茶々丸でのパーティーもつつがなく終わり、本当にあっという間にクリスマス・イブを迎えてしまった。
[それじゃ、今日は友達のお家でパーティーするから遅くなるだけじゃなくてお泊りイベントだから、帰るのは明日の朝ね]
学校も冬休みに入り、春香ちゃんはいそいそと友達の家へと出掛けて行った。
もちろん、五代君は保育園でお仕事中。
もう長年連れ添った夫婦の二人。結婚して既に17年が過ぎている。知り合ってからだと23年以上だ。
クリスマス・イブといっても恋人同士の頃のように浮き浮きとときめいたり、何か特別な事がある訳でない。
普段から自宅では娘が居ようが居まいが憚ることなくキスやハグを繰り返して春香ちゃんも呆れるような仲の良さを発揮しているので特にイベントなどは不要の二人だ。
元々恋人同士の時代でも・・半年足らずで結婚したせいもあるが改まってデートなどもそんなに数を経た訳では無い。
それよりも付き合う前からの日常の暮らしの中での何気ない会話だけの触れ合いであっても、それこそが二人にとって重要で掛け替えの無い記憶なのだ。
今現在ただ単純に一緒に暮らすだけで精神的に満ち足りた気分を十分に味わって来たし、甘い新婚時代とほとんど変化なくお互いに嬉しさ満開なのである。
だけど、今年は春香ちゃんが出掛けて友人宅に外泊することが当日になって決まったので、本当に新婚以来久し振りに、夫婦水入らずで二人だけのクリスマス・イブを迎えられるのであった。
まだ五代君はこのことを知らない。
となると流石に響子さんとしては愛する夫とだけ、二人きりの特別イベントとなった今宵のイブにちょっとばかり期待を膨らませていた。
[さてと・・・色々と頑張らないと・・・]
響子さんはクリスマスの準備に取り掛かった。
~日も暮れて夜になった~
[ただいま~]
五代君が仕事を終え帰宅した。
“パタパタパタ”
[お帰りなさい~♪]
響子さんが玄関までお出迎えだ。
[おお、響子、どうしたんだよ今日は?]
五代君はいつもと違う響子さんにビックリした。
[ふふ、今日はクリスマスだから、ちょっとおめかししちゃった]
少しばかり顔を赤くして恥ずかしそうに響子さんは言った。
響子さんはクリスマスという事で、思い切ったお洒落をして・・美しくドレスアップして夫の帰りを待っていたのだ。
[変・・・かな、あたし?]
[そ、そんな事ないよ、いや、あの、・・・]
[き、綺麗だよ、響子。・・凄く・・うん、素敵だ。・・やっぱり君は、響子は本当に歳なんか取らないよ・・・ずっと美人で可愛いままだよ]
ふと、我に帰り、自分の服装が変じゃないかと気になった響子さん。
しかし、五代君は顔から湯気が出そうな表情で心底嬉しそうにとっても綺麗だと言ってくれた。
そして五代君からの響子さんへの最大級の真摯な想い『響子は年齢(とし)なんか取らない』を真顔で述べてくれた。
[うふふ・・本当?・・ありがとう、あなた・・・。嬉しいわ、あたし・・]
響子さんも折角頑張ってお洒落した服装に自信を感じることができて、ただでさえ眩しい微笑んだ姿が更に輝いて見える。
褒め言葉を言ってもそれは全く美辞麗句でも何でもないのである。五代君は心で感動したことと響子さんを愛する気持ちをそのまま不器用でも一生懸命、真摯に伝えてくれる。
そこが五代君ならではの、心根の優しさと深い愛情なのだろう。
[おお、凄いな、今日は!]
着替えを終えてダイニングに現れた五代君は、テーブルの上に並べられた料理を見てビックリした。
[ふふ、今日はクリスマスだから特別よ]
料理自慢の響子さんが腕を振るうゴージャスなクリスマスの晩餐。
どんな高級レストランよりも、暖かく五代君を迎えてくれる。
“シュポン!”
