[ふぁぁぁぁ・・・眠いなあ]
二階堂君の研修も3日目が終わろうとしていた。
保育園の仕事と、“夜のバイト”の掛け持ちで、かなりお疲れのような五代君。
そこへ一人の若くて綺麗な保母さんが現れた。最近紹介されて入った新人さんだ。
まるで若かりし頃の響子さんに良く似ている。雰囲気までそっくりだ。スタイルもなかなか良い美人である。
どこの職場でも面接に応じれば即採用したくなるくらいの魅力的な女性だ。
[あの、園長]
[失礼ですが昨日の夜なんですけど・・・]
[もしかしてキャバクラの呼び込みとかされてませんでした?]
“ビク!”
“見られたか?ついに見られたか?”
“それも保母さんに”
思い切り顔が引き攣る五代君。
[やっあの、その・・・・]
何と言って良いのか頭の中が混乱しまくる五代君。
しどろもどろだ。
何とか誤解を解こうとする五代君だったが・・・。
[園長さんって・・・大変なんですね]
その保母さんはそれだけ言うと、あっさり持ち場へと戻って行った。
“助かったのか?俺?”
ひとまず胸を撫で下ろした五代君だったが・・・・。
[飯岡さん、そろそろいいんじゃないですか?]
[僕も困るんですよ]
[職場の人間に見られやしないかとヒヤヒヤもんで]
その日の夜、五代君は飯岡に二階堂君の付き添いはもう出来ないと言い出した。
いくら二階堂君の為とは言っても、自分の身を危険に晒してまで付き合うには限度というものがある。
保育園の園児の保護者に知られるのも大問題だが、何よりも、妻である響子さんに知られるのが一番辛いしまずい。
二階堂君にも固く自分が付き添いで指導している事は口止めしている五代君だった。
[おう五代]
[俺は別にいいんだぜ?]
[アイツが正式採用されなくたってよ]
[お前から見てアイツ一人前になったと言えるか?]
[俺の前に胸張って送り出せるか?]
飯岡の言葉が五代君に突き刺さる。
[・・・・・・・・・・・・・・]
飯岡の問いに対して返す言葉の無い五代君。
[五代、おめえ自分の保身しか考えてねえだろ?]
[表向き良い人演じちゃいるが、内心はアイツの事なんかこれっぽっちも考えてね~だろ?]
[昔のオメーはそんな奴じゃなかった]
[違うか?]
[五代よ?]
飯岡の言う通りだった。
若かりし頃、がむしゃらに日々を生きていた五代君。
他人のために自分を犠牲にする事もいとわなかった。馬鹿が付くほどお人好しとからかわれながらも・・・。
しかし今は愛する妻と娘が居る大事な掛け替えの無い家庭を持ち、仕事も保育園の園長という肩書きまで付いてそれなりの社会的に信頼される地位にある。
“時間と共に背負う物”が増えてしまった変わりに、“守る事”ばかりが頭を支配し、
二階堂君が正式に採用される事よりも、“これが見付つかったら自分はどうなるのか?”
それにばかりに心を奪われてしまった。
五代君は表向き二階堂君の事を心配しながらも、自分の保身にばかり腐心している今の情けない姿が自分の心に映し出された。
[誰かに見付かって困る事あんのか?]
[人助けだろ?]
[だったら胸張ってやれよ]
[知り合いみたいなのが来たらコソコソ隠れるのは止めてよお]
何もやましい事はない。
人助けなのだから。
飯岡は二階堂君だけではなく、五代君の動きもしっかりと見ていたのだ。
[あと3日時間をやる]
[おめえが“大丈夫です”と太鼓判押すまで研修をしろ]
[採用、不採用は全ておめえに任すからよ]
[頼んだぜ!]
飯岡は何だかんだ言いながらも五代君に全幅の信頼を置いていた。
だからこそ、二階堂君の採否の全てを五代君に預けたのだった。
しかし猶予期間はあと3日。
その間に五代君は二階堂君をきちんと送り出せるようにしなければならない。
堂々と“大丈夫です”と胸を張って。
[よおし、行くぜ!]
五代君は気合を入れ直した。
今はただ、心から二階堂君の力になろうと。
[今日も頑張るぞ二階堂!]
[先輩今日はかなり気合入ってますね!]
二階堂君と寒空の下、街頭へと出陣しようとした五代君。
[お早ようございます]
その時、一人のバニースーツ姿をした女の子が五代君に挨拶をした。
気合を入れ直して二階堂君と実地研修へ向かおうとしていた。
[新入りですよ、五代さん]
隣にいた女の子が紹介してくれた。
[あ、そうなんですか]
[よろし・・・・ク??????ぅぅぅぅ!!!???]
