※この作品はR-18です。

輪廻の蛇 〜退魔兎姫ハヤテの世界で、TS転生者は日常を守りたい〜   作:黒庵

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 短いので3連続投稿です。


番外編『ふたりの入学式と、お医者さんのキャンプファイヤー』

 2018年 4月6日

 

 今年もネネちゃんたちの春休みが過ぎていき、俺とハヤテちゃんは二人してショッピングモールで購入した赤いピカピカの物体(女児用ランドセル)を死んだ目で眺めていた。ちなみにオレの分の代金は祖父に電話して出してもらった。

 

 今日は小学校の入学式である。

 当然、祖父は来ていないので楓さんと俺とハヤテちゃんの三人で行動する。

 在校生のネネちゃんは新入生の入学式がある関係で、今日はお休みなのでお留守番だ。

 ……何やら校内の案内をしてお姉ちゃんぶりたかったようだが、そのあたりは後日してもらうことにしよう。

 

 春の陽気を感じながら、桜の花吹雪を三人で歩く。

 これから通う都内の小学校に着き、一度二人と別れて、完全に小さい子を見る目で6年生に名札をつけてもらい、教室に案内される。……どうやら、ハヤテちゃんとは別のクラスらしい。すこし、心配だが……とりあえず今日は大人しくしておくか。

 

 この小学校は私服登校だが、入学式は一般的な小学校と同じくフォーマルな服を着ていく。

 つまりはちゃんとしたワンピースなどの女児服を着なければならない……のだが、普段はあまりそんなに女の子らしい服は(着なければならなくなったときだけやむ終えず着ているため)あまり持っていないが、仕方がないので、普段は封印している5歳の林祢 真銀が着ていたらしい……やけに高級そうな生地の可愛らしい女児服を着ることにする。……もう着れなかったら普段の私服で行かせてもらおうかと思ったが、それはそれで楓さんと雪果ちゃんに間違いなく指摘されるだろうし、5歳の服をまだ着れてしまったのでここまで来てしまったのだ。

 

 女の子らしい、しかし派手ではなく、控えめな白と紺のワンピースを着て人のいる場所を歩く。

 ……今日だけだし、恥ずかしいのは我慢だ。

 

 体育館に新入生の集団で移動し、入学式を一通り済ませていく。

 その後、教室に戻り、クラスメイトの自己紹介や先生の学校生活の説明などを終わらせて、昼前にはすべてが終わった。

 

 その後、楓さん達と合流し、三人で校門の前で写真を撮った────────この人たちと………本当に、家族になれたらいいのにな、と淡い願望をそっと胸にしまいながら。

 

 

 

☆

 

 

 

 2016年 7月19日

 

 

 今日は久しぶりに有休を取って遠出の旅行をしている。

 訪れたのはキャンプ場。何度か来たことがあり、持参したテントを組み立てるのもお手の物だ。

 事前に貸し切りが出来る日を聞いて予約をしたので、周りには他に誰も居ない。

 都会では味わえない、静かな良い夜だ。時にはこうして、疲れを自然に癒してもらうのもいいだろう。

 

 夜のキャンプファイヤーに封筒と血の付いた衣服が入った袋を投げた。

 パチパチ、と火が投げ入れたものを燃やしていく。

 無論、普通はこんなものは燃やしては駄目だ。

 

 なので、ここでコレを燃やすことは『事前にオーナーに話を通してある』。

 口止め料も払ったし、燃やした後に残るものは、いつものように彼らが処分してくれるだろう。

 彼は少し前に退院した、5歳の林祢 真銀の担当をした医者だった。

 

「鬼に襲われたのに、ほんの少しのかすり傷しかなかった────────それだけなら、こんなことはしなくてもよかったんだけどね」

 

 奇妙に思った彼が、東都に旅行してきた親子の生き残り………病院に運ばれてきた当時の少女が着ていた血まみれの服と、入院中に採取した少女の血液を、自身の持つ個人的な伝手で調べてもらっていたのだ。無論、少女の個人情報は伏せて。

 

 その結果、判明したのは────────あの少女が着ていた服には『両親のものと思われる血と、少女自身の血や肉片が付いていた』。

 

 ………その他にももう一つ驚くべき事実が判ったが────────まあ、それは別にいい。自分には関係のないことだ。

 この事実をあの少女の祖父は知っているのかは少し気になるが……いや、知った上で少女の新しい家を用意したのなら相当に趣味の悪い話だろうが、医者にとってそのあたりはもう終わった話だった。

 

 おまけに、入院してからほぼ一か月後に目覚めた少女は記憶を失っていた。

 真っ当に考えるのなら、鬼に襲われたショックでそうなったと結論付けるべきだろう。

 だが、もしそうではなかったとしたら………?

 

「やれやれ、となるとやったのは退魔師か、それとも………」

 

 この現象には心当たりがある。

 だが、それは退魔師の素質を持つ者にしかできないことであり、同時に退魔師の禁忌(タブー)のひとつのはず。

 

 ──────まあ、どちらにしろ伏せておけばいい話だ。こんなことを仕出かす時点で、ちゃんとした退魔師ではないのは確かなのだから。

 

 医者は証拠となるものを燃やし、いつも通り淡々と愛すべき平穏な医療業務に励むことにした。

 患者は助ける。それは確かだ。

 だが、助かった後の彼らは────────彼の患者ではないのだ。





 これで一章前半は終わりです。
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