※この作品はR-18です。

めぞん一刻 二次小説 流れる季節の中で   作:今津晶

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第17話  突然の再会

[ああ、乾いた風]

[空も少し高くなったみたい・・・]

[夏も終わったのねえ・・・]

いつものように響子さんは、一刻館の庭先を掃除しながら空を見上げて季節の移ろいを感じていた。

家庭では愛する夫と娘との何事も無い平穏な日々が続く。

心配事は幸いなことに取り立ててない。

先日夫の実家に帰省した際、定食屋の跡継ぎ問題などで父と息子のちょっとした言い争いが発生したが響子さんと母親の取り成しで何とか事無きを得た。

 

帰京した日は遅かったので五代君も妻に感謝の言葉を言っただけで終わったが、翌日の夜はお礼の気持ちを込めてたっぷりと響子さんを寝床で可愛がってくれた。

彼女の好み・・夜の秘めた性癖を五代君も長年連れ添っているから相当に熟知しているのだ。好きな体位や前戯などを駆使してとにかく愛する妻である響子さんを満足させることに終始徹底した。

昨夜はその成果として何度も響子さんが性行為にて絶頂を感じた際に随喜の嬉し涙を何度も流すこととなり充実過ぎる夫婦の営みを堪能してもらうこととなった。

もっともおかげで響子さんの両乳房や腹部やお尻と身体全体にたくさんのキスマークが付けられてしまい間違っても銭湯などには行けない形になってしまった。

その件でちょっぴり抗議された夫である五代君が『・・・そう言えば昔おれが坂本の奴にだけどさ・・寝惚けて付けられたキスマークで響子が激怒して・・プールでホントに歯で肩とか噛み付かれたことがあったよね?』と予想外の弁明を言い出したりして・・・

響子さんも『もう・・そんな昔のこと・・・あたしが誤解したのは悪かったけど・・・・あなた・・ひょっとして・・・まだ・・怒ってるのかしら?』と俯きながら呟くものだから、その姿が可愛くて余計に五代君も張り切ってしまい・・・

『いやあ、怒るなんて全然、全然・・そう当時もね。・・だって嫉妬した響子が可愛くて・・・それにヤキモチ妬いてくれたことが嬉しくて。何かこう思い出してしまって・・ね』と本音を呟いて、響子さんの美麗な張りの有る素晴らしい乳房やむっちりと締まった臀部、

しなやかな脚部の付け根とかにキスマークを鮮やかに目一杯、それからもどんどん付けまくってしまったのだ。

一刻館に住んでいる頃だったら大変だった。今は風呂のあるマンション住まいだから問題が無いとは確かに言えるけれど・・・。

『もう・・愛してくれるのは・・・可愛がってくれる気持ちはとっても良く分かるんだけど・・・・限度があるの・・・ブラジャーやパンティでも隠せないし・・・ホント仕方ないなぁ・・・』と鏡台の前で大量のキスマークを確認しながら嘆きつつも

自分が愛する夫からとっても溺愛されていることが実感できて機嫌は本当のところ上々の響子さんであった。

((やっぱりあたし・・あの人と一緒に暮らさないと・・・駄目、絶対に駄目だわ・・。だって・・・一緒でないと結局・・ぐっすり安眠なんて出来ないし・・・朝起きた時に、あの人があたしの横に居てくれないと不安で・・嬉しくないの・・・寂し過ぎて・・))

((普段だって、その・・キスとか・・・色々とスキンシップして・・・その・・エッチしないと・・求め合ってセックスをして・・きっちり・・しっかりと身体を繋ぎ合わせて・・ちゃんと愛し合わないと・・恥ずかしい嬌声を何度も上げちゃうけど・・でもそれがいいの))

((裸体を見詰められて・・素肌を愛撫されて・・あの人の逞しいイチモツで貫かれて・・イカされないと・・精液を吐き出してもらわないと・・・うん・・生きてる実感がしないのよ・・・絶対に、ね・・・最近、何でだろう?・・フェラチオして口の中に射精してもらって・・))