豪快にシャンパンを開け、“二人だけのディナー”はスタートした。
[そうか・・・今年は春香がお友達の家に行ってて居ないのか]
いつもと違うクリスマスの意味がようやく理解できた五代君。
[ええ、クラスメイトのお宅にそのままみんなでお泊りするんですって]
[さっき、先様のお母様にも電話でご挨拶しておいたわ]
春香ちゃんは今日帰って来ない。
だから恥ずかしがり屋の響子さんも、少しばかり今日だけは大胆にお洒落してみたのだ。
[ねえ・・・あなた、これ、・・・覚えてる?]
愛妻による美味しいご馳走の手料理を気持ち良く片付けてくれていた五代君を嬉しそうに見詰めていた響子さんは・・お互いに食事がひと段落着くとテーブルの上に何かひとつ、“光る物”を置いた。
[ん~、何だろうなあ・・・]
その“光る物”を見て首をひねる五代君。
[本当に覚えてないの、あなた?]
[ほら、よく見て]
[何となく思い出さない?]
響子さんはもう一度、その“光る物”を五代君の目の前でかざした。
“キラ”
[あ!]
[思い出したよ、響子!]
五代君は“光る物”がキラッと光った瞬間、それが何かを思い出した。
[それ、僕が響子に初めて贈ったプレゼントのブローチじゃないか!]
[あ・た・り]
光る物体の正体は、五代君がまだ大学生だった頃、
茶々丸でクリスマスパーティーがある日、響子さんに初めて手渡したプレゼントなのだった。
それも前の年にはついに渡せず、1年掛かりで手渡したブローチ。
しかも包装も無くて剥き出しのままであったが・・・前年に渡せないまま部屋の机の奥に転がってしまっていたから仕方ない。
響子さんはそれを大事に今でも保管していたのだった。
[これを・・・]
[あたしがあなたから頂いた時、あたしはまだ22だったわ]
[そしてあなたは20歳だった]
[あれからもう何年経ったのかしら?]
響子さんはブローチを大事そうに手に取り、プレゼントを貰った当時を思い出していた。
[お返しに僕が響子に貰ったのはマフラーだったかな?]
[うんうん、そうだ、間違いないよ]
[あのマフラー・・・とても暖かった。本当に嬉しくて暖かった]
[懐かしいね、響子]
嬉しそうに記憶を思い起こす五代君。
[懐かしいわね、あなた]
優しく微笑んで返答する響子さん。
不器用な二人の紆余曲折な恋物語・・・いつまでも色褪せることの無い・・懐かしくて楽しい、切なくて心がくすぐられる思い出話が止まらない、そんな二人の素敵なクリスマス・イブである。
[本当に安物で申し訳なかったけど・・生活費をやり繰りしてやっと買えたのが、そのブローチだったんだ。持っていてくれてたんだ・・」
[大好きな『管理人さん』にどうしてもプレゼントを・・クリスマスプレゼントを手渡して受け取って欲しかったんだ、あの当時]
[あれからもう・・・22年かな?そんなに経ったんだ・・懐かしいなあ]
[毎年毎年、今年こそはと考えてて響子との仲を進展させたかったんだけど上手くいかなかった・・」
[だけど晴れて恋人同士になれて・・そして今ではおれの大切な自慢の奥さんになってくれたんだ・・・ありがとう、響子]
五代君は当時を思い出しながら月日の流れる速さを・・その速さが本当に幸せであればこそ速かったのだと思える。
[そんな風に言って貰えるのが・・・嬉しいな、あたし]
[結婚してからもう17年か・・・お互いに40の大台もとっくに突破しちゃったわね]
[うん・・本当にあっという間ね。結婚して初めてのクリスマスもあたし達二人きりだったけど、もう春香があたしのお腹の中にいたから実は3人一緒だったのよね]
[・・えっと、もう6ヶ月か7ヶ月だったからかなりお腹も大きかったわよね。・・・あ、そう言えばケーキも二人分食べないとなんて無茶言わなかった、あなた?]
