<ちょうど朝の9時を回った頃>
ジリリン・ジリリン
『はい、お早うございます。しいの実保育園です』
『あ、お早うございます。私、そちらで保父として勤めている五代の家内でございます。いつも主人がお世話になっております』
『五代君の奥さん?ああ、管理人さんの響子さんですね、お久し振りです。大学でもここでも一応先輩の黒木です』
『あ、ご無沙汰しております。色々と黒木さんには公私ともどもお世話とご迷惑を・・』
『いえいえ、堅苦しい挨拶は不要ですから。何かご主人の五代君に緊急の連絡でも?』
『いえ、あの、緊急という訳ではないんですけど、ちょっと主人に直接伝えたいことがありまして・・ただいま主人の手は空いておりますでしょうか?出来ましたら電話を替わって頂きたいので・・本当にすみません』
(ふむ~相変わらずの上品な美声じゃね・・)と黒木さんは内心で呟く。
『ええ、ちょうど勤務終了時刻が過ぎましたら大丈夫ですよ。ちょっとお待ち下さい』
黒木さんは電話を保留すると五代君を呼びに行く。
「五代く~ん、電話。奥さんから。こんな時刻に珍しいわね」
「はい?え?・・響子から?すみません、すぐに電話に出ますね」
黒木さんに電話が入ったことを伝えられ、スタスタとかなりの早足で歩き代表電話の設置してある場所へ向かう。
『はい、もしもし、五代ですが』
『あ、良かった、裕作さん?響子です』
『うん、どうしたの?何かあったのかな?』
『ううん、大したことじゃないんだけど・・昨日ちょっと実家であたし体調を崩しちゃって・・』
響子さんが申し訳無さそうに少し元気の無い声で夫の五代君に話し掛ける。
『え、何?どうしたの、響子。大丈夫なのかい?』と五代君は即座に声のトーンが変わり焦る気持ちが隠せずに尋ねる。
『あ、うん。病気とかじゃないから心配しないで。でもごめんなさい、あたしもう一刻館に戻ってるはずの時刻だけどまだ実家なの。・・・それで裕作さん、仕事帰りで疲れているところ申し訳ないんだけど・・・
全然急がないから実家に迎えに来て欲しいの。・・駄目かしら?』
響子さんから実家まで迎えに来て欲しいという用件の内容を理解すると五代君は瞬時に了解の意思を伝える。愛しい新妻からのお願いだ。可能ならば何でも速攻ですぐするのが当然だ。
『いやいやいや、もちろん行くから、安心して!なるべく早く行くから休んでて!』
『ありがとう、裕作さん。あ、でもあなたこそ焦らないでね。本当にゆっくりでいいから・・信号とかもちゃんと守ってね』
つい五代君が焦って道路の信号すら無視して慌てて走って来てしまうことを心配して響子さんは思わず習慣で・・ついこの間までの口癖のように2つ年下の夫を嗜める口調で返答してしまう。
『分かってるって!それじゃ実家に行くから、待ってて。うん、じゃあ切るから』
『うん・・待ってる。それじゃあ、ね』
響子さんは電話を置くとほっと一安心の気分になる。やはり電話だけでも夫の声を聴くと安心感が違う。泊り込みの仕事を終えたばかりの五代君に甘えてしまうのは正直気が咎めるが今日はどうしても一人で実家から一刻館へ戻る気力が湧かない。
父親は会社に出勤したが母親はまだここに居てくれている。このまま少し自室で夫を、五代を待とうとベッドに再びに横になる。
・
・
ピンポ~ン
「は~い、どちら様?」
「お、お早うございます、お義母さん!裕作です・・その、響子を迎えに参りました」
「あら、裕作さん。はいはい、ちょっと待って下さいね。鍵開けますから」
響子さんの実家、千草家にて。母親の律子さんが五代君を温かく出迎えてくれる。
「まあまあ、早かったわね。響子も待ち焦がれてたわよ」と律子さん。
「その恐れ入ります、あの、ご無沙汰してます」と五代君はほんの少しだけ緊張気味に挨拶する。
「挨拶なんていいんですよ、響子がね、珍しく体調悪いなんて言い出して元気ないから・・お願いしますね?」
「は、はい。失礼します」
玄関口にてバタバタと五代君が靴を脱ぎ、室内に入っていく。
チャイムの音で既に五代君が迎えに来てくれたのに気付いた響子さんがベッドから降りて自室から出ようとしていた。
ガチャッ
「裕作さん♪」
「響子・・大丈夫なのかい?・・そんな無理しないでベッドで寝てていいのに」
「うん、大丈夫よ♪・・そこまで悪くないから」
朝から元気が出ない、張り合いが無いし気力も湧かないなどと暗い台詞ばかり吐き顔色も本当に余り良くなかった響子さんだが、五代君の顔を見ただけで表情がぱあっと明るくなりどんどん頬に血の気が戻り元気な様子を取り戻していく。
そんなあんまりにも現金な娘の表情を見ていささか呆れながら自分もほっと安心する母親の律子さん。五代君に響子さんの部屋へ娘と一緒に行くことを促してくれる。
((まったくもう・・響子ったら・・本当に裕作さんの事が・・・大好きなのねえ・・・・当てられちゃったから・・ご馳走様とでも言うべきかしら?))
