子として?」

 それは照れ隠しでの意地悪な問いかけ。

 だが――

「女の子として」

「っ――ふ、ふーん……そうなんだ……」

 拓哉が迷いなく返した事で、優香は余計に嬉しさと恥ずかしさで動揺する。どうにか表に出さないように頑張っているが、その声はわずかに震えていた。

「本当はこの告白も、優香より先に俺からした方が良かったんだろうけどな……」

「まぁ拓哉の性格じゃあねー」

「んだよ、悪かったな」

 普段と同じような調子で会話を交わし、二人はどちらからともなく笑い合う。それから拓哉は腕を解いて、優香の顔を正面に見据える。

「でもいいの? 私、普通の人間じゃないんだよ?」

「そんなこと知るか」

「さっきみたいに暴走するかもしれないんだよ?」

「……そうならないように、その――協力してやる」

 まだ少し恥ずかしさが残る拓哉も頬を赤くしながら言葉を濁す。

「子供だって……」

 そこまで言って、優香は言葉を飲み込んで目を伏せてしまう。

 彼の答えを聞くのが怖くなったから。しかし、最後まで言えなかったその言葉は当然、拓哉には届いている。

「ちょっと気が早いと思うんだが……」

「……ごめん」

「でも、俺はそれでもいい」

 それを聞いて優香が目を上げる。その瞳に映るのは、力強い意志を持った彼の表情だった。

「絶対に死ぬって訳じゃないんだし、いざとなったらおじさんに話を聞けばいい」

 なんとかなるだろ、とでも言った感じで拓哉は口にする。

 優香にはそれがとても嬉しかった。

 

「じゃあ、これからはただの幼馴染じゃなくて、恋人同士……ってことになるんだね」

「まぁ……そうだな」

「それならさ、キスしよっか。恋人になった記念ってことで」

 ――ちゃんとしたファーストキスじゃないのが残念だけど……。

 先にも述べた通り、優香には暴走していた際の記憶がある。彼女はファーストキスを――そして処女も――きちんと自分の意志がある状態で、全てを彼に捧げたかったという思いを拭い切れずにいた。

 それでもやはり、恋人となった拓哉とキスが出来るというのは、これ以上ない喜びである。

「お、おう。いいぞ……」

 まだ少し照れている様子の拓哉に、クスリと優香は笑みを零す。

「ん」

 そっと優しく彼の手を握って、目を閉じた優香がキスを待つ姿勢になる。そんな彼女の表情に、拓哉の鼓動は早くなっていく。

 ――さ、さっきだって優香とキスしたんだし、それ以上の事だって……よ、よし!

「っ……!」

 意を決して、彼は優香にキスをした。

 彼女が暴走していた時とは違い、サキュバスの催淫効果を持たない普通のキス。それでも拓哉は、まだ残る気恥ずかしさから短い間で唇を離す。

「……にひ、これでちゃんと恋人同士だね」

「そう言うとなんか変な感じだな……」

「まぁ、普通の恋人とはちょっと違うけど」

 今まではただの幼馴染だったが、尋常ではない力の優香から性的に襲われ、しかもそれが普通の人間ではなくサキュバスとして覚醒、暴走したのが原因だと彼女の母親から知らされた。

 そして彼女がこの先生きるにはどうするか。二人はその話を受け止め、互いに想いを伝えあって晴れて恋人となった。

 ――この短時間で色々あり過ぎだな……。

 そんな事を思いながら、拓哉は一つ咳払いをする。

「とりあえず、今日はもう帰ってゆっくりした方がいいんじゃないか?」

「えー、もう帰らせるのー?」

「暴走して体に負担掛かってんだから休めって言ってんだよ。それに、おばさんともまだ話さなきゃいけない事とかあるだろ?」

 先程まで、顔を赤くしていたのがまるで嘘だったかのように振舞う姿を見て、思わず優香は吹き出してしまう。

「……何笑ってんだよ」

「くくっ……いや、ごめんごめん。心配してくれるんだなーって思って」

「どう見てもおかしくて笑ってんだろ」

「ごめんってば。……ふふっ」

 確かに彼女は笑ってしまったが、それでも拓哉のその気遣いがまた嬉しかった。

「でもそうだね、今日は帰ろっかな」

 だから今は、彼の言う通りにする。

「珍しく素直だな……」

 思わず拓哉もそんな言葉を漏らすのだが、優香は聞こえない振りをして彼の部屋を後にした。

 