他愛も無い昔話を・・だが愛する夫と交わしたささやかで小さくても本当に愛情の篭った言葉を響子さんは忘れていない。
[え・・言ったかな?う~ん・・何かそれに近い表現で似たような言葉を言った記憶があるんだけど・・・]
[そうだ!・・・響子がケーキを食べればおれ達の子供も・・赤ちゃんも食べることが出来るよって言ったよ、確かに!だから二人分なんて・・今思えばちょっと無茶だったなあ・・・]
五代君が大事な記憶に辿り着き、響子さんにそのまま懐かしくて嬉しい思い出を伝える。
[・・・ええ、あたしたちって本当に大事で大切なことはいつも・・いつだって同じ時に同じように考えるのよね]
[あなたがあたしの大事な・・・大切な旦那様で・・夫で・・主人・・。ふふふ・・不思議なようで不思議じゃないわ]
[え?不思議って・・何がかな、響子]
[もう!だから不思議じゃないって・・・自然に・・自然に夫婦になれたのよ。ちょっと時間が掛かったけど、ね]
[単純な運命じゃないと思う、の。・・あたしの夫になる人があなたで、あなたの妻になる人があたし。そうお互いがずうっと望んでいたから、そういう運命に辿り着いて・・自然にね、夫婦になったんじゃないかなって]
響子さんは自分たち二人が夫婦に成るべくして自然になったのだという人生を凄く幸せそうに微笑んで優し気に語る。
それは五代君も同様に共有しうることだ。
[おれもそんな風に響子に言って貰えるのが・・凄く嬉しくて・・・夢みたいに幸せで・・でも夢じゃない。本当に現実なんだって日々感じているよ]
[管理人さん・・・響子さん・・・響子・・・呼び名は変わっていって今では君が俺の愛する奥さんなんだから本当に現実が夢を超えてるな]
五代君からの響子さんとの幸せな夫婦生活への感謝と賛辞は留まることを知らない。
[現実が夢を?・・本当にそんな風に思ってくれるの、あなた?]
響子さんの口から白い歯が零れて嬉しそうに夫に尋ねる。
[うん、そうさ。・・・俺の夢って響子と恋愛して恋人になって・・そして結婚して夫婦になって一緒に暮らして・・可愛い子供を産んでもらって家族水入らずで過ごして・・・ずうっと浪人の頃から学生になって、卒業して就職浪人して足掻いていた時も全く
変わらず夢見ていたよ。ささやかどころか分不相応だってみんなに言われて、からかわれて笑われたけど・・・でも諦めなかったよ。おれは響子のことがずっとずっと好きで・・大好きで・・・どうしても響子と恋人になりたかった、俺の奥さんになって欲しかったんだ。
だから・・・諦めなかった。・・・諦め切れなくて、おれなりに不器用で手際悪くて頑張ったつもりがなかなか結果に繋がらなくて・・君も呆れただろうけど見捨てられなかったおかげで、今こうして夫婦になれて一緒になっているのが信じられないくらい嬉しいんだ]
[・・・・・・・・・・・・・・・・・・・]
五代君からの嘘や偽りや社交辞令、それにお世辞など欠片も無い心の中身を紡いだ言葉に響子さんは無言で微笑みながら耳を傾けて黙ってじっと聞き入っている。その微笑みとは五代君が昔に心から望んだものだ。
『おれの好きな女性(ひと)はヤキモチ妬きで早とちりで泣いたり怒ったりだけど・・・おれはその女性(ひと)が笑えば最高に幸せなんだ』と心に呟いた笑顔・・・五代君を見詰める時にだけにする響子さんが愛する男性(ひと)へ向ける微笑みだ。
[響子・・おれはその、上手く言えないけど・・おれは君とずっと一緒に暮らすっていう念願の・・一番の夢を適えることが出来た果報者だって思ってる。だからもう他に欲しいものなんて何も無いんだ。・・あ、もちろん春香と一緒に暮らすのも含まれるけど・・・。