((あれだけ再婚しろ、再婚しろって口が酸っぱくなるまで言っても聞く耳持たずだった響子がねぇ・・・今や、裕作さん一筋で一途なんだから・・・唖然・・呆然だわよ))
律子さんからしたら感慨深い気がしてならない。一人娘の響子が強引に自分たち両親の反対を押し切って音無惣一郎という男性と結婚したのが19歳の時だった。けれども新婚生活は半年足らずで、その惣一郎の急死という悲劇で幕を閉じた。
それから何度説得しても実家には戻らず、こちらも強硬手段で一刻館の管理人として居座る娘の荷物を運び出したり大騒動を巻き起こしても娘の響子は実家には戻らなかった。
その後に再婚する意思を確認しに何度も娘を訪ねたが頑として首を縦には振らず、自分も夫も本当に手を焼いた。そのうちに三鷹さんというなかなかの好男子が響子に交際を申し込み、結婚を前提に考えてまでいるのが判明したから・・これで解決かと思いきや・・・
響子は実は三鷹さんとは恋人として交際などしておらず、結局その経済的にも申し分ない資産家の男前であった三鷹さんは見合い相手の別の女性と結婚してしまった。もう娘は再婚を生涯しないと決心したのかと大いに母親として嘆いたが・・・・実際には・・
何度か自分とも面識のあった一刻館の住人であった響子とは2歳年下になる男性が・・五代裕作と言う男の人が娘の響子の意中の男性と判明して本当にびっくり仰天させられた。
そうして何とか今年の4月にその五代と響子が結婚し嬉しそうに新婚生活を昨夜語ってくれたので、ようやくようやく親として安心が出来たし、ひょっとしたら懐妊も可能性が高いのだから母親として律子さんも嬉しい限りだ。
もっとも最初は確かに優しそうだが頼り無さそうな印象も感じていた律子さんは結婚が決まっても不安はあった。
けれども五代裕作という男性と何度も会ってみて彼が娘の響子のことを本当に心の底から大事に思い、普段から常に大切にしていることが二人の表情などを見ていて流石に実感できたから・・娘が、響子が大好きな男性と結婚できて本当に良かったと律子さんも今は感じている。
響子が未亡人であったことなど何にも気にせず、ただただ純粋に一人の女性として見守り添い遂げたい意思の持ち主で性根から優しく、本気で娘をとことん愛している姿勢には感心もさせられたし母親として嬉しかったのは事実だ。
彼が響子にベタ惚れで溺愛しているのは態度で分かる。それこそ一目瞭然だ。だが娘も彼に心底惚れている姿が表情、話し方で容易に誰にでも理解できる。あの娘も気が強くて頑固者だから裕作さんも大変ねえとはちょっとだけ思ってはいるのだが。
((まあね、男と女の関係って第三者には計り知れないものだし・・よっぽど何かにつけ気が合うんでしょうよ。お互いに好みなのか理想なのか、まあそうなんでしょうね・・・))
((里帰りして旦那の裕作さんの愚痴を言うどころか、一緒に暮らせて嬉しい嬉しいとかすっごく楽しくて幸せとしか・・延々と惚気話ばっかりを言い続けるんだから・・本当に幸せにか見えないし・・まあ、安心をしてもいいかな・・・))
響子さんの自室に入った五代君は開口一番。
「どうしたの、本当に珍しいね。いつも健康そのもので元気な響子が体調崩すなんて、ちょっと驚いたよ」
「うん・・・ごめんなさい。心配掛けて・・。たぶんちょっと呑み過ぎたのと、クーラーの効き過ぎだと思うの。それと・・・・」
「え?それと何?」
物凄く愛妻の体調が心配でまだ安心できない五代君は自分では座らずにとにかく響子さんをベッドに横にさせることを優先する。
「うん・・あのね・・・」
コンコン
響子さんの自室のドアを律子さんがノックして(逆に気を遣ってドアは開けずに)外から娘と婿に声を掛ける。
「響子、言ってたけど私も出掛けるわね!そろそろギリギリだし。あとはお任せするから。裕作さん!ちょっと私も外せない用事が有って出ますから。すみませんけど響子をお願いしますね」
「うん、お母さん。ごめんね。いってらっしゃい」
「・・え、あ、はい・・」
少し状況を読み込めていない五代君。だが奥さんの響子さんから母親も元々用事があって出掛けるので、後は二人で自由に過ごしてくれと頼まれていると説明を受けてようやく事情を理解する。
そして自分が立ったままだと響子さんも逆に落ち着かないだろうと椅子をベッドの横に置こうと移動させようとするが、響子さんに制止される。
「え?いや、おれも座ったほうが響子も落ち着くだろうって思って・・・」
「いいの、ベッドで一緒で座って。ね?」と響子さんに懇願されて、一緒に腰を降ろす五代君。
