全身びしょ濡れ、目の前にはピンク色のベッド、隣に顔真っ赤の恋人。これなーんだ?
正解は『デート帰りに大雨に降られ慌てて駆け込んだホテルがラブホテルだった件』でしたー!乱数の女神が呵々大笑している姿が見えるなぁ!お前マジでいつか一発ぶん殴ってやる!
「………先に、シャワー浴びてきて。風邪引く前にね」
…まるでこれから「そういうこと」をするかのような口ぶりだが俺はあくまでも玲さんの心配をしているのであり下心のたぐいは一切ない。
時節は春休み。多少暖かくなってはきたが、まだまだ冬の寒さは抜けきっていない。こんな状態で長時間いては体調を崩すのは免れないだろう。
「あっ、えっと…楽郎くんは…………」
「俺は大丈夫。身体は丈夫な方だと思うし」
普段している不摂生と言ったらライオットブラッドをキメながら徹ゲーしてるくらいだ。合法なので何も問題はない。
あとはやせ我慢。
「ありがとうございます…で、ではお言葉に甘えまして…」
そう言ってぱたぱた脱衣所に駆けていく玲さん。彼女もまたずぶ濡れだ。
脱衣所には以前にハイパー銭湯で見たヤツの廉価版と思しき、シミ抜きから除湿乾燥までを1機で担う最新鋭の洗濯機がある。
服を突っ込んで20分も待てばすぐに着れるレベルまで乾かしてくれる優れものだ。互いのあれやこれやの為に俺と玲さんの服は別々に入れるので時間は倍かかるが…
「っくし」
くそ…空調はあれど濡れた服を着たままはキツイな。しかしこれを脱げば俺は半裸どころか全裸にならざるを得ない。
ゲームの中だから半裸も辞さないスタイルでいられるが、リアルで全裸は二重に無理。しかもそれを恋人に見せるなど言語道断。俺たちはまだピュアなお付き合いなのだから。
うーん、せめて代わりになるものでもあれば…
「あの、楽郎くんも…その、ぬっ…脱いだ、方が…体温を下げずに済むと思います…それでその…せめて、こちらを…!」
と思っていたら玲さんのナイスアシスト。バスタオル…まぁそれくらいしか無いよね、うん。
玲さんが再度脱衣所に戻るのを確認してから、濡れた服を脱いで適当に畳み、バスタオルで身体を拭いてそのまま腰に巻く。
体調のためにも無いよりはマシ、マシなんだが、なんだかいよいよ危険な雰囲気になってきたような…
ひょっとしたら玲さんもバスタオルだけになるんじゃ?これ耐えられるのか俺。
いや、俺たちがここにいる目的を忘れるな。雨宿り。そう雨宿り。
ホテルのロビーで天気予報を見たら大雨が明日の明け方まで続く、みたいなことが書いてあったので已む無く宿泊で部屋を取っているが、あくまで目的は雨宿りなのだ。
そうだ、現実逃避、しよう。ラブホの一室にいることを意識してたら妙な事を考えてしまいそうだ。
ベッドのへりに座り、彼女と付き合ってからの3ヶ月に思いを馳せる――
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去年の年の瀬、俺と玲さんは交際を始めた。
前から一緒に登下校とかしていたし、クラスメイトにバレる訳にもいかないため、あまり派手な真似はしていない。
デートということで軽く遠出をするようになったのが変化らしい変化か。
ショッピングモールに行ってウィンドウショッピングをしてみたり、一緒に映画を見たり。
玲さんとデートをする度に、クソゲーの為に捨て去った人間性が蘇るのを実感する。
玲さんの事がよりはっきりと見れるようになってきているが、故に今の状況に動揺をしてしまっている訳で。…一長一短ってやつだな。
なお、デートでは一時間前に待ち合わせ場所で会ってカフェで一息がデフォルトになりつつある。そろそろ…玲さんも多少気を抜いてほしいと思うのだが。
そして、俺と玲さんはまだ『そういう行為』には及んでいない。恋人繋ぎが今の所の俺たちの限界である。
いつかはその時が来るのかもしれないが、今ではないと思う。
俺たちは来年に受験を控えているし、親に養われている身なのだから、『万が一』が起きた時に俺たちだけでそのリスクを負いきれない。
負いきれない以上は、無責任な行為は避けたい。
勿論、俺とて避妊具の存在くらいは知っている(だいたいディプスロのせい)。というか未開封のゴム風船がこの部屋に備え付けられていた。
だがあれらは高確率であって100%を保障してはくれない。つまり乱数。俺は乱数に期待しない。よってNGだ。
…はて、これ現実逃避出来てなくn「あの、シャワー上がりました…」うおっとぉ!?