五代君はその女の子の顔をよく見て絶句した。
隣にいた女の子が紹介してくれたその人は・・・とても見覚えのある顔だった。
[どうも、“初めまして”]
[宜しくお願い致します]
今日の昼、五代君に夜の指導を見た事をこっそり知らせに来た、あの可愛い保母さんだった。
その子は五代君と顔見知りだという事を隠してくれている。
理由は分からないが。
[あ、ど、ど、ど、どうも]
突然の事に声が震える五代君。
[さ、い、行こうか、二階堂]
気を取り直して研修へと向かう五代君。
[“先輩”、さっきの女の子となんかあんですか?]
二階堂君が二人のやり取りを見てニヤニヤと笑う。
[な、ないよ!]
顔を真っ赤にして否定する五代君。
[怪しいなあ~!]
[浮気相手ですか?]
[よく見ると管理人さんの独身時代に雰囲気が似てますよね?なかなか可愛くて美人だしスタイルもいいから]
調子に乗って冷やかす二階堂君。
[こら、いい加減にしないと今夜もダメ出しだぞ!]
[わっ分かりましたよ五代さん、そんなムキにならなくても]
かなり本気で怒り出した五代君を見て、二階堂君は冷やかすのを止めた。
~閉店後~
時計の針は深夜零時を回っていた。
[お疲れ様~!]
[ふう、長い一日が終わった]
[まあ後二日か]
[こんな生活も]
朝から保育園との掛け持ちでお疲れの五代君。
背中を丸めて家路に着こうとしていた。
その時だった。
[園長♪]
誰かが声を掛けて来た。
若い女の人の声だ。
振り返ると・・・。
[き、君・・・どうして?]
“例の綺麗な保母さん”だった。
[園長、いいえ、キャバクラバニーの五代“指導員”さん]
[あたしには君じゃなくて・・]
[ちゃんと百瀬奈津美という名前があるんですよ。忘れちゃいましたか?職場の部下なのに、悲しいなぁ]
保母さんの名前は百瀬奈津美。
振り返った五代君の近くにわざと擦り寄って悪戯っぽく笑った。
[あ、い、いや。もも、もちろんフルネームで知っているよ、百瀬さん]
[だけど一体全体どうしてこんな所に?]
積極的に五代君に近寄ってくる百瀬さんに翻弄される五代君。
何故に五代君の“仮の職場”まで追ってきたのだろうか?
“”“まっまさか!!!”“”
五代君は一人で“お得意の妄想”に走った。
“”“ひょっとして俺に好意を寄せてるのかな?”“”
勝手に妄想を膨らませ鼻の下を伸ばす五代君。ましてや百瀬さんは若い頃の響子さんにそっくりで、はっきり言って五代君のモロに好みの女性だ。
20代の響子さんは本当に物凄く魅力的で綺麗だった。絶品とも言える位に美しい女性であった。いや今でも十分に綺麗で容色も衰えていないと言い切れるが、それでもピチピチした若さは強力な武器だ。
たとえ響子さんのような麗しの女性と言えども誰しも年齢差を超越するのは至難の業なのである。
妻の響子さんを愛する気持ちに変化など全く無いが、それでもこんな若くて可愛いピチピチした女性に積極的に迫られたらおれは拒否できるんだろうか?・・などと勝手に自問自答してしまう五代園長さん。
そう、誰しも若くて可愛い女の子に言い寄られでもしたら・・・どんな男だって悪い気がする筈などあるはずも無い。
だから妄想するのは五代君の専売特許では決してないのだが・・・。
[お休みなさい、また明日お会いしましょう]
[五代指導員さん♪]
五代君が勝手に妄想に激走している最中、百瀬さんはタクシーを拾って帰っていた。
[あ、も、百瀬さん!]
“ブウ~ン”
百瀬さんを乗せたタクシーは走り去っていった。
[あはは、何を期待してんだろう?おれって馬鹿みたいだな・・・・]
頭を掻きむしりながら、五代君は自宅へと帰っていった。
~そして深夜帰宅した五代君~
コソコソと泥棒のように静かに玄関を開けて入って行ったが・・・。
[あなた!]
[今日もまたずいぶんと“遅いのねえ”?]
響子さんが仁王立ちして待ち構えていた。目付きも普段と異なり逆立っていて怖さもまた格別だ。
“遅いのねえ”の部分にはかなり多くのトゲがあり、疑惑の眼差しを夫に向けていた。五代君は例えが悪いが蛇に睨まれた蛙の状態になってしまった。
既に怒りの初期段階は越えてしまっている。沸点まで行かないようにもうそろそろ怒りを解かないと非常にまずい!まずい!まずい!
