長年のガールフレンドであった七尾こずえちゃんが銀行の先輩と結婚式を挙げた日を当時ちゃんと五代君は知っていた。
響子さんを対象とした恋敵の三鷹さんも見合い相手と結婚することとなり競争から消えた。
五代君を対象とした恋の駆け引きレースで本命の響子さんに対して対抗馬のこずえちゃんも五代君が別れを告げる前に自ら別の男性と結婚すると告げて争いの場から消えてくれた。
偶然にしろ運命にしろ五代君と響子さんの恋物語に障害物があったのだが、それが自然な形かは分からないがとにかく消滅したのだ。
噂話が大好きな一刻館の住人たちが情報を集めてきて五代君や響子さんにその日程などを教えたのだ。彼らからしたら冷やかしとからかい、五代君たちに何か動揺があれば酒の肴にするつもり満々であった。
だが、表向きはもう終わったことで自分たちには関係ないですよと五代君は皆に宣言し響子さんにもそう伝えたのだが・・・・。
実は・・・色々とその件で問題が起きたのだ。それは結果的には五代君と響子さんの仲を引き裂くものではなく逆に深く繋ぎ止めることとなり、文字通り災い転じて福と成すになったのだが・・それは結果的には幸運にも良い方向に転んでくれただけであったのだ。
そうそれは確か3月の吉日であった。その翌月の4月には五代君と響子さんは結婚式を挙げる手筈であった・・そう既に二人は恋人同士となりお互いの両親に承諾も得て式を待つだけの甘い熱愛中カップルであったが、流石にこずえちゃんの結婚式と聞いては
余り冷静な気分にはなれなかったし、しっかりと別れを済ませた訳ではなかった五代君としては複雑な気分が晴れずにいた。
ふと・・もう17年前の記憶を思い出してみる。かなり鮮明に覚えていることからも忘れ難い思い出であると五代君は思う。あの頃はみんなまだ若かった・・自分も響子さんも含めてみんな・・・。
段々と頭の中の映像が白黒からカラーにと色鮮やかになっていく・・・・。
その日の夜、一刻館の5号室での宴会・・住人はほぼ全員が参加していた。一の瀬さん、二階堂君、四谷さん、朱美さん、五代君に響子さん。(賢太郎君と一の瀬さんの旦那さんだけ不参加)
その場では五代君がこずえちゃんが翌日結婚式であることを知らさせるも、もう関係がないですからと宣言をして・・・皆からはつまんないのと不平を言われ、その後にお開きとなり解散して自分たちの部屋へと戻っていった・・・。
そして五代君は響子さんと一緒に管理人室へ行き、その話を少しだけしたのだ。別に響子さんも五代君の自分への愛情や気持ちは疑っていないし問題は何も起きないかと思われた・・・。
だが、響子さんには黙って式当日の早朝にでも挨拶に行き、これまでのお礼とお詫びを言いに行こうと思っていた五代君はその晩は管理人室で響子さんとは一緒に寝ないで早起きの為に自分の5号室で眠ろうとしたのだが・・・それは響子さんに見抜かれてしまった。
*
*~一刻館 管理人室にて~
*
*五代君は宴会参加で少し疲れたからと言いながら寝る前に挨拶をしなきゃなと思いつつ、
*(明日の朝は6時には起きて7時までにこずえちゃんの家に行こう)と考えて
* 「管理人さん・・おれ、今日はもう上で寝ます・・」
*そう言って管理人室の畳から立ち上がって5号室に帰ろうとしたのだが・・・・。
*
* 「!?・・ええ・・お休みなさい・・」
*響子さんは管理人室を出て行きかけた五代を黙って見送ろうとするが・・
*「でも五代さん、どこで・・?」と何故か呼び止めて尋ねる。
*
*「え・・自分の部屋で・・・」
*五代君はそう答えるが響子さんの表情を見て言葉に詰まる。
*じっと五代を見詰め、怒るでもなく笑顔でもないある意味無機質な感情を押し殺した表情を崩さない響子さん・・・。
*
*「・・・・・・・」
*何も語らない彼女の意図を知りたい五代は口を開くが・・
*「きょ・・響子さん・・・?」
*どのような尋ね方ですれば良いのかが分からず名前を呼ぶだけで後が続かない。
*
*「ねえ、五代さん・・。こずえさんって五代さんのこと本気で好きだったんですよね?」
*
*「はい、そう思います。でなければ5年近くも付き合ってデートなんてしてくれなかったはずです」
*五代は正直に告白をしなければ響子さんは納得しないと思い、正座する彼女の横に腰を下ろす。
*
*「じゃあ何故キス1回だけの関係で終わったんですか?しかもあれは、こずえさんが五代さんを上手く騙しただけですし、もっと他に色々とチャンスあったと思っちゃいますけど・・・」と響子さんは更に核心的な内容に話の舵を切る。
*
*「いえ、それは・・確かにあったというか、自惚れて言えばその、おれが望めばそういう関係になれたと思います」
*五代は過去のこずえとのデートでの出来事を回想しつつ正直に答える。
*
*「じゃあ何故、若くて健康な五代さんがそういうこと望まなかったんですか?・・・別に自然なことでおかしくなんかないとあたし、思います」
*響子さんは横に鎮座する五代を見詰め努めて冷静に質問を挙げていく。
*