響子にプロポーズした時に貧乏もなるべくしませんって約束はその・・あんましおれが実現出来ていなくて申し訳ないけど・・このマンションだって春香が9歳の時にやっと購入できたんで、それまで6畳一間の暮らしで不便を掛けてしまって・・・
甲斐性無しな亭主で本当に申し訳ない。今時、風呂無しトイレ共同だったからね。いくらおれと君が初めて出会えた思い出の場所でも・・あ、おれはあの管理人室での暮らしに不満なんて風呂トイレ以外に何も感じなかったよ。確かに1年半は二人で、それからは
三人で狭いのは確かだったけど・・・。あの部屋でおれは君と初めて結ばれて・・・初めて身も心も繋がることが出来て恋人同士になれて・・・。あの夜に響子から『本当はね、あたしも五代さんのことずっと好きだったの』って告白を聞くことが出来た時、
本当に本当に・・天にも昇るどころか・・・現実が夢を超えたんだって思って・・そんな大切な思い出の場所だから、そこで、その部屋で君とずっと一緒に生活出来て幸せしか感じなかった。それに春香が生まれて、あの部屋で響子が赤ん坊の春香に母乳を
飲ませてあげていた光景・・余りにも神々し過ぎて綺麗で・・女神様みたいに微笑んでいた響子の眩しい笑顔、おれ絶対に忘れないよ。見ていておれ、何度も本当に泣きそうになったから。・・いや、三度か四度は涙ぐんだかな]
五代君からの紛れもない、妻である響子さんへの愛の告白である。普段から無口ではないが口数は多くはない彼。だが響子さんを愛する気持ちに言葉が尽きることはない。まさしく無限大であった。
[結ばれてから保父の試験にも受かることが出来て就職も出来て・・・やっとの思いで決死のプロポーズも何とか言えて・・響子が応じてくれて・・おれ本当に自分が一番欲しかったものを手に入れることが出来たから幸せ過ぎてどう感謝したらいいのか正直分からない位なんだ]
[本当にありがとう、響子。君がおれの気持ちに応じてくれて・・おれ欲しかったもの全てを実現できたから・・・・響子がおれに望んだ一つだけの約束、必ず守るよ。おれ必ず一日だけでも長く響子より長生きする。長生きするための気力は君が一緒なら養えるから大丈夫]
[だからこれからもずっと一緒にいて欲しい。君さえおれの傍に一緒に居てくれればそれでいいんだ。・・おれはそれがささやかなじゃなくて・・・最高の、一番の贅沢だって思っている・・・・ただのおれの我が侭かも知れないけれども・・・]
[・・・・・・・・・・・・・・・・・・・]
無言でずっと耳を傾けてくれていた響子さんだが微笑んだ表情から・・その澄んだ美しい両方の瞳から嬉しさの余り涙が一筋二筋と零れ落ちる・・・。
[・・あなたって本当に大切なことは・・何度でも言うけれど・・・・必ずあたしと同じ時に同じ風に考えて想ってくれるのね・・・]
愛する妻の突然の涙に驚いて立ち上がろうとする五代君を大丈夫だからと手で制して響子さんは指で涙を拭う。
[あたし・・・あなたに会えて本当に良かった・・・今でもそう思ってるわ・・・・でもそれって偶然なのかも知れないけど・・・けれど・・・・]
[けれど?]
[うん、けれど奇跡に近いことよね・・。ううん、やっぱり奇跡だと思うの。・・・だってこんなに好きな男性に巡り逢えるのって絶対に奇跡だわ。そうでなければ・・・・有り得ないもの。あたしそう思うわ]
[響子・・・・ありがとう。・・・おれも君のことが大好きで・・その、うん・・・凄く愛しているよ]
[ええ・・あたしも・・・あなたが大好き、大好きで愛しているの・・・」
自分にとって最も大切で大事な妻からの愛の告白にこの場で感激の余りに自分も涙ぐんでしまいそうになってしまう五代君であった。
だが響子さんからの五代君に対する愛の告白も・・終わることなく尽きそうにはない。
[ねえ、あなた・・・初めて出会った時、あなたはまだ19で大学受験の浪人生だったわね?]