 そのまま拓哉も付いて来て、二人で玄関まで来たかと思えば、

「送ってく」

 普段はそんな事を言わない彼が発した言葉に、優香は珍しいと言わんばかりの表情を見せた。その顔を見て、拓哉も彼女が何を言わんとしているかが伝わる。

「なんだよ」

 拓哉がまたしてもわずかに照れながら――それを隠そうとしてわざと――ぶっきらぼうに言い放つ。

「何でもないよ? でも、家はすぐ隣なんだし、別に送ってもらわなくても大丈夫だと思うけどなー。それとも私が彼女になったから、もっと大事にしなきゃーとかそんな感じ?」

 そう返す優香はニヤニヤとしている。

「う、うるさいな。なんだっていいだろ!」

「へへへ。でもまぁそういうのは嬉しいし、これぐらいにしてあげるっ。行こ?」

 ご機嫌な様子で靴を履く彼女に、拓哉は「ったく……」と小さく呟いてから後に続く。

 

 優香が言ったように、お互いの家は隣同士である。二人が拓哉の家を出てわずかに歩いたところで、すぐに彼女の家の玄関先に到着した。

「いやぁー、今日はホントにごめんね」

「気にすんなって」

 相手が優香だった事もあるが、その原因が分かったからこそ彼は全てを受け止め、普段と変わらず接し、そして告白を受けて恋人になった。

 その事は彼女の方も分かっている。それは元より幼馴染として長く同じ時間を過ごした賜物(たまもの)であろう。

 故に――

「それと、ありがとね」

 ――全部受け入れてくれて。

 そんな優香の感謝の言葉に込められた想いも、拓哉にしっかりと伝わっていた。

「……おう」

 彼は照れ臭そうに答えるだけであるが。

「ねぇ拓哉」

「なんだ――」

 拓哉が言葉を言い切る前に、その唇に彼女の唇が軽く触れた。

 突然のキスに彼が驚く間もなく、すぐに優香は離れると、悪戯を成功させた子供のような笑顔を見せる。

「おま、いきなりはやめろよ……!」

「にひひ、拓哉が油断してるからだよーっ」

 言いながら逃げ去るようにして、拓哉の抗議する声を背に、彼女は――仄(ほの)かに頬を赤くしてはいるが――笑いながら家の中へと消える。

 かと思えば、優香はまたすぐに顔を出した。

「あっ、後でメールとかするかも」

「いつだよ」

「んー……もしかしたら遅くなると思う」

「寝てても文句言うなよ」

 拓哉は素直にそう答える。

 その返答を聞いた優香は、そんな部分は相変わらずだなぁと苦笑いを浮かべた。

「まぁ寝ててもいいけど。それじゃあとりあえず、また明日ね」

「おう。じゃあな」

 二人は挨拶を交わして、今度こそ優香は家の中に入って扉を閉める。それを確認して、拓哉も自分の家へと戻って行った。

 

 × × ×

 

 その夜。

 部屋で寝る準備をしていた拓哉の携帯に着信が入る。それは優香からのメールを知らせるものだ。

「なんだ?」

 内容はやはり今日の事が主であった。

「気にすんなって言ったのに」

 そのまま読み進めていくと、最後に『おやすみ!』と書かれていた。

「これは寝ていいって事だよな……」

 彼がそう言うには理由があった。

 普段、優香とのメールは何度かやり取りをして、長時間と言うほどではないにしても、それなりに長く話をする。場合によっては通話の方がいいと、どちらかから電話をかける事もある。

 だがそれが今回、彼女からのこの一通か返信をすれば終わり、というのは珍しかった。

 ――まぁアイツがいいってんなら遠慮なく寝るか。

 拓哉はメールに返信を送信すると、すぐさまベッドに入って瞼(まぶた)を閉じる。

 ――明日からどうなる事やら……。

 そんな事を考えている内に、彼の意識はゆっくりと落ちていくのだった。

 




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