*「おれ、望むというか・・望もうとしたことあったけど、結果的に本気で望めませんでした。男が本気で望まなければそういう関係には・・・こずえちゃんだって常識を弁えた女の子ですから結果は何の進展も無い形で終わりました」
*五代が望もうとしたことがあったと言った瞬間、響子さんの表情は一瞬曇るものの再び無表情に戻って語る。
*
*「それは何故?・・ですか。立ち入った話で申し訳ないですけど・・・あたし聞きたいし聞いてもいいですよね?」
*響子さんの表情は徐々に悲しげになり膝の上に置いた両手の指が微かに震え出す。
*
*「はい・・それはおれが・・響子さんと既に出会っていたからで、まだ何の関係も結べない時からでしたけど、おれがその・・あの大人の男女関係を結びたいのは、恋人になりたいのは響子さんだけでしたから・・・・おれが勝手に響子さんに憧れてずっと恋していたから、
*こずえちゃんとはそんな関係になりたいって考えなかったからです」
*
*「五代さんも罪作りですけど、あたしもある意味加担したのは確かですからお互いに罪作りでしたね」と無理に少しだけ微笑んで響子さんが語る。
*
*「い、いや、響子さんは加担なんてしていませんよ・・おれが優柔不断なだけで、悪いのはおれなんですから、ほんと。・・本気で恋人になりたいと思っていないのに、こずえちゃんの実家で何度も夕食をご馳走になったりとか・・・」
*五代は溜め息を吐きたい気分でそう言い終えると下を俯く。
*
*「ごめんなさい、五代さん。あたしあなたを責めてるんじゃないんです・・・あたしと三鷹さんも同じような感じでずっと・・三鷹さんはかなり前から積極的に真剣にあたしとそういう関係になることを望んで、紳士的にでしたが求めていましたから」
*響子さんは目を瞑り昔を思い出しながら五代へ自分のことも告白し始める。
*
*「・・・・・」
*五代はそのまま沈黙を保ち響子さんの告白の続きを待つ。
*
*「でも結局本当に何も起きませんでした。あたしが全て望まなかったからです・・。もうこのまま流されてしまおうかと思ったことありましたし、三鷹さんから結婚を本気で考えてお付き合いしてくれないかとのお願いに凄く悩んで眠れない日々もありました。
*でもやっぱり何にも起きなかったのは・・あたしも・・・・同じくあなたと知り合っていて、五代さんのあたしへの気持ちを知っていて、それですでに何故かずっと心惹かれていたんだと思います・・あたしも五代さんに。
*だからこそ・・あたしは三鷹さんとは外食を一緒にしたりコンサートに行ったりするだけでキスも何も無い紳士的な男性の友達の関係のまま終わったんだと思います」
*響子さんはそこまで語ると先程よりもやや微笑んで五代に顔を向ける。
*
*「響子さん・・・」
*五代は聞きながら響子さんと三鷹が単なる友人関係に過ぎなかった事実をしっかりと彼女自身から告白してもらい、ほっとして嬉しくなり自分の表情が安堵しているのが分かる。
*
*「はい、何でしょう?」
*
*「もしもおれたちが・・おれと響子さんがもっと早く恋人同士になれていたら・・おれの今の職業が変わっていたかも知れませんが、こずえちゃんとおれ、響子さんと三鷹さんの関係と結果は全く今の状況と変わりませんね。運命とまでは言いませんけど」
*
*「ええ、運命なのかは分かりませんけれど・・結果が同じなことには変わりは無いのが・・・本当に良かったと思います。・・・ところで五代さん?あたしにあと一つだけどうしても聞きたいことがあるんです。答えてもらえますか?」
*
*「それははい、もちろんお答えしますよ。何でしょうか?」と五代が語る。
*
*「明日・・五代さんはこずえさんに会いに行きますか?」
*いきなりのど真ん中への直球勝負で響子さんは挑む。
*
*「!?・・いやそれは」
*
*「やっぱり会いにいこうと考えてらしたんですね・・五代さんらしいですけど。本当に優しくて・・・・」
*響子さんは表情は微笑んでいるものの瞳は真剣で微笑んではいない。
*
*「いや・・うん・・・やっぱり礼儀として・・挨拶して祝福の言葉の一つも言って・・・きちんとお別れしないとって正直考えてしまってました。おれとしてもケジメをつけたいですから」
*
*「意外じゃないですよ。五代さん、そういう人ですから。あたしちゃんと・・予想してました。でも・・」
*
*「でも?」
*
*「五代さんがこずえさんにはそういった気持ちでしか望まないの確信してます、あたし何も疑っていませんよ。・・・でも、です」
*響子さんは一旦言葉を切り、何故五代を呼び止めたか理由を述べ始める。
*
*「さっきあたしにお休みなさいって言ってくれた時に五代さん・・あたしのことを何て呼びました?覚えていますか?」
*
*「え・・?」
*
*「いつもみたいに『響子さん』って名前じゃなくて『管理人さん』って呼びましたよね?」
*
*「え?え?そうでしたっけ」と五代は先程の自分の言葉を必死で思い出すが記憶が定かでない。
*