[・・ああ、だから君には最初の頃って名前じゃなくて””浪人さん””なんて呼ばれたっけ]
[そうね・・そしてあたしは21で・・・既に未亡人だった。・・・別にあたしはそれを恥じてもいないし負い目とも思わなかった。・・・後悔すらしていなかったわ。だってあたしは真剣に一人の男性と恋をして恋愛して結婚したんですもの・・音無惣一郎さんという男性と]
[うん、そうだったよね]と五代君ははっきりと優しく頷いてくれる。
[だから・・・もうあたしは誰とも恋愛なんてしないし出来ないと思っていた・・・。だけど・・あなたが、五代裕作と言うあなたがあたしを・・・出会った時のままのあたしが・・音無響子という女のことが好きだからって愛してくれて・・・でも未亡人で意固地で融通が
利かないからあなたに素直に全然なれなくて・・・待たせるだけ待たしたのに、それでもずっとあたしのことを好きだと想い続けてくれた・・・そうして5年以上が過ぎて、あの日にやっと素直になれて本音をお互い吐き出せるだけ吐き出せて・・結ばれて・・・・]
ここまで語ると響子さんはテーブルの上で両腕を伸ばして五代君の右手を掴み、両の手で包み込む。最愛の男性に愛を告げる眼差しで五代君を見詰めて更に告白を続けていく。もう既に声は半分涙声だ。
[あの結ばれた日よりもずっと前から・・・正確な日付は分からないけど、あたしもずっとあなたのことが好きだったの。だけど・・あなたと恋人になりたい、お嫁さんにだってなりたいって夢も見ていたけど実現するのかどうかが分からなかったわ。あなたも優柔不断
だったけれど、あたしも勇気がどうしても湧かなくて・・・。でもやっと恋人同士になれたあの日・・・・6年振りだったわ・・男性に身体を愛されたのが。身も心も・・・繋がってひとつになれたのが。あたしが一人の女として男の人に愛されて、あたしも愛することが出来る、
一人の男の人を愛することの出来る女に戻れたあの日・・・。あたし、あの感激を絶対に忘れたくないから忘れないわ。だからあたしも・・・夢が実現して・・・・今の現実が、あなたと夫婦になって暮らしている現実が夢を超えているから・・・・本当に物凄く幸せなの]
心からの無垢な美しい愛を語りながら再び嬉し涙を一筋二筋、また一筋二筋と零し続けて・・涙声で嗚咽を堪えて語ってくれる響子さんの両手を五代君が空いていた左手を伸ばして包み込んでぎゅっと握り締めて応じる。
彼の瞳にも感激の嬉し涙が浮かび遂には玉の粒となって零れ落ちていく・・・。
[響子・・おれも今、嬉しくて涙を流しているけど・・・心の中ではもっともっと大声で号泣しているんだ。ありがとう・・・おれも本当に最高を飛び越えて、とてつもなく幸せだよ]
そう告白する五代君も笑顔であるのに涙が止まらない・・響子さんと同様に・・・。彼にとって響子さんという最愛の妻さえいれば本当に何も要らないことを今更ながら心で感じていたのである。
単純なプレゼントではなくて、お互いの素直な愛する気持ちを交換することが出来た今年のクリスマス・イブは五代夫妻にとって文字通り忘れ得ぬ、最大に至福の幸せな一夜となっていった。
今宵は寝室のベッドではなく二人が初めて結ばれた時と同じように畳と布団の上で愛し合いたいとの五代君からの申し出で、客間の和室で布団を敷いてそこで・・物凄く深い絆で結ばれた愛情を思う存分に夫婦として何の遠慮も無く確かめ合った・・・。
その艶めかしくも微笑ましい愛し合う男女としての交わりの合間に五代君も真摯な愛情を呟いていた。
