※この作品はR-18です。

めぞん一刻 二次小説 流れる季節の中で   作:今津晶

14 / 55
第14話  優しい娘

ケンカして終わった昨日の夜。

春香ちゃんも響子さんもそれぞれの朝を迎えていた。

 

朝食時、親子の会話は無い。

 

[じゃあ、行って来るね]

 

[いってらっしゃい、あなた・・気を付けてね?]

響子さんは勤務先へ向かう夫の五代君に挨拶のキスをして送り出すと、家には夏休み中の春香ちゃんと二人きりだ。

 

何となく気まずい二人。

それでも響子さんも一刻館へと向かわないといけない。

出掛ける間際響子さんは春香ちゃんの部屋のドア越しに話し掛けた。

 

[春香、もし出かけて遅くなるのなら必ず電話入れるのよ]

 

[・・・・・・・・・・・・・]

 

部屋の向こうから返事は無い。

少し心残りだが、響子さんは一刻館へと向かった。

 

 

~一刻館~

 

いつものように炎天下の中、庭掃除に草むしりと精を出す響子さん。

もう木造の一刻館の建物はかなり限界に近づいており、数年後には大改修か建て直しをしないとならないだろうと、最近、修理業者の人に会うたびに言われている響子さん。

物干し台は腐り壊れるたびに業者を呼んで修理・・・。

シロアリ、雨漏り・・・なんとか今まではしのいできたが・・・。

先日一の瀬さんに言われたエアコンの事も頭をかすめ、どうしようかと悩んでいる最中だった。

亡くなった音無の義父から譲り受けた一刻館。

そのままの形で残していきたかったが、そろそろそうも言ってられない状況下になった。

経営的にも新しい住人が入居しないと厳しい。

長いこと6つの部屋のうち、4つは空き部屋になっている。

風呂なし、トイレは共同、もちろん空調なんてありゃしない。

余りにも現代の賃貸物件のニーズとはかけ離れてしまったのは痛い。

響子さんは一“管理人”であるのはもちろんだが、一“経営者”でもあるのだから。

一仕事終え、管理人室で寛ぐ響子さん。

春香ちゃんの事が心配でならない。

今日はもう早々に家に帰ろうかと思案していた時・・・。

[管理人さんいる~?]

と一の瀬さんがやって来た。

 

[何だい、不景気そうな顔をしてさあ]

[何かあったのかい?管理人さん?]

早々とその表情から一の瀬さんに嗅ぎつけられた響子さん。

 

[いえ、別に何も・・・]

取り敢えず否定してみせた響子さんだったが・・・。

 

[嘘をお言い、顔に出てるよ、何年の付き合いだと思ってるんだい?管理人さん]

あっさりと見透かされてしまう。

[一の瀬さんは何でもお見通しなんですねぇ]

一応否定はしてみたものの、やっぱりか・・・という反応の響子さん。

いや、もしかしたら・・・・・分かって欲しかったのかもしれない・・・一の瀬さんに。

[実は春香が昨日夜遅く帰ってきたんで注意したんです]

[だけど春香は理由も言わずに自分の部屋に閉じこもって・・・何やら誰かと携帯電話で話しているんですよ]

[どうしたらいいですかねえ?一の瀬さん]

響子さんは昨日の春香ちゃんとの一部始終を一の瀬さんに打ち明けた。

[ふ~ん、あたしゃ息子一人しかいないからねえ、それも出来の悪いのが]

[まあ、ウチの賢太郎と比較するのもなんだけどさあ、春香ちゃんはいい娘だよ]

[だから細かい事でぐちゃぐちゃ口出ししたりしないでもう少し様子見たらどうだい?]

一の瀬さんは言う。

[でも・・・このままだとなんか不安で・・・]

一の瀬さんの言葉にも不安を隠せない響子さん。

 

[まあ、焦らないことだね、管理人さん]

[五代君とよく相談してご覧よ。ね]

一の瀬さんはそれだけ言うと管理人室を去って行った。

 

~午後~

 

四谷さんはいつものように正体不明、行方不明。

一の瀬さんも出掛けたようなので、住人の居ない一刻館を響子さんはさっさと後にした。

が・・・その足は自宅の方に向かうのではなく、茶々丸へと・・・。

 

“カランカラ~ン♪”

 

[いらっしゃぁぁぁ~い]

店のドアを開くと気だるそうな朱美さんの声がした。

 

[こんにちは]

 

[あれ?管理人さんじゃない?ど~したの?こんな時間から?]