((舌の上でしっかり味を堪能して・・喉越しにごくりと・・・あの人の精液を飲み干すのが・・不思議だけど・・・自分でも好きで・・お気に入りなの・・・顔に直接・・顔射されても愛情を感じるから・・別に構わないけど、やっぱり口内に射精されるほうが好き・・・))

((普通にセックスして・・膣内にたっぷりと射精してもらうことは絶対に欠かせないんだけど・・・それをあたしの子宮が求めているから・・でも何故かしら?・・上と下の口で飲み干すのが・・多分だけど・・・精神衛生上・・・・気分的にきっと・・あたし満足なのよね・・))

((結婚してから・・本当にほとんど毎日あたしを可愛がって愛してくれて・・・それにいつも優しく大切にしてくれて・・春香が嫉妬してしまうくらいに・・・あの娘が小さい頃は”パパばっかりずるい!もう、ママを独り占めしないで!”なんて真顔で不満言われたわね・・・))

((逆の表現でも言われたけど・・”ママばっかり、ずるいずるい!!パパを独り占めなんてしちゃダメぇ!!”・・なんて。そんな風に言われた夜は・・あたしたちの営みって濃厚で熱烈だったわね・・横で春香が睡眠中だったから・・声を潜めて・・喘ぐのも控えてだけどね))

((でも変な表現だけど・・あたしたちがお互いに独占し合っているって、娘からも認められたようで・・何かこう・・嬉しかったの。あの頃からかな?・・セックスが特別じゃなくて・・自然な営みって意識が芽生えたようで・・・あの人と夫婦なのが凄く嬉しくて仕方ないの))

((それにこの間は・・”君が歳を取らない証明するから、検査と計測”だなんて言い出して・・あたしのスリーサイズを測るからって裸に剥かれちゃって・・・巻尺を使ってたけど・・ホントに数値を測ったのかしら?・・だって18年前と同じ数値しか言わなかったから・・・))

((計測って言いながら恥毛とか性器も指で悪戯しながらだったから”真面目に計っているのかしら?”って疑問だったけれど・・あの人ったら・・イチモツを段々と勃起して骨みたいに硬くなって上向いていくから・・目が離せなくなって・・結局されるがままに・・貫かれたわね))

((か弱い女性を裸にひん剥いてスリーサイズを計測しながら乳房も性器も揉んだり弄ったりするから・・あの人も興奮して・・男性自身が怒髪天を抜く様ってあたしも・・あなたと一緒で欲情してしまうの・・直後のセックスが・・・凄く気持ち良くて嬉し涙を零してしまったわ))

((あなたのオ×ン×ンとあたしの膣って刀と鞘の関係みたいにぴったりよね?って呟いたら・・”ああ、だから毎晩きっちりと嵌めて収めないとね”って・・露骨に・・だけど実現してくれてるから、つい・・あたしからも時々、嵌めてね?って恥ずかしいけどおねだりしてしまうの))

((事後に新しいブラとパンティーをプレゼントさせてよって・・あたしが妻でなければ立派なセクハラよ、もう。・・デザインだけじゃなくて肌触りが心地良いから結構高かったのに・・ホントに買ってくれて・・着ている姿を披露してよって言われた夜も逞しくて激しかったわ))

だから今夜はあたしからお返しにご奉仕じゃないけれど色々と・・・とも内心では考えていたくらいなのだ。

 

((前みたいにお医者さんごっこしてもいいんだけど・・それだと、あの人が主体だし・・・尿検査だ何て言って目の前で放尿させられて・・尿道を舐めて検査されちゃうし・・・患者のあたしは常に乳首も性器も晒して貰わないとなんて破廉恥な言葉を言われてしまうから・・))

