”ガチャ”
[ただいま~]
と扉を開けた響子さん。
[ふう。まだ帰らないの?響子?]
帰ってきた響子さんを出迎えたのは・・・母の律子だった。
響子さんが春香ちゃん共々実家へやって来てから早くも3日が過ぎようとしていた。
[あ、ママお帰り!]
春香ちゃんも出迎えた。
[全くもう。家を出て来た理由を話そうともしないで。この娘は]
母の律子は呆れ顔で言う。
[裕作さんはどうしてるの?]
[・・・・・・・・・・]
母の問い掛けにも終始無言の響子さん。
[は~、やれやれ・・・お父さんが生きていたら何て言ったかしらねぇ・・・]
[いつもだったら・・あたし心配だから目が離せないの、とか言って裕作さんの世話を焼きたい為なんだろうけど恥ずかしい位べったりの癖に・・・]
[前に裕作さんが珍しく寝込んだ時に看病するの張り切り過ぎて逆に倒れちゃって・・最後には立場が逆で看病してもらって甘えに甘えてたの春香ちゃんから聞いてるわよ]
[・・・・・・・・・・・・]と、やはり無言の響子さん。
響子さんのお父さんは3年程前に急病の心臓発作でこの世を去っていた。
現在は母の律子がマンションで一人暮らしをしている。
響子さんの父が亡くなった時、響子さん夫婦は律子にひとりでは寂しいだろうから一緒に暮らそうと持ちかけたが・・・。
“ひとりでも別に構わない”“これからは気楽にのんびり暮らしたい”
と気丈な母律子にあっさりその話を断られた経緯がある。
[ふたりも同居人が出来てお母さんも寂しくないでしょ?]
[春香、お土産のケーキよ。]
[わ~い!ケーキだケーキ♪]
そんな母親の律子さんの言葉が耳に届いているのかどうか・・・。
響子さんはケーキをダイニングテーブルに広げた。
いつもと変わらないように見えるのは・・・ケーキに喜ぶ春香ちゃんだった。
響子さんも律子も、やはり春香ちゃんの事が何より気掛かりであった。
突然予想だにしなかった両親の不和に巻き込まれた形になってしまったのだから。
表向きはいつもと変わらないように振舞っていた春香ちゃんだが・・・。
胸の内は果たして・・・。
[良かったわね~春香ちゃん。おばあちゃんのも食べる?]
[え、いいの?・・でも太っちゃうから一口味見だけでいいよ。一緒に食べよ!]
その明るい孫の笑顔に、律子も安堵の笑みを浮かべるのであった。
~翌日 一刻館~
管理人室
[管理人さん最近実家に帰ってるんだって?]
どこで話を嗅ぎつけたのか、一の瀬さんは響子さんにそう一言言い放った。
その一言にお茶を入れていた響子さんの手が止まった。
[え、ええまあちょっと母の具合が良くなくて・・・・]
適当に嘘を並べた響子さん。
だが・・・。
[あれ?管理人さんのお母さんには昨日隣の駅のショッピングセンターで会ったばかりだよ?]
[何かえらい元気そうだったけど?]
一の瀬さんが不思議そうな顔をした。
“ギクッッッ!”
世の中は本当に狭い。
運悪く昨日母と一の瀬さんが偶然にも鉢合わせしていたとは・・・。
[何があったんだい。管理人さん?]
