※この作品はR-18です。

めぞん一刻 二次小説 流れる季節の中で   作:今津晶

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第22話  悪夢の宴

<一刻館の昼下がり>

 

“コンコン”

[二階堂さんいらっしゃいますか?]

響子さんは二階堂君の部屋をノックした。

 

“ガチャ”

[何ですか?管理人さん?]

二階堂君が出てきた。

 

[あの・・・もう一度お伺いしますけど・・・]

[二階堂さん、“お一人で”お仕事探されているんですよね?]

 

[あう、え~と、“基本的には一人”ですが、友達のツテとか、五代さんもなんか暇な時探してくれてるようですし・・・]

“あからさまに嘘をついている”

そんな表情の二階堂君。

[何か最近帰りがとても遅いと一の瀬さんが言ってましたが、そんな夜中までお仕事探されてるんですか?]

間髪いれずに更に二階堂君へと詰め寄る響子さん。

[い、いやあ、遠くまで出かけたりしてるもので・・・]

それでものらりくらりと響子さんの攻撃をかわす二階堂君。

ここで変な事を口走ってしまって響子さんに変な疑惑をもたれてしまっては、五代君に“”絶対にあそこで付添してる事は黙ってろよ!””と、言われた約束を破ってしまう事になる。

寒空の中、恥も外聞も投げ捨てて頑張った、呼び込みの努力が完全に無駄になってしまうのだから二階堂君の必死だ。

[あ、あの、僕、そろそろ出掛けますんで]

その場を逃れるように二階堂君は外出していった。

[何かおかしいわ、やっぱり]

五代君への不信感が更に募る響子さん。

先程一の瀬さんから聞かされた“四谷さんのスクープ”も頭に残っている。

<約1時間前~管理人室>

[実はさあ・・・]

[昨日の深夜、四谷さんがさあ・・・]

[見ちゃったって言うんだよねぇぇ~・・・]

[な、何を見たんですか?]

[一の瀬さん!]

[五代君がとっても若い娘(こ)と仲良さそうにデートをしてたんだとさ!]

[四谷さんによるとかなり綺麗な女の子らしくてさ・・]

[やっぱアレかね?]

[女房と畳は新しい方がいいなんて古い例えがあるけど・・・]

[五代君も管理人さんに昔から今でも一途かと思いきや、遂に若くてピチピチした女の子の色香に目が眩んでしまったのかねえ・・]

[ん?]

[管理人さん?]

[駄目だこりゃ・・・]

どうも五代君は昨日夜に百瀬さんと一緒の所を、神出鬼没、年齢不詳の四谷さんに目撃されたらしい。

四谷さんはそれを面白おかしく一の瀬さんに吹き込んだのだろう。

四谷さんから聞いた話を更に“レベルアップ”して響子さんに伝える一の瀬さん。

一の瀬さんが話し終えると響子さんは、石の様に固まって動かなくなってしまった。

 

~その日の夜~

 

[客引きは、明るい笑顔で歯切れよく!]

[ヨシ、行くぞ二階堂!]

[・・・・と、言いたい所なんだが]

[おまえ、響子になんか変な事言わなかったか?]

[俺はまったくおまえの仕事探しについてタッチしてないみたいな事言ってたぞ?]

[ホントに誰のためにこんな夜遅くまで付き合ってると思うんだよ]

[五代さんが管理人さんにちゃんと話せばすむ事じゃないですか?]

[何でホントの事話さないんですか?]

キャバクラバニーの従業員用ロッカーで何やら揉めている二人。

五代君は響子さんにどうしても、いくら二階堂君のためとはいえ、付き添いで呼び込みしているとは言えなかった。

それは浪人時代キャバレーバニーでバイトしていた時の、あの“”憐れむような響子さんの視線””がどうしても忘れられないのである。

悪いことをしていたわけは無論ない。だが見栄を張って嘘を塗り重ねて真相がばれてしまい、怒りの前に憐憫の感情を浮かべて見詰められてしまったのだ。

自分の最愛の女性に最も見られたくない場面を目撃されるなど・・・・・。

思い出しても屈辱的で二度と体験したくないと心に誓ったものなのに・・・それを20年近くの未来に再び行っているなど自分で自分が信じられない。

また仮に話したとしても、保育園の園長なのにそんな呼び込みなんてしないでと、猛反対されそうだからなのだった。

 

一方の二階堂君は五代君とも響子さんとも毎日顔を会わす訳で、その度に適当に嘘を吐かねばならず、本当に迷惑な話ではある。

[まあいいや、泣いても笑っても今日と明日で終わりなんだし]

[さあ、行くか!]

こんな所で口論しても始まらない。

気持ちを切り替えた五代君は寒空の外へと・・・。

[さあ、いらっしゃい!]

[今夜も呑めや唄えの爆弾料金!]

