これ以上自分がしゃしゃり出ても・・・。
三鷹さんと明日菜さん夫妻の関係を余計におかしくしてしまうと感じた響子さんは、
当面は自然の成り行きに任せようと思った。
きっとまた二人は一緒に仲良く暮らしてくれると願いながら・・・。
さて時は4月。
春香ちゃんも高校へと進学です。
通うことに決まったのは何と幸か不幸か母親の響子さんが通ったのと一緒の女子高校。
入学式は両親の五代君と響子さん共々一緒に出席し無事に終了。もう愛する娘が高校生にまで成長したのかと感慨深く思う夫婦。式典の最中は父兄席でも輝くような美貌の響子さんは大いに注目の的でした。
(”誰だ、あの女性は?”・”メチャメチャ美人だな”・”新入生の母親か?ウソだろ、若過ぎるぞ”・”教師じゃないのか?”・”女優みたいに別嬪だな、胸までデカイし”・”学校紹介のポスターでも撮影するモデルさんじゃないのか?”と他の父兄や関係者からヒソヒソと囁かれる始末で、
その後に響子さんが新入生である春香ちゃんの母親と判明し周囲は大げさに言えば、びっくり仰天)
(式典終了後に校門で記念撮影する五代家の3人を見た人たちから、滅多に居ない美人で呆れるくらい綺麗な妻の響子さんと可愛い美少女の娘である春香ちゃんに仲良く挟まれた五代君が文字通りの両手に花状態じゃないかと羨ましがられることとなりました)
(小学校や中学校の入学式でも周囲は同じような反応を見せていたのですが高校でも状況はほぼ同じで再現されたのです)
その夫婦にとっても実際に思い出深い学校でもあります。響子さんにとっては母校だから当然ですが五代君にとっても教育実習で訪れた学校。もっとも真の重要な思い出はそれ以外にも多く有ったのです。
そうして始業式の日がやって来ました。
~朝 五代家~
[春香、今日は始業式で高校生として本当の初日だからしっかりとね]
[はいはい。ママもしっかりと仕事してね]と春香ちゃん。
励ましたつもりが逆に娘に励まされてしまった響子さん。
[いってきま~す!]
とっても元気良く登校して行った。
~春香ちゃんの通う響子さんの母校である女子高~
そして春香ちゃんの担任教師は・・・・・。
[皆さんこんにちは、初めまして]
[私がこのクラスの担任の・・・・]
[八神いぶきです]
何ともまあ、偶然とは恐ろしきカナ。
春香ちゃんの担任は五代君を散々悩ませたあの・・・八神さんだったのだ!
未だに独身の八神さん。
意地と気合と一途な思い(?)で母校に凱旋帰国を果たしていました。
[ちょっと待って、五代さん!五代春香さん!]
その日の放課後いきなり八神さんに声を掛けられる春香ちゃん。
[はい、何ですか?先生?]
いきなり呼び止められ不思議に思う春香ちゃん。
[お父さんとお母さんは元気?仲良くやってる?仲良くやってるの?]
春香ちゃんの腕を強引に掴んだ八神さんは人気の無い校舎の裏へと春香ちゃんを引っ張り込み、やたらと“仲良くやってるの”を強調して言った。
[え、ええ・・元気ですけど、仲もホント呆れるくらい凄く良くて。あの・・・それが何か?]
いきなりの変な質問に困ってしまった春香ちゃん。
[そう、それはイイ事ね。じゃ気を付けて帰るのよ・・さようなら]
不敵な笑みを浮かべ、それだけ言い残すと八神さんは職員室へと戻って行った。
~その日の夜五代家の夕食時~
[ねえママ、八神先生はママの知ってる人?]
“ぎしっ”
[え?八神さん・・って。春香の担任の先生のお名前かしら?]
今日の出来事を母に話す春香ちゃん。
その“八神”と言う言葉に過剰に反応し、一瞬・・顔の引き攣る響子さん。
[や、八神さん??????]
五代君も思考回路が停止したようだ。
[うん、八神先生だけどね]
”“”お父さんとお母さんは元気?仲良くやってるの?仲良く?”””
[何ていきなり聞いてくるからびっくりしちゃった。あたし]
“間違いない!あの八神さんだ!”