心配そうな表情が消えない、そんな五代君に腕を絡めて響子さんがもたれ掛かる。その体勢から身体を伸ばし顔を近づけて響子さんが五代君の唇に軽く自然に・・だが愛惜しそうにキスをする。
密着させた唇を離すとベッドに腰掛けて、夫の肩に自分の頭を預けてほうっと安堵の表情を浮かべ妻の響子さんが呟く。
「あぁ・・・やっとキスできて・・ぴったりくっつけた・・・・・。何時間振り・・かな?・・ほぼ一日だっけ?」
五代君の左側に腰掛けて両腕を絡ませ、瞳を閉じて身体をぴったり密着させた響子さんが溜め息を吐く。
「ふぅ・・・温かい。やっぱりあたし・・・あなたと一緒に眠らないと調子が出ないなぁ・・・小さな子供みたいだけど、ホント」
何気に五代君にとって小躍りしたくなるくらいに嬉しい台詞を語る響子さん。室内は流石に若い女性の甘い香りが漂い、心地良さに溢れている。元気が回復するまで響子さんのしたいようにさせようと思っていた五代君は何も逆らわずに黙って
響子さんを見守ろうとする。自分も宿直明けで少し眠たいが、そんなにすぐに眠りたいほどではないので、しばらくこの体勢を維持しようとする五代君である。
「・・・このままで居ようか?」
五代君にとって響子さんの要求は常に神聖で不可侵なものだ。自分がそれを適えることは義務どころか当然すべき行為であり、選択の余地など何も無い。いつものように響子さんを抱き締めて長くて綺麗な髪の毛を優しく梳いて撫でていく。
自分の顔の下に位置する彼女の頭部から漂う鼻をくすぐる良い香りを堪能する五代君。彼女を癒しながら自分自身も癒される思いだ。
「うん・・・ありがとう・・・・もう少し・・もう少しだけ・・このままで・・・・」
時間にして僅か5、6分ほどであろうか・・。だが五代君にとってそれは甘美な感覚を味わえた至福の時間だ。愛する女性から甘えられて過ごす瞬間とは何と素晴らしいものであろうか。
響子さんの頬も血色が本当に良くなってピンク色に染まり、ほぼ普段の元気な様子に戻って来た。
「あ、やっと・・うん。大丈夫。だいぶ元気が戻ってきたわ・・ごめんね、裕作さん。肩痛くないかしら?」
「ははっ、全然問題無いよ。・・・元気ならいいけど、念の為に病院とか行かなくていいの?おれ付き添うけど」
「あ・・・う~ん。そのことなんだけど・・・病院には行くから付き添って欲しいな」
「もちろん、付き添うよ。よし、それじゃ何時頃に行こうか?午前中の方が待たされなくて済むし、そうしないか?待ってるだけって意外としんどいしね。区民総合病院にする?あそこほぼ全科あるしね」
「・・・ううん、そこじゃなくて時計坂総合に行きたいの。あそこは大きな産婦人科もあるし・・・・」
「じゃあ、そうしようか。先に電話しておいたほうが待たされなくて済むし、おれがしようか?」
今回の重要な情報を示唆する単語を響子さんは使用したが、五代君は全く気付かない。このまま病院に行くまで教えなくてもいいかなとも思ったが、それでは五代君の反応が大き過ぎるであろうから響子さんはここで取り敢えずはっきり言うことを決意する。
「あ、あのね・・裕作さん。あたしが行きたいのは婦人科じゃなくて産科なの・・・」
((ぁぁ・・・遂に言っちゃった・・・))
「・・・・産科・・・・って?・・響子、まさかその・・・妊娠の・・確認?」
流石に驚きの五代君。大きく目を見開いて響子さんを見詰めたまま、次の言葉が出て来ない様子だ。顔全体が硬直したみたいだ。
「・・うん、そう。あ、でも確認だからその・・違う可能性ももちろんあるんだけど・・・」
妻として自分の夫に夫婦として当然迎えるであろう内容の話をしているだけなのに、何故かこう気恥ずかしさが段々と出て来て響子さんの頬が赤く染まっていく。
「昨日ね・・ちょっと気分の悪くなる様子が悪阻みたいだって、お母さんに言われて・・・あたしも少しだけ思い当たる節があるし。・・生理もその、先月から無いし・・・あ、でも夏場は生理不順なんて誰でも起こるから本当に五分五分かも・・・」
「でも身体の変化とかは感じないし見た目もね、今のところ無いし、本当に確信なんて持てないから・・・念の為に行きたいの。・・裕作さん、男性が産科になんてあんまり行きたくないかも知れないけど付き添ってくれる?」
頬を恥ずかしそうに染めた響子さんに上目遣いに見上げられても、五代君は正しく未だに凝固の状態であったが徐々に自分を取り戻して言葉をようやく発する。
「うん、その・・どこでも付き添うし。・・妊娠の確認って本当に?響子がおれの子供を身篭ってくれたかの・・確認・・だよね?」