[ここんとこ春香ちゃんも姿見せてないし]
一の瀬さんは響子さんにそう尋ねたが・・・。
[ごめんなさい。一の瀬さん。今はまだお話したくないんです]
[・・・本当に・・・ごめんなさい]
響子さんは頑なに話そうとはしなかった。
[そうかい。分かったよ、管理人さん]
[だけど溜め込んじゃだめだよ。あんた一人でさ]
[少なくともあたしは・・・管理人さんの味方だからね]
そう響子さんを励ますように力強く一の瀬さんは言うと、管理人室を出て行った。
一の瀬さんが消えてテレビの音だけが響き渡る管理人室。
[・・・・・・・・・・・・]
一の瀬さんの言葉が胸に染みる響子さんだった。
ふっと夫の五代君のことを内心で自問自答する響子さん。
((あたしは夫を愛している・・誰よりもあの人のことを・・・あの人と一緒に過ごさない日々なんて味気無いだけ・・寂しいだけなのに・・・でもこのままじゃ・・・・))
((あの人だってずっとあたしを・・愛してくれているはず。結婚する前からずっと20年以上も前から・・・あの人の気持ちに疑わしさなんて昔から本当に何も感じていないわ))
((夫が他の女性と平気で浮気するような男の人とは思わない・・思ってもいなかったけど・・・まさか・・・でも・・こずえさんが相手なのかも知れないなんて・・・))
((本当にどうしよう・・・これから・・・・・・・でも・・でも・・・あたしが大好きな男の人って・・・愛している男性って、あなただけなのよ・・・・))
ここまで考えると、ふと母親から言われた言葉を思い出す。
””前に裕作さんが珍しく寝込んだ時に看病するの張り切り過ぎて逆に倒れちゃって・・最後には立場が逆で看病してもらって甘えに甘えてたの春香ちゃんから聞いてるわよ””
((あの時は・・いつもと逆だねって言って喜んで世話してくれたのよ・・食事とか着替えとか。・・・あたしが自分からボタンに手を掛ける前に脱がせて着替えさせてくれたんだから・・下着も・・つい・・”ブラもパンティも着替えたいの”って呟いたのは・・・その・・・・
べ、別にあの人に甘えていた訳じゃないわよ・・付き合いだって長いから・・下着だって、とっても手際良く脱がせてくれて・・穿かせてもらったし、男の人にやってもらったのは確かだけど・・あの人はあたしの夫なんだから別に構わないでしょ・・他人じゃないんだから))
((優しく検温もしてくれたけど、スキンシップして欲しかったから、つい・・”キスしてくれないと検温するのイヤ”なんて子供みたいに拗ねた言い方してしまったし、お風呂に入れないからって言われてたから、確かに全身隅々まで綺麗にその・・・拭いて貰ったけど・・
性器もちゃんと綺麗にしないとねって拭きながらずっと指でも色々と弄られたせいで・・・その・・何だか欲しくなっちゃって・・・))
((だって4日間もお互い禁欲した形だったから・・・瞳で訴えたら・・体温計じゃなくておれ自身が響子を検温するし、もう殆ど回復してたから汗を掻いた方がいいよって3回くらいエッチして可愛がって貰ったのが・・・やっぱり甘えてたことになるのかしら?))
((あの人ったら検温と注射の代わりだねなんて言って・・お薬の代わりに注ぎ込まないとなんて・・・一緒に腰をくねらせたし・・あたしの体内に精液をあんなにたっぷり吐き出すんですもの。だから膣内がどろどろでぬるぬるにされて・・でもお陰で体調は元に戻ったけど))
((まあ、その、春香が登校直後で居なかったから・・つい大胆に、まるでお医者さんごっこみたいだったけど。二回戦は注射しやすいように、うつ伏せで腰を上に浮かせて背後位の準備をしたら・・感心な患者さんって褒められたけど、やっぱり甘えていたうちに入るのかしら?))
((・・・でもあの人だって、あたしとエッチして凄く気持ち良かったって言ってくれたし・・・愛情表現だからって、あたしの乳房全体を・・お尻だってキスマークだらけにしたんだから、お互い様よ・・鏡で確認するだけで恥ずかしくて、かぁって赤面したし・・・ね))
((看病してくれたお礼に・・寝込んでいた時の髪型が、三つ網が可愛いって・・春香を出産した時みたいで懐かしくてね・・何て言われたから・・何かこう嬉しくて。直った翌日その髪型で二人きりの半日を・・もう初夏で暑かったから大丈夫って、あの人のお願いであたしだけ
全裸で過ごした時間、信じられないくらいに・・今思い出しても赤面するわね・・大胆過ぎて・・本当に恥ずかしかったわ))