響子さんと五代君の脳裏に一刻館を・・いや二人を散々に引っ掻き回した八神さんの記憶・・・、いや、“悪夢“が甦る。ぐったりとした疲労と徒労感しか思い浮かばない。
当時は恋愛に至りそうで至れない、もどかしい微妙な関係であった二人にとっては彼女は共通の障害物でしかなかったからだ。
五代君が教育実習生として赴いた女子高(響子さんの母校)に生徒として居たのが八神いぶき、その人であった。学年首席で学級委員長の彼女からしたら当初は五代君のことを”暗くて冴えない先生見習いだな”くらいにしか思っていなかったのだが・・・。
冴えない風貌なのは元々なのだが、様子が暗かったのは単なる寝不足であったのだ・・教育実習の予習で必死だった五代君の邪魔をして一刻館の面々が相変わらず宴会などに引っ張り込み、お陰で睡眠不足になり実習中序盤はずっと眠たかっただけなのが事の真相である。
そして眠気を五代君が我慢し資料室で学校の記念アルバムなどを閲覧し響子さんと惣一郎さんのことが何か分かればと思い調べていたら・・音無惣一郎の名前はあったのだが写真が破損していて結局顔を見れず・・その時に五代君が呟いた台詞が問題だった。
”馬鹿だな、おれって。死んでしまった人間(惣一郎さん)のことをいつまでも・・”を偶然にも傍に居た八神が(学級委員長というこで他の教師から用事を頼まれて彼女が資料室に赴いていたのが運の尽き?なのか運命の歯車が回転し始め)聞いてしまったのだ。
それを八神は”恋人が死んだんだわ・・だからあんなに陰があって・・きっとその女性はここの卒業生で・・・だから実習に来たんだ。何てロマンチック!”と勝手に物語まで創作し感動をして・・恐ろしいまでの勘違いをしてしまったのだ。
そんな勘違いもあり、思い込みの激しさでは(響子さんに負けず劣らず)群を抜いていた為に幸か不幸か、五代君に憧れてしまい悪戯(意中の男性に好意を宣言する為に手の平に赤インキをハートマークに塗って、その手で相手の背中を思い切り引っ叩いて跡を付ける)を含めて
過激なアプローチをどんどん仕掛けることとなった。
当初は五代君の下宿先である一刻館に友人たちと一緒に訪問し、そこで管理人の響子さんと初めて対面した。呆れるくらいに凄く綺麗な女性だなと思った響子さんが実はうら若き未亡人であることには非常に驚いたが・・・
(八神の悪戯で汚れた)五代君のワイシャツを洗濯してあげていた事実などで、すぐに五代君と響子さんの関係が非常に怪しいと察知し友人たちを無理矢理に巻き込んで猛烈なアタックを開始してしまったのである。
だが頭脳明晰スポーツ万能で可愛い美少女?(十分に美形であったが)の八神が十代の若さを武器に執拗に迫っても・・残念ながら全て徒労に終わった。
響子さんのことが好きで好きで仕方なかった五代君にとっては、魅力的な女の子であった八神からいくら真剣に愛を告白されても全く欠片も恋愛対象とはならず困らされただけで正直なところ大迷惑なだけの存在であった。
しかも実習終了後には暫く空白の期間を置いて諦めてくれたかと思いきや、苦学生の五代を家庭教師にと詐欺のような策を弄して雇い八神の自宅に引きずり込むことまでされてしまった。
その手口とは・・・生活費を稼ぐ為に家庭教師のアルバイト先を探していた五代君であったが肝心の学力に不安があるので高校生ではなく小学生か中学生で宿題の面倒くらいしか見れないなと思って自分でチラシまで作って電柱に貼ってたりしていた。
そのチラシを目にした八神が直接自分の家庭教師をと望んだのだが(元々成績優秀で学年トップの八神に家庭教師など全く不要であったのに)・・とても学力の高い高校生は無理と速攻で却下したのだが諦められない八神は友人の弟である小学生を連れて来て一刻館を訪れ
五代には”母の代理です”と小学生から言わせて《小学生の男の子を自分が家庭教師する、その児童の母親代理が八神》と思わせて月謝まで受け取ったのだが(お陰で家賃が払えた)・・いざ家庭教師の日に判明したのは《あの男の子は八神の母親の代理です》という搦め手であり、
再び八神の今度は家庭教師の先生として奮闘することとなったのである。頭脳明晰なのは知っていたが、学力以外でもどうしてそんな無駄な知恵が回るのか末恐ろしい気がした五代君と横で見ていた響子さんであった。
