※この作品はR-18です。

輪廻の蛇 〜退魔兎姫ハヤテの世界で、TS転生者は日常を守りたい〜   作:黒庵

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 明けましておめでとうございます、漸く年明け仕事ラッシュと1月が気付いたら終わってました。時間の感覚がはやい。

 それはそれとして。
 退魔兎姫ハヤテも約5年ぶりの更新が来ましたので、宣伝です……!
 https://novel18.syosetu.com/n7672fz/
 

 ……こっちも出来れば1章を今年中に終わらせておきたいなぁ。


隠しごとと、過ちと。

 

 ─────そこには、優しい唄があった。

 

 今はもう、錆びついていて簡単には引き出せないレコード盤。

 

 だけど、きっと……自分はあの子たちの唄声を何度だって想い出せる。

 

 だってそれは──────何よりも欲しかったものの一部だったから。

 

 遠い日の記憶。

 

 例えそれが、最早自分の記憶にしか無い……何処までも淡い夢だったとしても。

 

 

 私は、それだけでこの道を─────たったひとりで、歩いていけるのだから。

 

 

 

☆

 

 

 

 ネネちゃんが退魔師の修行?

 楓さんが、退魔師?

 退魔師………なんで?

 

 ………? 

 ………??

 …………?

 ……? ???

 

 いやいやいや。

 

「だって……え? いや……楓さん、出会ってから5ヶ月くらい経ちますけど、そんな素振りぜんぜん無かったじゃないですか!」

「あの、マシロ?」

「退魔師のこと、調べてるって言いましたよね私!?」

「えっと」

「いや、それが原因ですか……? いや、それなら仕方ない……仕方ないか……?」

「マシロ、あのね? その」

「数ヶ月、いっしょで、でも、わたし、この家の子じゃないし、かくし、かくしてても、仕方な………う、うわぁぁぁぁん!!!」

 

 急激。

 途中まで真っ当だったはずの思考回路が何故かショートする。

 それで、なぜか、なぜか、涙が出てて、わからない。

 

 

「は、え? ……ま、ましろがこわれた!?」

 

 

 創作ならば、正しく部屋にがーーん、というギャグ調の効果音の幻聴が響いているだろう。世界はファンタスティックなコズミックへと移行したのである────。

 

 

 あたふたとするネネちゃん。

 固まってしまったカエデさん。

 よしよし、と言いながら俺の頭を撫でている隣のハヤテちゃん。

 

 

「おはようございます、お師匠様────? ……あの。これは、どういう状況でしょうか?」

 

 

 そして朝早くに修行の為に牙咬宅を訪れた、何も知らない雪果ちゃん。

 

 

 現在は土曜日の朝7時。

 ─────いつもの朝食が、一瞬で地獄絵図(カオス)と化した状態でスタートした。

 

 

 

 

☆

 

 

 

 

 

 ────人には時に過ちを冒すことがある。

 

 小学生男子が飛び越えられそうな幅の川へとジャンプし、見事に突っ込んで泥だらけになったり。

 

 塩と砂糖を、同じ風貌の瓶に入れ替えて塩入りコーヒーを朝っぱらから錬成したり。

 

 はたまた何処ぞのツインテ娘が次の日用のおやつを夜中に見つけて頬張り、幸せそうにしているところをカエ……ハンターに見つかり、怒られたりと、様々なことが起こるものだ。

 

 

 其れ等は必ずしも悪心、善心から発生するものではない。

 人は肉体という枷に囚われ、時に気温差や環境の変化によって思考が可笑しな方向へとフライアンドウェイ、愉快空間へと、ごーとぅーとらべるしたりする。……うん、正直今もまだ思考が混乱しているらしい。俺は何を言っているんだろうか。

 

 

 

 

 端的に言えば。

 

 

 ──────俺は、子どもの肉体に囚われているという超重要事項を甘く見過ぎていたらしい。

 

 

 

「楓さん、すみませんでした」

「ええっと、マシロ。あの、気にしなくていいから」

 

 

 やらかした。

 嘘偽りなく、俺の心と赤くなっている顔の熱が、今すぐ過去に戻りたいと全力で訴えていたのである。

 