((今夜あの人にはベッドで腰掛けてもらって・・あたしが後ろ向きで姫穴を指で広げて・・・夫の、あの人のイチモツを探り当てながら挿入していく・・とっても破廉恥な体勢・・性器も肛門も丸見えで・・・))

((・・すっごく恥ずかしいけれど、あたしの体重で徐々に深く呑みこんで行く感覚・・本音では快感に近くて気持ち良いのよね・・・前にさせられた時は、破廉恥・・すけべ・・えっち・・変態って・・・喘ぎながら、つい言っちゃったけど・・))

((でもとっても興奮して物凄く喜んでくれたから・・・今日はそれで・・してあげようかな?・・どうしよう・・・それとも・・また丸太ん棒みたいに寝そべってもらって・・・あたしが全部動いて・・・でもそれだとあたしの恥ずかしい箇所が丸見えで・・・・))

((そんな騎乗位だと・・あの人から・・結合部分が・・また絶景だって言われて・・・・でも腰の動きがあたし・・停まらないかも・・・・そしたら・・おねだりしちゃうな・・射精されるの・・・またあたしが・・口走っちゃうのかな・・・ちょっと・・はしたないかしら?))

((・・でも溺愛の程度なら・・・あたしの方があの人よりも溺愛してるんだから・・・ちょっと今夜は・・本気で証明したい、な・・・・))

夫の五代君に夫婦の営みで如何にして喜んでもらうかを考えて想像するのは響子さんにとって実は頬を染め表情が綻んで柔らかくなる瞬間なのだ。

結局この夜は最初に優しく情熱を込めてフェラチオで勃起させた五代君にベッドの横にて仁王立ちしてもらいベッドでうつ伏せの響子さんが腰を持ち上げて夫のイチモツを背後から探り当て、自ら腰を押し込んで挿入する形でピストン運動を行い(ただし五代君は動かず)

射精してもらうまで全て響子さんだけが動くという大変に破廉恥で倒錯的かも知れない性行為で幕を開け、それに大歓喜した夫から健気な妻をそれから後は又思い切り可愛がることとなり再び大量のキスマークを身体中に跡を付けられてしまった美貌の愛妻・響子さんでした。

『あぁ・・あたしの胸あなたのキスマークだらけで・・こんな恥ずかしい乳房・・他の誰にも、あなたにしか見せられないわ』と頬を染め上目遣いで呟く響子さんに対して、夫の五代君は『うん、おれ以外誰にも見せないよ』と宣言しながら妻の乳首に接吻するものだから・・・

本当に益々ラブラブ状態が発展してしまった五代裕作・響子夫妻でした。そして夫から今度は君が女医さんとか看護婦さんでお医者さんごっこしてもいいからしようよと呟かれて・・・その痴態を想像して、顔を真っ赤に染め上げてしまう響子さん・・。

でも内心では彼女もドキドキと心がときめいてしまうのが止まらない様子であったのです。

((あたしが女医さんか看護婦さんで、あの人が患者・・診察するとか看護するとか言って、あたしとんでもないこと・・・しちゃいそう。・・変な妄想・・・自分でも破廉恥で恥ずかしい想像しちゃうわ・・ホント))

((身体を拭いてあげるって言いつつ・・タオルだけじゃなくて・・あの人の大切な箇所は・・・その、性器とか・・あそこの毛も・・金玉袋とかは・・あたしの舌で直接に舐め上げて綺麗にしてあげないと・・・頬擦りもしてあげたいな・・いつも喜んでくれるし・・・接吻もね))

((いつもの朝だと服を着てるけど・・生乳でオッパイ爆弾で窒息させるみたいにあの人の顔を包み込んでから・・・パイズリして乳房でイチモツの元気さを確認して・・手コキしてからフェラチオしてあげようかな?・・たまには一回目の射精から呑み干してみようかしら・・))

((最初だと量も多いけど・・口内と舌でじっくり味わえるから・・喉越しでも堪能できそうね・・・あの人の精液で健康診断できるって言い切ろうかな。・・うん、でも一滴も漏らさないわよ・・竿に残ってても全部綺麗に舐め上げちゃうから、ね・・あなた、覚悟しててね))

((尿検査はどうしよう?・・尿道を舐めるのはいいんだけど・・全部の尿は飲めないわね・・・少しくらいなら喉越しに・・うん、きっと飲めるわ。・・あの人もあたしの尿を前に飲んでくれたことあるし・・ちょっとだけだったけど・・・あたしも挑戦して・・みようかな?))