一方、五代君のことが本当は大好きでも・・どうしてもなかなかその気持ちに応じ切れなかった未亡人の響子さんにとって、八神という女性は「あたしたちの微妙な関係を邪魔をしないで欲しいのよね」と
頭を大いに痛めさせた存在でしかなかった。
そして八神にとっては響子さんは当然ながら憎き恋敵であり、散々に張り合って嫌味を幾つも言われたものである。
『管理人さんってすっごく綺麗ですね。でもいつから胸がそんなに(牛みたいに)大きくなったんですか?』から始まり『独占欲が強そうどころか丸出しですね、でもね度が過ぎると折角そんなに綺麗なのに美人が台無しですよ』
『正々堂々、真っ向張り合いましょうよ』だけでなく『五代先生の恋人でもないのにヤキモチ妬いて威嚇するなんてどういうつもりですか?』『好きじゃない振りして愛されようなんて虫が良過ぎるわ』
『弱虫!弱虫!』などと言われ放題であったのだ。
まだこれでも言葉にしている分だけ表現が控え目で、八神の内心では”真性のサディストな未亡人(響子さん)から気の毒にもマゾな下僕(五代君)にされている五代先生を私が解放してあげるのよ!私ってばホント健気な乙女!”などと勝手に自己陶酔していたりしていたのだ。
((だが最終的に五代と響子さんが結婚の半年前にようやく結ばれて正真正銘の恋人同士になり、長年連れ添った夫婦みたいに振る舞い愛情を溢れさせ心から信頼して暮らす幸福そのものな姿を目にして何とか諦めが着いたのか・・心ならずも祝福の言葉を述べて貰えたのであるが))
何とか八神いぶきという女性だけでなく他の障害物をもその後に一緒に乗り越えることが出来て遂に無事結婚し幸せになれた響子さんと五代君だが、二人にとって八神は懐かしい良い思い出などではなくてやはり”悪夢”であった。
[そ、それで春香は先生に何てお答えしたのかしら?]
声が少しだけ震えてしまう響子さん。
[“”元気です。仲もとっても良いです””と答えただけだよママ]
父と母の余りに強烈なリアクションを全く理解出来ない春香ちゃんは言った。
[そう、それだけならいいけど]
ほっとして胸を撫で下ろす響子さん。
[それで八神先生とパパとママの間で昔ひょっとして何かあったの?]
母である響子さんに尚も突っ込む春香ちゃん。
[何にも無いわよ、何にも]と響子さん。この話題は出来れば避けたいのだ。本音を言えば思い出したくもないから。
[ホントに~嘘でしょ?]と納得できない春香ちゃん。
[無いったら無いの!]
[隠してる~ママ!]
[いいからもう寝なさい春香!]
[え~?まだ夜の8時だよ~]
そんなこんなで五代家の一日は幕を閉じた。
それから数日“八神先生”はこれといったアクションは起こしてこなかった。
{気のせいか}
そう五代君も響子さんも感じたある日の夜。
(ピンポ~ン)
玄関のチャイムが鳴った。
[はいはい、どちら様ですか?]
響子さんは玄関の扉を開けた。
“ギクッ!”
[や、や、や、八神さん!]
びっくり驚く響子さん。
[こんばんは。こちらが五代春香さんのお宅ですね?]
にっこりと微笑む八神さん。
悲鳴にも似た声を上げた響子さんに何事かと春香ちゃんと五代君も玄関先へやって来た。
[や、や、や、八神!な、何しに来たんだ!]
突然の襲撃(?)に夫の五代君までもが声が上ずっている。反応が夫婦揃って全く一緒だ。これぞ夫唱婦随。
[あれ?先生!こんばんは~]
春香ちゃんだけは泰然自若な性格なせいか(この点だけは父親の五代君とは異なる彼女の個性)涼しい顔をしていた。
[そっ、それで今日はどのようなご用件ですか?“”八神先生””]
少しばかりトゲトゲしく響子さんは八神さんに言った。
[そっ、そうだぞ、八神。良い子はもう寝る時間だ]
何が何だか全然訳の分からない事を言い出す五代君。
[今日は家庭訪問で参りました。大事な私の生徒がどんな家庭環境で育っているのか知るのが目的です]
[か、家庭訪問???]
いきなり家庭訪問だと言い放つ八神さん。
頭が混乱する五代君夫妻。
[そっ、それで八神さん。いえ、八神先生は他のご家庭は回っていらしたの?]
