※この作品はR-18です。

めぞん一刻 二次小説 流れる季節の中で   作:今津晶

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第10話  変わらないもの、変わってゆくもの

[ふぅ・・・]

昼下がりの一刻館でひとり溜め息を吐く響子さん。

外はどんよりと厚い雲に覆われ、

いつ雨が降ってもおかしくない空模様になっていた。

[迎えにも来ないなんて、一体あの人ったらどういうつもりなの?]

[それとも・・・]

ぶちぶちと独り言など呟いてみるも・・・。

 

“奥さん、お得な情報満載ですよ!”

管理人室のテレビの音だけが虚しく答えてくれるだけだ。

 

迎えにも来ない、言い訳の一つさえ何もしない。

一緒になって17年以上の歳月・・出会ってからなら23年以上にもなるのに。

夫の心がどうしても分からない。

 

((こずえさんと黙って逢っていても浮気なんかじゃないとでも言い張るつもりかしら))

((自分とってはもう倦怠期だから他の女性とデートくらい大目に見ろとでも言いたいの?))

((あたしじゃもう満足できないから目移りしたけど、お互いの知り合いならショックも小さいだろうとでも考えてるわけ?))

((考えてみて、あなた。もしあたしが三鷹さんとどこか街中で偶然出逢って、お茶を飲んだだけだとしても・・あたしは必ずあなたに伝えるわ。その日のうちにね))

((それに繰り返しなんて絶対しないわ。だって理由が無いもの。夫以外の特定の男性と外で頻繁に約束して会うなんて))

((ねえ・・あたしの生き甲斐ってあなたなのよ。春香もそうだけど娘だから話は別だわ。そういう女ってひょっとして鬱陶しいのかしら?でも・・あたしがそんな女って知ってて結婚してくれたんでしょう?))

((あたしじゃなくて他の女性に心奪われているのなら、これでも妻ですからね・・直ぐに女の勘が働いて察知できるわよ。残り香でもあればね・・・でもそんな素振りも雰囲気も匂いすら何も・・思い出しても全然感じなかったし))

 

((いつもの営みも・・セックスだって・・あたしのこと真剣に愛してくれているから、あんなに・・逞しく求めて可愛がってくれたのよね?だって今までと同じように気持ちが・・心も伝わっていたわ。そうよ・・・あたしっていう女そのものを求めてくれてたじゃないの))

((あたしね・・あなたという男性が相手じゃないと性行為なんて・・・セックスなんて出来ないわ・・絶対に。あたし、そういう女なの・・。あなただけだから・・・あなただけの女にしてくれたから、目の前であんなに恥ずかしい格好も・・破廉恥な行為も・・排泄だって・・

凄くエッチでスケベなセックスだって・・望まれたらね・・披露できるのよ。最近はね、あなたの精液を口で・・喉で飲み干したくなるの。だから仁王立ちしてもらって、あなたの性器を頬張って・・射精してくれるまで口の奥まで出し入れして・・・あたし、一滴も

零さずにね、少しも吐き出したりなんかしないで飲み干す自信が有るから着衣のままでも平気よ。服を汚したりなんかしないから・・でもあたしの裸が見たいから・・その方が興奮するって言われれば、あなたが服を着ていても・・あたしだけ全裸にだってなるわ。

あたしは妻なんですからね・・あなたの精液を全部飲み込んでも吐き出さずに、ごっくん出来るの。あなただけの女だから・・あたし出来るのよ。そうよ、他の性行為だって同じよ・・・あなたを愛することに対して、あたし誰にも負けない自信が有るわ。

だって顔射を・・あたしの顔全体に射精されても、あなたの愛情表現って分かっているから平気よ・・それに浴室でだけど何度か小水を浴びせ掛けられたことも有ったわね・・・身体の全部に。あなたが”響子をおれのモノだってマーキングしたいんだ”って叫びながらするから

受け止めたのよ。・・あたしはあなただけに独占されたい女なんですもの。その後であたしも・・小水を・・排泄する最初から最後まで・・尿道を凝視されて・・・あたしもあなたをマーキングする為に・・体に引っ掛けてしまったことが・・・有るわよね?