 

 

 

☆

 

 

 

 

「楓さん、さっきのは何かの間違いなので忘れてください」

「あの、ごめんなさいマシロ。意図して教えようとしていなかった私が悪いから……」

「いいんです、忘れてください。貴女の行動はすべて正しかったので」

「…………」

 

 牙咬 楓の目の前で、娘と似た顔立ちの5歳の少女が全力で土下座していた。

 

 ───というか、自分が現在進行形で土下座させてしまっていた。

 

 この子は寝起きあまり得意ではないらしく、普段は割と出来るだけ大人のように振る舞おうとしているものの、こういった時には割と子どもらしくなる。本人に自覚はあまり無いのかもしれないが、その最悪のタイミングで楓が爆弾を豪速球でぶっ込んだので盛大に爆発してしまったらしい、やらかした。それが一切の偽りなき今の牙咬 楓の心象だった。

 

 

 もちろん、理由はある。

 凡そ5ヶ月前、少女は突然自分たちの家の隣に引越してきた。それだけならば楓は警戒心を完全に解いていたかもしれないが、少女の身内は一切現れない。つまり、『退魔師の血筋ではない』という完全な確信を持てるような証拠が存在しなかったのだ。

 

 楓は確かに一度、少女を一般人の家系だと判断した。

 だが、その判断基準はあくまでも楓の心象に依るもの。

 先代のような家としての力は持たずとも、事実として楓は牙咬の当主だ。少女に悪意が無くとも、少女に悪意が憑いて回っている可能性を疑わなくてはならない。東都ではそういった退魔師の一族同士の諍いが少ないものの、東都以外の……特に地方の退魔師の名家などでは権力争いが盛んだったりするからだ。

 

 楓ははっきり言ってその辺りの政治的なアレコレは不慣れというか、退魔師としての通常の仕事以外の対応にあまり自信がないので数ヶ月間、『退魔師としての情報は出来るだけ出さないようにする』という方針になってしまったというか。

 

 加えて、ここ最近の鬼の出現も緩やかだったし、緊急出動をする必要性もこの数ヶ月の間無かったので、そこまで気を配らなくともマシロから情報を隠せてしまったというか。

 

 ……いや、牙咬楓のこの数ヶ月間のこれが、完全に不要な気遣いだったかと言ってしまうと、そうでもないのだが。

 

 これが単なる娘の友人ならば別段そこまで退魔師としての要素を隠して生活する必要も無いのだが、行動力のある元気な娘たちが起点とはいえ、林祢 真銀という少女は牙咬宅に数ヶ月単位で衣食住を共にしてしまっている。当主と、後継者たちと、だ。

 

 

 故に、退魔師の名家としては牙咬 楓の行動はむしろ正しく、やっておくに越した事はなかったというのが結論だと言える。

 

 

 ……ただ、数ヶ月も事実上いっしょに暮らしているということは林祢 真銀の居る生活がほぼ楓の日常でデフォルトと化してしまうということであり、実力派の退魔師として常日頃から活躍し続けている楓が娘に退魔師関連のことを話す機会と時間は、同じ空間に居る時に限られてしまう訳で。

 

 

 仕事のある現場から解放され、休日にプライベートな時間を普通の親らしく娘たちと過ごせるというのは、楓の心から穏やかなものに変えるに十分だった訳で。

 

 

 ……つまり、気を抜けれるタイミングで、カエデは真面目な話を娘にしていたつもりが、うっかり、幼い少女に対して唐突にド級のカミングアウトを投げてしまった訳である。

 

 

 かくして、うとうとしていた少女は過去最大級のショックを受けてノックアウト。見事に泣き出したという訳だ。

 

 

 

 まぁ、それはそれとして。

 少女は、今はもう完全に目が覚めている訳で。

 起こった事実をただ冷静になった上で振り返ってしまうと、どうなるかといえば、だ。

 

 

(うぅ……だれか、だれか、ころして……!)

 

 

 恥ずかしさで顔を上げられなくなっているのは、言うまでもなかった。

 

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