厄介な敵の上陸(?)を阻もうとする響子さんの鋭い一撃。
[いいえ、こちらが最初のご家庭ですわ]
平然と応戦する八神さん。相変わらず物怖じしない度胸満天の様子だ。
[そうだ、おかしいぞ!ウチはかきくけこの五代だから、あいうえお順から言っても矛盾・・]
珍しく頭を回転させて何とか追い返そうと奮闘する五代君。
[もう、いつまで玄関先でそんなことしてるのよ。パパもママも]
[ごめんなさい、八神先生。さあ、上がって下さい]
春香ちゃんの普段から響子さんによる躾の行き届いた礼儀正しい一言で八神さんは見事に敵地?へと上陸に成功した。
・
・
いきなりの家庭訪問と称して職権乱用全開で五代君一家に侵入(?)した八神さん(先生)
どんな話が飛び出すか冷や冷やものの五代君と響子さんだったが、
『春香さんのお母様は当校のOGでいらっしゃいますね?大変優秀な成績の優等生でありクラスの委員長まで努められたそうですね。将来を嘱望された才媛であったとお聞きしています。ご年齢は今年44歳ですね』
『でも何故か大学へは進学なさらなかったと伺っております。当校の進学率に向上されなかったのが残念ですね。あと現在は専業主婦ではなくて、一刻館というアパートの管理人を長年されていらっしゃるんですよね』
『お父様は現在幼稚園である”しいの実保育園”の保父さんとのこと、でも大学時代に現代国語の教育実習生として当校へ赴任されたことがお有りだとか。日本文学に造詣が深くて特に夏目漱石の”こころ”などに。そしてご年齢は今年で42歳ですね』
『当時は(極一部の)生徒達にも慕われて、すこぶる大人気?であったのに何故か高校教師ではなく幼児教育の方面に進まれて現在に至る、ですよね?大学卒業後に方針転換をされたので夜間学校に通って努力され国家試験に一発合格して保父になられたのは素晴らしいです』
『それにしても、ご両親揃って我が高校にご縁があるのは大変喜ばしいことです。お二人とも当校には素敵な思い出をお持ちでしょう。それも有って春香さんは当校を受験し合格され入学をされたんですね』
『春香さんもなかなか学業も体育も全般に渡って成績が優秀なので将来大いに期待しております。頑張って下さい』
何故にそんなに、いち生徒本人ではなくてその両親について詳しいのか春香ちゃんもびっくりの妙な博識振りだけを発揮して・・・(私立探偵でも使わなければ分からない、知り得ないような個人情報まで繰り出したのだから当然だ)
質問も碌にせず、言いたいことだけを言ってお茶を一杯飲んでお菓子を少し食べただけで・・・。
[では失礼します]とあっさり引き上げてしまった。
肩透かしを食らった形の二人だったが、これはひょっとして何かが起こる嵐の前の静けさなのだろうか?
[もう。一体何だったのよ]
文句の一つも言ってみたくなる響子さんだった。
~翌日 一刻館~
管理人室にはいつもの如く、一の瀬さんが油を売りに来ていた。
[へえ~””あの””八神さんが来たっていうのかい?]
昨日の出来事を一の瀬さんに話した響子さん。
それを聞いた一の瀬さんは妙に感動していた。
[一途だねぇ。頑固と言うか、昔の管理人さんみたいだよ]
一の瀬さんの言葉にハッとする響子さん。
不器用で一人の人しか愛せない自分と重なって見えるところが彼女にはあるから。
[まあちょっと度が過ぎる気もしないではないけどねぇ]
とフォローを入れる一の瀬さん。
苦笑いの響子さん。
[それにしても・・・五代君の””どこ””がそんなにいいのかねぇ?]
[あたしにゃ理解出来ないよ。確かに人畜無害の善人だけどさ、とっくに冴えない40過ぎの中年男でしかないのにね。もう20年以上も付き合ってきたけどさ。ワハハ!]
[余計なお世話です!一の瀬さん!]
一笑に付されてしまった響子さん。一の瀬さんは人生経験では年の功で一枚も二枚も上手だ。
でもここでは口にしなかったが響子さんも内心では本音を呟いていた。
((何よ今更・・あの人を他の女性に・・・ましてや八神さんなんかに渡すもんですか!・・・例え一瞬でも・・味見だって絶対させてあげないんだから!あの人は・・五代は・・あたしの夫で、あたしだけの男なんだから!!))