((でもそんなエッチなママゴトみたいな戯れの後で・・思いっ切り、あの人に甘えてしまいそう・・・逞しく貫いて突き立ててもらって・・腰が抜けるほど可愛がって・・愛して貰ったら・・・また立ち上がれなくなっちゃうかしら?・・キスマークも目一杯に跡付けられて・・))

((腰が抜けちゃうと身動きなんて出来ないから・・あの人に好きなだけ、されるがままに・・・乳房にもお尻にも・・脚の付け根にも・・べったり、ぎゅっとキスされて・・でも本当は嫌じゃない・・のよね・・・だって溺愛してくれている愛情の証しだもの))

巷のバカップルなんて遥かに超越した凄まじいまでの仲睦まじさを毎日のように発揮してしまっている響子さんと五代君。娘の春香ちゃんの呆れ果てる頭痛も止みそうにない。

 

しかしながら、自分の家庭内ではないけれど・・ひとつ心に引っ掛かるもの。

それは・・・。

以前訪問した音無の家での義理の姉の言葉。

“”社会に出てからがもう大変なのよ・・・響子さん””

そう、郁子ちゃんの事であった。

 

響子さんはだいぶ前から気にはなりつつも、彼女も仕事を持った一人前の大人なんだし、

自分が口を挟む事じゃないだろうと考えていたのだが、そんな郁子ちゃんとふいに再会する機会がやって来た。

それは響子さんが、高校時代の友人と久し振りに恵比寿で待ち合わせ、お茶をした時の事であった。

夕方、ラッシュの時間もそろそろ始まろうかと言う時刻。

響子さんが友人たちとお茶し終わって駅方向へと歩いていると、反対方向から、見覚えのある姿が通り過ぎようとしていた。

それに気づいた響子さんは。

[あ、郁子ちゃん?郁子ちゃんじゃない?]

すれ違いざま、その女性に声をかけた。

[おばさま?・・・響子おばさま?]

声に気づいて振り返った女性は。

紛れもなく郁子ちゃんだった。

 

“”おばさま””

本当に懐かしい響きだ。

響子さんが音無家に嫁いだ時から“”おばさま””と呼んでいた郁子ちゃん。

そんな郁子ちゃんも、学生時代の面影を残しつつ、見違えるまでに綺麗に洗練され、そして大人の女性へと成長した。

キャリアウーマンのような貫禄と言うか、風貌さえ滲み出ていた。

[あ、ごめんなさい。先に帰ってもらえるかしら?]

 

[うん、分かったわ。響子、また近いうちに]

 

[さよなら]

響子さんは高校時代の友人とここで別れた。

[郁子ちゃん、久し振りね]

 

[おばさまこそ]

互いに笑顔で挨拶を交わす響子さんと郁子ちゃん。

 

[今少し時間あるかしら?]

響子さんは郁子ちゃんと久し振りに少し話がしたいと思い、郁子ちゃんに尋ねてみたが。

 

[ごめんなさい、おばさま]

[今から会社に帰って急いで仕上げないといけない書類があるの]

仕事中の郁子ちゃんはそう言うと、足早に会社のある方向に向けて歩き出そうとしたが、

[あ!これ、あたしの名刺・・・それと携帯の番号]

[もし良かったら暇な時にでもまた連絡してね]

郁子ちゃんはバックから名刺を取り出して響子さんに渡した。

“頑張ってるなあ・・・”

会社へと戻る郁子ちゃんの後ろ姿を見送りながら、響子さんは受けった名刺を眺めて、駅方向に歩き出した。

それから数日、何事もなく時間は過ぎた。

住人は相変わらずで、四谷さんはいつものように神出鬼没。

週に1~2日程度一刻館を留守にするのであった。

響子さんは郁子ちゃんからもらった名刺を自宅に帰ってからも、どうしてやろうか考えていた。

悪戯に忙しそうな郁子ちゃんに電話するのも悪いかな?