((だってまるであたしが・・・あの人専属のヌードモデルみたいで。・・ホントに撮影はされなかったけれど、まったりと時間を掛けて・・10時間位の間に4回も・・ううん5回ね・・・熱烈にセックスしたわね?・・お互いにげっそりやつれた気がしたけど嫌じゃなかったの))
((あなたは普通に服着てるのにあたしだけ全裸で・・ソファーで寄り添ってても何かこう気恥ずかしくて・・破廉恥な倒錯的な気分になっちゃって。見詰められて凝視されるだけで正直あたし・・・愛液でしっとりと濡れてしまったの。だからセックスも凄く気持ち良かったわ))
((何かこう・・愛する御主人様にお仕えする絶対服従の性奴隷みたいで・・・エッチでスケベな要望・・ううん命令に従ってね、あなたっていう殿方に尽くすのがゾクゾクと脳髄が痺れて刺激的過ぎて・・でもそうやって可愛がられたかったから結局ずっと甘えてしまったのかな))
((全裸姿のあたしに膝枕して欲しいなんて言いながら・・あの人ったら真下からの乳房の眺めが・・ゆらゆらとたぷたぷ揺れる乳房が絶景なんて呟いて、恥毛を舐めたりするんですもの。・・あなたったら、あんなにイチモツを凄く勃起させながら看病のお礼とご褒美って・・・
またたっぷりと時間を掛けてじっくりと可愛がってくれたから・・ね。・・・本当にあたし、凄く嬉しくて幸せで・・あなたとのセックスが・・・何て言えばいいのかしら?・・超絶に快感で気持ち良くて・・・その、射精された後でもずっと・・・子宮が疼いて堪らなかったの))
((お手洗いに3回行って小水を排泄する場面も最初から最後までじっくり堪能してもらって・・尿道からは小水、膣穴からはあの人に注がれた精液が零れ落ちて・・・。あぁ・・もう思い出すだけで恥ずかしいけど濡れてしまうわ。・・本当に撮影されていたみたいで))
((あたしたちって・・・お互いに本当に好き・・よね?あたしはあなたっていう男性が大好きで愛しているの・・あなたも・・あたしという女性が大好きで愛しているって、いつも言ってくれてたじゃない・・・言葉でも態度でも・・本心からだって信じられるわ、あたし・・))
響子さんは五代君との夫婦生活が・・・その営みが相思相愛の若い恋人同士と同様に何年経っても本当に物凄く熱烈な愛情で結ばれているのを今一度実感する。
((ねえ、あなた・・・あたしはあなたの妻なのよ?・・そしてあなたはあたしの夫・・・それはずっと変わらないし、本当にね・・何も変わらないと思ってた。・・・だけどそんなことがあるの?))
((一緒になってから一度だって・・一瞬でも不幸だなんて思った瞬間すらこれまで無かったのに・・・涙だって幸せな嬉し涙しか流したことが無かったのに・・・・・・))
((夫婦の営みだって・・あたしたちのセックスって性的欲求を満たして果たす為だけじゃ無いわよね。お互いの気持ちを・・愛情を確かめ合えるから・・・だからあんなに幸せな気持ちになれるのよね?))
((繋がって愛し合う度に・・・あたしたちって夫婦よねって想い合ってキスして・・何年も何年も繰り返し繰り返し・・・でも今だって嬉しくて仕方なくて、いつも幸福感を味わえてるのに・・だからずっと一緒よねって思ってたのに・・・そうじゃなかったとでも言うの?))
((ね、答えて・・・・あなた・・・・・・・))
~春香ちゃんの通う女子高の放課後~
[どうしたの?五代さん。最近元気が無いようだけど?]
ぼ~っと廊下を歩いていた春香ちゃんの肩を叩く人がいた。
それは誰あろう担任教師の八神さんだった。
[せ、先生!]
八神さんの姿に驚きと喜びの入り混じった感情を表わした春香ちゃん。
[最近ちょっと変だよ?何かあったの、お家で?]
春香ちゃんがこの所暗い顔をしているのに気づいた八神さんは、声を掛けずにいられなかったようだ。
[え、ええちょっとまぁ色々とありまして・・・]
いつもははっきりと物を言う春香ちゃんだが流石に言葉を濁した。
すると八神さんは、
[ん?どんな事?先生に話してごらんなさいよ、楽になるからさ]
[先生に出来る事なら力になってあげるし]
と、いつものお節介な八神節で春香ちゃんを励まそうとした。
[よし、じゃあちょっと待ってて。先生と一緒に帰ろう]
[もう少しで仕事終わるからさ]
と春香に言い残すと職員室へと駆け足で戻って行った。
[あ、先生、ちょっと!]