響子さんの姿に驚く朱美さん。

 

[い、いええ、ちょっとたまにはお茶しようかなあって]

と響子さんは朱美さんに言うものの・・。

 

[・・・・・・嘘だね]

朱美さんにも見透かされてしまう響子さん。

[な~んかあったの?管理人さん?]

朱美さんは単刀直入に尋ねてきた。

 

[いえ、その、別になにも・・・・]

切り出せない響子さん。

 

[どうせ管理人さんの尻に敷かれていればさぁ~大喜びの冴えない亭主の事か春香ちゃんの事じゃないの?]

朱美さんの一言に“ビクッ!”と反応してしまった響子さん。

 

[図星か・・・・]

してやったり!

にやりと笑う朱美さん。

 

~同じ時刻時計坂の商店街~

 

[へい、奥さん大吟醸!]

 

[まったく、このクソ暑い中楽しみといったらこれしかないよ]

一の瀬さんは商店街の行きつけの酒屋で好物の吟醸酒を買っている最中だった。

と、その時一の瀬さんの目にある人物が目に止まった。

 

[ん、春香ちゃんじゃないかい?あの横顔は]

めざとく見つけた視線の先には春香ちゃんの姿が・・・。

[どれどれ・・・]

買い物もそこそこに切り上げ、一の瀬さんは春香ちゃんの後を追った。

春香ちゃんはどこへ?

何をしに外出したのだろうか?

すると・・・。

春香ちゃんは駅で切符を買いあっさりと電車に乗り込んでしまった。

 

[あらら、春香ちゃんどこかへお出掛けなのかね?]

一の瀬さんは電車に春香ちゃんが乗るのを見届けると、一刻館へと戻って行った。

 

 

一方、茶々丸の響子さんは・・・。

 

[その、春香とちょっとケンカしてしまいまして・・・]

響子さんは朱美さんに春香ちゃんとケンカした事を話し始めた。

 

[原因は何なのよ?]

タバコに火をつけ響子さんの前にドカッと腰を下ろす朱美さん。

 

[その、春香の帰りが遅かったから注意したんですけど・・・]

 

[それが何日くらい?]

 

[あ、昨日だけです]

 

朱美さんは何日遅かったのかと響子さんに尋ねた。

響子さんは昨日だけだと答えると・・・。

 

[バッカじゃないの~?]

[今時1週間位帰ってこないのはザラとかテレビなんかでやってるのに・・たった1日遅かった位でどうしてそんな深刻な顔するの?]

[信じらんないわ~あたし]

朱美さんは響子さんに呆れてしまったようだ。

[そんな、あたし大げさでしょうか?]

朱美さんの態度に少しムッとした響子さんは言った。

 

[過保護よ、か・ほ・ご。・・・ベタベタと甘やかすのは愛する旦那の五代君にだけかと思ったらさぁ・・管理人さんって娘にも過保護なんだね?]

朱美さんは咥えたタバコの煙を吐きながら、過保護とばっさり切り捨てた。

 

[う・・・・・・・・・・・・]

何も言い返せない響子さん。

((誰も甘やかしていないって言いたいけど・・・自覚があたし足りないのかしら?))

((だけど家の二人って親子だけあって甘え方がそっくり同じだから・・ついあたしも許容範囲を越えなければ・・しょぼんとしている姿とかに弱くて、結局は甘やかしちゃってるのかな?))

((まあ、主人だったら阿吽の呼吸で分かることが多いから・・あたしの為に何かしようとして失敗して落ち込んでたら放っておけないし・・エッチなご奉仕して励ましてあげないと可哀想で・・・ううん、あたし自身が切なくて我慢出来ないから・・それに繋がっていると

以心伝心で正直な気持ちが伝わって来るから、ね・・。お互いに安心できるから・・・だからよ・・あたしたちが毎日じゃないけど、そう・・いつも愛し合ってセックスしているのは・・・それにはちゃんと、それだけじゃないけど理由があるのよ))

((春香は・・あたしがお腹を痛めて産んだ娘なんだし、同じ女として共感できることが多いし・・・会話の調子で、ある程度どころか殆ど機嫌だって把握できるわ。・・性格は夫にそっくりだし、何かおねだりとか甘える仕草なんて一緒だし・・・。甘えたい気分なんだなって

十中八九予想できるから・・・駄目な時は一刀両断したいんだけど、妥協できる箇所があったら妥協しちゃってるかな?))

