輪廻の蛇 〜退魔兎姫ハヤテの世界で、TS転生者は日常を守りたい〜 作:黒庵
色々と捏ねくり回してみたんですが、どうしても諄く感じてしまうので今回は分割することにします。
(挿絵入れたいんですけど、ネネは兎も角、ハヤテの髪型が未だにわからねぇ〜〜! 色々と確認したけど、それっぽくしか出来ねー…というか、もう絵がわからない。何もわからねー……)
「ハヤテが……もう一人……!?」
いや、その反応もう見たって。
手を掴まれたまま、固まる女性に内心ツッコミを入れる。……あと、手を掴まれたままだと帰れないんだけど……。
「(────っていうか、もう……だめ……)」
────思考が、落ちる。
溜まっていた疲労が限界を迎えたのか、突然電池が切れたように世界の方が遠くなる。
「────、? ────!?」
……意識が消える瞬間、誰かに抱き留められた気がした。
☆
「────うぅ……ん?」
ぼうっとする頭で、目を覚ます。
ここは……ベッド?
どうやら、寝ていたというか、寝かされていたらしい。
掛けられていた布団をよけ、周りを見る……ぬいぐるみとか、内装見る感じだとパッと見は女の子の部屋って感じだけど……。
しばらく目覚めたベッドの上で、部屋の中を観察してるとドアが突然開いた。
「あ! ましろ! よかった、起きたんだ」
「……ネネちゃん?」
声を掛けられた方にベッドから起こした上半身を向ける。
そこには、先程別れたばかりの少女がぱあっと咲いたように笑って、嬉しそうに此方を覗いていた。
「もしかして、ここネネちゃんの部屋?」
「うんっ! ましろ、急にたおれちゃったからとりあえずママが、『よこになれる場所にはこんで、ねかせてあげよう』って。だからね、あたしのベッドにましろをねかせてたの!」
……いまいちまだあんまり頭が回っていないみたいなのだが、どうやら状況を見る限り、自分はこの子の家で寝てしまっていたらしい。
ぼうっとしていると、扉の方から歩いてきた少女がツインテールを揺らしながら、此方の顔色を覗いてきた。
「もう大丈夫なの?」
「……えっと、うん。なんか眠くなっちゃっただけだから」
言われて気付いた……そういえば、どのくらい寝てしまっていたのだろうか。
ベッドの近くにあった、部屋の窓から外を覗くと、もうすっかり日が落ちてしまっている。
……どうやら、思っていたよりも熟睡してしまっていたのかもしれない。
そんなことを考えていると、布団に置いていた手を重ねるように、軽く少女の手に握られる。
「とりあえず、下にいこっか!」
「下?」
状況がいまいち呑み込めていないのだが……とりあえず、害のあることではなさそうなので、大人しく付いていくことにする。
手を引かれながら、二人してそのまま部屋を出て、階段を下りる。
そして、見覚えのある居間に辿り着き入ると、件のそっくり少女と制服少女の他にそこには一人、住人が増えていた。
椅子に座っていた美人の女性が此方に顔を向けたので、ネネちゃんの後ろで軽く会釈する。
────と同時に、そっくり少女がまたもや、片腕にぎゅっとくっついてきた。
……。これは、どう解釈すればよいのか。
反応に困る、というか対応に困るのは確かだ。最初の時もそうだが、会って半刻もしない相手にする行動ではないし、此方が特別何かしたわけでもないだろうに。
……強いて言えば、ミラーリング、という何処かで軽くかじった心理学の効果を思い出すが、この状況は言動や行動を真似したが故のものではなく、そもそも相手と自身の外見が勝手に似ているだけなので、似たような効果があったのか、これが原因なのかもイマイチわからない。……世界には自信と似たような外見の人間が三人は居る、という噺を聞くが、そういった人間が三人出会ったらこんな状況になるのだろうか。というかそんな状況あり得るのだろうか。
そうやって原因不明なそっくり少女の謎の行動に頭を悩ませていると、座っていた女性に声を掛けられた。
「……ええと、『マシロ』ちゃん……でよかったかな?」
「あ、はい」