五代君の心の非常警報装置は危険信号を黄色でも赤色でも盛んに発令していたが・・それを解除する手立てが今のところ無いのだ。
[やっだから、二階堂の・・・]
必死に弁解をしようとする五代君だったが・・・。
[嘘は聞きたくありません]
[二階堂さんに聞いたら今は一人で活動されていると言ってたわ]
[ここ数日こんな夜中まで、どこで何をしてるの?]
[あたしに“言えない事”でもしてるんですか?]
[今日はもうこれ以上言いません]
[お休みなさい]
ここ数日理由も告げず深夜に帰宅する夫に対して、一刀両断!そして大いに不信感を露わにする響子さん。
五代君は二階堂君の職探しのためと連日言い訳していたが・・・全然納得してもらえていない。
自分の職場と職業に酒場での接待などの項目はあろうはずもなく、誤魔化すにも材料が少な過ぎてネタ切れだ。
“二階堂の奴!”
“響子に何て説明したんだ?”
“あんの野郎、明日とっちめてやる!”
~翌朝~
[行って来ます・・・・。]
玄関に五代君の声が空しく響く。
“[いってらっしゃい!]”
と言う響子さんのいつもの明るくて優しい、とっても心地良い声は残念ながら聞こえて来なかった。それだけで五代君の疲労感は倍増だ。
~しいの実保育園~
[はぁ・・・・・]
朝から情けない溜め息ばかり吐く五代君。
[“お疲れのようですね”]
[コーヒーでも入れましょうか?園長]
そこへ現れたのが百瀬さんだ。
[あ、ありがとう、も、百瀬さん]
まともに彼女の顔が見れない五代君。
[また・・・今夜ですね]
[頑張りましょ♪]
百瀬さんはコーヒーを入れると、五代君の耳元でそっと囁くのであった。
((まるでこれじゃあ不倫の合図みたいだよな・・・本当に参ったなあ))
五代君の心が休まる日々は戻ってくれるのだろうか?
~久々の一刻館~
<管理人室>
[全くもう、一体あんな遅くまで何してんのかしら?]
[二階堂さんは知らないって言うし・・・]
響子さんはテレビを見ながら悶々としていた。夫から誤魔化されるのが嫌で昨夜は夫婦の営みを最初から拒絶して先に寝てしまったので今一つ肉体的にも精神的にも面白くない。
お休み、お目覚め、お見送りのキスもしなかったので夫の身体に触れていないのが調子の出ない原因と分かっているが自分から迫るのも悔しくて気分が乗らない。
((何よ・・ホントだったら一昨日みたいに簡単に寝かせてもらえない位のこと期待してたのに・・・あんな風に・・逞しく・・・一度イカせてくれたら・・あの恥ずかしい格好の姿勢・・ま、まんぐり返し?だったかしら・・でも良かったのに・・・全くもう!))
((あの格好だと好きなだけ・・あの人ったら指であたしの膣を弄り放題だから・・色々と刺激されちゃって・・・恥骨とか。・・凄くその・・濡れちゃうし、あの人のイチモツを挿入されるともう・・とっても気持ち良く感じちゃうから・・・実は嫌じゃない・・の))
((この前みたいに””響子は歳なんか取らないし綺麗だから嬉しいよ””って合体して繋がっている時に乳房を鷲掴みされて揉まれながら囁かれた時なんて・・それこそ子宮が切なくて、きゅうんと疼いてしまった記憶が恥ずかしくて・・でも快感で堪らなかったから・・))
((あの次の日なんて一日中・・身体の内部からじんとして充実感が味わえたのに・・・だからその晩、あたしから求めて甘えたし・・凄く喜んでくれて色々と思う存分に可愛がってくれて・・・・ちょっとベッドから一人で立ち上がれなくなる位だったのにな・・))
((ちゃんといつもみたいに可愛がってくれたら・・たっぷりイカせてくれたら・・・また・・・ヌードモデルみたいに恥ずかしいポーズだって・・・して欲しいんだったら・・その・・・披露したのに・・・あんなに破廉恥で恥ずかしい和式便器に跨る姿勢だって・・・・))
((あの姿勢だと・・膣の中がどろどろでぬるぬるだったから、姫穴をくぱぁって指で開くだけであなたの精液が零れ落ちて””あなたってイケナイ人ね・・おね~さんにこんなことしてさせるなんて””って悪戯っぽく言っただけなのに、あなたったらもう一度勃起しちゃって・・・))
((・・””ああ、響子を・・君みたいな綺麗な憧れのお姉様をこんな風にいつも可愛がりたいから結婚したんだ””なんて言われて・・・また本当にもう一度可愛がってくれて、かなりエッチで破廉恥だけど凄く気持ち良いセックスを色々としてくれたのに・・・・ホントにもう!!))