有無を言わさぬ八神さんに押される春香ちゃん。
流石に行動派といか、一直線な所は昔と変わっていない八神さんだった。
母の響子さんや、お婆ちゃんの律子の前では明るく振舞う春香ちゃんだったが、そんな表向きの表情とは裏腹に、精神的にはかなり揺れている状態だった。
原因がはっきりしない父と母の間に流れる・・春香ちゃんが物心ついた時から今までで全くと言っていいほど無かったひんやりとした冷たい空気。
最近家の中の空気が、雰囲気が何とも言いようがないほど暗くてどんよりと重苦しい。
春香ちゃんがそう肌で感じ始めた頃の出来事だった。
響子さんは自分の実の母の律子はもとより、春香ちゃんにも家を出てきた真相を話そうとはしていない。
“この先家族はどうなってしまうのだろう”
“もしかして・・・離婚・・・・とか?まさかね・・とは思うけど。あんな娘から見てもキスやハグばかりして恥ずかしいくらい仲が良かったのに・・・”
“そうなったら私はどうしたらいいの???”
漠然とした不安感がまだ高校生の春香ちゃんにのしかかって来ていた。
学校では友達の前でそんな表情など少しも出さずに、いつも通りにスクールライフを送っていた春香ちゃん。
しかし、ふと一人になった時に寂しげな表情を浮かべていた。
それを見逃さなかった八神さんはすかさず春香ちゃんに声を掛けたのだった。
学校の正門の前で八神“先生”を所在なげに待つ春香ちゃん。
しばらくすると八神さんがやって来た。
[あ、先生!]
春香ちゃんがその姿を見つけて思わず声を上げた。
[待った?五代さん?]
ニコニコと笑顔満面で現われた八神さんだった。
[あの・・・・・・・・]
[先生、お仕事の方はいいんですか?]
[何か今日は会議があるような話を他の先生がしてましたけど・・・]
今日は学年の先生が集まる会議があるらしかったのを春香ちゃんは知っていて、それとなく八神さんに聞いてみたのだった。
[あ~平気平気、ど~せ大した会議じゃないから♪]
[会議が好きな先生が多くてやんなっちゃうわね~ホントに]
こともなげに言う八神“先生”。
マイペースぶりは社会人になっても何ら変わってないようなのが頼もしい。
それから二人は時計坂駅近くの喫茶店へ入った。
最近リニューアルされ、とても洒落た雰囲気のお店。
店内はカップルや若い女性で賑わっていた。
[あ~懐かしい。この店は昔あたしが高校生の時にあなたのお父さんと来たお店なのよ]
[あの頃とだいぶ雰囲気が変わったようだけど。このお店]
店内を見回した八神さんは懐かしそうに言った。
あれから18年以上の年月が流れた。
当時は春香ちゃんと同じ制服を着た高校生だった八神さん。
色々八方手をつくして教育実習後も五代君に迫りまくり、詐欺同然の手口で家庭教師に雇い、それが終了させられと今度は四谷さんと結託して似たような形式で再び家庭教師までさせたあの若い日々。
それが今では母校の教師として“愛する”人の娘を教えているなんて。
八神さんの思いはどこにあるのだろうか。
[ええ!家の父と二人でですか???]
八神さんの話に驚きを隠さない春香ちゃん。
無理もない。
今まで父からも母からも“八神”という言葉すら耳にした事は無かったのだから。
[そう。二人で。あの頃五代先生、おっとっと、あなたのお父さん苦しんでいる時だったわ]
[就職がどうしても上手くいかなくて・・・]
“五代先生” 無意識のうちに口にしてしまった八神さん。
少しばかり懐かしい思いが胸をくすぐる。
[あの・・・八神先生・・・・その・・・もしかして・・・・]
何かにぴ~んと感づいた春香ちゃん。
[父の事が好きだったんですか?]
思い切って聞いてみた。
[うん、ええ・・初恋・・・・の人だった]
夕暮れ時の窓の外を見やり、八神さんはぽつりと漏らした。
[あなたのお父さんが教育実習にウチの高校に来たことは知ってるわよね?]
春香ちゃんに尋ねた八神さん。
その問いに小さく頷く春香ちゃん。
[第一印象はちょっとどころか暗くてえらく冴えない人だなぁ・・・頼りないなぁと思ったけど]
[妙なところが純粋で優しくて、年上の男性なのに変に可愛いとか思い出して・・気になりだしたらいつの間にか好きになってしまって・・・・]
[若かったから一途だった。他には何も見えなかった]
[周囲の人たちも、私の両親も呆れ果ててしまう位にのめりこんで・・・・]
[本当に大好きだった・・・]
しみじみと昔の事を懐かしそうに話す八神さんの表情は高校生当時のようだ。
[その・・・・・今でも・・・・ですか?]