「そうよ。でも・・あ、あの・・もし違ってもがっかりなんてしないでね。・・その、今は検査ですぐに分かるし・・尿検査なんかで。だから時間も本当にあんまり掛からないし・・・」
響子さんも話の口調が支離滅裂に近くなりそうで、もう病院に行ってしまいたくなる。
「・・・・響子がおれの子供を・・・いやその、何て言うか、嬉し過ぎて・・あぁ、おれ、夢みたいで・・・うわ・・叫びたい気分・・」と五代君の頭の中は嬉しさとどう反応していいのかが分からず錯乱状態だ。
「ちょ、ちょっと!裕作さん、まだ判明してないから・・・その、あ、でも病院でも叫んだりしないで下さいね・・・」
自分の子供を身篭ってくれたかどうかの確認に喜びを隠させない五代君を響子さんは嗜めつつ、もうこのままでは堂々巡りなのでさっさと病院に行く準備を始めようとする響子さん。
結局出発前に五代君が出来たお手伝いはタクシーを予約して手配しただけであった。
タクシーに乗り込み時計坂総合病院の産婦人科へ向かう二人。そして産科の門をくぐり、検査を受ける響子さん。担当の医師が女性なので検査や診察が安心できて嬉しい。ここは産科の医師がほとんど女医であるのが有名で、それもあってここに響子さんも来たかったのだ。
そして1時間も掛からずに結果を担当の女医さんから診察結果の報告を受ける。
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『五代響子さん、おめでとうございます。おめでたですよ。現在妊娠2ヶ月目に突入したばかりで順調です』
『今回が初産ですよね。乳首や性器にまだ変化が出ていないので自覚症状も薄かったでしょうが妊娠に間違いありません』
『安定期に入る来月まで性行為は厳禁なので出来ればではなく、本当に通常の性行為は慎んで下さい』
『ご主人にも必ず伝えて欲しいのですが、安定期に入って性交渉が可能になってもですけど、女性、つまり奥様を下にして二人分の体重をかける形は極力避けて下さい』
『その注意を払えるのならば安定期以降ならば性行為は一日置きであれば胎児に影響はありませんので安心して下さい』
『妊娠したからといって性行為を控えるとご主人もそうでしょうが奥様も逆に情緒不安定の原因になりますから逆効果です』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以上、何か質問はありますか?』
担当の女医さんから何気に露骨な表現で夫婦の性交渉に関する具体的な指示と提案に響子さんは聞きながら、いくら女性同士とは言ってもここまであけすけに夫婦の営みのことを言われては流石に気恥ずかしくなってくる。
『新婚さん・・かしら?』と女医さんが気軽に聞いてくる。
『はい、今年の4月に結婚したばかりです』と診察で脱いでいた下着や衣服を再度身に付け終わった響子さんが返答する。
『じゃあ、まだ4ヶ月足らずですか。ふふ・・お熱い盛りですわね。ご主人との営みは大体どのくらいのペースですか?ひょっとして毎日とか?』
『・・・あの、それ言わなくちゃいけませんか?』
響子さんは少し頬を染めて疑念に思い逆に尋ねる。確かに相手は女医なので同じ女性であり、明らかに年配で年上だがそれでも他人に夜の夫婦生活のことを言うのは気が引ける。
『あ、いえ。あくまで参考にね。割と大事なことだし、それに五代響子さんって素敵な美人だな~って最初から思いましたけど、お身体を診察の時に改めて本当に綺麗だなって思いましたからね』
『これは旦那様がとても放っておけないイイ女よねって女の私でも素直に思いました。お世辞じゃないですよ、医師の私が患者さんにそんなこと、言いませんから』
((完全に個人的な興味が湧いたから実は聞きたいこと山ほどあるのよね))
((乳首もピンク色だし乳房も凄いわよね。大きくて張りが合って弾力が凄いし・・。性器の触診でアンダーヘアーも柔らかくて手触りも凄く気持ちいいしね))
((膣そのものというか姫穴も良い形で姫筒も滑らかで締まり具合も相当に良いから、なかなかの素晴らしい名器だわ。色合いも鮮やかなサーモンピンクだし、見た目まで綺麗よね。何から何まで絶品の女性ね。旦那も流石に毎晩、絶対に放っておかんでしょ))
((自浄作用が膣にはあるけど、腫れが無いから昨夜は珍しく営んでいないと推察したわ!多分当たってると思うけど、どうかな?あ~いかんいかん。また女の癖に親父臭い考えしてるな~。ちょっと信頼を損ね兼ねないから今日はもう抑えとこうかなあ・・絡め手でいこう))
