大学の時、アホみたいにスロットをやってた。18歳になった記念に初めて打ったパチスロがビギナーズラックで大当たり、そのまま狂ったようにハマっていってた。
だからすでに内定が決まった4年生の夏には、それはもう朝から晩まで通い詰めていた。
新装やイベントの日は、同級生達と早朝から並んだり、店のクセや友達からのお裾分けで、月50万以上も勝ったりしてたから本当に呆れる。
毎日朝から晩まで行ってると、それなりに常連たちと顔馴染みにもなる。
その中にあるタイル職人の兄ちゃんがいた。明るい茶髪でくっきり二重で目が大きくて鼻筋も通り、相当モテると思う。スロットにハマりまくり、給料のほとんどを注ぎ込んでたみたいだ。
隣で5万とかをブッ込んでスッカラカンになる姿を見た。だから俺が打っていた設定6であろう台を最後に譲ったのがキッカケで、割と仲良く接するようになっていった。
しばらくは名前も知らなくて「タイル屋の兄ちゃん」と呼んでた。
後になってエイジっていう名前を知る事になったが、キッカケはエイジさんの彼女だった。
エイジさんはヤンキーだったんだろうなって風貌だがその彼女も同じで、茶色の長い髪に派手な化粧していつもダボダボのジャージやスエット姿で登場。
エイジさんにゾッコンなのか、いつも大負けしてる彼を迎えに来る。
モヤモヤと白いムートンみたいなのが張り巡らされた、無駄にウルサイだけのマフラーをつけたワゴンRを乗っていた。
夏休みに帰省して戻ってきた下旬頃、俺は設定6の台に当たって見事にツモって大量にメダルを積んでた。
このままで行けば万枚はいくなと、内心大ハシャギだった。
でも昼ちょっと前から来てたエイジさんは、18時頃には10万近くは負けてた。
だからコーヒーあげたりして元気づけたりしてたけど、かなりの大負けで10万は溶かしていた。
「さすがに10万負けはヤバいなあ」
そうは笑いながら言っていたが、目が虚ろになってテンパっていた。あんまりの負け具合なので、
「俺の台ラスト2時間打ちますか?」
調子のいい俺が打っていた台を譲る言ったのだが。
「もう金がない」
もう手持ちの金がほとんど無くて、正直銀行に行っても無いから無理だと言ってきた。
「じゃー俺が2万貸しましょうか?」
今日は大勝で20万ほど儲けていたからついそう言った。
「いいよ、悪いよ」
そうは言っていたが、目は期待していた様子だった。
今月だけで相当勝ってたという事もあり、俺は勝った時に返してくれればと言って2万を貸した。
結局その日はいくらかは出て何万かは戻ってきたけど、やっぱり大負けだった。
「返すの今度で良いかな?」
そうエイジさんは言ってきた。
でもエイジさんの様子を見ていると、2万は多分返ってこないだろうなって思えたが、別にあぶく銭だしと思っていてそのことを了承した。
エイジさんは爆裂機やる金も無くなり、ジャグラーなどを打倒して負けていた。
流石に金が尽きたのか、それから10日間ぐらい姿を見せなくなった。足を洗ったかと思ったけども、姿を現すと爆裂機を打ちまくってるヘ。
仕事して稼いできたのかなと思ったので、俺への返済を聞くとまだ待ってくれと言ってた。
そしてしばらくして再び会うと、エイジさんから借金の申し出があった。
実は最近打っていた資金は街金みたいなとこで借りてたらしく、返済しないとヤバいという。
3万で良いから助けてくれと泣き付かれて渋々貸してやった。
これで借金は5万だよな!と自覚はしてた。
エイジさんはその後、数日間姿を見せなくなっては現れ、現れると爆裂機を打ちまくる。
数日で元手が無くなるらしく、また姿を見せないの繰り返し。
そんな事が2ヵ月弱続いた頃、またもや借金の申し出があった。帰ろうとした俺を待っていたらしく、前回よりかなり切羽詰まった印象だった。
「頼む金を貸してくれ」
その場で土下座までしてきた。人目があるのでファミレスに行って話を聞いてみると、借金の総額がすでに50万を突破していた。しかもかなりヤバい系の闇金にまで手を出したらしく、さすがに焦りまくってた様子だった。もちろん真っ当な所で無いから利息も凄いわけで、そっちを綺麗にするので20万貸してほしいという。
それはちょっとあまりにも高額なので無理と言って断る。
「今度は合計金額を紙に書いて、借用書みたいなのを作るから」
「俺の免許証のコピーとか渡すから」
「な!頼む!この通り!」
彼は相当必死だった。