*「久し振りに五代さんから『管理人さん』って呼ばれて・・懐かしいんじゃなくて、また昔みたいにこずえさんとデートに行くんだって一瞬思い出しちゃって・・何かちょっと違和感を覚えて、それで五代さんなら明日こずえさんに会いに行くかもって予想しちゃったんです」
*響子さんの瞳だけはまだ笑わない。五代は響子さんが何を言いたいのか、何を自分に求めているかがここに至ってようやく自覚できた。
*
*「・・(ごくり)・・」と五代は唾を飲み込むことしか、この瞬間は出来ない。
*
*「ねえ、五代さん。あなたの新しいパジャマならあたし洗って干してここに今ありますよ。下着だって一緒です。・・ところでどこで今夜は眠るんですか?」
*
*「・・・・」
*五代君は即答できなかった。
*
*「五代さん?」
*響子さんの美しい切れ長な瞳だけは笑わぬ笑顔に五代君は逆らえないのではなくて逆らいたくなかった。些細なことでも愛する響子さんの心を害するのは五代君自身が凄く嫌で出来る限り避けたいからだ。
*響子さんの不条理かも知れない我が侭なヤキモチこそ五君代への真摯で無垢な・・恋慕の証であるからには当然の如くそれに応じるのが自分の神聖で大事な義務であり・・それが出来るのは自分だけだとの覚悟が五代君にはある。
*
*「ここで今晩寝ますよ、響子さん。5号室には戻りません」
*((これでいいですか?とは決して聞けないし、分かりました!などと絶対に言ってはならない。あくまで五代君の自由意志であると言わなければならないと心の警告灯が激しく作動して心臓の鼓動だけが体内で響いている))
*
*「はい♪それじゃあ、お布団を敷きますから手伝って下さいね?」
*響子さんのすこぶる上機嫌になった笑顔に『あたしは行かせないわ』という強い意志を感じ・・それに心から喜んで従いたい自分がいることに気付く五代君であるが、それと同時に強くどす黒い欲望も湧き出した。
*五代君が心底から惚れ抜いている・・常に朗らかで優しく家事などをする姿も自然に優雅で自分が一目惚れして以来6年、容色も全く衰えず若々しくて見目麗しいままどころか更に美しく綺麗になり正に五代君にとって最高に理想の女性であり続けてくれる響子さん・・・。
*・・こんなに素晴らしく魅力的な美人が・・類稀な美貌の女性が自分のような甲斐性無しのボンクラ男を独占したいとの意思・・それどころか彼女は・・・響子さんは五代君に『あなたはあたしが独占するの』という決意まで明瞭に示してくれるのだ。
*五代君は響子さんに対して不満など全く無く、満足どころか大満足な点しか感じていない。
*昔は全く叶えられなかった白昼夢のような妄想を・・いつも夢見ていた麗しい裸体を思う存分に拝み直接五代君の身体で堪能するという、現在では遂に実現を果たして何度もしたように今ここでも抱きたくなるのはオスの本能であろう。
*
*押入れから二人分の布団を出して畳にお互い慣れた形で敷くと・・響子さんが呟く。
*「五代さん・・・あたしの髪を束ねているリボンって解(ほど)けます?」
*
*「・・ええ、それはもちろん簡単ですから」と五代君が返答する。
*元々解くことなど簡単な作業で事実何回もしていることでたやすいことだ。
*
*「でも・・あたしの髪の毛のリボンを解いていいのは・・・五代さんだけですよ?」
*響子さんはゾクッとする笑顔で女性の香りを漂わせる。微かに開いた口から真っ白な歯を見せながら魅惑的に微笑む彼女に魅入られたように五代君は手を伸ばしリボンに手を掛けて解く・・・。
*
*「・・あたしの服も下着も脱がせていいのは・・・五代さんだけなんですから」
*五代君は生唾を呑み込み愛しい恋人からの・・・艶やかな色香を匂わせたお願いを叶えていこうとして今までに何度も脱がせたことなどあるはずなのに指先が痺れ震える感覚が止まらない。
*五代君も響子さんを『独占したい』『誰にも渡したくない』と常に心の中で願っているのだからその意味ではお互いに欲求する意識は完全に一致している。
*もうすぐ自分と結婚することを同意してくれた目の前に居る見目麗しい美女・・響子さん。彼女とは大人の男女として常日頃から肉体関係を結んでいる事実。その手に入れた幸運過ぎる現実を崩してはならない。
*
*恋人になって以来、日常では愛情の篭った微笑み・・それは五代君だけにしか見せないものだ・・・更に日々の手料理も五代君の好みを色々と聞いてくれて腕を振るってくれている・・・そして二人だけの場所なら五代君が求めれば性的欲求にもほぼ必ず応じてくれて・・
*誰しも絶賛するであろう美麗な肢体とその時に晒される彼女の痴態などが正しく五代君だけの独占である得がたい幸福な事実。三顧の礼どころかお百度参りをしても実現しなかった夢が遂に今現在実現しているのだ。
*
*それらをまた思う存分に体力の続く限り味わうことが今からここで出来るのだと思うと、もう五代君の理性は止まらなかった。
*「響子さん!」とだけ叫び、抱き付いて五代君は彼女のふっくらとした唇を貪る・・・・・それから体力の続く限り3度、4度、5度・・・五代君からだけでなく響子さんからも求め合い愛し合った。そして夜が白むまで激しく濃厚に交わり、翌日は昼近くまで
