輪廻の蛇 〜退魔兎姫ハヤテの世界で、TS転生者は日常を守りたい〜 作:黒庵
Q.なんでこんなに亀更新なんです?
A.仕事してる時間ってね、実は小説って書けないんですよね(真顔)
それに加えて、ずっと先の展開を書いては消し、書いては消しの繰り返しなので………毎日投稿できてる人ってバケモンだと思います………。
─────灰色の世界。
生きていたのは色の無い場所。
白と黒だけで編まれた、そんな世界。
─────そんな世界は、生きているだけで自堕落なのに。
☆
デパートで不本意な下着を購入したあと、俺たちは適当に見て回ってから帰路に着くことにした。
その途中、本屋を見かけたので欲しかった退魔師関連の本─────いつも利用しているコンビニでは売ってなかった退魔師専門雑誌HERO'Sの最新号を一冊、そしてこの世界の日本語の辞書を一冊買ってから帰ることにした……辞書の方はこの身体の腕力には "すこしだけ" 重くて動けなくなっていたのだが、隣にいた幼女が「ましろ、これ重いの?」と不思議がりながら持ってくださりやがったので
ちなみにぬいぐるみコーナーや女児玩具コーナーも(手錠で引っ張られて強制連行されたので)ちらっと見て回ったりもしたが、こちらはノーコメントで終わらせてもらおう。男である俺にかわいいは似合わない……。
そんなこんなではじめての近場のデパート探索は終わり、2人揃って家に帰ることに。その道中、緑の公衆電話を見かける。
「……電話か」
「ましろ?」
「いや、なんでもない」
…… "何か困った事があればここに連絡してください" 、か。
☆
「あ、ネネちゃんとハヤテちゃん……じゃなくて、えっと……マシロちゃん?」
「うん! こっちはましろ!」
「…………。どうも」
帰る方向………どころか帰る道すら一緒なので、そのまま家の前まで歩いて帰ってきたのだが、そこで買い物袋を持ったこの前の制服姿の少女に出会った。そっくり少女と間違えられるオマケ付きで。
いや、一回会っただけだしこんな反応になるのも分かるけどさぁ……。
ゲンナリとしつつ、そういえば、と思い出した。
「あの、この前はありがとうございました。料理、美味しかったです」
「あ………そういえばそうでしたね。ふふ、どういたしまして」
はあ、ようやく言えた。
出来るだけ早めに言っておかないと忘れそうで不安だったんだよな。
俺の言葉に制服少女……ちゃん?(呼び方に困る。普通に年下なんだけど、年上でもあるし………いや、一応子どもっぽく振舞わないといけないとするなら、むしろちゃん付けした方が客観的には自然なのか………?)は上品に微笑んだ。
………いや、いつまでも制服少女呼びするわけにはいかないか。
「そういえば、えっと、お名前は?」
「ああ、そうですね………『
「ニシヤマ………? キバガミ、じゃなくて?」
「え? ああ………ふふ、勘違いさせちゃいましたね。あの家に居たのはネネちゃんたちのお母さんにお仕事の勉強を教えてもらう代わりに、お料理とかお洗濯だとかの家事を手伝わせてもらっているんです」
「なるほど………それは、すごい………ですね」
一瞬不思議そうにした制服少女ことユキカちゃんは合点がいったのか、微笑みながらあの家にいた理由を教えてくれた。
だけど、俺はそれに対してあまりうまく言葉を返せなかった。
すごい、というのは本当だ。
だけど、その一言しか返せなかったのは、勉強を教えてもらうために他人の家の家政婦のようなことを………恐らく、学生生活の隙間を縫うように行っていること─────そして、何よりも。それが意味することは。
(それは─────他の家の『家族の生活』を、ずっと………間近で見てしまうってことだ)
………それは、俺にはできないことだ。
一日だけでも、あんなに………遠いものだと、思い知らされたのに。
それをずっとだなんて、俺はきっと耐えられない。
だから、俺は………この子みたいなことは、出来ない。
『─────君の欲しいものは、君が妥協を覚えない限り手に入りない。絶対にね』
連想。
フィルムが再生され、胸に刺さったままの”先生”の言葉が、脳を殺す。
「─────」
─────。
………いや。妥協なんかするもんか。
妥協を覚えるってコト─────だってそれは、自分勝手に他人を巻き込むってことだろうに。
「………ましろ?」
「ぁ………ううん、なんでもない。じゃあ、ネネちゃん、ユキカちゃん、さよなら」
……………。
わかっている。そんなこと、だから……………彼女達とは仲良くなれない。
決して手に入らないもの。
多くの人が当たり前のように持っていると知りながら、別に珍しくもないと切り捨てられた……………事実、そうでしかなかった自分の願いは、この世界でも結局叶う事はなかった。
だから、これでいい。
『君は、自分の帰る場所だけが欲しいのかい?』
「─────。それで、いいから」
それで、もう─────自分の心に、決着は着いていたはずだろう。
☆
二人に別れを告げ、振り返ることなく家の方へ歩いていく。
ツインテ幼女が何かを言ったようだが、俺には何も聞こえない。
足を、この世界の『形だけの帰る場所』に進めていく。
「ましろ」
だが、俺の身体は突如止まった。
─────見れば、背後から伸びてきたちいさな両腕が、俺の身体を拘束していた。
「おかえり」
「はい???」