((だいいち・・もう高校生の娘までね、あたしたちには居るのよ。あたしは五代と結婚して人妻になって・・あの人の子供を身篭って出産して母親にも成ったんですから。どこに八神さんが入り込む余地が有るのよ!?))
((そうよ・・どれだけね、あたしたちが愛し合ったと思うの?結婚してからずうっとずうっと八神さんなんかが想像できないくらい・・計算できないくらい・・気が遠くなるほど愛し合っているんだから・・あたしたち夫婦は!))
((今だったら、その・・あたしたちがキスしてるのとかハグしてるのを八神さんの目の前でも出来るけど・・でも見せ付ける為にするものじゃないし・・あたしも・・恥ずかしいからあんまり公衆の面前ではしたくないし・・もう、どうしたら諦めてくれるのよ?!))
((まさか・・あたしたちのセックスして愛し合っている姿なんて絶対に見せられないし・・あたしとあの人との性交渉は本当に大切で神聖な儀式で・・真摯な愛情の交換会なんだから・・二人だけの空間で互いにしか絶対に披露出来ないものだし・・・考えなくても不可能だわ))
((あの人の・・主人のほとばしる欲情が塊であたしに押し寄せて・・それをあたしが体内で全て受け止める・・愛の告白として・・だからあたしからも愛を告白したいからあの人の体を包み込む・・それは他人には見せるものではないから・・やっぱり絶対に駄目!!))
((でも八神さんだって確か35、6よね?どうして今まで独身なのかしら・・相手なんてそれこそ、大学でも社会でも幾らでも居たでしょうに。何故かしら?・・・そこまであたしの主人を・・あの人のことを思い続けて来たのかしら・・・ずっと一途に・・・))
((例え何人か彼氏が出来て深い仲になっても・・結婚するまでには至らなかったとしたら・・・最近はそういう例も多いって聞くし珍しい訳ではないけれど・・・それにしても・・既婚者で子供も居て40過ぎの男性がそんなにいいのかしらね?正直、不思議だわ))
((そう言えば当時、八神さんには影で何度も呼ばれたわね”未亡人”って。・・そう、あたしはあの頃・・未亡人だった。そしてあの人よりも2つ年上で。あの人は・・五代はそんなあたしに真剣に告白してくれて・・そしてあたしも知らない間に好意を持って、段々と・・))
((でもまだ恋人同士には成り切れなかった・・あたしも五代のことを好きだったのに勇気が湧かなくて。でもあの人は・・未亡人という過去を背負ったあたしという女性そのものが・・それを全て含めた響子という女が好きなんだと言ってくれて・・だから、あたしは・・))
((あの人と恋人同士に成って・・そして夫と妻としての契りを交して夫婦になったの))
((あたしの夢・・それは好きな男性と愛し合って、結婚して、その人の子供を身篭って、出産して、一緒に育てて、家族水入らずで過ごす毎日・・・それを五代はみんな、みんな適えてくれた・・何の変哲も無い平々凡々な日々だけど、今までずっと今もこれからも適えてくれる))
((自分の稼ぎのせいで一刻館の管理人室に間借りする日々が長くて申し訳ないって言ってくれたけど・・10年近くも倹約じゃなくて堅実に生きていれば・・家賃不要だったから・・何とかマンションの頭金を貯蓄できて・・今のマンションをローンで購入して移り住めたわ・・))
((あたしが描いた幸福な生活を全て実現してくれた夫の五代が・・全身全霊を駆けてあたしを幸せにしてくれているあの人が・・あたし、好き、大好き、本気で命懸けで物凄く愛している!五代はあたしの全て。あたしだけの素敵な旦那様。そう、そして・・あたしだけの男!!))