初めて知る父と自分の担任の先生との恋物語。
その思いを確かめるかのごとく、春香ちゃんは八神さんに尋ねた。
[ん~、流石に今は・・・・・ね]
[でも・・・・・憧れの人ではあるわね]
[そう、今でも憧れの人]
当時のような恋愛感情を今は持ち合わせていないから安心してと答える八神さん。
それでも憧れの存在だという。
自分の父が憧れの存在という事に驚きを隠せない春香ちゃん。
両親の夫婦仲はつい最近まではとっても良いと思っていた・・お互いに凄く優しく接していたし、挨拶代わりのキスもハグもあんなに頻繁にするなんて外人でもない日本人同士なのに凄いラブラブ過ぎて・・・
恋人気分が抜けていないんじゃないかとも思えるし、同級生の親でそこまで仲が良い夫婦は正直いなかったくらいだ。
父は愛妻家だが恐妻家ではないし、母も怒れば怖いが普段は別に鬼嫁ではない。
料理洗濯掃除など家事も男手が必要な時以外は母が父にさせないから。・・・だがしかし、何かを決めなければならない時は常に母が決定する。
『ねえ、あなた・・こうしましょう?』という風にとってもにこやかな表情で提案されると十中八九どころか九分九厘異論など言わず、いつもは完璧にかかあ天下というか、
満足そうに母の尻に敷かれている父。逆らうことなどそれこそ何も無い感じで。
娘の目から見ても、父は大人しくて優柔不断でとても女の人にはもてそうなタイプには見えないのに。風貌も中年と言い切っては気の毒だが青年には流石にもう見えないから若々しさは感じない。
朝から晩まで動き回る職業柄か幸いにも太ってはいないし腹も出ていないので体型だけは元運動選手らしく(ラグビー部だったのは知っている)背丈もそこそこそれだけはあるから、唯一釣り合うのは身長と体格、ただそれだけ。
だがしかし父が自慢する綺麗な母・・娘から女目線で見ても本当に見目麗しい美女である母親の響子さんと比較すると父親は残念ながらパッとしない容貌だから不釣合い極まりない存在で
自分が小さい頃には別に不思議ではなかったが中学生くらいの頃から『パパってよくぞこんなに綺麗なママと恋愛して結婚できたわね?』と失礼ながら時々思ってしまう。
風呂場で交代に入浴する際に何度も目にして眺めた母の肢体はとても44歳には見えないくらい若々しくて31か32歳位にしか思えず、麗しい女体とはこのことかと実感してしまうし、
自分の成長段階のスタイルと比較すると残念ながら敗北感しかない。
母親の乳房の見事な張り具合など本当に美乳で巨乳だし、肌も肌理が細かくて滑らかでシワなど何も無い。お尻もウエストが括れているせいか余計に艶めかしいし、恥毛も手触りが良さそうで
恐らく全て父親が愛して止まないのが容易に想像できてしまい素直に凄いと思う。(だってキスマークを隠し切れていないもの)
去年に中学の修学旅行で3泊家を空けて帰宅した時に冗談で『新婚時代に戻ったみたいでママ、とっても楽しかったでしょ?』と言ったら
『何言ってるの、もう20年以上の付き合いなんだから今更そんなの感じないわよ』と母に笑って否定されたが、何となく普段以上に母の身体から充実している雰囲気を感じた記憶がある。
実際に上機嫌だったし、あれは絶対にずっとイチャイチャしていた明白な証拠だと思える。
恐らくは寝室以外でも、たとえば風呂場や居間でも・・下手をすると食卓でもエッチしていたのではないかと下世話に疑っている。
((それは完全な事実で推理した内容はほぼ正確に的中していた・・もっともトイレでもエッチしていたことだけは予想できなかったのだが・・・ビデで性器を洗おうとした響子さんを制して
五代君がいつもどおりに自分が拭き取りたがり、何故かそのまま延長戦にその場で突入してしまったためにトイレでも奮戦してしまったのである))
休日も夫婦二人だけで出掛けるのはそう多くはないが、その時は本当に楽しそうで嬉しいのが良く分かる。