だから・・あたしの恥毛を石鹸で洗いたいって言いながら・・・性器まで弄り出して、洗い終わっていないのに”もう我慢できないから、するよ!響子”って囁いて勃起したあなたのイチモツで貫いてセックスを始めてもね、あたしは構わないわ。だって絶頂にまで必ず導いて

可愛がって、とことん愛し抜いてくれるから逆にね、とっても嬉しいの。ねえ・・・あなたはどうなの?))

 

((実家に帰って来てからね・・時々夢に見るの・・・あなたにあたしが愛されている場面を・・何度も。最近の再現もあれば昔の頃の再現映像もね・・それは破廉恥じゃないと思うの・・だってそれって、あたしの願望だから・・・夢にまで見るのよね))

((ねえ、覚えている?あたしが春香を産んで一刻館に初めて連れ帰った日のことを・・。あたし玄関先で”春香ちゃん、ここはね・・パパとママが初めて出会った場所なの”ってあの娘に話し掛けたけど・・その後で二人の部屋に帰ってベビーベッドに寝かせたら・・・))

((あなたが”春香、この部屋はパパとママが初めて愛し合った場所なんだ”って春香に語り掛けて、そのままあたしに愛情を込めて唇にキスをしてくれたわよね。そしてそれから・・・出産してから初めて愛し合って・・凄く濃厚で充実した気持ちがして嬉しくて素敵な記憶なの))

((あの頃って春香の世話をしながら・・それがひと段落して落ち着いたら見詰め合って・・・キスして・・そうセックスをして愛し合う営みが絶えなかったわね。夫婦の嗜みなのかな・・それを実感できたから凄く幸せだった。その記憶って何年経っても消えたりしないわ))

((結婚したばかりの頃だって頻繁にほぼ毎日愛し合っていたけれど・・春香が誕生して、二人の愛の結晶で成果が・・娘が居ることが嬉しくて・・そこからまた愛し合っていた時からね・・あたしたちって繋がっている姿が本来の形じゃないかなって考えていたから))

((夫婦の絆が深まったって本当にそう思えたのよ。だから・・・結婚して・・あなたに幸せにして貰って・・・それからずっとあたし・・幸せなままなの。あたし、本当にあなたが居ないと生きていけない・・あなたはあたしの心の一部だから・・そう思ってる))

 

((ふふ・・春香の為の母乳なのに、あなたったらやたらと飲みたがっていたわよね?忘れたとは言わせないわよ・・もうね、大人の男性の吸引力って凄いわねって、あたし・・目をぱちくりさせてたんだから・・最初は勢い任せだったけど、そのうちに優しい飲み方を覚えて・・))

((あなたって子供みたいじゃなくて赤ちゃんみたいねって内心でくすくす笑いが止まらなかったのよね。・・母乳を飲んだら、お礼をご褒美をって言いながら必ず求めてきて・・凄く逞しかったわ。あなたとの記憶ってどんどん増えていくけど忘れることなんか絶対にない))

((お互い20代の頃、30代の頃、そして今の40台・・ずっとずっと愛し合って来たわね。飽きるなんてこと全然ないの・・だってあたし、大好きな・・愛しいあなただけを見て生きているから退屈だってしないわ。あなたは必ず、あたしの目の前で生きているんですもの))

((・・・あなただってそうでしょう?あたし以外の女を見ていないわよね・・そう信じていたし信じたい))

((だから浮気とか不倫じゃないって自信持って潔白を証明できるんなら・・堂々とあたしの実家なりに来ればいいのに。手っ取り早く携帯にでも掛ければいいのに、それすら無し・・))

((”話が有るから来てくれないか?”って言ってくれれば・・いつだってあたし、すぐに行くのに・・・・何にも無し・・・・・))

((ホントにあの人ったら一体全体・・・どういうつもりなのかしら?))