*一緒の布団で二人は抱き締め合って・・手を握りながら眠っていた。響子さんが手を握ったまま眠ることを望んだからだ・・・それ故に当然ながら五代君はこずえちゃんの実家である七尾家に行くことは無かった。
*
*その夜以来、二人の関係は物凄く進展した。それまでは2、3日に一度くらいのペースで婚前交渉を行っていたが、この日からはほぼ毎日であったし・・管理人室やその他の場所でも、とにかく二人きりになりさえすれば余り言葉も交さなくてもお互いを求め合って、
*若々しさもあり・・とことん何度も気が済むまで思う存分に愛し合った。そしてそれからは半分同棲に近い形で管理人室で生活を送り、結婚式の5日前くらいからには完全に同居を始めていた。もっとも5号室に大きな荷物などは結婚後もずっと置いたままであったし
*同居を始める前の一夜は別々に寝て過ごした。響子さんが惣一郎さんの遺品を音無家に返却すると宣言したその夜だけは一人で寝かせてあげようと思った五代君が気を回して自分は5号室で寝たのだ。
*そうして響子さんが遺品を返しに行こうとした日、惣一郎さんの墓前にて五代君が自分ひとりで誓ってくれたのだ。”惣一郎さん、あなたをひっくるめて響子さんをもらいます”と。それを五代君の陰で聞いていた響子さんは嗚咽を必死で隠したのだ。
*彼の、五代君の余りに大きな彼女への・・響子さんへの大きな愛に感激と感動と・・そして彼女自身の心の中にある、新たに夫となってくれる五代君への愛の重さに響子さんは震えが止まらなかった。だからその場で呟いたのだ・・”さようなら、惣一郎さん”と。
*そしてその日の夕方・・五代君が仕事から帰宅し響子さんと夕食を共にするために管理人室へ行った際に”お帰りなさい”と優しく出迎えてくれた響子さんがいつもとは様子が異なっていた。
*相変わらずの清楚で上品な・・とても慎み深い美しさを漂わせていたが、その日はそれが憑き物が落ちたように五代君を見詰める眼差しが、瞳が違っていた。完全に信頼と愛情を寄せる愛しい男性に対して彼女の心にある決意を告白している視線であった。
*恋人に対してのものではなく完全に愛する夫・・人生の伴侶に対するもので自分たち二人はもう夫婦なのだという意識が・・覚悟が感じられた。((ねえ、五代さん・・あたしはあなたの妻なの・・そして、あなたはあたしの夫なのよ・・そうでしょう?・・ずっと・・・))
*だから五代君も愛する響子さんに対して同じ感情と意思を伝えたかった。もう別々の部屋でなど過ごしたくない、と。入籍や結婚式など待てない、ずっと同じ場所で二人だけで暮らしたいんだ、とも考えて・・そう行動をしたかった。
*五代君を見詰める響子さんの表情が口には出さずとも、それを完全に望んでいたのだ。五代君も男として、これは俺から言わなければならないと自覚し『響子さん、おれたちもう一緒に暮らしましょう』と面と向かって宣言をしたのだが・・・
*もしも五代君が言わなくても響子さんは『ねえ、五代さん。あたしたちもう一緒に暮らしませんか?』と彼女らしい口調で恐らく言ったであろう。流石に愛する女性にそこまで言わせたくなかったから五代君は自分から言ったのである。
*
*響子さんも五代君からの言葉にはとっても嬉しそうに微笑んで喜んでくれた。美しい桜の花が・・開花寸前の七部咲き状態から見事に満開へと花開き、咲き誇るかのようで眩しいくらいに輝いた表情だった。
*『はい!あたし嬉しいな・・あたしもそう思って考えていたんですよ。・・だからあたしから言おうかなって思っていたら五代さんが言ってくれて・・・嬉しいんです!あたし幸せです!』
*
*響子さんの無垢で純粋な飛びっきりの笑顔・・本当に魅力的な美しい微笑で彼女からその場で抱き付いてくれた。何とも言えない位に芳しい若い女性特有の心地良い香りと共に柔らかい肢体を五代君も強くしっかりと抱き締めて応じた。
*その際、彼女の表情からは・・『うふふ♪あたし、五代さんを捕まえた!捕まえちゃった!』とでも言いたげであったが、それは五代君も全く同じ感情であった。自分としてはもう何年も5年も6年もずっと響子さんを捕まえたいと望んで夢見てきたのだ。
*それが本当に実現して夢心地を通り越して天国なのか極楽なのか何と形容していいのか分からないくらいに嬉しかった。五代君も響子さんも気分は完全に夢心地であったのは間違い無く確かであった。
*
*結果としてこずえちゃんとの件で五代裕作と音無響子という恋人は絆を深め合って、既に婚約していたが式に向けてますます盛んに愛を確かめる日々が続いて・・・そして無事に式を挙げて翌年には愛娘も・・愛の結晶が誕生して、それ以降もずっと一緒に幸せに
*暮らしてきたのだ。経済的には裕福とは少しばかり無縁であったが、別にそれは二人にとって大して重要な望みではなかった。常に一緒に寄り添い愛し合って過ごす、どちらかが寂しい気持ちになどならないしなりたくない、それらのことを最大の目的として過ごしてきたのだ。
