夏休み、グループ課題で僕の部屋を訪れた結城明日奈と桐ヶ谷直葉 作:黒胡椒サラミ
微妙な空気と距離感だ。夜の道路を歩く僕の後ろを、直葉が黙ってついてきている。ここは住宅地――というほど家も密集していない、田んぼや畑の多い郊外だ。日が沈めば、ほとんど車は通らない。それでも僕らは道路脇に寄って、サンダルでじゃりじゃりとアスファルトを踏みしめながら歩いていた。
「…………」
「…………」
僕らの関係は、しょせんあの部屋の中だけでのこと。だから、こうして彼女と外の空気の中を歩くとは思わなかった。僕も直葉も、何も言わない。足音だけが、やけに大きく響いている。アスファルトは昼間の余熱を残していて、地面からむんむんと暑さが昇ってくるような感じがする。
コンビニまでは徒歩十分。その近辺まで行けば、景色がガラッと変わる。それなりに人通りが多い通りに出て、チェーンの定食屋やラーメン屋なんかもある。ちなみに、明日奈のお尻を開発するためにオモチャを購入した怪しいDVD屋は、その大通りからさらに路地に入ったところにある。
足音からして、直葉は僕の5メートルくらい離れた後ろにいるようだ。直葉としては、外で僕と歩いている様子を、万一にも誰かに見られたくないはずだ。だから、もしも知り合いとすれ違っても、「僕と一緒に歩いている」とは思われない距離を、彼女は保とうとしている。
別にそれで正しいと思う。セックスの最中に好きだ好きだと言わせてみても、あの子が本当に好きなヤツは、僕とは別にいる。僕はその代用品で、「好き」という言葉は単なるプレイの一環だ。直葉がそう割り切っているなら、むしろそっちのほうがありがたい。
そう思っていたのだけれど――
「……っ」
足音が少し早くなり、直葉の気配が近づいた気がした。不思議なことに、僕の鼓動は早くなった。さらに数分間は無言で歩いた。田畑の多いゾーンを抜けて、まさに住宅地っぽいエリアに入る。そこにある大きめの公園を横切った頃には、直葉の身体は、僕の真横にあった。
「直葉?」
「暗い……ですから」
答えのような、答えになっていないような。直葉はそう言うと、さらに僕の近くに身体を寄せた。今の直葉は自前の私服姿だ。太ももまで見えるホットパンツに、Tシャツを着ている。直葉は少し背が低い。横を見ると、胸元の隙間から鎖骨とおっぱいの北半球の一部が見えた。住宅地を抜けて、大通り沿いのコンビニまで、僕らは肩が触れ合うか触れ合わないかのギリギリの距離を保ったまま、歩き続けた。
「っしゃいませー」
自動ドアが開くと入店の電子音が鳴り、やる気のないバイトの声がした。僕は入り口の買い物カゴを手に取り、直葉は両手を後ろに組んで、商品棚を物色し始めた。僕はカゴに、目当てだった醤油と、ペットボトル飲料を何本かと、ついでに切らしていたゴミ袋と、スナック菓子を入れていく。
「直葉、ほかに何か要る?」
「んー……」
直葉は小さいチョコレート菓子の箱に目を止めた。それからちらりと僕に視線を向けてくる。僕が頷くと、直葉はその箱をカゴの中に入れた。これで買いたいものはそろった。じゃあレジに行こうかという時に、直葉はまた、さっきとは違う商品棚の何かに目を止めた。
「あ……っ」
彼女の頬が赤くなったので、何を見つけたのかと思ったら、それはあれだ。僕らが大量に消費している、コンドームの箱だった。直葉の恥じらう顔に嗜虐心を刺激された僕は、彼女の横に立って言った。
「そっか……これもそろそろ無くなるよね?」
「ぁ……ぅ……」
「明日の朝までもたないかもしれないし、買っとこうか」
「そん……なに……?」
僕は、買い物カゴを直葉のほうに少し傾けた。君が自由に選んでいいよ、という仕草だ。直葉は陳列されたゴムと、買い物カゴと、僕の顔と、それからレジのほうであくびをしている男のアルバイトの顔を交互に見て、さらに顔を真っ赤にしていく。僕は優しく微笑んでいたつもりだったけど、そこには意地悪でいやらしい色が浮かんでいたに違いない。
直葉は僕にすがるような眼をした。でも、僕は彼女に意地悪を続けた。
「ほら、直葉」
「……はい」
直葉の手は、最初に5個入りの小さな箱に向かって伸びていった。けど、箱に触れる瞬間、ぴくりと弾かれたように指が動き、それからその指が怖々と横にスライドして、12個入りの箱を掴んだ。
「じゃあ、これ……」
「あ~……」
なるほど。僕は直葉の耳に口を寄せ、ねっとりと囁いた。
「これは頑張らなきゃな……。ね、直葉」
「ん……っ」
直葉はぎゅっと目をつぶり身体をこわばらせ、ゴクリと唾を飲み込んだ。