((だから、絶対にあたしはこの幸せを・・主人の五代という男を手放したりしないわよ!・・絶対にね・・何があっても無駄よ!・・だって、あたしは五代の妻で・・彼の・・あの人だけの女なんだから))
そう内心で誓い、メラメラと決意の炎を燃やす響子さん。彼女も思い込んだらテコでも動かない性格なのだ。妥協など絶対にしない融通の利かない女性による宣戦布告であった。
事実昨晩、お互いに当時の記憶を思い出し・・五代君は八神からの積極的な攻撃を受け付けなかったこと、響子さんは八神の妨害工作に負けなかったことを脳裏に甦らせてしまい・・
夫婦というより恋人同士のように身体を求め合い””あたしたち八神さんの妨害になんか負けなかったわよね?””とばかりに開始して激しく夜中までかなり濃厚に営んだのだから・・相変わらずラブラブ夫婦全開であった。
八神から強烈なアタックを掛けられていた当時、二人は未だに恋人同士に成り切れていなかったから、五代君は響子さんの事を”管理人さん”と呼び、響子さんも五代君の事を”五代さん”と単なる苗字でしか呼んでいなかった。
その時に既に恋人同士であった事実を見せられたなら、あんなにも八神との闘争なのか紛争なのか明確には分からないが恐ろしい嵐は吹き荒れなかったであろうから・・・その記憶を思い出したせいか、ついつい五代君も調子に乗ってしまい昔みたいに・・・
既に妻である愛しい響子さんの事を18年振りに”管理人さん”と呼んでしまい求めてしまった。夜の営みの途中から、いきなり昔の呼称で夫に呼ばれて最初は面食らってしまった響子さんであるが・・彼女もつい夫の事を本当に久し振りに”五代さん”と呼んでしまうと・・
やはり気持ちが懐かしいのか、それ以降は異常に盛り上がり体力と気力の限界までお互いに激しく求め合い交わってしまった。
五代君の悪乗り台詞は・・・・・
”今夜も凄く綺麗ですね、管理人さん。銭湯帰りだから石鹸の香りが堪らないです・・だから今夜も裸になって貰いますよ。たっぷりエッチして可愛がるから簡単には寝かせませんよ”に始まって愛しの妻のパジャマだけでなく下着まで剥いでしまう。
響子さんもつい調子に釣られて乗ってしまう・・・・・
”あん・・五代さん・・・こんな所でブラもパンティも剥ぎ取るなんて・・五代さんはそんな人じゃないのに・・・ここじゃ嫌・・ちゃんと愛して・・・ひぁ!・・あん!・・あぁ・・そんな所を舐めちゃ・・あぁ、は、恥ずかしいわ・・”となかなか、そそる台詞を発してくれる。
五代君も本性を剥き出しにする感じで続行し、イチモツを挿入してしまいながら・・・・・
”管理人さん・・嵌めますよ・・ぐぉ・・ぐぅお・・管理人さんの膣って具合が良過ぎて・・うん、うん・・・気持ち良くて、おれ我慢できないから・・中に・・中に出します、ね・・直接です・・避妊なんかしませんからぁ!”などだったが、
どんどん釣られて響子さんも・・・・・
”あん・・いやいや・・・五代さん・・いきなり嵌めるなんて・・くぅ・・ふ、太くて・・ああ・・五代さん・・ダメよ・・イケナイわ・・出しちゃ・・イヤ・・ダメよ・・・妊娠しちゃうから・・危険日だし・・ダメ!・・ね、お願い”などと、
かなりの乗り乗りでこの昔の状況を再現するプレイに夢中になってしまった。
更に追加で2回目のセックス中に五代君は・・・・・
”イッて下さい・・管理人さん!今度は中じゃなくて・・口に、口に出しますから・・全部・・ごくりって飲んで下さい”
そう言われてしまった響子さんも・・・・・
”あん、あん、もう・・イク・・イクわ・・あぁ・・今度は・・膣じゃなくて・・あん、口になんて・・・五代さん、酷いわ・・嫌いよ・・エッチな五代さんなんて・・ぁぁ・・”
3回目では五代君から・・・・・
”管理人さんが悪いんですよ!こんなに綺麗で・・ボインでグラマーで良い香りがするんだから・・だからおれ専属のヌードモデルにするんです!だから一杯写真を撮ってあげますから・・管理人さんのヌードを・・全て・・綺麗な乳房も性器も!孕んだら妊婦ヌードだってね!”
ここまで言われた響子さんも負けては?いないのだ・・・・・
”あぁ、イヤ・・ああ・・写真なんて・・撮らないでぇ・・・五代さんの・・ケダモノ!・・変態!・・もうあたし、外を歩けない・・あん、だから・・こんなに出されたら・・もう孕んじゃうから・・責任取って!・・お嫁さんにしてくれるなら・・許してあげる!”
手篭めにされながら孕ませと婚姻に承諾してくれる響子さんに対して五代君もタガが外れてしまう。
”ええ、管理人さんはおれの嫁さんです!毎日可愛がって・・あげます!服なんて・・下着も着せませんから・・朝昼晩と何回もエッチして・・トイレだって行かせません・・全部ここで・・お漏らししてから・・するんです!”