そんな時だった・・・。

[こんにちは~ごめんください~]

誰かが訪ねて来たようだ。

 

[はい、ただいま行きます]

その声に我に帰った響子さんは慌てて玄関へ向かった。

[こ、こずえさん・・・・・・]

驚きの余り声にならない響子さん。

夫と浮気しているのではないかと言う””疑惑の人物””が目の前にいるのだから無理もない。

 

[お久し振りですね、管理人さん。お元気でしたか?]

そんな響子さんの思いを知ってか知らずか、こずえちゃんはニッコリ微笑み挨拶をした。

[え、ええ何とか]

ちょっと笑顔のぎこちない響子さん。

[あ、せっかくですからお茶でも如何ですか?]

それでも優しい心遣いは忘れない。

[ありがとうございます。それじゃあお言葉に甘えて]

こずえちゃんは十何年か振りに一刻館に足を踏み入れた。

[うわー変わってないですね~昔と・・・]

キョロキョロと館内を見回すこずえちゃん。

 

[ええ、時が停まったままなんですよホントに・・・]

[住人も一の瀬さんと四谷さんは変わってないですし]

[今は流石にこんなオンボロアパートに入居する人はいないですよね]

[もうほとんど趣味でやっているようなものです。管理人を]

響子さんが言う。

管理人室に入り響子さんがお茶を入れた。

[どうぞ]

[すいません管理人さん、突然お邪魔したのにお茶まで出して頂いて]

申し訳なさそうにこずえちゃんは言った。

 

[いいえ、そんなことないですわ]

[本当にお久し振りですね。お元気でしたか?こずえさん?]

[・・・あの、管理人さん・・・]

 

[はい?何ですか、こずえさん?]

 

[ご存知なんでしょ?その、ご主人と・・・五代さんとあたしが逢っていた事]

こずえちゃんは五代君が妻の響子さんに黙って自分と隠れて逢っている事を薄々感付いていたようだ。

それはそうだろう。

 

”昔の彼女”とデートしてくるよ・・・なんて妻に言える夫なんて居ない。

そしてそんな事が何度も繰り返されれば、同居している妻にも感付かれない訳は無い。

彼女が一刻館にやって来た目的とは何だろう?

“ポツポツ・・・サー”

とうとう雨が降り出した。

雨音だけが管理人室にこだまする。

[・・・・・・・・・・・]

響子さんはこずえちゃんの言葉に黙って下を向いたまま何も言わなかった。

[やっぱりご存知だったんですね]

[ごめんなさい管理人さん。色々とご迷惑を掛けることになってしまって]

そう言うと深々と頭を下げたこずえちゃん。

[あたし、五代さんが・・・ご主人が大好きでした]

[管理人さんに負けないくらい]

[でも、ご主人は管理人さんを選んだ]

[いえ・・・最初から管理人さんを選んでいたのかも知れませんね]

初めて響子さんを前に五代君への思いを語り始めたこずえちゃん。

こずえちゃんの言葉を聞き、響子さんもようやく口を開いた。

[ごめんなさい、こずえさん・・・あたしは・・・・あたしは・・・ずるい女なんです]

[主人が学生の頃、こずえさんとデートしたりするのを何度か見るたびに・・・ヤキモチ妬いて嫉妬して、イライラしたり、自分勝手だけど、三鷹さんに心が揺れてしまったり]

[けど・・・ただ黙ってその光景を見ているだけでした]

[あたしだって主人のこと、五代がずっと好きだった・・心の琴線に触れる人で気になって仕方無くて・・・本音を言えば大好きだったのに自分の気持ちはずっと胸の中に仕舞い込んでしまって・・・]

[だから、あたしはこずえさんと主人がもしも一緒になるとしても仕方ないと思ってました]

[・・・・・・・なのに、そんなあたしを主人は選んでくれた。あの人ったらホントに不器用で要領が悪いのに一生懸命に骨を折ってあたしに本気で大好きだと告白してくれて・・・大好きな女として選んで恋人に・・そして奥さんにしてくれた]

[未亡人で2つ年上のあたしを・・・付き合う前から勝手にヤキモチ妬いて困らせてばかりだった・・・・何の取り得も無くて・・意固地なだけで分からず屋の後家を・・・・・自分の愛する女性だって断言して・・・お嫁さんに貰ってくれた]