*一刻館の住人たちが無遠慮に二人を茶化したり冷やかすのは日常茶飯事であったが結婚後はほとんど通用しなかった。”アンタら夫婦らしいこと、ちゃんとやることやってんの?”・”休日なのに別行動なんて珍しいね。それって擦れ違いじゃないのかね、寂しくないの?”とか、
*”五代君の職場って若い女性ばかりだから心配じゃない?まあ不倫とか浮気じゃなくて五代君が手を出そうとして失敗するとか問題を起こしたりして?”などなど過激さは更にエスカレートして酒の肴にしようと目論んでいたのだが・・そんな毒舌には何も動揺はしなかったのだ。
*響子さんからの『あたしとあの人、裕作さんは凄く深い絆でいつも繋がっていますから・・ずっと永遠に夫婦なんです』と堂々と宣言をして完璧に本気の気持ちを凛々しくも麗しい表情に浮かべて眩しく微笑む姿に圧倒されたのであろう。
*そこまで堂々と言い切られては突っ込み所が無いとばかりに押し黙った住人たちではある。なんせそれまでは朱美さんなどから”幼稚園児のお遊戯かおママゴトみたい”と酷評されていたのが自分たちの世界を作って周囲の人間が眼中に無い様子を見せ付けられてはなす術が無い。
*ついこの間までは響子さんも五代君のことを”五代さん”としか呼んでいなかったのが今では愛しげに優しく嬉しそうに”裕作さん”と呼ぶようになり(娘の春香ちゃん誕生後は”あなた”)、五代君に至っては恋人になる前、わずか半年前までは響子さんのことを"管理人さん”と呼び、
*恋人になれた以降は”響子さん”、晴れて夫婦となれた日からは”響子”と呼び捨てになり、でも口調も眼差しも優しく大好きで愛しい気持ちが溢れていたので、あの信じられないくらいに不器用でもどかしかった二人が遂に本当の夫婦になれたのか!という非常に深い感慨を実際は
*皆が感じていたのだ。なにせ五代君が帰宅した時に出迎えた響子さんが流石にその場でキスはしないが自然に腕を組んで寄り添い二人の部屋である管理人室へ消える姿はどう見ても愛し合っている男女で熱愛中の新婚夫婦にしか周囲の目には映らなかったからだ。
*彼ら二人が仲良く銭湯に行くのも日常茶飯事だったが、時として入浴する前に部屋で熱烈に生々しく愛し合った後ではないかと邪推できるくらいの充実した甘い雰囲気をも醸し出していたから正直冷やかすどころか唖然呆然と更に圧倒させられてしまっていたのである。
*
*でも振り返って考えてみると響子さんの五代君に対する例の日・こずえちゃんが結婚する前夜の判断・五代君が七尾家に挨拶とケジメを付けに行くことを阻止する・は正しかったのだ。もしかしたら映画の”卒業”ではないが、こずえちゃんが”あたしを連れて逃げて”などと
*言い出し大騒動を巻き起こしていた可能性だってあるのだ。そうなれば五代君もただでは済まないし響子さんとの結婚も無事に予定通りに出来たかどうかは分からない。だから実際には紙一重に近い状況だったかも知れないのだ。
*もちろん五代君には響子さん以外の女性と結婚する意志など無かったのだから、もしもこずえちゃんに提案されても拒否して無事に済んだ可能性もあるのだが、流されやすくトラブルに巻き込まれやすい性格なので君子危うきには近寄らずが正解であった。
*
*七尾こずえという女性は響子さんと五代君の間柄において障害となる存在のようでいて、実は二人に互いの気持ちを再確認させ結果的に強く結びつける要因となったのは事実である。
五代君は鮮明に記憶を回想しながら自分たちの結婚、すなわち愛する響子さんと自分との関係にも大きく関わったこずえちゃんの結婚前夜の顛末を考えていた。人は動くべき時と動いてはならない時があるものだとはやはり深く感じていたのである。
響子さんは五代君の思考回路と行動パターンをほぼ完璧に把握していて、あの判断はそこから導き出された素晴らしい措置であったと感謝していた。
自分は絶対にどうしても響子さんと結婚して夫婦になりたかったし、二人で家庭を築いていきたかった。出会ってから6年以上を費やして遂に遂に実現した夢であるのだから。
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こうして結婚以来17年が過ぎて、五代君は妻の響子さんに対して不満など現在でも何も無い。採点するものではないが100点満点で120点以上の満点など軽く超越した大満足どころか超満足である。
女性らしい優しさに溢れ何事もとことん尽くしてくれて自分みたいな男を心から愛して接してくれる素晴らしく魅力的な妻。
見目麗しいのは昔から相変わらずであるが上品で慎み深く気取らない性格が内面から滲み出るから美しさが更に輝いて見える。
確かに響子さんの美貌は自分と比較しても勿体無くて不釣合いと言われていて、反論など何も言えないが、それだけでは決してない。
妻として一児の母としても、こんなに立派に家庭を守ってくれる女性など、ましてや自分と結婚してくれるなど恐れ多いことなのかも知れない。
