三日月の光が地上を照らしている
どこまでも続く闇の世界、地上には何者かが生きていたであろう建物がいくつも連なり、巨大な城のようなものもあった。
崩壊した玉座の間、汚れ欠けておよそその原型をとどめてない椅子に座り、虚空を叩くモノが一つあった。それはギギと椅子を鳴らしながら綺麗な音色を奏でていた。
ここは、旧王城
かつて人間と言う種が繁栄をしていた場所の一つであり…
魔王に奪われ、その魔王すら居なくなってしまった主無き城、二度滅びた敗者の居城。
■■『怪物』■■
この世界はかつて人と言う種が繁栄し、互いに殺しあい、奴隷を造り、貴族と言うゴミクズ共がのさばり、ほんの少しの善意が踏み潰される世界だった。
傲慢な彼らは力を付け、魔動機と呼ばれるものを作ったり、より強い生命体、改造生命体や人造生命体を造りだし世界のありとあらゆる場所を侵略していった。
しかし、そんな傲慢な彼らも、ある脅威を前にすると、恐怖し、団結と言うあり得なかった事を始めるようになった。
魔王
彼らは、異なる位相より来た侵略者であり、より良い環境と豊富な資源を求めて人の王城を強襲、そこから広がるように土地を占領していった。
こういってはなんだが、魔王は心優しい人物だった。それこそ、人間の指導者が彼であれば、ここまで傲慢で腐った連中が増えることはなかっただろう。しかし、そんな奴が侵略をしたのは、彼の領民が飢えなどによる苦境に立たされることになったからだ。
領民が増え、食料はどんどん消費されるが、生産量はどれだけ手を尽くしても増えなかった、土地があまりにも痩せていたのだ。部下の不満、領民の嘆願、それに影響され嫌っていた戦いに臨むしかなかったのだ。
今思えば、人とそれ以外の魔王の軍勢…魔族と呼ばれた彼らが協力すれば、数年にも渡って地獄のような殺戮が行われることはなかったのかもしれない。
魔族は生きるために人を殺し領土を広げた
人間は生きるため、そして殺されたものの仇を討つために魔族を殺し領土を奪い返した。
ある時、人間側が行った作戦により、旧王城は襲撃され、魔動機が多くの魔族を殺し、破壊された魔動機は爆発によって王城の殆どを吹き飛ばし、魔王は間もなくやってきた男に切り殺されたと言う。
戦争の終結、魔王は倒され、世界には平和が戻った…よくある寝物語のような話が一つ増えることとなった。
一度魔王の脅威に晒された彼らは、その後協力し、より良い世界を作った…
…そうであったならどれだけ良かっただろうか
世界は変わらなかった、魔王と言う脅威がなくなれば、また敵は人間に戻った。そう、戦争によって進むことになった技術、人造生命や、魔動機の技術躍進は彼らを戦争の道へと引きずりこんだ。
世界は、戦火に焼かれ、死が充満し、大地が血に汚された。
そう、なにも変わりはしなかったのだ。
この眼と脳髄が記録している。
三日月は沈み新たな月が上がった、今度のは半月のようだ。
戦争が終わった
私は名無し、人が繁栄を始めた時より生きてきた不死者。
今日も、手慰みで虚空を叩き、音を奏でる。