……俺はこの女性に名乗った覚えは特にないし、もしかしたら、自分が寝ていた間にこの人にもツインテ幼女……ネネちゃんが俺のことを説明してくれていたのかもしれない。この家の住人であれば、確かに、見知らぬ幼女が家にいたらびっくりするだろうし。……ということは、もしかすると俺が病院に入院する以前の記憶が無くなっている事とかも話してたりするんだろうか。
……いや、別に身の上を説明されていて特に不都合があるわけでもないのだが……。
この世界で生活するということ、しかも一人見知らぬ場所に放り込まれた以上は、どうしても他者に自身の身の上の説明をすることは避けられぬだろうし。
それはそうと、この人……さっきは居間に居なかったので、もしかして仕事から帰って来たばかりだったりするんだろうか。
そんなことを頭の片隅で考えながら、寝起きのせいか、いまいちまだ回り切っていない頭で名前を呼んできた美人さんの顔をじっと見る。
……? この人、もしかして、外門のところで会った……。
ここにきて漸く、思考と記憶のピントが噛み合い、女性のことを思い出す。
「あなたは、さっきの……」
「ママだよ!」
「────ええ、はじめまして、ネネとハヤテの母です」
……なるほど、確かによく見れば、なんとなく似てるような気もする。
あと、気のせいかは分からないが、若干……警戒というか、困惑を言葉の裏に感じるような。
……なんというか、『扱いに困るモノを前にしている』、みたいな?
まあ、見知らぬ子ども……というよりも、自分の子供とよく似た見た目の子どもが家に上がってたら、それなりに警戒と困惑くらいはする……まあ、するのか……? わからん。その割には、直ぐに出ていけ、っていう感じでもなさそうだし。
……それにしても、意識が落ちる前に出会った女性か。
ということは、目の前に居たこの人が地面にぶつかる前に抱き留めてくれたのだろうか。
ネネちゃん達は玄関の近くにいたわけだし、すぐ近くに居たのはこの人だけだったと思うし。
「あの。さっきは、すみませんでした。……いきなり倒れかかって、寝ちゃったりして」
「あ、うん。……それはちょっとびっくりしちゃったけど、気にしてないから大丈夫よ」
……ほんとうにそんなに気にしていないっぽい。もうちょっと色々と言われると思っていたのだけれど、なんというか肩透かしを食らった気分だ。いや、別に色々言われたい訳じゃないから、良いのだけれども。
「それで……マシロちゃんが眠ている間に、ネネ達から色々と話は聞いたけれど、マシロちゃん……お家の帰り方、わかる?」
「お家の、帰りかた」
……そういえば、この辺ってどこなんだろうか。
いや、行き帰りで見つけた公園でツインテ幼女と出会って、ここまで引きずられてきたわけだけど、子供の足で十分移動できる距離だったはずだし……うーん?
「家は……たぶん、近くだと思います。えっと、ネネちゃんと出会った時に休んでた公園、あそこはたしか……今日、家を出て少し歩いたところにあったはずなので」
……この子が元気過ぎてあんまり確認できなかったけど、引っ張られているときに、ちらっと見えた景観の一部は、家を出てからコンビニに辿り着くまでに見かけたものだった気がするし。いや、視界がかなり揺れていた分あまり自信はないのだけれども。
そんなことを考えていると、
「マシロちゃん、お母さんかお父さんは? 迎えに来てもらえる?」
「……えっと」
……これは、どう答えればいいんだろうか?
というか、そもそも答えていいものなのだろうか。
……いや、迎えに来れるかどうかを訊いているのだから、素直にこの身体の両親が迎えに来れない理由を話した方がいいか。
息を吸って、ネネちゃん達のママさんに告げる。
「その、いないみたいです」
「居ない?」
とりあえず、『俺』の記憶については話さない方がいいだろう。そもそも、初対面の幼稚園児相当の幼女が『病院で目が覚めたら男だった時の記憶がありました』とか言い出したら、十中八九、信憑性以前に色々と心配する。……最悪、病院に逆戻りだ。
となると……どう説明すればいいんだ? 『俺』の記憶を抜きにしても、どこからどこまで説明すればいいのかがいまいち判別がつかない。……何もしゃべらない方がいい?