むしろ出掛けなくても二人で思い出話に花を咲かせるのが好きみたいで、そんな時の会話は常に凄く幸せそうに弾んでいる。
若かりし頃・・痴話喧嘩の果てに父が一刻館の2階から庭に転落して片足を骨折してしまい入院したので母が本当に毎日お見舞いで看護に訪れた顛末など唖然とするような事件ばかりなのが娘からしたら聞くのが少々難点であるが・・・。
一刻館には各部屋に電話が無くて1階廊下のピンク電話が共用で設置してあるのだが何故それを設置するに至ったのか、その理由を母不在時に父から聞いた時は『ママのヤキモチ妬きって昔から凄かったんだなあ』と妙に感心したこともあったが・・・。
そんな呆れるくらい恥ずかしいなあと思えるほど本当に仲が良かった両親に一体何が起きたんだろうと心配で実は仕方が無い一人娘の春香ちゃんであった。
[私も大学時代、色んな男の人とお付き合いしたけど]
[ご縁がなくて未だに独り身だけどね~]
と、にこやかにそれからの自分自身を笑い飛ばした。
[家に家庭訪問に来られたのにはビックリしましたけど]
冷やかすように春香ちゃんはそう言った。
[あはは、五代家を訪問する理由が他になくてね~]
[まあ口実つけてお伺いしました]
ペロリと舌を出して照れ笑いを浮かべる八神さん。
[私のライバル、正真正銘の恋敵だったあなたのお母さんと幸せに暮らしてもらわないと困るじゃない]
[そうじゃないと・・・・辛いじゃない]
[当時は凄く張り合って敵対したけど、あなたのお母さん、アパートの管理人さんの響子さんって実は五代先生、あなたのお父さんが女性に対して求めているものをほぼ全て兼ね備えて、
持っていたのよね。悔しかったけれども]
[今も美人よね。だけどあの頃は若かったからもっと綺麗だった・・でも、それだけじゃなかった。私も同じ女として憧れるような家事全般が得意、優しくて健気で、大人の女性なのに
一途で初々しくてなんて魅力に溢れる女性だったからね]
[あなたのお母さんのこと・・独占欲が強くてヤキモチ妬きなんて面と向かって批判もしたけど、それって別に欠点でも何でもないしね。かえって逆効果だったかなとも思ってる]
[私にあったのは若さだけでそれだけじゃ流石に勝ち目が無さ過ぎたなあって思って・・完全に敗北したなあって諦めたのよ。だから祝福したわよ、ちゃんと最後には]
少しばかり淋しそうな表情を見せた八神さん。
両親の恋物語に自分の担任教師が絡んでいたことに衝撃を受けた春香ちゃん。道理であんなに家庭訪問で両親が驚いたわけだと納得する。
だが常々疑問に思っていたこと、もしかしたらそれを聞けるかもしれないと思い八神さんに質問する。
[あの、父についてですが・・・時々自分の父親ながら失礼な疑問が浮かぶんです。よく母と結婚できたなぁって」
[母は大学には行っていませんが頭もとっても良くて高校生の私に勉強を教えてくれるんですよ、それに娘から見ても身贔屓無しで本当に美人だって思いますし]
[それに比べて父は・・確かに優しい男の人ですよ、本当に。私の下らない話にいつも最後まで付き合ってくれるし、小さい頃はそれこそ毎晩疲れ果てるまで一緒に遊んでくれたし]
[でもそれって父と娘の血縁関係ですからそんなに不思議じゃないです]
[ただ・・今でもとっても優柔不断だし、頓珍漢だったり危なっかしくてあんまし格好良い姿は見せてくれないし、見栄えも極々普通の男性だし。どちらかと言えば大人というより子供っぽいし]
[もちろん母に対しても凄く優しいとは思いますが、母がそれ以上に父に対して尻に敷きながらもとっても優しいので・・・どうやって結婚するまでに至ったのかなって時々考えちゃうんです]
[いえ、もちろん・・そんな二人が結婚したからこそ私が生まれたことくらいは理解してますし感謝もしてます。でもやっぱり疑問なんです。男と女の大人の関係って普通では理解できないことなんでしょうか?]