((でも目に入るんだったら・・どうしても関わってしまうな。放任主義って性に合わないし・・・))

“カランカラ~ン♪”

 

[ただいま~]

マスターが帰って来た。

 

[お帰り~]

[管理人さんが来てるよ~]

朱美さんは響子さんが来ているとマスターに告げた。

 

[ああ、いらっしゃい。珍しいね、一人で来るなんて]

響子さんの登場にマスターは驚きを隠さなかった。

 

[聞いてよ~管理人さんさぁ~悩んでるらしいのよ!]

頼みもしないのにマスターにまで話を広げる朱美さん。

 

[あ、朱美さん!]

時すでに遅し。

 

[な~んか春香ちゃんの帰りが遅いだってさ]

[それもたった1日だけらしいんだわ、これが]

 

朱美さんの言葉を黙って聞いていたマスターは。

[うん、何となく分かるなあ。その気持ち]

意外にも響子さんの気持ちが理解できるという。

[私は知ってのとおりバツイチで、別れた女房との間に子供がいるんたが、会わせてもらえないんだよなあ、なかなか]

[で、たまに会いに行くと知らぬ間に大きくなってるんだよ]

[この前会った時も知らず知らずのうちに子供扱いしててねえ・・・子供から白い目で見られてしまったんだ]

[まあ、朱美との間には子供がいないから・・・朱美にはその感覚が理解出来ないと思うんだよ、管理人さん]

マスターは長年の別居生活の末、ようやく朱美さんと一緒になった。

しかし、朱美さんとの間に子供はいない。

だから朱美さんにはほんの些細な事かもしれないが、

“子を持つ親”から見ると見過ごせない事なのだとマスターは言いたかったのだろう。

マスターの話を黙って聞いている朱美さん。

すると・・・。

[あたし・・・洗い物でもするわ]

と立ち上がり、店の奥へと消えた。

 

[あ、朱美さん!]

その後を追おうとした響子さんだったが・・・。

 

[そっとして置いてあげてよ、お願いだから]

マスターは響子さんを引き留めた。

 

[ごめんなさい。あたし、朱美さんたちに波風立てるためにここに来たわけじゃ・・・]

ひたすらマスターに謝る響子さん。

 

[分かってるさ、管理人さん]

[朱美には後で言っておくから気にしないでいいよ]

気にしないで良いと笑顔さえ見せるマスター。

[それよりも春香ちゃんの事だけど・・・そろそろ大人として扱ってあげないといけない時期かも知れないなあ・・・]

[一番難しい年頃なんだろうけど、あんまり小うるさく注意するのも逆効果になりかねないよ、管理人さん]

マスターは春香ちゃんの事に話を向けた。

[心配する気持ちも分かるんだけど、もう少し様子見たほうがいいと思うよ]

[まあ、私の経験からしてだがね]

マスターの言葉には人生の重みが感じられた。

茶々丸を後にする響子さん。

[よし、マスターの言うようにもう少し様子を見てみるかな]

[春香を信じてあげないと、親として失格よね]

何となくマスターの言葉に迷いが吹っ切れたような感じがした響子さんだった。

 

 

茶々丸を後にした響子さんは、

夕飯の買い物に時計坂商店街の方へと向かった。

 

すると・・・。

[ああ、管理人さん、丁度いい所で会ったよ]

一の瀬さんと偶然にもばったり出くわした。

 

[あら、一の瀬さん。お買い物ですか?]

 

[ああ、いつもの大吟醸と夕飯の買出しにね]

軽く挨拶を交わす二人。

 

突然・・・。

[いや~お二人でお買い物ですか?]

[夕飯は何を作られるので?]

[私はスタミナがつくウナギなんかがいいですなあ~]

頼んでもいないのに、どこからともなく四谷さんが現れた。

 

[これからお出掛けですか?]

ピシッとスーツを着こなし、アタッシュケースを持っていた四谷さん。

どこへ行くのだろうか?

響子さんは取り敢えず聞いてみた。

 

が・・・・。

[それは秘密です。教えたげません]

やっぱりいつものようにはぐらかした。

[今日は帰りませんので。これにて失礼]

それだけ言い残すと、四谷さんは街中へ消えていった。

 

[長い付き合いだけと・・・あの人は本当に分かんないねぇ・・・]

 

[そうですわねえ・・・]

四谷さんの後ろ姿を見送りながら、二人は口を揃えた。

そして思い出したように一の瀬さんは切り出した。

[あ、そうそうさっき、駅で春香ちゃん見かけたよ!]