[本当に・・・本当に嬉しかった・・・・嬉し過ぎて涙が零れて止まらなかった・・・・・けれども正直・・・こずえさんのことが頭をかすめました]

[きちんとお互いが納得いく形でお別れしたのかどうか・・・]

[主人はこずえさんとはきっぱり別れたと言ってましたが、それ以上は頑として話そうとはしませんでした。]

[だから・・・気にはなりました]

[こずえさんどうしてるかなぁ・・・って]

[でも・・・主人の五代との安らかでとても幸せな時間を過ごすうちに少しずつそんな気持ちも薄らいでしまいました。主人はあたしという我が侭で独占欲が・・嫉妬心の強い女の全てを包み込んで愛してくれて・・・本当に四六時中ずっと・・・・]

[幸せ過ぎたのかも知れませんね。・・・昔も今も主人は自分の事なんか眼中に無くてあたしとそれから娘のことばかり考えて・・少し危なっかしいのに背伸びばかりするから心配で目が離せなくて]

[大好きな主人と・・愛するあの人と暮らしていたら・・あたし、余りの幸せにそれこそどっぷりと浸って酔っていたんでしょうね・・・時間が経つのも忘れて、気が付いたらもう17年が過ぎてましたわ・・・・]

響子さんも初めてこずえちゃんを前にして今までの自分の思いを打ち明けた。

[あたし・・・再婚するんです]

こずえちゃんは響子さんからの五代君に対する素直な・・愛情に溢れた告白に頷きながら再婚の事を切り出した。

 

[え!?]

[再婚・・・ですか?]

その言葉の意味に驚きを隠せない響子さん。

[ええ、今度中国に行く事になりました。新しく夫になる人と]

[ご主人の五代さんのお陰です。決心がついたのは]

[あたし、実は結婚に失敗して・・十年以上前に離婚して・・自分が歩んできた道が正しかったのかどうか、疑問に思うようになりました]

[一人身になって東京に帰って来てからずっとずっと、心のどこかにくすぶり続けていました]

[けど・・・あたしみたいな人でも結婚して欲しいって言う人が目の前に現れて・・・もう一度昔の自分を見詰め直したかったし、自信も取り戻したかった]

[だから・・・ご主人に逢う決意をしました]

[ご迷惑を掛けるかも知れないって、分かっていながら・・・]

こずえちゃんの言葉に黙って耳を傾ける響子さん。

[そうだったんですか。主人は・・・あの人ったら一言もそんなこと言わないから]

こずえちゃんの真実の告白に胸のつかえがすっと取れた感じのする響子さんだった。

[ふふ、おかしいですよね]

[こうやって若かりし頃の恋のライバルが火花も散らさず一緒に仲良くお茶してるなんて]

こずえちゃんはこの状況の場面に不思議な感覚を覚えたようだ。

 

[言われてみると確かにそうですわね]

その言葉に相槌を打つ響子さん。

[管理人さん、とってもお幸せそうですね・・五代さんっていう素敵な・・本当に優しい旦那様に愛されて]

響子さんを見詰めてこずえちゃんは言った。

 

[ええ、お陰さまで。本当に想像していた以上に・・心根からとっても優しくて、いつも凄く・・あたしという女そのものを大切にしてくれて・・](妻として恋人として、抱きたい女として・・・あたしを求めて深く愛してくれて)

[必ず傍に居てくれるから寂しい気持ちになんてさせない男の人で・・・あたし、昔も今も主人のことが大好きなまま・・・ですわ](夫として愛する彼氏として、あたしだけの男として求めて迫ると・・抱かれて可愛がられたいと甘えたら常に応じて愛してくれる人なの)

((これまで何千回も夫婦として愛し合っているから・・・主人の、五代の身体はあたしのもの・・あたしの身体も主人のもの・・そう確かめ合っているから、お互いに何も隠さないの。だから一緒に入浴したら身体を、性器を洗い合って必ずセックスにまで発展しているわ))

((だから本当に他人じゃなくて・・この世で一番身近な存在で正真正銘の夫婦だなって実感していて凄く幸せで嬉しいの・・・あたし))