女医さんの名札には『万波(まんなみMs.Mannami)』とある。万波先生はカルテにドイツ語で幾つか単語を筆記体で書きながら響子さんに妊娠中の注意事項を述べる。
「カルシウムは今後多めに摂取するように心掛けて下さい。赤ちゃんに足りないと体が判断したら勝手に母体の歯を溶かしてでも与えますから。アルコール類の摂取は控えるのは常識ですけど偏食とかは特に無いですか?必要なのに意外な栄養素が摂れてないこともありますから」
「え、ええ。特に偏食は有りません。食事は・・これまでもアレルギー反応も無いですから大丈夫だと思います」
ようやく真面目な話になったと想い、ほっとしてハキハキと受け答えする響子さん。
「確かに妊娠は病気ではありませんが自分で自分の体を守る意識も重要です。何かお仕事はされていますか?それとも専業主婦ですか?」万波先生はにこやかに尋ねてくれている。
「あ、専業主婦ではなくて・・あたし、住んでいるアパートの管理人を長年務めています。ですから出勤とかの通勤も幸い、有りません」
「そうですか・・通勤の苦労が無いのは負担が軽くて無くて良いですね。まあ、肉体労働では・・・無さそうですが、力仕事などは必要になって有ったとしても流石に控えるか誰かに頼むとか心掛けて下さい。ご主人とかにね」
「はいそれは・・これまでも主人が色々と協力的で手伝ってくれていますから、そんな時には任せようかと思っています」
(元々・・裕作さんだって、やたらと何でも手伝いたがっているし・・あたしが見ているから問題・・無いわよね)
響子さんは普段の夫がやたらと管理人の仕事を手伝う意欲が満々なのを思い出して、くすりと笑いたくなる。彼が余り手際が良くないのも見慣れた光景でご愛嬌だ。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
その後も和やかに質疑応答が繰り返されていて・・・・・。
女医さんが「最後ですけど、あの真面目な話ですから眉をひそめないで下さいね。来月の安定期に入るまで直接、膣を使った性行為と言いますか性交渉は本当に止めて下さい。感染症とまではいきませんが危険性はゼロではないですし衝撃も影響ありますから」
「え・・・・・ええ・・それは・・控えるようにします。なるべくじゃなくて、本当に。・・・・・来月の初めくらいですか?安定期に入るのは?」
響子さんも女医さんが興味本位じゃなくて真剣に医学上の見地から忠告してくれているのが分かり、恥ずかしさは感じるものの素直に医師の忠告には従おうと思う。
万波先生は更に続ける。
「まあね、釈迦に説法じゃないですけど・・ご夫婦のことですから二人で色々と相談の上で安定期に入るまでの性生活は何か工夫とかをして下さい。絶対厳禁の時期だから母体の、奥さんの体に触れるのも駄目ではご主人も余計にね、欲求不満のストレスが溜まりますから」
「奥様の響子さんだって、これまで順調に充実していた夫婦の営みが出来ないと我慢されているだけでは本当にイライラが募って精神的な信頼感まで損ねかねないですから、ゆっくりご主人と話し合って過ごして下さい、赤ちゃんの為にも。では、お大事にね。五代響子さん」
患者のことを真剣に心配しアドバイスをしてくれた女医さんに響子さんも最後はお礼を述べて椅子から立ち上がる。
「はい、色々と・・その、ありがとうございました。・・あたしも妊娠は初めてですから、嬉しいですけれど不安も大きかったので・・・また、何か有れば参りますので・・何卒ですが宜しくお願い致します」
深々とお辞儀をして診察室を出て行こうとする響子さんを眺めながら・・女医さんの万波先生は内心で考えていた。
((動作がいちいち優雅だなあ・・品の良さが雰囲気だけですぐ分かるな。・・あんな綺麗な女性なら出産の担当医に女のね、私でもなりたいわ。なっかなかホントに居ない美女だもんねえ。美貌の女性が患者さんだと診療対象として萌えるのよね・・ホントにレズじゃないけどさ))
((うう~ん・・今度かその次にはご主人にもお会いしたいわよね。どんな男かも興味湧くわ。あんな麗しい女を妻にするなんて格好良いのかな?・・ま、男なら誰でも誠実で優しく接するでしょうけど。あの美人じゃあね・・どのくらい普段優しくて丁寧なのか知りたいもんな))
ベテランの女性医師である万波先生は割り合いに野次馬根性が旺盛だったりする。担当医に指名されても患者本人から拒否される場合もあるから、そうならないように気を付けて診察には誠意も怠らないようにしようと今更ながら身を引き締めていた。
・・・その後、思惑通りに響子さんの主治医となった万波先生であるが夫婦同伴で来て貰った時に夫の五代君とも対面する。
