ちゅんちゅん、ちちちち……
小鳥の囀りと、窓から差し込む陽光が俺に朝の訪れを教えてくれる。
うつ伏せの身体を仰向けに変え、ゆっくりと身体を起こす。
「だるっ…」
風邪の時よりなお酷い倦怠感。昨日は派手に体力を使い果たしたからな…。
ただ熱がある気はしないので風邪は引いてないっぽい。良かったね。
「いやなーんにもよくねーーーーーーーんですわぁ…」
思わず頭を抱える。
やっちまったよ…。これからどうする?玲さんのご両親に挨拶?結納金?
婚約する前から生でヤりましたとかぶん殴られて交際禁止を言い渡されても文句言えないんだが!?
…隠すしか、無い。でもどうやって?
もしあれで中ってしまおうものなら何をどうやっても水泡に帰す。
確か避妊薬の中には行為の後に飲むタイプのものがあったはず。アフターピル…だっけ。
まさか玲さんがそんなの持ち歩いてる訳もないし…買いに行くしか。
まずは服を着ないと。自分の服を探して…そういや洗濯機に放り込んでそれっきりだった。
というかそもそも…
「うっわぁ…」
引きもする。ベッドの上はもはや惨状と言うしかない様相を呈していたのだから。
何に引いたかと問われれば…俺の性欲ぅ…ですかねぇ…。
そこら中に使い終わったゴムが散乱し、その真ん中はもうなんかシーツも何もぐっちょぐちょのべっとべとである。
改めて、俺が玲さんにしたことを思い出してしまう。この部屋暑いなぁ…空調壊れてんじゃないの?
てか当の玲さんの姿が無い。部屋を見回しても。あれ?
「玲さん?」
「あ、楽郎くん、起きましたか?」
脱衣所の方から玲さんの声が聞こえてくる。そっちにいたのね。
「えっと…玲さん、シャワー浴びたいんだけど…」
「そ、そうです、よね!す、少しだけお待ち下さい!」
そんな慌てることある?
言われたとおり待っていると、脱衣所の扉が開いて玲さんが姿を見せる。良かった服着てた。
…顔真っ赤ですね。
「あの、その…オハヨウ、ゴザイマス………」
「ア、ハイ、オハヨウゴザイマス…」
…俺も顔真っ赤になりました。
慌てることあるわ。昨日あんなことやったら顔合わせるの気まずいに決まってんだろ!
「では横を失礼して…」
というか普通に俺全裸じゃん。とっとと服着ないと。
シャワーで全身の汚れを洗い流し、まっさらのバスタオルで水気を拭き取って洗濯機から引っ張り出した服を着込む。
なんだか衣服を身にまとうのが随分と久しぶりに感じる。それだけこの一夜で濃い体験をしたということか。
そう、濃い体験を………自分で記憶をぶり返させてどうする!
「ビークール…ビークール…今の俺は知性的…」
自己暗示、大事。
「お待たせ玲さん」
「お帰り、なさい…?…良かったら…お水、飲みますか…?」
「え、あぁ…。じゃあお言葉に甘えて」
玲さんが紙コップに入れた水を片方差し出してくれる。
出来た恋人だなぁ…。俺なんか自分の分しか用意してなかったわ。
こっちも何か…あ。
「玲さん、この椅子使って」
「あ…。で、ではお言葉に甘えて…んしょ」
今の今まで完全に存在を忘れていたテーブルと椅子に玲さんを座らせる。
まぁその、疲れてるだろうしね…
椅子はもう一脚あるのでテーブルを挟んで向かいに座る。
「「………」」
一度落ち着くと何を言えば良いのかわからなくなった…
話さなければならない事はある。
昨日はめちゃくちゃやってしまってごめんなさいとか、アフターピルの事とか、あと、そう、今後の…事、とか…っ!
てかアフターピルは早く飲まないと効果がなくなるんじゃなかったっけ?水飲んでる場合じゃねぇ!!
「ご、ごめん玲さん!アフターピル買ってこないと!ちょっと待ってて!」
「ふえ?あ!だ、大丈夫です!もうありますから!」
部屋から飛び出そうとした俺を玲さんが止める。
…え?あんの?
「いつの間に…」
「えっと…姉が、その、楽郎くんとデートに行くときはいつも持たせてくるんです…」
あ、あぁ…なるほどね。流石に仙さんも在学中にご懐妊なんて事態は避けたいよね。そりゃそうだ。
……備えのせいで玲さんに変に意識させてない?と思わなくも無いが、今回ばかりはその備えに感謝しなければ。ありがとう仙さん。
「…ちなみに他に何か持たされてたりは?」
「………出してみます」
・コンドーム
・ドリンク型の滋養強壮剤
・なぜか商品説明が一切なく、ハートマークのみが描かれたラベルの小瓶。中には錠剤が見える。
以上。
「「………」」
うん。やっぱり仙さんは仙さんだね。