 

“何か”が分かり合えた。

そんな共通の思いが二人の間にに流れたのは確かだ。

“ガチャ”

 

[ただいま~♪]

[あ、お客さん]

春香ちゃんが学校帰りに一刻館へ立ち寄った。

 

[こんにちは。初めまして。七尾こずえって言います、お母さんとお父さんの昔の知り合いです]

[お嬢さんの春香さんですね?うわ、ホントにお母さんそっくりですねえ]

[可愛らしくて羨ましいな]

春香ちゃんを見たこずえちゃんがにこやかに挨拶をした。

 

[あ、こんにちは。初めまして。五代春香です]

[はい、外見は母にそっくりとは言われます。でも内面は父の方にかなりそっくりなんです。ですからよく母に溜め息と共に嘆かれてます]

[”春香はホントにパパの娘ね。思考回路と行動パターンが丸っきり一緒だし、困った時の甘え方までそっくり同じね。遺伝子って凄いわ。やれやれ手間の掛かる事・・・”な~んて言われてしまうのが日常茶飯事なんです]

お客さんが来ているとは思わず、慌てて挨拶をするがそこは現代っ子。つい茶目っ気を出して自己紹介してしまう春香ちゃん。

 

[これ、春香。・・もう。お恥ずかしいですわ、お調子者の娘で]と娘を嗜める響子さん。

 

[いえいえ。でも、お子さんが居るっていいですね~。楽しくって]と、こずえちゃん。

[さて、そろそろ失礼しますね]

 

[あ、もっとゆっくりされていかれたらどうですか?]

 

[ごめんなさい、これから約束があるんです]

[雨も上がったようですし]

先ほど降っていた雨はあっさりと止んだようだ。

こずえちゃんは一刻館を後にしようとしていた。

[四谷さんや一の瀬さんにも宜しく言って下さいね]

と、管理人室の扉を開いて玄関を見たら・・・。

 

[かんぱ~い!]

“その当の本人たち”が酒盛りを始めようとしていた。

 

[おお、これはこれは・・こずえさんではありませんか!]

[わはは、久し振りだね~再会を祝して乾杯!]

二人はこずえちゃんを見るや酒の肴と見たのか缶ビールを手渡した。

 

[[もう、玄関先での酒盛りは厳禁です!何度言ったら分かるんですか!]](響子さん&春香ちゃん)

全く同時に声を揃えたように響子さんと春香ちゃんは二人に言った。二人ともしゃべり方と声がほとんど同じで聞き分けることが難しいくらいだ。

 

[親子だね~!相変わらず息もぴったり!]

四谷さんと一の瀬さんがそんな響子さんと春香ちゃんを茶化した。

 

[あはは、おっかし~。みなさん変わってないですね~]

その光景に懐かしい昔の記憶がオーバーラップしたこずえちゃん。

[かんぱ~い!]

結局なし崩し的に玄関先での酒盛りが始まってしまった・・・。

もっとも春香ちゃんだけは当然ながら参加せずに響子さんの実家へ退散していた。

 

日も傾き始めた夕方。

[あ、あたしそろそろ行かないと!]

時計を見て慌て出すこずえちゃん。

 

[あたしもお夕飯の支度しないと。春香と母が待ってるし]

宴会続行の二人を残してこずえちゃんと響子さんは一刻館を後にした。

緩やかな坂道を駅方向へと歩く二人。

[あ~、もう当分ここに来る事はないんだな~]

時計坂の景色を目蓋に焼き付けるようにこずえちゃんは歩いていた。

坂を降りる途中で二人は別れようとしていた。

 

[それじゃあここで]

[お幸せに]

響子さんは心の底からこずえちゃんの幸せを願った。

 

[管理人さんこそ。旦那様の五代さんと末永くお幸せに・・可愛いお嬢さんとも]

こずえちゃんは大きく手を振り、街中へ消えて行った。

 

それを見届けてから、いつもの実家の方角ではなく、夫の五代君が待つ”自宅”のマンションへと自然と足が向いていた響子さんだった。

 

 

 

以下、次回

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