だがそんな謙遜など響子さんは聞きたがってはいない。そう、不要であるから、そんな暇があれば彼女を大切に優しく包み込んで傍にいてあげることだ。
彼女が妻として母として一生懸命に考えて夫の五代君に提案を持ち掛けたら、それを大事に尊重して受け入れることだと思っている。
一人の男として自分の妻が若々しく美しい容貌を保ってくれている、美辞麗句無しで本当に綺麗な女性であるのは正直とても嬉しい。
彼女を求めて愛し合う時など余りにも自分の妻である響子さんの身体が大人の女性としての柔らかい曲線を描いていて乳房も腹部も腰も、そして性器も眩しく輝くように麗しいので飽きることなどありえないと素直に思う。
本当に何度見ても触って撫でて滑らかな肌触りを堪能しても飽きないし自分の欲望が尽きることなど全く無いと言い切れる。
普段の生活で眺めているだけでも嬉しさが込み上げてくる。妻が凄く魅力的な女性である幸運を常に感謝しなくてはと考えている。
だから当然ながら彼女に似合う新しい洒落た服など高級でなくても幾らでも街にはあるだろう。だが彼女は結婚以来、自ら求めたことは無い。購入するのは普段着だけだ。しかし妻だって一人の女性だ。
綺麗な衣装に心をときめかせるのは、お洒落は女の性(さが)であるし、欲しいと思わないことはないはずだ。
だが、そんなことに使う金銭があれば夫や娘の為にといつも考えてしまうし、それが幸福と考えている素晴らしい三国一よりもっと上の最高の女性だと太鼓判を押せる。
響子がおれには”贅沢は敵です、でも倹約じゃなくて堅実にね”と優しい笑顔で語ってくれるのが正直申し訳ない。
では自分は?果たして夫として相応しいのか?妻と結ばれた夜に宣言した。
”俺にしか出来ない幸福を響子さんにあげたい”
・・・おれにしか出来ない?一体おれに何の能力がある?収入も保父として保育園の園長として真面目に働いて何とか平均的な同年代の社会人に手が届くのか届かないのかの水準だ。
年齢を全く感じさせない美貌の妻とお似合いな美男子なのか?いや、そんな評価は生まれてこのかた得たことは一度も無い。背丈と体格だけは男性として見劣りせず妻と並んでもカップルとして成り立つが、そんなことは全然大したことではない。
おれにしか出来ないこと・・・彼女にとって見栄えや年収で相応しい男性など山ほど居る。数える必要も無い。
だからおれは・・・彼女の繊細な精神と心を壊れないように必ず身を挺して守ること。
おれの住んでいるアパート一刻館の新しい管理人として赴任して来て、その初対面の時点で彼女は21歳の若さで既に未亡人であった。それも新婚の半年足らずで最愛の夫に先立たれた。
その彼女、”響子さん”は信じられないくらいの優しさで亡くなった男性の記憶を大切にしている。
普通であれば彼女と添い遂げたい男性は本音では忘れて欲しくても最初は言わない。だが、いざとなったら自分と亡くなった男とどちらが大切なのか詰問するだろう。
それは男のプライドと言うよりも、”響子さん”が好きであるからこそ自分だけを振り向いて考えて欲しいから、詰問をしてしまうに違いない。
男なら誰しもそう考えるのは普通だ。だから自分としてもその心理は容易に分かる。
最大最強の恋敵であった三鷹さんなどは別の手口で口説こうとしていた。”亡くなったご主人のことは忘れて新しい幸福を築きましょう”・・彼ほどの男なら自分自身に対して確固たる自信、自負心があるからそう言ったのであろう。
”僕の方が上ですよ”との意識が暗に有るからそう言うのだ。
だが自分は・・おれは違う。違うぞ・・違うんだ。絶対にそんな他の男性たちとは異なるし違う。
自分と初めて出合った時から彼女の心に存在する亡夫の記憶と思い出。それを忘れ去ることなどせず大切な記憶と喜怒哀楽の思い出と考える、繊細で慈愛に満ちた心を持つ女性だからこそ自分は愛するのだ。
そう、だからおれは彼女の亡くなった夫である男性の墓前で誓った。
”あなたと言う男性をひっくるめて響子さんを貰います”・・それがおれの本心だ。嘘も何も無い。おれが愛する女性は損な生き方しか出来ない不器用な人だ。
あんなに何事も優雅に華麗にとってもスマートにこなすのに生き方だけは不器用極まりない。
だからこそ、おれが愛するのだ。おれにとってただ一人の女性として。
おれにしか出来ない幸福とは・・彼女の生き方考え方を否定などしない。
それが自分の最も愛する女性だからこそ・・何も変わって欲しくないから・・変える必要など何も無いと言い切り態度でも示す。
それ故に自然におれは彼女に呟いてしまう。
”おれって響子のことが本当に好きだな・・だって昔と何も変わらないから”・”響子みたいな優しくて素敵な女性がおれの嫁さんだから嬉しいんだよなあ・・ずっと夢だったんだ・・君と結婚することが”・”響子って今朝もとっても綺麗だね・・お弁当も楽しみだよ”
”お姉さんに任せなさいって言われると逆らえないよ・・おれの管理人さんだからね”・(嫉妬で膨れっ面されると可愛過ぎて)”ゴメンゴメン・・でも響子は歳なんか取らないね・・昔と同じく可愛くて綺麗で・・・怒られるかも知れないけど、ヤキモチを妬かれるのが光栄なんだな”