……いや。もう、いっそのこと病院で説明された話をそのまま話せばいいんじゃないだろうか。生きていたら今後も似たようなことはあるだろうし、どこからどこまでがこの世界の常識なのか、軽く反応を見ておいた方がいいかもしれない。
少し悩んだ末に、口を開く。
「えっと……病院の先生に聞いた話だと、両親は私が記憶を失う前に行った家族旅行の最中に、鬼に襲われて、私だけが生き残ったみたいです。……記憶を失くしたのは、たぶん、その時のショックが原因じゃないかって言われました」
「────」
……あ、やっべ。
やっぱマズかったかもしれない。
固まった女性に対して、慌てて、言葉を連ねる。
「いやそのっ! 別に両親がいないことは気にしてないといいますか……! ほんとに記憶がないので、なんというか、『自分に両親がいる』っていうのがよくわからないといいますか……!」
「───────」
アッ、これも駄目だ?!?!
────固まっている。
思考停止して明らかに空気がよくわからないことになっている。
……いや、もう何を言えばいいんだ!?!?
☆
「……今日はもう暗いし、うちに泊っていきなさい」
「へ……?」
何というか、混乱したままあたふたしてたら、ツインテ幼女達のママさんにそんなことを言われたわけである。なんで??
────……いや、理由はなんとなくは分かるのだが、微妙に分かりたくないというか……。
これ、ママさんから観て、よっぽど俺の醜態が哀れに見えたのだろうか……警戒心が明後日の方向に吹っ飛ばされるようなレベルで……。
……うーん。でも流石に大の男が今日会ったばかりの小学生の女の子達の家に泊まるわけにはいかないだろう。
怪物が居る世界、しかも『この世界の夜の危険度』を確認していない事から、少し心が揺れそうになるが、やはりここは帰るべきだ。入院中、病院の中から視える範囲だけとはいえ、「夜は鬼が大量に徘徊している世界」ではないことは確認しているのだし。それに、彼方が俺をよく知らないように此方も彼女たちのことをよく知っているわけでもない。
「いや、流石にそれは……」
何とかして断ろうと口を開いたところで、近くで聞いていたツインテ幼女が不思議そうに言ってきた。
「もしかして、ましろ。いまからおそとに出るつもりなの?」
「……まあ、そのつもりだけど……」
「いまからおそとに出たら、ましろ、まいごになっちゃうよ?」
いや、迷子って。
というか、この子は一緒に家まで帰ってきたはずなんだが……??
「……いや、それは流石に……」
「ましろ、おうちのかえりかた、わかるの?」
「…………」
ママさんと同じセリフ。しかしそれは、迷子になる、という言葉が押して付けば『私も一緒に帰ってきたけど、本気で帰れると思ってるの?』という言霊に変わる。
それは流石にない……と否定しようとしたものの、そういえば自分は今日この辺りに引っ越してきたばかりだった。……見知らぬ土地で、地図の案内機能が搭載された便利機械(スマホ)も持たずに現代人が帰宅できる自信は正直、ない。
『夜は鬼が大量に徘徊している世界』ではないことは確認したものの、『夜に鬼が出てこない』とは限らない。
心が、揺れる。
……いや、最悪交番とかを見つけて道を訊けばいいし、それにほら、俺には今日のクエスト報酬である携帯食料一式が……!
周りを見る。近くの壁際の床には、肩にかけていた鞄があった。
横にいるツインテ幼女に訊く。俺が持ってた戦利品は? ……え、しらない? もしかして公園に置いてきた?
HAHAHAHA!
……えーっと。晩ごはんと明日の朝ごはんどうしよう……。
※ネネたちのママがマシロに警戒していたのは、容姿が直接の原因ではなく、見た目から連想した家柄上の可能性に警戒してしまった感じです。制服少女の方も同じような感じですね。