「あ、あぁ…玲さん、おかえ
……
―――率直に言って綺麗でエロい。ここはやはり上から順番に見ていくべきか。まずは髪。烏の濡羽色と表現して差し支えない艷やかな黒髪は程よい水気を帯びてその美しさを一段階引き上げている。次いで顔。言うまでもなく眉目秀麗の権化である玲さんの顔は元より美しい訳だが、熱と…恥じらいかな?でほんのり上気してついクラリと来てしまいそうだ。細くて白い首筋は拭ききれなかった水滴が僅かに見える。ただそれ故に水を弾く珠の柔肌を否応なしに実感させられる。鎖骨な。俺は今まで女性の部位とか気にしたこと無かったけどこうして見ると鎖骨フェチの気持ちがわかるような気がする。だって愛おしいじゃん。体表付近に浮き出た骨ってつまり弱さの象徴で、それを見せられて庇護欲の混ざった愛情が掻き立てられるわ。胸…胸なぁ。これはちょっとコメントを差し控えざるを得ない。流石に面と向かった状態で胸の事考えるのは失礼かなって思う。別に玲さんの胸に問題があるわけじゃないよ?むしろ最高。バスタオルで半分以上隠れてるとしても、だ。けどさぁやっぱ下心あるように捉えられたら辛いなぁって思うんだよ俺は。おっといかん何の話をしてたっけ。そうそう玲さんの全身が綺麗でエロいって話だった。腕、腕から手にかけてもパーフェクトだ。白磁の如き、なんて言うけど正しくそれだな。日焼けする時期じゃないから今だけ味わえるこの白さ。しなやかさも相まって芸術品だろもう。バスタオルで隠れてる部分は除外するとして…腿だ。まぁ見えないから掻き立てられるものもあるけど。どちらかというとすらっとした腿は玲さんの体型とベストマッチしている。気恥ずかしくて頼むなんて無理ゲーだが、この腿で膝枕しようものなら俺は一生頭を離せないかもしれん。ふくらはぎも…運動をしているからか筋肉の存在がなんとなく見て取れる。けどそれは筋肉量が少ないのではなく、良質な筋肉が高密度に詰まっているがためだろう。筋肉に特段興味はないのに、玲さんの身体となると途端に見る目が変わってしまうのは何でだろうな。おっともう最後か。足って不思議だよな。歩くための器官にどうしてこう魅力を感じてしまうのか。生物学的には尻or胸が魅力の全てであるはずなのに、こうも惹かれてしまうのは人間の知性の業だな。また脱線した?まぁとにかく総じて纏めると玲さんの全身が非の打ち所・is・0のパーフェクトボディって事だ。レイだけにってか。………あれ俺今声に」
………。
ふふふ、おや玲さん、そんなに顔を赤くされてどうしたのです?俺も多分いまそんな感じです。
「スイマセン、チョトシャワールームニハイラサセテイタダキマスネ」
フリーズしたっぽい玲さんの横を通り過ぎて脱衣室へ向かう。
前屈み?当たり前だろこんなんみせられて興奮しないやつがいるか。
「あいつ恋人の話するときだけ早口になるよな」
「よしなよ」