思春期の春香ちゃんとしては父親は好きだが、何故母親と結婚できたのかがどうしても分析できず誰かにズバリと解析をして欲しかった。
両親の結婚前後に多少なりとも関わった八神ならば、それが可能かと思い・・聞くべきではないかも知れないが聞いてしまっていた。
[あはは・・・春香さん。男としての魅力って父親だとやっぱり見る面が異なるから分かんないか。・・・そうだね、少なくとも大勢の女性にモテるタイプではないよね。でも・・・]
[そうだなあ・・・不思議だけども五代先生って、ああ、お父さんのことね。さっき春香さんが子供っぽいって言ってたけど、男の子がね見栄張って背伸びして痩せ我慢する姿って女から見て嫌いじゃないよ]
[可愛いなあって思うよ。拗ねててもね、文句言いたいのをあ~あ無理してるって思えてね、あたしに甘えていいよ、甘えてよなんて思ってしまうことあるよ]
[それがね見た目は大人なのに男の子みたいな反応見せられると・・それが好きな女性には堪らない魅力に思えてしまうかな?]
[ま、好みの問題で気に入らない場合もあるけどね。目が離せない人だなって思えたら十分気になる人だよ]
[あとどうしようもないお人好しな点もね、あるよね。自分だって余裕なんて無いのに他人の心配ばっかりしてしまって・・損することが多いけど、周囲から逆に心配されてしまう性格もあたしならそういう人が実は好きだな]
[腹が立つけどね、仕方ないなって。それはあなたのお母さんもそう思うはず。そうじゃないと、あんなに好きにならないよ・・絶対にね]
[別に最初から求めている訳じゃないけど・・年下だし頼りないな、でも可愛いな、危なっかしいから心配だなって思い始めて・・・]
[でも男の子みたいなのに好きな女性の為なら、悲しんでいたらそれを包み込む大人の、そう包容力を発揮されると嬉しい人は嬉しいと思う。それがあなたのお母さんだったのよ]
ここまでは五代君と響子さんのことを冷静に分析すると更に本質を語り出す八神先生。
[あなたのお母さんは再婚なの知ってるわよね?そう、あの当時はお父さんは大学の教育実習生。お母さんはアパートの管理人で、結婚して僅か半年足らずで旦那さんに先立たれた未亡人だった]
[でも既にお互いに凄く真剣に好きだったことが・・誰にでも私にも簡単に分かった。なのにまだ本当の恋人同士じゃなかったんだよね、あの当時は]
[何でよ?って私だって思ったわよ。でも後に冷静に考えてみると・・お母さんは未亡人であることを気にし過ぎていたし、それに亡くなった旦那さんのことを大事にし過ぎていた。本当に一途にね]
[普通の男なら、忘れろ!忘れてくれって絶対に言うわ。好きなら尚更ね・・だって自分じゃない見知らぬ男の人のことなんだから・・・ましてや、もう亡くなってこの世には居ない人のことだからね]
[そしてこれが大事なんだけど・・お母さんはお父さんのことを既に前の旦那さんと同じかそれ以上に好きだった・・好きになってた。それなのに恋愛に踏み切れなかった]
[お父さんの五代先生以上に優柔不断だったと思う・・あなたのお父さんはそれでも諦めずに、それこそ何年も5年以上も待ち続けて、そんな女性がお母さん、響子さんならそのまま何も変わらずに受け入れて、何も変わらなくていいって・・]
[それが嘘や偽りとかなくて本心だったから・・・お母さんもやっと受け入れて、お父さんの胸に飛び込めて恋人同士になって結婚したって私は自分なりに分析してるけど・・・どうかな?理解して納得できるかな、娘さんとしては]
[確かに男と女の考え方って異性だから違うよ。だけど、人間として普通それが本当に出来るかな?私が男なら出来ないな、そんなこと。だから五代先生のこと、本当に凄いなって人間として尊敬しているよ]
八神は自分なりの結論・・自分が過去に恋焦がれながらも夢破れた恋の結末をどのようにして考えて納得したのかを春香ちゃんに真面目に話してくれた。
すると春香ちゃんは、
[そうだったんですね。なるほど・・何とか両親が結婚できた理由がかなり分かってきました。でも・・そんなに大きな壁を乗り越えて来た二人なのに・・・]
[今・・・その・・・ですねぇ・・・・。]
[何か家の中がぎくしゃくしてまして・・・・]
現在自分の家の中がしっくりいってない事を、八神先生に白状した。
[そうなんだ・・・・]
[この前お伺いした時は全然そんな感じはしなかったけど。原因は?]
春香ちゃんの告白に、信じられないといった表情をした八神さん。
原因は何かとストレートに尋ねた。
その問いに春香ちゃんは。
[実は家の父が・・・・・]
ようやく自分の胸の内をさらけ出す時が来たようだ。
以下、次回