話している間も頻繁に電話が来ていた。多分闇金からの電話だろう。
だからか電話そっちのけで、人目も気にせず頭を下げまくる。
実は運良くこの1週間は毎日大当たりを出していて、60万ぐらいのお金を手にしていた。
所詮はギャンブルで勝ったあぶく銭だしなという事で、お金を貸す事になった。もちろん一筆書いてもらったし、コンビニで免許証のコピーも取った。
手元にあった17万を渡し、3万は明日という事になった。金を手にしたエイジさんは、一目散に返済に向かった。
すでに時間が0時を過ぎていたが、ちょうどなっていた電話に出るとすぐに返しに来いと言われたそうだ。それはまっとうな所ではないとは思ったが俺がどうこう言う事ではない。
翌日に残りのお金を貸した時に自己紹介からプライベートな話を聞いた。
エイジさんは25歳の年上で、知り合いや現場の先輩からも金を借りまくっていて、給料の全部をスロットに注ぎ込み、彼女にもお金を借りていると言ってた。彼女は同棲していて、夜には風俗で働いているそうだ。
それからエイジさんはパチンコ屋には来なくなった。
1週間後の土曜日は1回目の返済予定だったので電話待っていたが、一向に連絡が無い。
痺れを切らして電話をしてみると、なんとパチンコ屋にいやがった。外に出たらしいけど、背後で自動ドアが開いてパチンコ屋特有の爆音でわかった。
問い質すと隣の市でスロットをしてたのが判明した。
「一回遅れたぐらいでうるせーな、次にはまとめて払うし」
それどころか返済が遅れたウルサイなみたいな態度をしてきた。
「今回だけですよ」
1回だけ我慢しようと次の約束まで待った。
だがしかし……エイジさんからの連絡は用意できなかったという残念な報告があった。
前回の事もあり、キレた俺は実家に連絡すると伝えると、一週間後に彼女の給料出るから絶対に大丈夫と言われ、やっと3週間目にしてなんとか10万円の返済。
その二日後に5万円返してくれて、残りが10万となった。
この短期間で5万もの大金を払えたので詳しく聞いてみたら、性懲りも無くまたスロットやったらしく、それがたまたま運良く勝てて返済したという事だ。
やっぱりダメな男はトコトン駄目なんだと思った。
それから1週間ぐらいした頃、エイジさんから連絡がきてファミレスであった。
「5万で良いからお願い貸してください。」
ゲッソリした顔で言ってきたんです。
キッパリと断りました。10万も返して無いのに馬鹿馬鹿しい。
その上前回と同じ闇金に手を出し、明日までに5万払わないと実家の家に押しかけられると言うんです。
「それも仕方ないんじゃないっすか?」
呆れて言ってやった。流石にそこまでお人好しでもなく、それほど親しくない人間にもう貸せない。
俺はそのまま店を出て行った。
家に帰ろうと歩いているとエイジさんが後ろから走って追いかけてきて、必死に「頼む!」と追いすがる。「友達にも親にも借りててもうアテがないから!」と可哀想なぐらい必死だった。
でもそれも仕方がない。どうせ貸した所で反省をしないからまた闇金で金を借りるに間違いない。
俺はシカトして歩いていく。
「彼女じゃダメか?」
俺の肩を掴んで意味不明な事を言ってきた。
「はぁ?」
「彼女を好きにして良いからいくらでも抱いていいから」
必死な顔で言ってきやがった。
「はあ? 何言ってんの? 合わせて15万でしょ? 風俗に何回行けると思ってんの?」
馬鹿馬鹿しい。
「じゃー15回!いや、20回でも良い! 生で大丈夫だから! ケツの穴も使って良いよ! わかった、それじゃ1ヶ月好きに貸すから!」
俺があまりの事で黙っていると、抱きついてきてどんだけ必死なんだよと言うような顔をして言ってきた。
「だって彼女に了解取って無いでしょ? 」
「大丈夫だって!俺が頼めば絶対大丈夫だから!どうせ風俗でやってんだし」
「わかった。俺をハメようとしてるんでしょ?」
ははん、彼女と肉体関係をきっかけに弱みを握って借金をチャラにしようと考えているのが見え見えだ。
「んなわけないよ、お前しかいないんだってマジで」
「どうせ彼女を借金のかたに友達にも貸しまくってるんじゃないの?」
「それもない、今までに一度もない。絶対そんな事はしてない」
こうなってくると、単に俺が集られているのがよく分かります。一度甘い汁を吸ったこういう輩は、骨の髄までしゃぶろうとしてくる。
駄目な奴に甘い顔をするは絶対に駄目って事が良くわかった。