”あれ?随分と平凡な男性なんだね”とは失礼ながら思ったが、受け答えで凄く響子さんを大切にしているのと、響子さんも夫を心から信頼している雰囲気を醸し出していたので医者の目の前で腕を組んだりしていた訳ではないが仲睦まじさを実感して、羨ましくなってしまった。
”なるほど、こんな美人と一体どうして、どうやって?な~んてね、最初は思ったけど亭主関白な要素ゼロで本当に奥さん第一主義なんだな~。ウチの腹立つ、おっさん亭主とは大違いだね。ホント見習わせたいわ・・はは、こりゃ負けたわ、参った”
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「裕作さん・・ご免なさい。お待たせしました」
響子さんは診察室から担当の女医さんに深々と挨拶のお辞儀をして出て来ると夫の五代君に声を掛ける。
ずっと産科の待合ロビーで所在無さげにソファーで座ったまま、おまけに周囲の妊娠した女性患者からチラチラ見られる視線に五代君も少々居心地の悪さを感じていたので正直なとことホッとする。
やっぱりここは男性には場違いな場所だ。うっかりして電車の女性専用車両に間違えて乗り込んだみたいな気もするし。
「え、うん。いやそんなに待ってないよ。40分くらいかな・・で、どうだったの?」
心配そうに響子さんを見詰めて五代君が尋ねる。
「うん・・ちょっとここでは、その・・・一旦外へ出ましょう。お庭も広いし、ここって」と響子さん。
彼女は少しだけ複雑な表情を浮かべて夫の五代君に病棟から出ることを提案する。
病院内は大きな声で会話したり騒ぐのは勿論厳禁なので、妻からの提案に従い押し黙って一緒に病院の庭にまで出て行くことにする。ここは大病院だけあって入院患者が夏場でも庭を散歩しやすいように至る所に水を霧状で散布するミストがあり涼しげだ。
響子さんに付き添って歩く五代君の表情は不安と結果を知りたい気持ちが合わさって何とも形容しがたい深刻そうなものとなってしまう。
1分も歩いただろうか・・・樹木の影で涼める場所まで辿り着くと響子さんは立ち止まり、右横の五代君に向かってにっこり優雅に微笑んだかと思うと・・今回の診察結果を報告する。
「あのね、裕作さん・・・妊娠2ヶ月でした。本当に赤ちゃんが出来ました・・・あなたの子供をあたし・・今、身篭っているんです」
響子さんは頬をピンク色から真っ赤に染めて夫の五代君を見上げて嬉しそうに上目遣いで吉報を伝える。
「・・・・・・・・・ほ・・ほんとに?・・・・本当に響子、赤ちゃんが・・・・出来たの?」
一瞬反応が出来ず少し間を置いてようやく五代君が反応する。だが口で呟いた言葉の意味を全身で理解するのにちょっとだけ時間が掛かってしまう。
「・・・はい。・・・裕作さん・・嬉しいですか?」
頷いた響子さんの微笑みはまさしく天使か聖母か女神の如く、眩しくて神々しいばかりだ。思わず見惚れつつも、五代君はその衝撃に心と身体がついていかない。
「う・・ん。本当なんだ・・本当に響子がおれの子供・・・うん、嬉しくてその・・・き、きょうこ・・・お・おめでとうってあれ?・・いやその、おれって何を言ってるんだ?」
嬉し過ぎてどう反応していいか分からず両腕を無意味にくるくると空中で動かす五代君・・そんな彼を見てプッと吹き出して、くすくす笑いたくなる響子さん。
((そんな反応・・予想以上ね・・・ふふふ・・おっかしいなぁ・・可愛くて・・・頬擦りしちゃいたいくらいよ・・))
「もう・・・落ち着いて下さい。・・母の勘が当たりました。やっぱり経験者って凄いですね・・・・あたしも来年にはママですよ。裕作さんもパパですからね」
「いやその、ゴメン・・・そのもっと冷静に言いたいんだけど心臓がその・・心拍数が・・増えて」と五代君の取り乱しようは派手ではないがなかなか止まらない。
愛する妻の響子さんが自分の子供を身篭ってくれて、お腹に孕んでくれている現状が素直に嬉しいが驚きと喜びが混ざり過ぎて・・自分の言動が制御できない様子だ。
昨年の夏は未だに五代君は響子さんと恋人同士には成れておらず、名目上は管理人と住人の一人の関係でしかなかった。もちろんお互いに惹かれ合っていたものの、もどかしいママゴトのようでありきちんとした恋愛状態に成り切れていないものであった。
それが1年経った今では正式に結婚した夫婦であり、しかも愛しの奥さんになってくれた新妻の響子さんは彼・・五代の赤ちゃんを妊娠してくれている!感激なんて言葉じゃ足りない位に嬉しいんだ!