[電車に乗って何処かへ行ったみたいだね。ありゃあ]

とりあえず、見たまんまを響子さんに報告する一の瀬さんだが・・・。

少しばかり響子さんの困った顔が見てみたいとでも思ったのか、意地悪く大げさにゼスチャーして言ってみたのだが・・・。

[そうですか、分かりました]

意外にも響子さんは慌てたり、困惑したりはせずに、ニッコリと微笑んだだけだった。

意外な響子さんの反応に一の瀬さんは。

[さっきとだいぶ違うねえ]

[あれから何かあったのかい?]

と響子さんに尋ねたが・・・。

[ええ]

[大事なことを忘れていたようです、あたし]

[さ、買い物行かないと。それではまた明日]

響子さんは、一の瀬さんの質問を遮るように、それだけ言い残すと商店街に消えた。

 

~夕方 五代家~

家にはメモが1枚だけ残されていた。

“”少し遅くなるかもしれません 春香””

そのメモを見詰めて取り敢えず溜め息ひとつ、響子さん。

それに追い討ちをかけるように・・・。

 

“プルルルルルル~♪”

 

家の電話が鳴った。

[ん?春香かしら?]

電話口へと急ぐ響子さん。

 

[・・・・あ、そうですか。ごゆっくりどうぞ!]

どうやら春香ちゃんではなかったようだ。

 

[保母さんと親睦会?まったくもう!]

[今夜はあたしひとりかなあ・・・。]

どうやら亭主の五代君は保育園の保母さんと、親睦会に名を借りた飲み会らしい。

 

[・・・はあ・・・。]

更に溜め息ひとつ。

夕食の支度にもイマイチ気持ちが乗らない響子さん。

“プルルルルルル~♪”

 

と、そこへもう1本電話が掛かって来た。

[今度は誰?]

ぶつぶつ言いながら電話口へ向かう響子さん。

[・・・・春香?・・・・うん]

[・・・・そうなの・・・分かったわ]

電話の主は春香ちゃんだった。

数分ほど会話して、電話を切った響子さんは・・・。

[よし、今日は気合入れて美味しいもの作らないと!]

さっきとは別人のように張り切って台所へと向かった。

 

~それから1時間ほど経過~

 

[ただいま~♪]

春香ちゃんが帰宅した。

そして亭主はいないが(急な飲み会)、母と娘のいつもと変わらない夕食風景が。

[それで・・・お友達はどうするって?]

 

[うん・・・やっぱり2学期になったら転校するって]

 

[そう・・・それは大変ねえ]

 

[うん、せっかくとっても仲良くなれたのに・・・淋しいなあ・・・]

二人の会話風景。

何やら春香ちゃんの仲の良い友達の事を話しているようだ。

 

[でも仕方ないわねえ・・・ご両親のお仕事の都合じゃ]

と響子さん。

 

[こっちにいる親戚の家から通うことも考えたみたいだけど・・・]

[でもお父さんとお母さんに、もしかしたら、“東京には当分戻れないかもしれない”って言われて覚悟決めたみたい]

春香ちゃんは話す。

どうやら春香ちゃんの友達は、残念な事に2学期にご両親の都合で転校せざるを得ないらしい。

 

[それで色々と相談や悩みとか聞いてて・・・もうこれから頻繁にお喋り出来ないかと思うと余計に話が長くなっちゃって・・・]

[昨日は遅くなっちゃった。ごめんね、ママ]

春香ちゃんは昨日遅く帰宅したことの真相を響子さんに打ち明けたのだった。

[春香らしい]

春香ちゃんを見詰めて響子さんは言う。

 

[だってママの娘だもん]

少し照れて春香ちゃんは言う。

そんな春香ちゃんを見て響子さんは思う。

やはりマスターの言う通りだったと。

友達をとことん思いやる事のできる優しい娘。

そして自分の愛する娘。

“春香が自分の血を分けた娘で本当に良かった”・・・と。

昨夜、春香ちゃんのことが心配で眠れそうにない響子さんを五代君がベッドで凄く可愛がってくれたが・・その営みの後で『・・それに春香だって大丈夫だよ。甘えん坊だけど我が侭じゃなくて優しい娘だからね』と囁いて慰めてくれたのは正しかったのだ。