会計を済ませるため、僕らはレジの前に立った。他に客はいないから並ぶ必要はない。顔が真っ赤のままの直葉が逃げないように、彼女の手首を掴んだまま、僕は買い物カゴをカウンターに置いた。
男子大学生らしいアルバイトは、商品にバーコードリーダーを当てながら、ちらちらと直葉に視線を向けている。ただでさえ、直葉は人目を引くくらいの美少女だ。しかも、小柄な身体に似合わない胸のたわわな膨らみに、目を奪われない男はいないと断言できる。その膨らみがTシャツを大きく持ち上げている様子が、学生バイトは気になって仕方ないようだった。
コンビニのラジオ放送をBGMに、ピッ、ピッと電子音が鳴る。直葉はもう首筋まで赤くしている。できればこの店員が、「あの商品」をスルーしてくれることを祈りながら。でも、当然そうはいかない。
「あ」
バイト店員の口から声が出て、直葉はばっとうつむいた。僕に掴まれた手が、逃げたそうに引っ張られる。直葉が手に取ってカゴに入れた、12個入りのコンドームの箱。どこかいかがわしいデザインのその箱と、直葉のあどけない顔とを、店員はまじまじと見比べていた。
「――円になります」
そして、会計は無事に終わった。直葉にとっては無事じゃなかったのかもしれないけど。自動ドアから出る時も、直葉は僕に手首を掴まれたまま、首を真っ赤にしてうなだれていた。
「帰るぞ、直葉」
「うん……」
僕らはさっき通って来た道を逆にたどり、僕の部屋への帰途に就いた。行きと同じく、歩き始めてからしばらくは無言だった。違うのは、直葉の手首が僕に掴まれ、連行されるような形になっているという点だ。今の直葉はどこかふにゃふにゃとしていて、身体に力が入っていない。僕が半ば強引に引っ張ると、簡単に身体を寄せてきた。
「は……ぁっ……」
直葉の口から、ため息とも喘ぎ声ともつかない音が漏れる。僕が彼女の手首を離し、その代わりに、細い腰をぐいっと抱き寄せたからだ。暗くて遠目からは顔が判別しにくく、さらに人通りもそれほど多くないとはいえ、それこそ万一知り合いに会ってしまえば、完全に言い訳不能の状態である。
今の直葉は、学生の身でありながら男と夜遊びをする、エッチでいけない子だ。たぶんこれまで、彼女はそういう男にうつつを抜かすような子を、むしろ軽蔑して生きてきたに違いない。今、自分がそんな子になってみて、彼女は何を考えているのだろうか。ぜひとも頭の中を覗いてみたいと思った。
「せんぱい……」
「ははっ、直葉、こんなとこでそんな甘ったるい声を出していいの?」
「だって……」
「あー……でも、僕もムラムラしてきたな」
直葉が発散するフェロモンにあてられて、歩きながらチンポが勃起してきた。下着の生地に擦れて痛い。このまま歩いても、部屋に着くまであと5分はかかる。僕も直葉も既にハメ合う準備が整っているというのに、5分も耐えなきゃならないなんて拷問だ。
その時ちょうど、僕らは住宅街の中の公園を通りかかった。結構大きな公園だけど、こんな夜中に人はいない。おあつらえ向きに、綺麗目な多目的トイレまである。僕がそのトイレのほうに足の向きを変えても、直葉は何も言わずに従った。
「直葉、下を脱いでお尻向けて」
「はい、先輩……」
洗面台のところに買い物袋を置くと、僕は短い言葉で直葉に命令した。それでも、直葉はやっぱり抗議しない。むしろ自分からいそいそと、ホットパンツとショーツを足首にかかるまで下ろしてしまった。そして、便器の蓋に手を突くと、お尻を高々と上げる。マンコからは、白濁した本気汁がトロリと零れ出ていた。
僕もズボンを下ろすと、さっき買ったコンドームを手早く勃起チンポに装着し、直葉のお尻を掴んだ。そして、前戯すらせず、一気に直葉のマンコに挿入した。
「あ゛っ♡♡ うっ、う~~~~っっ♡♡♡」
まさに「ぶち込む」という表現が相応しい挿入の衝撃に、直葉はつま先立ちになってイキ悶えた。
「おチンポきたぁ……っ♡ せんぱいの、おチンポぉ♡ う゛ぅ~~~っ♡♡♡」
「もうスイッチ入っちゃってるじゃないか。ガンガンピストンするから、ちゃんとマンコ締めろよ?」
「はいっ♡ はいぃっ♡ ――あ゛っ♡ お゛っ♡お゛っ♡お゛っ♡う゛っ♡お゛っ♡」
直葉のイキ声が多目的トイレの中に響く。彼女はチンポに奥を突かれるたびに、浅い絶頂を味わっているようだ。
