輪廻の蛇 〜退魔兎姫ハヤテの世界で、TS転生者は日常を守りたい〜 作:黒庵
仕事の方が落ち着いたので、投稿再開します。
…………いやいやいや。
なんだこれ? いや、なんだこれ?!?!?
訳の分からない光景に思わず困惑する。というか混乱する。
あの子たちの家を出たかと思えば、いきなり目の前に自分の家が飛び込んできたのだ。混乱しない方がおかしいと思うし、実際問題、俺の頭はフリーズしていた。
いやだって。よりにもよって………なんで?
あの幼女たちの家の前に、自分の家があるってなんなんだ???
そんな覚え………
「いや、まてよ………?」
ないハズ、と断言しようとした感情が止まる。
改めて視界に入れた光景。その外観に引っ掛かりを覚えた俺は、じっくりと、嫌な予感を感じながら、昨日のスタート地点………タクシーから降ろされた位置に立ってから改めてソレを観ることで────ようやく、思い出した。
そう、昨日立った場所。
………そこに、何があったか。
────"周りを見渡して、他に目立つものは……やけに広そうな庭がくっついてる、二階建ての一戸建てが、家の目の前に堂々と建っているくらいか。"
「あっ」
……あれかーーー!?!?
脳内フィルタから再生されたのは、そんな本来なら心底どうでもいい情報。
そんなどうでもいい情報に、急に死角から強襲された気分だった。
(くそ、なんで見てたのに、あの魔王城に入る前に気づかなかったんだ、昨日の俺……!)
いや、『引っ越したばかりの家の前に建ってる住宅』なんて情報、あのときは正直そんなに重要なことだと思ってなかったし、この幼稚園児なみの身長だと、ぶっちゃけ外門に遮られてたら『(みえてる部分から推測すると)二階建てになっている』ことと、『(全体のシルエットからして)それなりに広そうな庭がくっついてる(たぶん)』くらいしかわからないけど……! ……いや、原因それじゃん?!?!
ついでに言えば、昨日あの外門に入ってくるときは、ツインテ幼女の元気さについていくのに必死で、立ち止まったときに見た外からの家の外観なんて、いちいち確認してる余裕なんてなかったし……!
そんな言い訳染みた嘆きを無意味に垂れ流す。
いやだって、流石にこの家の配置は酷くない?? 何かしらの悪意を感じるんだが??
「どうすんだ、これ………」
………とりあえず、頭が痛くなりそうなので、
というか、気にしたところで家の真ん前にある時点で、いつかはあの幼女たちにエンカウントしていた。これはファンタジー系RPGで最初の街で起こるイベントが固定されているようなものだ。あるいは、ゲームをスタートした瞬間から回避行動をしないと即死するクソゲーのようなもの。回避する必要性を知る前にエンカウントしてしまうのであれば、それは最早詰みである。
故に、そんな回避不可能なイベントがどうのこうのではなく。
俺がするべきだったのは、『
今後の自分が幼女たちと関わるのが必要だと思えばそうすればいいし、必要でないと感じたのであれば即行縁を切るべきだった。
それが出来なかった以上は、もう現状を受け入れるしかない。
精々今の自分に出来ることとと言えば、これから起こる『
可能性を無くす、ということはできない。
この家を拠点にしていく以上は、毎日この家から外に出なければならないということであり、つまりそれはここから先、毎日魔王との予測不可能なエンカウントを乗り切らなければならないということ。
一日なら見つからないかもしれない。
だが、一週間後は?
一か月後、一年後………向こうに試行回数が無限に存在している時点で可能性は無くすことは出来ず、エンカウントをできるだけ遠ざけるという苦労しかすることはない。
しかし、向こうの試行回数事態を無くすことはできる。
具体的に言えば、そもこっちの拠点自体を変える、つまりここより離れた場所に引っ越しを行うことで………駄目だ、今の身分が一般人の無力な幼女の時点で引っ越しなんてできるわけがない。
………祖父の家になら………などと思ってしまったが、そもそもあの人の家を知らないし、客観的に見れば、親の居なくなった幼児を一人置き去ってそのまま丸一日放置する人だ。一緒に住んで何が起きるのが全く予想できないのが怖い。いくら、食料を買えるだけの資金を事前に渡していたとはいえ、俺がもし普通の5歳児だったら軽く泣いてるんじゃないだろうか。
(というか、あの人………良く考えたら、5歳児が『食料を一人で買える』ってことを知ってたってことだよな………入院する前の『林祢 真銀』もそうしたことがあったってことか?)