[ね、ママ。今日のおかず、あたしの大好物でとっても美味しいけど、パパも大好物よね]

[急な飲み会って、パパも惜しいことしたわよね。おかげであたし独占に近いもん]

[パパが帰って来たら言ってやろうかな?残念がるだろうな]

春香ちゃんは悪戯っぽく響子さんに話し掛ける。

 

[いいのよ。急に親睦会とかに行っちゃって飲みにいく人のことなんて]

[今日はあたしの料理、食べさせてあげないんだから]

響子さんも急に飲み会に行ってしまった五代君に今晩はちょっとだけ冷たい対応。

 

[うわっ!どうしたの、ママ?今日はいつもと違って珍しくパパに厳しいね]

[・・う~ん、あたしが同じこと言っても別に気にしないだろうけど・・”はっはっはっ”とか余裕で笑ってね・・・だけどママに言われたらなあ・・メチャメチャ落ち込んでホントに床から立ち上がれなくなっちゃうから、ママはそれ言っちゃ駄目だよ]

何気に父親のことを冷静に分析して対応に気をつけることを母親の響子さんに提案する春香ちゃん。

 

確かに五代君は夫として妻に常日頃から大変に優しいが、それは男らしい面からも多少はあるけれど・・ほとんどは響子さんにベタ惚れしているからとしか見えないし、それは事実である。

そこまで惚れ抜いている妻から極稀にだが、ついうっかりと彼女の虎の尾を踏んでしまい『もう知らない!・・知りません!』などと本気で怒らせてしまい厳しく冷たい態度を取られると落胆からか、その落ち込みようは半端ではない。

その前後不覚の状態から立ち直って反省の言葉を述べるのには少しだけ時間を要する。

ただし反省の言葉を述べながら響子さんに必死で甘えてくるのが大体で妻の両肩を掴んだり腕を体に絡めて来たりとソフトなスキンシップをしながら『もう・・響子・・(響子さぁん)・・・』と猫撫で声を上げるのが常だ。

頭に昇った血が冷めて来るまで響子さんも許したりしないが時間が経過してようやく怒りが収まると、『仕方ないわねぇ・・・全くもう・・』と何とか機嫌を直してくれて許しを与えるのが、それほど多くはないが日常茶飯事に近いものである。

そんな日の夜、夫婦の営みは激しい。五代君が必死でご機嫌取りと言うよりも響子さんへの愛情を訴える為にとことん必死で頑張るのであるから凄く激しく逞しくなるのは当然だ。

そして響子さんも五代君から如何に自分が愛されているかを実感することが出来るので、それでやっと拗ねたりして斜めになった機嫌を元通りに完璧に直してくれるし、以後は響子さんも夫に対して極端に優しくなる。

この繰り返しが五代君夫妻の日常の一部なのである。単なる昔から延々と続けられている痴話喧嘩の延長としか思えないものであるが・・・。

 

[そんなの分かってるわよ、春香。これ以上パパの世話を焼かされてたまるもんですか]

[立ち直るのに少し時間が掛かるからね、あの人って。・・だからあたしだって直接口では言わないわよ]

平然と述べる響子さん。

 

[妻と娘で好きなこと言われ放題だよね。だからパパは急に飲みになんか行っちゃいけないんだよね・・・]

 

[ふふふ、そうね]

五代君本人の目の前では言えない話題で大いに盛り上がる二人。

だがそんな二人は五代君のことが好きだからこそ話題にして楽しめるのであり、その事は暗黙の了解であった。

 

響子さんと春香ちゃんにとって食卓とは五代君を含めた三人で囲むものという認識が常にあるのだ。

最も賑やかにしゃべるのは春香ちゃん、その次が響子さん、五代君はあまり自分からはしゃべらずにもっぱら聞き役であるが・・・。

それを急に欠席するのは駄目でしょというのが今夜の響子さんと春香ちゃんの一致した意見だった。

 

夜遅くに帰宅した五代君を響子さんと春香ちゃんが仲良く二人で出迎えてくれて、夫として父親として安堵することが出来た。

詳しい事情も響子さんから伺い、五代君も嬉しくなった。

そして風呂に入る五代君に響子さんは昨夜のお礼も含めて・・・”何かリクエストはあるかしら?”とキスしながら悪戯っぽく呟くものだから、五代君も悪乗りしてしまい・・・”髪型は三つ網で束ねた感じがいいなぁ・・ヌード撮影に望む気分で準備して欲しいんだ・・”と