などと思いつつも、せっかく連絡先教えてくれたのに電話しないのも失礼かな?

と、たった一枚の名刺を眺めては一人溜め息を吐いていた。

それでもやっぱり郁子ちゃんといろいろ話がしてみたいと言う欲求が勝り、響子さんは郁子ちゃんの携帯へと電話した。

そして郁子ちゃんと二人で、この前高校時代の友達とお茶をした恵比寿で夜に、食事をする約束をした。

待ち合わせ場所には几帳面な響子さんが、待ち合わせ時間の20分も前からやって来ていた。

約束の時間を10分ほど過ぎ、響子さんが時計に視線を落とした所で、

[ごめんなさい、おばさま!]

[もっと早く抜けられるはずだったんだけど、何か時間過ぎちゃって]

少し息を荒げて郁子ちゃんは響子さんの目の前に現れた。

 

[郁子ちゃん、何も慌てなくても全然良かったのに]

響子さんがそんな郁子ちゃんを見て笑う。

[ごめんなさい、さっ、行きましょ、おばさま]

郁子ちゃんは昔と変わらない可愛らしい笑顔で、響子さんを自分の行きつけだと言う店の方へと手招きした。

果たしてこれから二人はどんな話を繰り広げるのだろうか?

 

 

[ごめんなさい、さっ、行きましょ、おばさま]

郁子ちゃんは急いで仕事を切り上げて響子さんと行きつけの店へと向かった。

恵比寿という土地柄、お洒落な店が建ち並ぶ。

 

駅から程なく歩くと、郁子ちゃんはお洒落な外観の店へと響子さんを手招きした。

[ここ、あたしが仕事帰りとかによく寄るのよ、おばさま]

[変に気取らないけど料理もお酒も美味しいし、雰囲気も良いお店なの]

郁子ちゃんはこのお店の常連のようだ。

“いらっしゃいませ~”

店員が出迎える。

店内は若い女性客やセンスのいいカップルでごった返している。

お洒落なイタリアンテイストの店のせいなのか、男性客の比率は非常に低い。

少し暗めのライティングが、シックで落ち着いたムードを演出する。

テーブル席に座り、オーダーをする二人。

メニューを見ながら郁子ちゃんが、

[うーん・・・おばさまは何がいいかしら?]

と迷う仕草。

 

[郁子ちゃんにお任せするわ]

完全に郁子ちゃんに任せる響子さん。

[不思議なものねえ]

[こうして郁子ちゃんと二人でこんなお洒落なお店で食事する日が来るなんて]

[音無家で生活していた時は夢にも思わなかったわ]

もういつの頃の話だろう。

響子さんが惣一郎さんや郁子ちゃんと一緒に暮らしていたのは・・・。

年号は昭和から平成へと。

20世紀は21世紀へと。

移り変わっていった。

響子さんも五代君と再婚を果たし音無家の籍を離れ、夫婦の間に産まれた娘はもう高校生にまで成長している。

響子さんが音無家にいた頃。

郁子ちゃんはまだ小学生だった。

それが今では・・・。

とても綺麗な大人の女性となって自分の目の前にいる。

少しばかり感慨深げな響子さんではあった。

響子さんはどうやって、“義理の姉が気にしていた事“を切り出そうかと思案していた。

しかし・・・。

目の前の郁子ちゃんを見る限り、義理の姉の言葉は少しばかり考え過ぎじゃないかしら?