何も変わらない君という女性、響子がおれの最愛の女性。その彼女がおれの妻なのだ。
だから君に俺の嬉しい気持ちをそのまま、そのまま思ったこと、感じたことを口でも表情でも態度でも伝えておれの本心を・・そのままの心を伝える。俺が君に、響子に独占されたい男であることを含めて。
そうなのだ、ただそれだけがおれの出来る唯一のことだ。
・
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響子さんも結婚して17年が経っても夫の五代君のことをどれだけ愛しているのか?それは彼女が自覚している以上であるのは明白な事実だ。
彼女が夜中にふと目を覚ますと真横のベッドには常に夫の五代君が寝ている。夫婦の寝室はダブルベッドが1つではなくシングルベッドが2つだ。
だから愛し合う時はどちらか片方で行うし(交互に使うこともある)営みの後お休みの挨拶であるキスを交すと別々のベッドに入って寝るのが普通だ(もちろん一緒に同衾したい時にはそうする)。今夜も大変に艶めかしく熱烈に愛し合ったが眠るのは別々のベッドを選択した。
その夫を温かく優しい眼差しで眺めながら言葉には出さずに内心で考えている。
あなたってちょっぴり頼りなくて危なっかしいから本当に心配で目が離せないの。
だって、あたしのことを大事に考え過ぎて背伸びし過ぎるから。そんなに背伸びをしたら足元が危ないのに気付かない。
自分自身のことよりも、あたしという女を大事に大切に思っているし、そう思いたがる。自分のことは後回しであんまり眼中には無い。
あたしだって夫のあなたに大切にされたい。だからそうされると・・いつもだけどとっても嬉しいわ。
だけどあなたが足を踏み外してまで大切にされようとは思わない。あなたがケガどころか心が傷付いて苦しんでしまうのは見ていて耐えられないの。
だからよ!あたしが支えるの・・妻として。
あなたはあたしが居ないと駄目なんだからと考えている時、あなたに何が出来るか考えて行動する時って本当に生き甲斐を感じてしまうの・・女として。
あたしが何を考えても何をしても、あなたは受け入れてくれる。
それがあたしという女だからって。何も変わらないでくれって思っているのが分かるから凄く嬉しくて安心できるの。
お姉さんみたいに振舞っても怒らないし逆に喜んでくれる。”おれって響子のことが本当に好きだなあ”って言われるのが・・本当に幸せ。
あたしが拗ねたり嫉妬したりしてしまうと必死でご機嫌取りをするけど・・でも、あたしがヤキモチを妬いたことが嬉しいなんて憎まれ口なのか減らず口も叩くわね。ひょっとして結婚してから精神的に余裕が出来たのかしら?
でも・・あなたは全然何も怒らないわね・・・あたしがどれだけ拗ねても嫉妬しても・・それどころか自分勝手に誤解したり早とちりでヤキモチ妬いても・・そんなあたしを責めない。何にも。
あたしがあなたのことを好き過ぎて四六時中考えているから・・頭の中でだけど眩暈がするくらいに大好きだから・・・予想外の出来事があると表面上では冷静を装うけど内面では・・正直ね平静を保てないの。
あなたの為にお弁当を作る。朝食を夕食を作る。とっても美味しいと褒めてくれるから・・それだけではないけれど、調理がとっても楽しくて嬉しくて大好き。洗濯もアイロン掛けも掃除もそう。その光景を眺めているだけで、あの人は凄く喜んでくれる。
家事のご褒美にって優しく言いながら・・あの人はあたしをきゅっと正面から包み込んで抱き締めてくれて・・・大きな手と指で手の平全体で、あたしの髪の毛を梳いて撫でてくれる。ずっと・・ずっと・・・本当にずっと。
あなたの胸板から体温と香りを感じて・・手の平から愛情を感じて・・・何も言わなくても”愛している”って気持ちがじんわりと伝わってくるの。だから・・そうされるのが嬉しくて嬉しくて・・幸せ過ぎて・・・その間って、あたしは陶酔状態だと思う。
もう本当にあなたと暮らしていると幸せだから時が経つのを忘れてしまうの。本当よ。
でもあたしだって完璧じゃない。もう最近では滅多に無いけれど知らない間に何故か心が落ち着かなくなる時だってある。
今まで生きてきて最も、一番悲しかった記憶と感情。あたしの精神的外傷。あなたはそれが何かを知っている。ずっと前から何も説明は要らない。不要のまま。
だからそれを察知して理解してくれて何も言わずに・・泣きそうな表情でしがみ付いているあたしを抱き締めてくれる。
情緒不安定に陥ったあたしの心が平静を取り戻すまで1時間でも2時間でも平気でずっと傍に居てくれる。何も言わずに。
そうよ。あなたはあたしと言う女を見えない形で支えてくれる。
融通が利かなくて頑固なだけ、面倒くさくて割り切れない性格の女が・・そんなあたしが好きなんだ。愛していると言ってくれる。