返答してしまった・・・・。それに対する響子さんからの返事は完全な同意であり・・”もう・・あなたったら・・・エッチで・・スケベなんだから・・しょうがない旦那様ね・・・”と、思わず小躍りしたくなる嬉しい台詞を返してくれた。

自分として色々とリクエストを言ったからには今夜も美しい妻を簡単になんて寝かすつもりないぞと覚悟して興奮を抑えながら入浴し、風呂から上がる五代君であった。見目麗しい女体を今宵も大いに堪能するぞ~と張り切って寝室のドアを開けた途端、目に入ったのは・・・。

長い綺麗な黒髪を三つ網で束ねて毛先を左肩越しに前に回して清楚で貞淑な・・美しい人妻としての印象を漂わせつつ、いつものピンク色のパジャマを来てベッドに腰掛けていたが・・夫の五代君の姿を確認するや立ち上がり、自らボタンに手を掛けてパジャマを脱いでいく・・

下着などは一切着ていなくて、すぐにそのまま・・きめ細かく滑らかな肌を何も隠さず素晴らしい全裸を晒して・・少し頬を染めながら、聖母のように微笑んでベッドの上で正座をして・・まるで本当に撮影に望むように待っていてくれる響子さんであった・・・。

最初は色んな破廉恥な格好をしてもらって眺めて楽しませて貰おうと不埒な考えでいた五代君も・・響子さんの後光が差すかのように綺麗な裸体には何も言葉を出すことが出来ずにまるで魅入られたように近付いてベッドに腰を下ろすと・・・

無言で接吻を交し、唇を密着させてから舌を情熱的にどんどんと絡めていき・・・果たして深夜の内に情事は終了するのかどうか、お互いに分からないまま濃厚に愛し合うことを暗黙の了解で始める夫婦・・・。

避妊などするつもりもないのでひょっとしたら孕ませてしまうかも知れないなと思ってしまう五代君と、それも少しばかり期待してしまう響子さんでした。緒戦では正常位だけでなく仰臥位でも様々な体位を試し激しく交わり、快感が高まったところで響子さんをイカせて膣内に

射精すると・・膣内の感触が気持ち良く、また愛する妻が締め付けを緩めてくれないので余韻を楽しんだ後、ようやく五代君がイチモツを引き抜いた時に『あんまり響子が綺麗で可愛くて・・良い匂いがしたんで、撮影するのも忘れて・・手篭めにしてしまったよ・・・・

折角おれ専属ヌードモデルの響子が・・きちんと準備してくれたのにな・・・』などと冗談ぽい口調ながら殆ど本気で呟くと・・・・。

『もう・・じゃあ・・あたしって・・・あなただけのヌードモデルで・・恥ずかしいポーズも披露する・・・あなただけの女、よね?』と響子さんも優しく健気に、だが妖艶な雰囲気も漂わせて言葉を紡ぐ。

それが本当に嬉しくて夫としては堪らない気分にさせられる。『勿論だよ、響子。君はおれだけの奥さんで最愛の彼女で・・唯一人の恋人だよ・・・だから響子の裸を全ておれが・・愛でるんだ・・・』とベタベタに甘い言葉を五代君も返してしまう。

『・・・うん、嬉しいわ。・・・だからね、次は手篭めにされた仕返し・・ううん、お返しに・・・・』と呟くと響子さんは夫の股間に頭を埋めると射精の直後で萎んだ夫のイチモツを頬擦りしたり、舌で舐め回したり唇でキスをして頬擦りする行為を交互に繰り広げて止めない。

その様子が、奉仕される行為に男のリビドーを刺激された五代君も元気に復活していく。

『んふぅ・・ん・・・うん・・あたし・・・あなたの精液・・飲みたい・・・わ。ねえ・・・ごっくんしたいの・・ダメ・・じゃないわよね・・・だから・・頂戴?』

『うぉ・・響子・・・ヌードモデルのご褒美だ・・口内に射精して飲ませてあげるよ・・・だから全部、飲み干してくれ・・・』

艶やかで滑らかな肌を惜し気も無く晒す美貌の女性から健気なお願いを言われては五代君も夫として、男として適えてあげない訳にはいかない。男が廃るというものだ。

五代君夫妻の熱い幸福な夜はなかなか容易には、今宵も更けていきそうにない。

 

 

 

以下、次回

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。