支離滅裂で理解不能である勝手な我が侭としか思えない要望を叫ぶ五代君に対して響子さんは・・・・・
”あぁ・・イヤ・・酷い・・・ああ、でも・・あたし・・・五代さんにお嫁さんどころか・・・虜にされてしまうのね?・・・破廉恥だわ・・・ぁぁ・・でも・・素敵・・毎日ずっと・・・恥ずかしく・・卑猥に・・愛される・・のね?・・・あん、・・もうホントにダメぇ!”
とまあ、こんな調子で元々はお互いに性的快楽に対して積極的に求め合う相思相愛で既に長年連れ添った夫婦なのだから、どんどんエスカレートして"昔を再現”プレイに熱中してしまった。
コスプレとは異なる、所謂”成り切りプレイ”なのか”○○ごっこ”とも言うべきか、そんな戯れでの強烈な興奮を味わってしまったので・・またこれに近い様々な営みに挑戦してみたくなる五代君であったし・・”こ、これはなかなか・・すっごく・・興奮するな”と頷いていた。
響子さんも物凄く新鮮な気分を感じられて、”う、うん・・・わ・・悪くは・・ないわね?”とちょっぴり思ってしまったのである。
考えてみれば八神のことなど関係なく愛し合ってしまっていたが、これまで二人が結ばれそうで結ばれなかった微妙なあと一歩、寸前の場面など数え切れない位あるし・・そこを思い出せば正直幾らでも楽しめそうだぞと考えてしまった、とっても不埒な五代君ではあった。
もっとも愛娘の春香ちゃんがこの場面にもし遭遇したら呆れるどころか精神的な衝撃が大き過ぎて、重度の頭痛で倒れて寝込んでしまったかも知れません。
*五代君得意の誇大なる妄想では・・一刻館5号室(五代君の居住していた部屋)にて、ちゃぶ台のような机で八神と相対して正面に鎮座する響子さんと五代君が居たりする。
*二人の仲をしつこく詰問する八神に対して”もうこうなったらしょうがないな”とばかりに、大人の熱烈な生キスを披露する五代君と響子さん。そのうち互いに口を開き舌まで絡めるが唇は密着させて離そうとはしない。
*(ここまでなら、もう少しソフトなキスならば披露することも可能だったかも知れない)
*余りの強烈なキスを生で見ることなぞ恐らく初めてであろうから圧倒されて言葉も出ない八神。それに対して止めとばかりに五代君が右手を響子さんの服の下から入れて巨乳であろう乳房を鷲掴みして揉み始める。
*更に左手を今度はスカートの下に潜り込ませてパンティの中に突っ込んで響子さんの性器辺りまでを弄り始めてしまう。
*やがて控え目な喘ぎ声を小声で漏らす響子さんに対して、とうとう五代君は左手でパンティをずらし自分のズボンを降ろしてしまう。
*そうして胡坐を掻いた下半身に響子さんを背中越しに座らせて、己のトランクスをずらし、イチモツを取り出して響子さんのスカートの中に忍び込ませる。
*二人の衣服に覆われて八神の位置からは見えないが、遂に目の前で背後位にて合体したことが二人の様子からは容易に分かる。
*そうして響子さんのスカートに邪魔されて直接には見えないが、ピストン運動により間違い無く着衣のままでセックスをしている光景を真正面から八神に見せ付ける。
*やがて二人とも絶頂を向かえて、響子さんは恥ずかしながらもイッてしまった表情を・・五代君は射精の瞬間に顔をしかめる表情を見せて最後まで性行為をし終えたことを披露して、しつこい八神に諦めて貰う・・・
*・・などと不埒な空想したが、そんな事は絶対に不可能だよなあ~と五代君も思ってしまう。
*本当に付き合っている姿、恋人同士である証拠を見せる為に自然なキスならば確立は高くないが可能であったかと思うが、それ以上のことは慎み深くて上品な響子さんには絶対にさせて貰えないであろう。
*ただでさえ身持ちが固くて貞淑な女性で性的要素に関することは赤の他人は見せたがらない彼女なのだから無理ではないか。
*そもそも当時は五代君と響子さんは本当の恋人同士には成り切れていなかったのだから実際にはキスどころかハグすら不可能であった。だからこそ自分にもまだチャンス有りとばかりに積極的に五代君へアタックを仕掛けていた八神なのだから。
“ガチャ”と管理人室の扉が開いた。
[あら?四谷さんではないですか?]