僕らは、二人とも下半身だけを露出した、一番手早く繋がれる格好で交わっている。僕は公園の多目的トイレという公共施設を、直葉の中でザーメンを排泄するという目的のために使用している。今の桐ヶ谷直葉は、単なる僕の性処理トイレだ。そして直葉のほうも、抑えられない思春期の肉欲を解消するために、僕のチンポを道具として使っている。その背徳感によって、すぐに射精欲求が込み上げてきた。
「あ~クソっ! 直葉! もう出るぞ!」
「は、はいっ♡ イってくだしゃいっ♡ 出してくだしゃいぃっ♡ 大好きなせんぱいのおチンポ、直葉で気持ち良くなってぇっ!!」
「クソっ! 可愛いこと言いやがって! そんなにチンポに犯されるのが好きなのかよ!! どうせ誰のチンポでもいいんだろ!!」
本当は「お兄ちゃん」のチンポが良いんだろう。
「ち、違うもんっ! あ゛っ♡あっ♡あっ♡あっ♡ ――せんぱいだからだもんっ! おう゛っ♡ んぃいいっ♡♡♡♡」
指の痕がつくくらいお尻を強く握りしめ、鉄みたいに硬くなったチンポで、直葉の中を乱暴にごちゅごちゅとかき回す。直葉が手をついている便器がガタガタと揺れる。早く射精したい。でも、もっともっとこのマンコを楽しみたい。直葉の喘ぎ声を聞いていたい。そんな葛藤も、限界を迎えた射精衝動によって押し流されてしまう。
最後の瞬間、僕は直葉のお尻に恥骨を強く叩きつけた。直葉のつま先が、一瞬だけ宙に浮く。それと同時に、僕は亀頭の先からザーメンを噴射していた。
「おおううう゛っ!!!!」
「んぅ~~~~~~~っ!???♡♡♡♡」
「ううううっ!!!!」
「~~~~っっ!!♡♡♡ ~~~~っっ!!♡♡」
本来なら有り得ない場所で交わっているという事実が、僕らの感覚を鋭敏にしていたのだろうか。僕と直葉の腰はガクビクと震え、膝も馬鹿みたいに笑っていた。そうやって僕らは、お互いに立っているのがやっとの状態になりながら、身体を支配しているどうしようもない性衝動が通り過ぎるまで、腰とお尻を密着させていた。
「んちゅ……っ♡ ちゅる……♡ ――んっ♡ はい、綺麗になりましたよ、先輩」
「ありがとう、直葉」
事後、僕はトイレの蓋に座り、股の間に跪いた直葉にお掃除フェラをさせていた。ゴムを外し亀頭に付着していた精液を全て舐めとると、直葉は髪をかき上げながらにっこりと微笑んだ。
「こっちおいで、キスしよう」
「え、でも……口を洗わないと」
「いいよ別に」
「あっ」
僕はためらっている直葉の手を引いて、自分の膝の上に抱え込んだ。そして正面から彼女を抱っこし、口づけを始める。
「もう一回しよっか」
「……はい♡」
そして僕らは、トイレの上で対面座位になり、二個目のコンドームを消費した。
事が終わると、僕らは慌ててトイレの中を片付け、誰かに見られないように、いそいそとそこを出た。いくら何でも大胆になり過ぎたという気持ちや、ここを清掃する人に申し訳ないという気持ちが、2回戦までヤり終えてからようやく芽生えた感じだ。
「えへへ……」
「直葉、歩きにくい」
「んふふっ」
そこから帰り道、直葉は僕の腕にべったりとくっついてきて、歩きづらいくらいだった。拳で額を小突いてみても、ふやけた顔で笑い、さらにべったりすり寄ってくる。お陰で五分くらいの道のりが、十五分以上もかかってしまった。
直葉の変わりようは、ストックホルム症候群という奴のせいだろうか。それとも、嫌いな男に抱かれる事実から心を守るために、自分で自分をだましているのだろうか。だとしたら僕の思うつぼだ。そんな風に考えながら、僕は直葉の歩調にあわせ、この帰り道ができるだけ長く続くように、ゆっくりと歩いていた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「…………」
「どうしました、先輩」
「……いや、一緒に帰ってきたのに、それは変でしょ」
部屋のドアを開けて、すぐ隣から聞こえた「おかえりなさい」に、僕は苦笑しながらツッコミを入れた。
「…………」
「……どうしました? 先輩」
「いや……」
なぜか胸がぐっと詰まってしまったなんて、心配そうな表情で僕を見上げている少女に、言えるはずがない。僕はその場の空気をごまかすために、咄嗟に思いついた言葉を口にしていた。
「ただいま」
「おかえりなさい、先輩」
そして、僕らは一緒にドアをくぐり、一緒に遅い夕食の支度を始めた。
夕食後のベッドの上で、僕は本当にコンビニで買ったコンドームを使いつくすまで、直葉を抱いた。絶対に、絶対にこの子をアイツのところには帰したくない。絶対に僕のモノにしてみせる。直葉のナカで射精するたび、その思いがひたすらつのっていった。