玲さんに薬を飲んでもらい、少し経って。
…無論ハートラベルの瓶のヤツではない。
椅子に座って部屋の窓から外を眺める。昨夜の反動で、多分気だるさに負けているのだと思う。
俺は必死に脳を絞っているからだが。
夜の内に雨は上がり、日光が差し込んでいる。チェックアウトの時間も近い。
2人きりでいられる内に、切り出さなければ…
「玲さん」
「は、はい。なんですか?」
「その…本当に、ごめん。昨日は…雰囲気に流されて、玲さんに色々と酷い真似をしてしまって…」
「い、いえそんな!雰囲気に流されたのは私の方です…!楽郎くんは自制してくれてたのに、私が誘ったから…!」
玲さんはそう言ってくれる。その優しさはありがたいが、俺の責任も確かに存在する。
玲さんに一切の責任を押し付けるのは…有り体に言ってクズじゃない?
「…だとしても、玲さんが流されても、俺がしっかりとしないといけなかったんだ」
玲さんの手を取る「ふび!?」
真っ直ぐに見つめる「ぴゃぁ…」
「だから、今後について、俺なりに考える。もしものときは責任を取る。今日を……無かったことにはしない」
果たしてこれが正しい選択なのか、俺にはわからない。
選択肢は、幾つか考えた。しかし、完全な正解は何処にもないように思えた。それだけの間違いを、俺は犯している。
…別に言葉遊びがしたかったわけではない。
「どう、かな…玲さん」
何故か顔を反らしている玲さんに、俺の考えをぶつける。
ここまでは俺の選択。玲さんがどう思うかはまた別だ。
「………」
数秒、考えていたのだろう玲さんが俺に向き直る。
「実は…私も、楽郎くんと同じことを考えていたんです」
え?そうなの??
男と女じゃその…行為に伴う諸々が違う――基本的に女性の方が何かと危ない――し、まさか同じ考えに至るとは。少し呆気にとられる。
俺に負担をかけまいと合わせてくれているのか、とも考えたが、玲さんの眼を見る限り、その線は薄いように思えた。
「確かに、今日その…
「でも、だからって私達の関係を、今ここで変えるのも何か違う気がして…」
「今後何がどうなるかは、なってみないとわからないので、その時に考えても遅くはないかなー…と…」
玲さんは「優柔不断、ですよね…」と自嘲気味に笑う。
見る人が見ればそうかもしれない。だが俺たちは結局の所まだ高校生で、その肩に乗せるには今回の出来事は重すぎる。
だったらやらなきゃよかったと後悔が湧き上がるわけで……
だが!
まあ!
起きたことは仕方がない!過去はやり直せない!
忘れこそしないように留めていくが、そこに囚われてはいけない!と思う!
ので、
「じゃあまあ、行きあたりばったりで今後とも宜しくということで!」
強引に締め括る。これ以上考えても唸るだけの問題に頭を割くべきではない。
世の中なるようになるものだ。そう例えばスタートダッシュで大コケして、そのまま予想を裏切ること無く一年と保たずにフェードアウトしたクソゲーのように。おっと脱線。
「は、はい!改めて…よろしくおねがいします!楽郎くん!」
「宜しく、玲」
あっ昨日の勢いでつい。
途端玲さんの顔が急に真っ赤に染まる。いかん思い出させてしまったか。
腕を思い切り振って遺憾の意。あの、握られてる俺の腕どころか身体がひっぱられうべべべべ。
「きゅ、きゅうな呼び捨ては、ずるいですよ!卑怯ですっ!」
「うっかりなのでご勘弁を…でも卑怯と言うなら玲さんも呼び方変えてみれば良いんじゃない?」
「むぅ~!」
むくれっつらの玲さんも可愛いなぁ。
「………あ、『あなた』」
「ぬ゛っ!!!!!」
突然の爆弾を処理しきれずテーブルに頭を叩きつけてしまう。
痛てぇ…いや反則でしょそれはぁ!
「玲さんそれは段階越えすぎじゃない!?それするならこっちだって『ハニー』とか呼ぶぞ!」
「だ、だったら私だって『ダーリン』って呼んじゃいます!」
…これはぁ…互いにダメージを負うだけの無限ループじゃな?
「…部屋、出ようか」
「…そうですね」
無駄な体力の消耗の後、俺達は立ち上がった。
楽玲は無限にいちゃつかせて良いと古事記にも書かれております。