((一瞬、暗い過去が頭を寄切った。昔、再婚を迫る母親の律子さんに説教されたりして『夫婦で子供は何人欲しいか?』という話題で色々と論争状態となり、五代君からまだ恋人ですらなかった管理人さんである響子さんに『仲が良ければ子供なんか居なくても』と話し掛け・・))
((響子さんが子供の居ない夫婦が揃って病に倒れた惨め?な状況を脳裏に浮かべてしまい・・『やっぱり・・寂しいでしょうね。一人くらい産みたいわ』と呟いたのを聞いて、五代君が『その気なら、おれ、いつでも協力します!』などと嬉しそうに響子さんに言ってしまい・・))
((結果として響子さんによって五代君は思い切り頬を引っ叩かれて見事な手の平の跡が残ってしまった。・・・そんな馬鹿みたいに悲惨で面白くない記憶をほんの数秒だが思い出してしまった。だが今は違うぞ!としっかり思い返しはした))
響子さんと4月に結婚して以来、彼女と二人だけで一緒に暮らしている現実。毎朝自分で起きることもあるが美しい妻が優しく起こしてくれることもしばしばだ。実は五代君も寝起きは良いのだが、響子さんから”裕作さん、起きて下さい・・朝ですよ”と
耳に心地良い美声で起こされるのが嬉しくて狸寝入りをすることも多い。でも既に最近は仕種と雰囲気で見抜かれているので”裕作さん?狸寝入りしたりして、遅刻しても知りませんよ?”と言われてしまい仕方なく目を開けると響子さんが”駄目よ、め!”と言いたげな表情で
見詰めているのが、これまたすっごく可愛くて朝から楽しい気分にさせて貰っている。それにちゃんと起きれたご褒美という訳ではないが”お早う”の挨拶として、響子さんとのとっても甘美なキスが待っているのだ。だからきっちり目も覚めるし爽快な気分になれる。
朝食も夕食もとっても美味しいし、昼の愛妻弁当が手が込んでいて見栄えも可愛いし味も最高。手間暇掛けて作ってくれていて愛情をたっぷり実感できるから食べるのが毎回惜しくなる。
目覚めの、朝の見送り(管理人室を出る前の室内)夕方の出迎え、就寝の挨拶は甘美なキスを欠かさず交しているのは完全な習慣となっているし・・夜は夜で夫婦二人でとっても濃厚に密度も濃く、艶めかしく愛の営みを順調にほぼ毎晩営んでいて充実そのものだ。
時間と場所さえ許せばいつだって響子さんは五代君と愛し合うことに応じてくれている。体調が悪い時などは別だが、そんなことは生理が珍しく重かった日を除けば皆無に近いから実質・・皆勤賞ものじゃないかなとは思っている。
こんなに物凄く綺麗で上品な女性と・・家事ですら優雅に立ち振る舞う素敵で素晴らしい女の人と夫婦として遠慮無く思う存分に愛し合う性交渉を営んでいる幸福に正直、天まで舞い上がり目が眩むほど酔っていると言える五代君。
最愛の女性である響子さんと二人だけで過ごす、そんな熱々な新婚生活が予想を空想ですら超越し過ぎていて幸福という言葉以上の幸せを日々心の底から堪能できている。
夫婦で買い物などに出掛け、五代君の知り合いと出会うと響子さんは”初めまして、五代の家内で響子と申します。主人がいつもお世話になっております”と丁寧で上品な作法でお辞儀するのだが、挨拶された相手は勿論、余りの優雅さと美しさにみんな凄く驚愕してしまう。
横で聞いて見ていた五代君も感慨深くて大げさだが内心では嬉しくて感動すらしている。彼女が現実に自分の妻であることに今更ながら感謝の気持ちが絶えない。普段から朗らかで明るい響子さんだが五代君と視線が合うと、それだけで瞳が一層優しくなり表情も
にこにこと上機嫌になる様子が溜め息が出てしまうほど可愛らしくて健気で美しいのだ。自分は妻のことを”響子”と呼び捨てにいるが、ぶっきらぼうに言い放ったことなど一度も無いし、そんな気は今後も絶対無い。いつも大好きな愛する女性と意識して呼んでいるから。
こんなに素敵な女性を妻として名前を呼び捨てに出来ることがとても単純なことかも知れないが、それすら非常に嬉しくてならない。
彼女は夫である自分のことを”裕作さん”と優しく、発声まで丁寧な気がするし、実際に彼女自身の夫で大事な旦那様と考えて呼び掛けてくれている・・深い愛情を込めて。そんな夢見ていた現実が叶えられて最高の気分を通り越している。
それに彼女と深く愛し合った夜に・・そのまま仲良く並んで眠り夜中にふと五代君が目を覚ますと、横では響子さんの美しい寝顔がある。自分という男の傍らで安心して信頼して熟睡をしている妻。その幸せそうに微笑んでいるかのような寝顔は愛しくて愛しくて堪らない。
そうして向かえた今日だ本日だ。響子さんと一緒に産婦人科に来て診察してもらい、遂に待望の赤ん坊を・・二人の愛の結晶を彼女は既に身篭っていることが判明したのだ。普段から、とてもすっきりした目鼻立ちで見目麗しい美貌の彼女だが今日、今この瞬間の彼女は・・・
表情には母性の美しさまで垣間見える気がするし、実際に神々しいオーラだって放射しているように輝いていると五代君は正直思う。ピンク色の頬を赤く染め上げいているが、ちょっぴり恥ずかしさと大いなる嬉しさ、妻から母になる誇りと気概だって含んでいるようだ。