[いやいや、どうも。何かいい話で盛り上がっているようなので]
四谷さんが入って来た。
“火の無い所に四谷は立たず。”
と言う一刻館暗黙の不文律があるように、噂話には必ず首を突っ込む四谷さん。
どこから聞きつけてきたんだか。
[そう言えば今日五代君を・・・・]
[五代君を????]と一の瀬さん。
おもむろに四谷さんは勿体振って切り出した。
[そう言えば今月は懐具合が苦しくて・・・・]
[だから、うちの主人が今日どうしたんですか!]
[家賃の支払いが・・・・]とすがるような目付きで四谷さんは話す。
[分かりましたから、10日位でしたら待ちますから、それでどうしたんですか!?]
まんまと四谷さんの策略にはまった響子さん。
流石は四谷さん。技にも年季が入ってますね。
[実は先程ですが五代君を時計坂の駅近くで見掛けまして]
[え?さっきですか?人違いじゃないですか?]
夫は今頃は職場の保育園にいるはず。そこからかなり離れた駅になど居る訳が無い。
他人の空似ではないかといぶかる響子さん。
[いや~、あのお顔は間違いなく五代君でしたよ]
[それに・・・]
見間違いは無いと自信たっぷりに言う四谷さんは更に何か言いたそうだ。
[妙齢の女性と一緒の様子でしたが・・五代君が]
と・・・衝撃的な一言が!
“カチャ~ン!!”
思わず持っていた湯飲みを落としてしまった響子さん。
[・・・・・]
予期すらしない四谷さんの一言に、響子さんは呆然としてしまい言葉が何も見付からない。
[あ~あ~、お茶こぼしちゃって]
[ほら四谷さん、あんまり管理人さんイビっちゃダメだよ!愛する旦那の五代君に関しちゃ変でも何でも全く冗談が通じないんだからさ]
呆然とする響子さんを見て一の瀬さんが四谷さんを嗜める。
[で、四谷さん、その女の人は幾つ位でさぁどんな人だったの?]
何だかんだで食い付いて来る一の瀬さん。
[いや~、その女の人のお顔までははっきりと見れなかったんですが]
[歳の頃は五代君と同じ位に見えましたし、どこかで見た事あるような気もするのですが・・・]
含みのある四谷さんの発言だった。
~日も暮れて夕方~
“保育園さぼって何やってるんだろ?”
もやもやした気持ちで一刻館を後にし自宅へと戻る響子さんだった。
~その日の夜 五代家~
[ねえ、あなた。ちょっと聞きたいことがあるんだけど]
春香ちゃんも自分の部屋に戻った夜遅く、夫婦二人の寝室で響子さんはあの四谷さんから聞いた話をさりげなく確かめてみたくなった。
[ん?何だい、響子]
[あなた、今日の昼間時計坂の駅に居たんですってね?]
[何か用事でもあったの?]
いきなり駆け引き無し、ど真ん中に直球勝負の響子さん。若かりし頃から押したり引いたり、策を弄しての搦め手は性格的に好きではないのでしたくないからしないのが彼女である。
[と、突然何を変な事言い出すんだい?]
慌てた五代君の表情が明らかに変わった。
[うん、あのね、四谷さんが見掛けたって言うから聞いてみただけ]
[人違い・・・よね?]
まるで自分に言い聞かせるように上目遣いのポーズで夫に尋ねる響子さん。
[あ、ああ。四谷さんの勘違いだよ。きっと]
[もう今晩は疲れているから先に寝るよ・・お休み、響子]
そう言い終わると、いつも毎晩欠かしたことのないお休みのキスだけを響子さんにして五代君は自分のベッドへと潜り込んでしまった。
今宵は夫婦の営みを求めずに・・・。確かに昨夜はかなり激しく励んだけど(八神の影響で20年前の状況再現プレイで互いに大興奮してしまった)・・・でも今夜も・・しそうな雰囲気だったのに・・・”別にノーマルでも構わないから良かったのに”・・・。
“”嘘を吐いてる・・・絶対・・・””
自分の問い掛けに対して逃げるような態度を取る夫。
これは間違い無いわ。何かを隠していると直感した響子さん。
まだ肝心の事を聞いていないのに。
“”誰と一緒に居たんですか?””・・・・と。
眠れぬ夜が響子さんに訪れていた。
以下、次回