『響子・・おれって時々自分が考えている以上に君のことが・・響子のことが好きなんだってことを発見して自覚できる時があるんだ。そんな時って嬉しくて驚いてしまうんだ、今でも・・・ね』
焦げるように熱い恋慕の眼差しで夫を優しく見詰めている響子さんも応じてくれる。
『あたしも・・あなたのこと好きで大好きな気持ちに確信が有るけど・・本当にね、頭で考えている以上に、あたし・・あなたのことが好きなんだって、時々ね・・ふっと気付く時があるの。その瞬間って心に羽が生えたみたいに浮き浮きとして凄く・・嬉しいの』
『大げさじゃなくて・・ホントに眩暈がして・・くらっと立ち眩みしそうになった時だってあるの。嬉しい気持ちに浸っているから・・陶酔状態みたいにね・・・』
そう言われた途端に五代君は愛する響子さんに熱烈な接吻をして嬉しい気持ちを表して返してくれる。唇を密着させるだけの行為にも酔いしれる響子さんは更に愛の告白を呟く。
『あぁ・・ねえ、あなた。あたしたちって絶対に・・間違い無く・・・夫婦に・・夫と妻になるべくしてなったのよね・・。だからこんなに物凄く嬉しくて・・とっても幸せなのよね・・。うふふ・・・大好き♪』
五代君も響子さんを愛しげに見詰める視線は変わらず返答をしていた。
『うん、おれも響子が大好きだよ・・・だから凄く嬉しいよ・・そうだね。疑いなく、なるべくして、かな。だからずっと大好きなままで・・おれたちは一緒なんだ。これからも・・ずっと・・・』
そんな甘い会話の直後から再び愛し合う行為が続けられていく。
日付が変わってクリスマス当日の深夜遅くまで布団の上で初めての時の様に裸で抱き締め合っていた響子さんと五代君。
『あの日と同じように・・朝まで二人とも一糸も纏わぬ裸のままでね・・抱き締め合って・・・そのままで一緒に眠りたいの』と言う響子さんからの提案を受け、甘い甘いキスを唇だけでなく顔中に身体中にお互いし続けながら・・・何度目かの営みを始めて又もや繋がる・・。
五代君にとっては似合わない台詞かも知れないが、そんな濃厚で濃密な蜂蜜や砂糖よりも甘い男女の交わりを何度も何度も行った後に布団から起き上がりると・・・
改めて真剣に愛情を込めて『そう言えば今日はメリークリスマスだよね・・・愛しているよ、響子さん♪・・響子♪♪』と恋人時代と今現在の妻としての呼び名で語り掛けて言うと、
響子さんも身を起こして優しく優雅に大きな愛を込めて『うんそう、メリークリスマスよね・・・あたしも愛しているわ、あなた・・・五代さん♪・・裕作さん♪♪・・・あなた♪♪♪』と愛する男性を呼び掛ける歴史を振り返るように優しく心底嬉しそうに返事を言い返す。
そして全裸姿のまま、どちらともなくゆっくりと立ち上がり正面から身体を抱き締め合い唇を密着させて長い長いキスを交わす。言葉は何も交わさなくてもお互いに心の中で””大好き・・愛している””と愛の告白を続けながらずっとキスを続ける。
そうしながら布団の上でお互いに立ち姿のまま、全裸のままで響子さんが両腕で夫の背中を抱き締めたまま・・豊満で美しい乳房を密着させたまま離れず、五代君も左手を妻の腰に回して右手でずっと彼女の長くて美しい髪の毛を優しく梳いて丁寧に撫で続ける。
相愛相愛である二人だけの愛情溢れる時間で正しく至福の瞬間であった。
20年来、五代君と響子さんが二人一緒に望んだ未来が今ここに実現している幸福に酔っていた・・・お互いに心の底から・・・・これからもずっとそれが続くことを祈りながら・・・・・・そう永遠に・・・。
以下、次回