※この作品はR-18です。

ガイアセイバーズ2 -海の妖-   作:独楽 悠

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第9話_縮まらぬ距離

再び五人は一部屋に集まり、作戦の最終調整をする。

結果的に昨日が不出来だった分、万全の態勢で臨みたいところだったが、結局陽はこのまま『現実世界』で待機となった。

重篤な異常はないものの背中の痛みがひかず、彼お得意の機敏さが発揮できないばかりか、咄嗟の回避行動もとれなくなる危険があるためだった。

無慈悲な戦力外通告を受けた陽は、直前までゴネ続けていた。

「納得いかないっ! まだ何も活躍してねぇのにぃぃ!! …やっぱり俺も行く!!」

「駄目だ。今度は失敗できねぇんだから、怪我人は大人しく待ってろ」

「そうそう。安心しな、葉月inお前outならメリットはあっても逆は無ぇから」

「~っ…蒼兄っ!!」

烈と影斗に畳みかけられた陽は、彼らの様子を黙って見守っていた蒼矢へ振り返る。涙目で訴えかける陽へ、彼も困ったような表情を返した。

「……ごめん。これ以上お前に何かあったら親御さんに顔向けできないから。"活躍"はまた今度な」

「……」

そのごもっともな台詞に何も言い返せず、陽はうつ伏せのまま枕に顔を突っ伏した。

悲愴感漂わせるその肩を軽く叩いてなだめつつ、葉月が話を進める。

「――で、その[異形]には電撃が有効なんだよね?」

「はい。…[異形]本体に機動性は無いみたいなので、防衛線を張ることは必須ではないと思います。各個出過ぎずある程度自衛していれば、葉月さんが攻撃に集中できるのではないかと」

「とりあえず雷落としてやって、昨日と状況が変わればいい」

「…防御形態に入らせたくはねぇな。刃物が全然効かなくなる」

烈の言に影斗も同意すると、葉月も呼応して頷いた。

「わかった、全力でいってみるよ。急所の調べは進んでるの?」

「…『空間』に入ってから再索敵しますが、[異形]の急所はたぶん[侵略者]が生え出る根元です。[奴]を出さないことには目視できません」

「[侵略者]を引きずり出してからが本番だな。あとは[侵略者(奴)]の弱点か…」

「そっか、[侵略者(そっち)]はまだどっちも判ってねぇのか…」

「昨日の戦闘ではつきとめられなかった。…なるべく急ぐ」

そして、準備でき次第ホテルをチェックアウトすることになり、各々帰り支度をし始めた。

 

 

 

「――よう。案外元気だな」

「…!」

部屋に戻りかける蒼矢へ、影斗が後ろから声をかける。振り返って一旦目を合わせるものの、すぐ気まずそうに視線をそらしてしまう彼へ、意に介さず影斗は話しかけ続ける。

「風呂入ったんか?」

「…いえ…部屋のシャワールームで、さっき軽く洗いました」

「そっか、このまま帰ることになっちまって残念だな。…お前髪まだ濡れてるぞ?」

そう言い、影斗は蒼矢の半乾きの頭に手を置き、くしゃくしゃと掻きながら手ぐしを入れてやる。

「…ほんとこういうとこ気にしねぇのな、お前は…」

苦笑する影斗を上目遣いに見上げていた蒼矢は、まぶたを落としてうつむいた。

「…先輩…、昨日、俺――」

「謝るつもりなら、何も言わなくていいぜ」

影斗は言いかけた蒼矢の言葉をさえぎった。

「俺は、はなからお前に殴られるつもりであの時部屋に行ったんだよ。…3分の1くらい目標達成できたな。俺としちゃあ、もっとボコボコ来て欲しかったけど」

「殴りませんよ。…いえ、やりそうになりましたけど…」

「まじで? そっかぁ、もう一息だったか~…」

少しおどけ始めた影斗だったが、蒼矢が再び黙ってうつむいてしまったため言い止め、息をついて彼の顔をうかがう。

「…先輩は、何でそんなに俺に優しいんですか?」

「!」

ぽつりと漏れた蒼矢の言葉に、影斗の目が少し見開かれる。前髪で表情を隠し、蒼矢は消え入りそうな声で続けた。

「昨日だって、あんなこと言って…、…俺、先輩にあたってしまっただけなのに…」

蒼矢は下を向いたまま言葉をしぼり出していたが、影斗からの返事が返ってこなくなり、ふと顔をあげる。影斗は少し戸惑うような表情を浮かべる彼の視線と合うと、ニッと悪戯気に笑った。

「…俺は誰にだって優しいだろぉ? 博愛主義者ですから」

「…! そうですね、すみません…」

影斗の言に、蒼矢ははっとしたように少し頬を染め、下向き加減に頷いた。

「…もう大丈夫なんだよな?」

「! はい」

「了解。サポートすっから、宜しく頼むな。…早く準備しちまえよ」

「はい」

自分の部屋へと歩きだす蒼矢を見送りながら、影斗はその背中へずっと視線を送り続けていた。

「…一番(・・)はお前なんだけどな…」

そう言葉をこぼすと、ため息をつきながらきびすを返した。

――先輩は、何でそんなに俺に優しいんですか?――

「……その答えは、四年前(・・・)に伝えてるつもりなんだけどなぁ」

 

 

 

ホテルを離れ、停められるところで一番便の良い駐車場を選んで車両と陽を置き、セイバーズは昨日の海岸へ歩を進める。

昨日の騒動を受けて海岸は全面立入禁止になっていたが、四人は非常線テープをくぐり抜け、人目につかないよう注意しつつ海へ近付いていく。

「昨日[異形]が出現したのは、海岸右端のマリンスポーツエリアだった」

「同じ地点からだとしたら苦しいな~…多分現場検証とかしてるだろ」

「…これ以上は遮るものが無くて近寄れないねぇ」

無人の海の家脇で足止めを喰らう中、ふと蒼矢が身体に震えを感じ、海の方を見据えた。

「どうした?」

「…います」

「まじかよ。すげぇなお前のその妖気アンテナ(・・・・・・)。バレバレじゃん」

「…いえ」

影斗は少し茶化すように返したが、その強ばった横顔に表情が止まる。

「隠していません。…どんどん強くなってる」

「……!」

[異界の者]の放つ気配にあてられ、蒼矢の顔は血の気を失っていた。その胸元は既に、パーカーの中で青い光を放っている。

「あの野郎。…煽ってんのか?」

「ふざけやがって…!!」

落ち着いた調子ながらも語気を強める影斗の横でそう吐き捨て、烈は起動装置を強く握った。

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