だからあたしたちはずっと一緒に居る為に結婚をしたの。目的はただ1つ、夫婦として一緒に過ごす、ただそれだけ。あなたとあたしは表裏一体。どちらかが欠けても成り立たない存在なの。
あなたはあたしの心をこの世に一つしかない宝物のように守ってくれている・・壊れたりしないように。
だから・・あたしもあなたの心を守りたいから、守るの。
あなたの心?・・・そう、あなたはあたしを物凄く愛してくれている。あなたにとって一人しか居ない掛け替えの無い女として。
そうだからあたしも・・自分の気持ちを素直に伝えるの。あたしがあなたを独り占めしたいように、あなたもあたしを独占する気が満々ね。ずっと昔から。
あたしはあなたしか愛する対象の男性としか見ていない。あなただけなの。本当に。その気持ちを言葉でも表情でも態度でもいつも伝えるわ。
あたしがあなたしか見ていなくて独占されたい気持ち・・雰囲気で分かってくれているわよね?あたし、あなたに独り占めされたいの。女として。
でももしも上手く伝わらなかったら・・身体でも伝えるの。あなたにぴったりと寄り添って、抱き付いて。
あなたが愛してくれている、あたし、響子という女があなたを好きで、大好きなことはずっと変わらない。変わらないからあたしはあなたのことを大好きな、愛する男性としてずっと見詰めるの。
あたしが!あなたを!好きなの・・大好きで・・愛している気持ちを伝えることが・・・あなたの心を逆に守ることだって、あたし思っているわ。
あたしって・・・あなたの好み?お気に入り?趣味に合う?・・どうなのかしら。
髪の毛の長さはこのくらいがいいの?色々と気分転換でヘアスタイルを割と容易に変更できるし、あたしも都合が良いから、このままにするわね。
胸は・・あたしの乳房の大きさは間違い無くあなたの好みでお気に入りよね。だっていつもいつも手放してくれないから。一旦掴んだら・・なかなか離さないし。
サイズは出産の時には多少大きくなったけれど今も昔とほぼ同じ・・あたしにとってもあなたにとっても幸いなことに、ね?
まだ張りもあるから垂れていないのが女として嬉しいけれど・・あなたも喜んでるから嬉しいわよね、絶対。ここに呆れるくらいキスもするから九分九厘じゃなくて十割でしょ。
腰は・・お尻もだけど管理人として主婦としてあちこち動き回っているから、余計なお肉は付いていないと思うけど・・何とか許容範囲かしら。
手足も背中も・・お肌もまだどうにか皺も無いから愛撫したいと考えてくれているわよね。
顔は・・・それこそあたしって喜怒哀楽が激しくて頬とかの筋肉って常に運動しているから、ここもね、自分の目鼻立ちがどうなのか自分ではどうかはっきりしないけど・・少なくともあなたが綺麗と言ってくれているうちは大丈夫よね。
でも顔と言うよりも・・あたしが無意識で笑顔になって微笑んでる表情が凄く素敵だと言ってくれているから・・・そうよ、あなたを見詰めている表情が・・・だからこれは多分だけど余り変化が無いと思うの。昔みたいに。
そう、あなたはいつもあたしのことを物凄く褒めてくれる。とっても嬉しそうに微笑んで・・・。
歳なんか全然取らなくて若々しくて綺麗なままだなんて言葉を本気で呟いてくれる。
無理矢理でもお世辞でもない言葉が嬉しいけれど恥ずかしくて仕方がないの・・だってもう今年で44歳のオバサンなのよ・・あたしって。
それなのに今宵みたいに逞しくて優しくたっぷりとあたしを女として可愛がってくれて、お互いに気持ち良くなろうとして・・物凄く大事に大切に愛してくれる。
”おれは響子を抱きたいんだ”と言葉でも態度でも示してくれて・・・そう、恋人・彼女・婚約者・お嫁さん・奥さん・妻として・・あなただけの女として。
”美人って・・綺麗な女性って君のことをね、響子のことを指して言うんだよね”だなんて愛し合った後に呟いたり囁いたりされると・・・あなたにそう言われると何年経っていても頬どころか顔中赤面してしまうわ。
でもね・・”あなたったら・・・恥ずかしいわ”と口では言ってしまうけれど・・内心ではとっても女冥利に尽きるの。本音を言えば素敵な気持ちがして嬉しくて堪らないの。
だからあたし、あなたの目の前では・・五代さん・裕作さん・あなたに恋する乙女でいたい。だってあなたのことが好きだから・・大好きなの・・・愛しているわ。
あなたに綺麗だと褒めてもらえることが・・果たしてそれがいつまで続くのか自分でも分からないけれど・・・これから10年20年30年も経てばあたしだって皺くちゃのおばあちゃんよ。
でもそれでもずっと一緒にどこにも行かずに傍に居るんだと言ってくれている。必ず1日だけでもあたしより長生きして一人にはしないと誓ってくれたから。
だからあたしもどこにも行かない。ずっと一緒。何をするのもずっとずっと一緒。
もっともこれだから高校生の娘からママとパパは呆れ果てるほど恥ずかしい仲の良さだねと言われてしまうのよね。
そうよ。あたし響子とあの人、裕作は決して離れない夫婦なんだから。
愛情・・恋慕・・信頼・・それ以外のことでも全て・・凄く深い絆で繋がっている男女なのよ。
完