本当に自分、五代という男と愛し合った末におれの精子と彼女の卵子が結び付いて・・その子供が赤ん坊が彼女の体内にお腹に・・子宮に生命として存在するのだ!響子がおれの子供を孕んでくれたのだ!ご懐妊なんだぞ!!!と叫びたい。
これが喜ばずに、また驚かずにいられるだろうか?嬉しさの余りに狂喜乱舞し、ここで大声を張り上げて万歳三唱!!!くらいしたい気持ちだが、流石にそれは周囲の目も有るし迷惑だと自覚くらいは出来ている。
だがどうしても嬉しさと感謝の気持ちを直接伝えたくて五代君は響子さんを両腕で抱き締めてしまう。
「響子・・おめでとう・・ありがとう・・・」とそれだけを言い、五代君は黙って抱擁を続ける。
「あ、ちょっと・・裕作さん・・。ここではちょっと・・遠慮して・・・下さい」と響子さんは少しだけ慌てる。
流石に人目も気になる。別に変なことをしているわけではないが、一応ここは公共の場なのだ。五代君に抱き締められるのは嫌どころか十分に嬉しいことなのだが、彼女もここでは理性が勝った。
「・・ああ、ゴメン。そうだよね・・・」
流石に五代君も状況を把握し、抱擁を緩めて響子さんの肩だけを掴むようにして謝る。言いたい事は実は山ほどあるはずなのだがここでは人目もあるので口に出来ないのがもどかしい。
「ね、裕作さん♪・・一旦帰りませんか?・・あたしも気持ちを落ち着けたいし・・・」
響子さんも五代君の嬉しい気持ちを表情や身振り手振りだけで十分に理解している。だからこそ夫婦二人きりで、この嬉しい受胎告知の瞬間を分かち合いたいのだ。
「ああ、うん。・・・それはそう、だね。タクシー乗り場に・・行こうか?」
「ええ♪」
二人は仲良く手を繋ぎながら時計坂総合病院の入り口近くにあるタクシー乗り場に直行する。
「一刻館はここからだと割と近いけどタクシーで帰ろうか、折角だし響子の身体のこともあるし・・」
「あら、でも裕作さん。仕事の荷物もあたしの実家に置いてきたでしょう?折角って言うなら実家に戻りましょうよ。お母さんも夕方まで帰って来ないから・・・」
五代君は一刻館へ戻ることを想定していたが響子さんから仕事の荷物が千草家に置いたままであることを指摘され、彼女の実家の住所を運転手に告げる。
車内では敢えてこの話題に触れず、五代君の今日明日での仕事予定などの再確認などに努めて過ごし、実家に到着する。
実家の千草家では母親はまだ戻っておらず、それを確認して響子さんが鍵を開けて入る。
ガチャ・・バタン
ようやく病院から実家に帰宅し、ほっと一息の響子さん。靴を脱いで玄関を上がったところで五代君に正面から抱き締められて祝福の接吻を受ける。ぴったりと唇を密着させて無言のまま会話をするように30秒、1分と時間が過ぎる。
2分近くしてからやっと唇を離して五代君が語り掛ける。その眼差しは本当に嬉しそうで優し気だ。
「響子・・本当に俺嬉しいよ。・・ありがとう・・・おめでとう。・・・愛しているよ、響子」
「うん、あたしも愛してる・・嬉しいわ・・・本当に」
五代君から懐妊への祝福のキスと言葉を贈られて響子さんもとっても嬉しそうだ。結婚以来毎日のように愛し合った成果を果実として得たような気分を二人は味わい始めている。
義務的に無理して頑張った訳ではなくて若い二人がお互いに本当に心から愛し合って求め合った結果なのだから夫婦としての新しい喜びを得て幸福感が徐々に湧き出てくる感じだ。
五代君にとって憧憬の・・永遠に憧れて止まない理想の女性とは響子さんであり、その彼女が正真正銘、自分の妻であることに喜び感激し感謝する気持ちがいつも、本当に四六時中消えることは無い。
その響子さんが今日の診察で遂に二人の愛の結晶を身篭ってくれていることが判明したのだ。どんなに感謝して祝福しても足りることはないくらいの気持ちである。
ちょうど1年前のこの日の自分に、1年後の今日という日を予言など出来るわけなく途轍も無く素晴らしい未来が到来したのだという事実に狂喜して乱舞したい五代君だ。
響子さんは暑い中を外出していたので麦茶でもと思い冷蔵庫を開けて夫の分まで用意しようとするが、さっきから妻を気遣う姿勢の五代君はおろおろと心配そうだ。
「いいよいいよ、響子は座っていて。言ってくれれば、おれが何でもするから」
「もう・・今からそんなこと言ってたんじゃ大変よ。ホントに病気じゃないんだから大丈夫」
夫の気遣いを微笑みながら嗜める響子さん。勝手知ったる実家の台所と冷蔵庫だ。そうこう言っているうちに麦茶を二人分用意してしまう。
「・・ああ、冷たくて美味しい。裕作さん、お腹空いていないかしら?簡単なのならすぐ出来るから何か食べる?」
「ああ、いや。保育園でおにぎり出たし、別にいいよ。それよりも横になった方がいいんじゃないか?あんまり昨晩休めなかったんだろ・・体調崩したりして」
五代君は自分のことよりも響子さんの身体が心配で仕方がない様子だ。その表情から言うとおりに横にならないと納得してくれなさそうだ。
相変わらずだなぁと内心で苦笑しながらここは夫の言葉に甘えた振りをしないと怒りはしないが困り顔が消えないと思い響子さんは自室のベッドに移動することにする。
(次回へ続く)