二階堂君と五代君の声が威勢良く夜の町にこだまする。

[さあ、そこの旦那!]

[いかがですか?]

[ご案内しますよ!]

五代君が一人の男に声をかけた。

“”“ウグ!!!”“”

[お呼びですか?]

[ご案内していただけるんですか?]

[おごってくださいね♪]

振り返った男は最悪にも“”“四谷さん”“”だった・・・・・。

 

そう、五代君が声を掛けてしまったのは本当に最低な・・不運で最悪な事に四谷さんだった。

 

“スササササ”

知らん振りして逃げようとする五代君。

 

[ご案内してくれないんですか?]

[管理人さんに言ってやろ]

 

逃げようとする五代君の背中に向かって四谷さんが決めの一言、“”管理人さんに言ってやろ””を炸裂させた!

 

[う、クッソ~~!]

“まあいいや、どうせ今日明日限りだ!”

響子さんに知られたくない五代君は、仕方なく四谷さんを案内しようとしたが・・・。

 

“ピポパ”

四谷さんはどこぞへ携帯で電話を掛け始めた。

 

[ああ、朱美さんですか?]

[四谷です。]

[何か五代君が“好きなだけお酒ご馳走してくれる”と言うんで、]

[これから来たりゃあしませんか?]

[宜しかったら一の瀬さんにも声掛けといてくれりゃんせ。]

 

“ピ!”

何と四谷さんはご丁寧にも、朱美さんの所へまで電話を掛けて、一の瀬さんまで引きずり出そうという腹積もりだった。

 

恐るべし、“年齢不詳、職業不明”の四谷さん。

 

[こっ、これじゃ浪人時代の再現だ・・・・]

悪夢を見ているかのような現実に目がうつろな五代君。

 

“アチャアア”

そばにいた二階堂君は声も出ない。

 

[二階堂君も“いい先輩”に恵まれて幸せでヤンすね]

不気味に四谷さんが笑った。

 

[いいんですか?五代さん]

[四谷さんきっと好き放題にやりますよ]

二階堂君がこっそりと五代君に耳打ちした。

 

[まあいいさ]

[さあ、そんな事気にしてる場合じゃないぞ、二階堂!]

五代君は気を取り直し、二階堂君の指導に没頭した。

 

その間にも・・・。

[ちゃース]

朱美さんが現れ・・・。

 

[五代君また復帰したんだって?]

一の瀬さんが現れ・・・。

 

[宴会宴会~!]

 

お店の中は大変な事になっていた。

[今日は何でもおごってしまいますよ~!]

3人が好き放題やっていたのであった。

[おおお?]

四谷さんが何かを発見したようだ。

[ほほ~]

[五代君もやりますなぁ]

四谷さんの視線の先には・・・。

今、噂の人物“百瀬さん”の姿があった。

そして好き放題飲み食いした3人はようやく帰ろうとしていた・・・。

[五代君ごちそう様]

[また明日も来ますよ♪]

四谷さんたちはタカレルだけタカル腹積もりのようだが・・・。

 

[ふふふ]

[ご心配なく]

[そんな好き勝手も今日一日限りです]

[二階堂!]

[研修は終了だ]

[合格だよ!]

不敵に笑う五代君は、二階堂君に研修の合格を告げた。

[ホントですか?五代さん???]

[やったぁ!]

これで二階堂君の職探しにもピリオドが打たれる事になった。

[さあさあ、帰った帰った]

五代君は勝ち誇ったように3人を蹴散らした。

 

[なんだい、あの態度?]

一の瀬さんがむくれ、

 

[ずいぶんと強気よね~、五代君]

朱美さんは呆気に取られた。

 

[まあ、五代君には、『もう少し楽しんでもらいましょかね?』]

四谷さんは無気味に笑うと、どこかへ携帯で電話を掛け始めたのであった。

そして四谷さんはどこかへ電話をし終わると、無気味に笑いながら一の瀬さんや朱美さんたちと帰っていった。

 

二階堂君の採否も決めて肩の荷が降り、ホッと一息つきたい五代君だったが・・・。

 

[な、何ですか、この金額はぁぁぁぁ!!!]

先ほど四谷さんたちが散々飲み食いした伝票の金額を見て驚いた。

 

驚くなかれ、その金額は10万円を軽く越えていのだ。

調子に乗った四谷さんたちは、近くにいた他のお客さんの精算まで引き受けていたからだった。

 

更に・・・。

頼みたい放題あれこれ頼んでいたので、余計に金額が青天井に膨れ上がってしまった。

 

[大赤字じゃないか・・・これじゃあ・・・]

[四谷さんにやられた]

その場にへたり込む五代君。

 

と、そこへ現れたのが・・・。

[おう五代どうした?]

[そんな所にへたり込んでよお?]