そんな風に思い始めた響子さんだった。

それに和やかなこの場の雰囲気を壊すような話は切り出したくないし。

このままお互い気持ち良く別れた方がいいような気もする。

食事とお酒が運ばれてきて、昔話に花が咲く。

音無家に響子さんを惣一郎さんが連れてきた時の話や、五代君が郁子ちゃんの家庭教師をしていたときの話。

あの日、あの時を思い出すように。

二人は会話を楽しみ、店を後にした。

話が結構盛り上がり、それに比例してお酒の量もちょっと多め。

とは言っても呑んでいたのはほとんど郁子ちゃんだったが。

店を出て響子さんはちょっと心に引っ掛かるものを感じた。

 

会話はとても楽しく弾んだのだが、話題が最近自分の事になると黙り込んだり、話を別の方に変えようとする不自然の態度を郁子ちゃんは見せていた。

“あたしの気のせいだろね。きっと”

義理の姉の言葉が固定観念みたいなものを自分自身に植え付けていたのも。

響子さんはそう思うようにした。

酔いが回ってちょっと足元のおぼつかない郁子ちゃん。

時刻は22時少し前。

響子さんもそろそろ家へと帰らないといけない。

しかし、このまま一人で郁子ちゃんを帰すのはちょっと危険な感じが・・・。

響子さんはひとつの決断をした。

バックから携帯を取り出し何処かへ電話を掛け始めた。

[あ、もしもしあなた。響子です]

[うん、今郁子ちゃんと一緒なんだけど、ちょっと郁子ちゃんお酒呑みすぎたようなの]

[このまま一人で帰すのは心配だから、うん、途中まで着いて行って、電車が無いようなら、適当な所でタクシー拾って帰るわ]

[ええ、春香にも伝えておいて。遅くなると思うけど・・・はい、じゃあ]

響子さんは送れる所まで郁子ちゃんを送って行く事にした。

そんな所が響子さんの優しさである。

[さ、郁子ちゃん帰りましょ]

響子さんが送ると決めたのはいいが・・・。

 

[だめ、おばさま、もう一軒行くの!]

郁子ちゃんはまだ呑み足りないらしい。

それでも適当になだめて郁子ちゃんと電車に乗る響子さん。

 

“はあ、あたし何やってんだろ?”

郁子ちゃんに振り回されて、響子さんも溜め息の一つも出るというもの。

電車は帰宅ラッシュの真っ最中。

通勤ラッシュなんかにまるで縁のなかった響子さん。

ドアが開くたびの押し合いへし合いにうんざりの様子。

“もうやだ!早く帰りたいなあ。”

偽らざる本音だろう・・・。

一方の郁子ちゃんはほろ酔い気分でいい感じ。

視線は宙を彷徨っている。

何とかかんとか郁子ちゃんの住む駅に着いた二人。

 

[ああ、もうこんな時間!急いで帰らないと]

[郁子ちゃんここからは一人で帰れるわね?]

郁子ちゃんに一人で帰るように言うと響子さんは急いで改札に戻ろうとしたが・・・。

[おばさま・・・帰っちゃうの?]

[淋しいなあ・・・]

[誰も居ない部屋に帰るの・・・]

[おばさま・・・帰っちゃうんだ・・・]

子供のように拗ねて、響子さんを困らす郁子ちゃん。

お酒が入っているからなのか、それとも酔いも冷めて本心からなのか・・・。

図りかねてしまうけれど。

 

そんな郁子ちゃんを見て黙って背を向け帰る事が出来ない響子さん。

“やはり最近、彼女には何かあったんだろうな”

“人にはたやすく話せないような事が”

響子さんは今の郁子ちゃんから何かを感じ取ったようだ。

[仕方ないわねえ、家まで送ったらすぐ帰るわよ]

響子さんは郁子ちゃんの元へと歩み寄り、そのまま二人して駅前からタクシーに乗り郁子ちゃんの住むアパートへと向かった。

 

 

 

以下、次回

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