色んなことでイライラが募ってしまっている響子さんであった。
[ちょっと邪魔するよ、管理人さん]
一の瀬さんが犬のような嗅覚で“何かを嗅ぎつけ”管理人室へやって来た。
[どうしたのさ?朝からカリカリして]
お約束のカップ酒を開けて響子さんに探りを入れる一の瀬さん。
[別に・・・何も・・・]
ブスッとして何も無いと言いたげな響子さん。
普段から人当たりが優しい彼女が感情を露わにしてしまうのは一途に溺愛している夫の五代君に関することだけで、それこそ本当に深い深い愛情の裏返しの表現なのである。
五代君に何かあって彼女の機嫌を損ねたのは明白だ。夫に今でも熱烈な関係の恋人みたいに(特に夜では)構ってもらえないと拗ねて不機嫌になってしまう少女か乙女のような一面が響子さんにはあるのだ。
((あたしはあの人と愛し合うのが・・エッチなことが好き・・・そう、セックスするのが大好き。毎日でもいいの・・ううん、今だって毎日でもしたい。・・でも義務じゃないの。義務的なセックスなんて嫌よ。あの人から男性として、あたしが女性として求められたいの))
((あたし・・主人のことが大好きなの・・本当に愛しているの。その愛する男性からセックスしたいと求められて・・抱かれて常に可愛がられたいわ。もうあたしも44歳だけど・・・主人から性的な対象と見られて・・ずっと女として愛されたいから・・これからも))
((あの人はあたしのことを””響子は歳なんか取らない。ずっと綺麗で可愛いままで美人だよ””って今でも時々本気で言ってくれる。そう言われるだけであたし・・背筋がぞくぞくして脳髄が痺れそうになるわ・・女冥利に尽きるもの。だからあの人の前では恋する乙女でいたい))
((主人を、五代のことを愛する乙女のままでいたいから・・もう10代や20代みたいに若くないのは自分でも分かっているけど、あたしなりに綺麗なままでいたい。まだ何とか昔のスタイルに近いままで肉体を身体を保っていられるのは主人の視線を常に意識しているから))
((・・それに大好きなあの人に貫かれて・・膣の奥底まで突っ込まれて、愛された証の精液をいつも体内に注ぎ込まれているから。膣内にも口内でも主人の男としての樹液をたっぷりと呑み込んでいるから・・肌も滑らかに艶めかしくなれるの・・そう信じているわ))
((だからお礼を込めてあたしからも主人の性器を舐めて口に含んでキスもするし、頬擦りだってして感謝と愛する気持ちを伝えているの。夫の・・あの人の逞しく勃起したお×ん×んを目にするだけで素敵と思ってしまうし・・可愛がられるのが堪らなく・・大好きなの))
((あたしにフェラチオさせる時は大体・・精液を飲み込ませるけど、時々あなたったら顔射することもあるわね?・・”響子を穢しているんじゃない・・おれのモノ、女にしてマーキングするんだ”・・なんて言いながら浴びせ掛けるから・・つい顔全体で受け止めてしまうわ))
((あたしは主人に服を下着を脱がされる瞬間が好き・・もちろん、それから可愛がられてセックスする時間が至福の時なの。乳房や性器を愛撫されて・・両脚を大きく開脚させられるのも、自分で開くこともあるわ。裸を全て晒す瞬間がドキドキして溜め息が熱くなるの))
((だってそれから主人に貫かれて逞しく可愛がって愛してくれるんですもの・・だから主人とセックスする夫婦の営みって本当に素敵で心地良い響きで・・・幸せな気持ちになれるから、きっと主人もそうだけど・・あたしにとって生き甲斐だわ))
不満を感じている妻に五代君も直ぐに気付くので普段であれば夫婦の営みを励めば解消されるのであるが、今回はちょと事情が違うので困りものだ。
[そうそう、四谷さんが昨日の夜・・]
[何か凄いモノを目撃したらしいよ?]
四谷さんは昨日スクープ級の出来事に遭遇したと一の瀬さんは言う。
[え?何ですか?]
[その“凄いモノ”って?]
[あたし、そんなに気にはならないですけど・・・]
響子さんは一の瀬さんに興味無さ気な表情をしながらも、気になるらしく、さり気なく尋ねてみた。
一体四谷さんが見たスクープ級の出来事とは?
以下、次回