偶然その場へ飯岡がやって来たのだ。

[“あのどうしょうもねえヤクザみたいなの”がマタ押しかけてきたんだって?]

[俺を呼んでくれリゃあ追い払ってやったのによお、五代]

[で、幾ら飲み食いしたんだ、連中?]

飯岡の言葉を聞き、無言で伝票を渡す五代君。

 

[おお!]

[やりやがんなぁ、あいつら!]

 

と、流石がの飯岡も“その金額の多さ”に目を丸くしたが。

[まあいいや]

[オイ、これ俺に付けとけ!]

なんと自分に付けろと、伝票をスタッフに渡したのだ!

 

[あ、いいですよ、僕が払いますから!]

五代君は伝票をスタッフから取り返そうとしたが、

 

[バカ野郎!]

[俺が無理言っておめえに二階堂の指導を頼んだんだからよ]

[まあ、こんな物は経費みたいなもんだ]

[それに、ここは“俺の店”だからよ、余計な心配は無用だぜ、五代]

飯岡はそのくらいの事は大した事じゃないと五代君を一喝した。

[それより二階堂はどうよ?]

実は飯岡は二階堂君の様子を見に店へと赴いてきたのだった。

 

[ええ、大丈夫です、あいつなら]

五代君は自身満々に二階堂君の太鼓判を押した。

[ヨシ、分かった]

[二階堂を正式に採用する]

[あいつには今度新しく開く予定の飲食店でもそのうち任すか]

飯岡の口から、二階堂君の採用が告げられた。

この瞬間、波乱に満ちた五代君の任務は完了した。

 

[五代もどうよ?]

[俺は他にも不動産とか色々やってんけど、おめえになら喜んで店一つ任すし、今の給料よりうんと弾むぜ?]

[保育園の園長ったってよ、そんなに大して給料もらってねえんだろ?]

[あ、五代よ?]

飯岡は五代君にも食指を伸ばしてきたが。

[いえ、僕は保父の仕事が好きなんで]

[お言葉は嬉しいんですが]

五代君は考える素振りすら見せず、キッパリと断った。

 

[ま、気が向いたらいつでも言ってくれや]

[そんときゃ面倒見てやるからヨ]

[じゃ、二階堂は責任持って俺が預かるぜ]

[お疲れさん]

[オーイ、二階堂、ちょっと来いや!]

飯岡は五代君の労をねぎらい二階堂君を呼ぶと、二人で消えて行った。

[さて、これで一件落着]

[急いで家へ帰るか!]

[響子がまだ起きてて待ってると悪いしな]

五代君は素早く着替えると、店を後にして家路に着いた。

これで万事全て丸く収まったかに思えたのだが・・・。

[園長~!]

[五代園長~!]

[待って下さいよ!]

誰かが五代君を追い駆けて走って来た。

 

[も、百瀬さん!]

五代君は驚いて振り返ると、その人物は百瀬さんだった。

 

[置いていくなんて酷いじゃないですか!]

[そんな酷い事するんなら・・・]

[保育園の他の先生方とか園児たちに・・・・]

 

[“五代園長が!"]

[”若い女の子がバニー姿でたくさんいるお店で夜のお仕事してますよ~!”]

 

[・・・・・・・・・・・・・・なんて、]

[宣伝しちゃいますけどいいですか?]

[んぐぅ!]

響子さんの若かりし頃に"容貌"と“雰囲気”は似ているものの、性格は180度正反対を行く百瀬さん。

物静かで男性に対しては慎重かつ奥手な響子さん。

一方、百瀬さんはというと、積極的でお茶目な、とても明るい最近のノリの女の子なのであった。

[そ、それはちょっと勘弁して、百瀬さん]

百瀬さんの爆弾発言を聞き、思わず“勘弁してくれ”と懇願する五代君。

何ともまあ、情けない“園長さん”ではある。

[ん~と、お腹空いちゃったな♪]

[え・ん・ちょ・う♪]

少し上目遣いに五代君に擦り寄る百瀬さん。元々がとっても可愛い女性だし、それに若い頃の響子さんに雰囲気が眺めれば眺めるほどそっくりな好みの女の子・・・。

浮気心とまではいかないが女性に興味がある男性としては食指を伸ばしたくなる存在に一緒に食事でもしましょうと言われているのと同義だ。

断るのにはいささか・・・鉄の意思が必要で優柔不断な五代君には難しかったようだ。

 

[んんん、しょ、しょうがないなぁ]

“しょうがない”と言いつつも、鼻の下がビミョーに伸びてる五代君。

どう見ても自ら喜んで奢ってあげる様子にしか見えない。

そんな二人は近くの居酒屋へと入ってゆくのであった。

五代君は果たして真っ直ぐ家へと帰らなくていいのだろうか?

 

 

以下、次回

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