流石に何も考えずに資金だけ渡しておけばOK! みたいなノリで渡してきたとは思いたくないし、どっちかといえばそうだと思いたいが。
思い返してみれば、両親が亡くなったばかりの、入院していた孫に差し入れをして、退院の手続きだとかをしてくれるくらいには最低限の良識………はあるみたいだし。
………じゃあ、なんでその孫を放置したまま一日経ってるんだ。という疑念が沸きかけたので、そこで祖父に関する思考を切ることにする。
今は目の前に置かれてる爆弾をどう処理するかが先だ。余計なことには構ってられない。
というか、なんでこんな明らかに面倒なことになってしまったのか。
「………」
明らかに現状でいっぱいいっぱいなのに、これ以上一気に押しかけられたくない。
相手が好き嫌いの問題じゃなくて、キャパシティの問題だ。これがある程度落ち着いた生活を出来ていて、心にも余裕があるのなら近所の子供とも………まあ、すこしは時間を割いてもいいかもしれないけど、今はだめだ。
なんせ、この世界には鬼、退魔師と。元の世界とは明らかに違う『ファンタジー』がある。
入院中や、昨日のカエデさんとの会話────現地人の視点からの情報もそれとなく、ある程度得られたとはいえ、まだまだ楽観視はできない。
とりあえず、カエデさんの話によると、とりあえずこの街は外を出歩いても鬼にエンカウントすることはまずないらしい。………それはそれとして、小さい子が一人で外を出歩くのは危ないと釘を刺されたのだが。
いや、俺は中身大人だし、大丈夫なんだけどさ。
そんなわけで、当分の間はこの異世界についての調査────具体的に言えば、退魔師のことを中心に調べていこうと思っている。
あとは………ついでに、『入院前の』自分についても調べないといけない。
────とりあえず、やれることをやっていこう。
………そのためにも、まずは家に入ろう。
そろそろ、あのそっくり幼女が家から出てきそうだし。
☆
数日後。
現状、人として最低限の生活ラインは確保できた。
飲み水は水道、風呂も家にちゃんとあるし、食料調達はこの身体で移動できる距離にコンビニがあるので問題ない。
………が、最優先で手に入れようとしていた『ちゃんとした、元の性別の下着』は未だに手に入れられていない。この家の中にあるはずもないし、スマホもPCもないわけだから当然ネットから購入することもできない………どうすればいいんだろう。自分、普通に困ってます。
────しかし、何もかもがうまくいっていないわけではない。
(さあ~て。よし、今日も行ったな?)
ふふふ。この一週間で
………昨日はなぜか、ツインテ幼女の帰宅時間がいつもより早かったのは少し気になったが、大した問題ではないだろう。あの幼女にも何かしらの早退する理由があったというだけだ。
というわけで、準備オッケー。
この数日間で(この身体で運べる量の)食料も少しずつ買い込んだことだし、これでもう少し周辺の探索に手を出せるようになった。完璧だ。
くくく………最早こそこそと、奴らに捕まる心配をする必要はない………ここからは俺の
ガチャ。
「……あっ」
「あっ」
ドアを開けた瞬間、ツインテ幼女と目と目が合う。
固まっているが、涼しげな水色のワンピースに、肩からポシェットをかけている。
………どうやら、丁度外門を出たところだったらしい。
いや、それよりも。
(無言でダッシュ)
(がしっと幼女に腕を掴まれる)
はえーよ。
「ましろ………」
「ねねちゃん………」
暫し無言で見つめ合ってお互いの存在を確かめ合う。
そして。
「なんでにげるの………?」
どうしよう。