ロドス・アイランド製薬行動隊の戦術指揮官、通称"ドクター"の1日は多忙であり、統括する部門の広範囲さから、求められる役割も戦術指揮のみならず多岐にわたる――そう、多岐にわたるのだ。
その日、ドクターはいつもの様にPRTSを通じて、物資調達作戦に参加したオペレーターを遠隔で指揮しながら、"過去の自分"が残したアーカイブを参考に鉱石病患者たちの治療方針を立て、製造・貿易所の休日シフトを割り当てつつ、天災対策オンライン会議に参加、それら全てをニューラルコネクトでこなすと同時に、ネットワーク化が不可能なハイタッチ業務(全長数キロ・全五階層のロドス本艦を練り歩き、直接ひとりひとりをねぎらう本業務は、激務である)を終わらせた。
体力、そして理性の全てを使い果たした彼が這うようにして私室に戻ってくると、ドアの前には真っ直ぐに伸びたウサギ耳が特徴的なひとりの少女。黒いボストンバッグを手にしたアーミヤが、所在なさげに立ちすくんでいた。
「どうも、こんばんはです、ドクター」
どういう訳か、普段は手放すことのないロドスの成人サイズジャケットを羽織っておらず、ノースリーブトップスからは剥き出しの二の腕があらわになり、いつもは脚を覆い包んでいるタイツも外して素肌を晒していた。ただ、少女に不似合いな重苦しい装いを脱ぎ去った事で、年齢相応の清楚な愛らしさを見て取れる。
「どうしたの? ハイタッチ?」
「……ふふ、そうですね、今日はそれもまだでした」
そういえば、常駐してる制御中枢で見かけなかったと思いながら、ドクターが片手を上げると、アーミヤも会釈と共に全ての指にリングを着けた手を伸ばし――
重ね合ったその手は、いつもよりずっと熱かった。
「えっ、すごい熱だけど、どうしたんだアーミヤ?!」
「その、あの……まさしくその件なんですが、ドクターにお願いしないとどうにもならなくって……お疲れの所申し訳ないと思ったんですが、お伺いしちゃいました……」
見れば頬は紅潮し、息は乱れ、声は上ずっている。鉱石病の発作だろうか?
「だが、君のメディカルケアはケルシーの領分じゃないのか?」
自分なんかが診ても大丈夫なのかと彼は問う。
「いえ、ケルシー先生では無理というか、ドクターじゃないと絶対ダメっていうか、メディカルじゃなくてメンタルの方と言うか……ああでもコレは肉体的な問題でもありますし……やはり、この時間からではご迷惑ですか……?」
何かがおかしい。会話が噛み合っていない気がする。
だが、自分を頼ってやって来た少女を無碍に追い返すのは余りに可哀想だ。
「いや、かまわない、少し待ってて」
幹部向け私室のドアを開ければ、端末とモニタ、机に椅子、寝台そして薬品棚。
広さの割にはそれで全ての殺風景な場所だが、診察ぐらいは可能だ。
ドクターは常に身につけている騎士面頬めいたバイザーと全身を覆うパーカーを外してデスクに投げ出し、椅子に座り込むと、アーミヤへと声をかけた。
「あ、ドクターのお顔……久しぶりに見ました……」
「君の前では隠す必要がない。それに体調が悪いならこの方が安心するだろう?」
「お気遣いありがとうございます」
「とにかく中へ。座って」
部屋へと招き入れられたアーミヤは、しかし、椅子ではなく寝台を選んで腰掛けた。
「え、ベッド? そんなにしんどい?」
今すぐ横になりたくなるほどに辛いのだろうか。
「この方が都合が良いお願いなんですけれど……」
「いや、できれば、向かい合って座ってくれた方が僕はやりやすいんだがな……」
「……向かい合って、座って、ですか?」
「えぇ、うん、そんなにイヤか?」
「ふふ、ずいぶんマニアックな事をおっしゃいますね……でも、それがドクターの望みでしたら」
一瞬ためらう素振りを見せたものの、寝台から立ち上がったアーミヤは再び腰を下ろした。
ただし、対面の椅子ではなく、ドクターの膝上に直接、跨って。
「アーミヤ、何をふざけてるんだ!」
唐突に重みを預けられて、思わずバランスを崩しそうになったが、どうにか持ち直す。彼女は現在140cm前後だっただろうか? 体重も相応に軽く、そうでなければ椅子ごと転んでいただろう。だが、その小さな体躯とは裏腹に、ドクターの膝に接する臀部の肉づきはよく、今や幼年期を終えつつある身体の成熟が伺えた。その尻肉がじっとりと蒸れているのは高熱からくる発汗だろうか?
「ふざけてませんよ。本気です」
アーミヤはドクターより頭1つ分以上は小さい。
ドクターの胸のあたりから、蒼く透き通った双眸が男を上目遣いで覗き込む。ぴょこぴょこと動くウサギ耳は時折、ヒゲの剃り残しが目立つ頬を撫で、それがなんともくすぐったい。
そして、熱っぽく朱に染まる仔ウサギの唇はやがて言葉を発した。
「た、対面座位は初めてですけど、が、がんばりますっ!」
そっちこそ、子供がずいぶんマニアックな単語知ってんじゃねえか。
ドクターは喉元まで出かけた言葉を気合で飲み込んだ。
「あの、意味わかって言ってる?」
「知ってます。男女が愛し合う体位のひとつですよね」
「知ってんなら尚更だよ……なんでこんな事?」
しかしアーミヤはすぐには答えず押し黙り、そして詫びた。
「ごめんなさい、やっぱり混乱しますよね。戦術指揮と同じく、直接的な刺激を与えたら身体が覚えているかも……と試してみたんですが、コレは本当に忘れちゃってますね……」
悲しげな顔をして、ドクターの頬を軽く撫でながらそう言う。
「……忘れてるって、何を?」
昏睡状態から強制的に覚醒した、ドクターの頭脳からは未だに多くが失われている。関係者との会話や、己自身が残したアーカイブを閲覧し"思い出した"事も多いが、"忘れてる"と指摘されても忘却そのものを忘却していて……と、頭をひねる彼の思考を遮るように、アーミヤは唐突に答えを口にした。
「私とドクターの間にカラダの関係があった事を、です」
「はァ?!」
衝撃的な告白でドクターの口をつぐませつつ、アーミヤは更に畳み掛ける。
「私達、
「いや、基礎知識として、知ってると言えば知ってるけど……」
「じゃあ話は早いですね。
「お借りって、何を……」
「ずるい人。ドクターは大人なんだから本当はもう解っていますよね? こんな事、子供のクチから言わせたいんですか?」
「いや、そう言うわけじゃないけど…」
「本当に、こんな時に煮え切らないのは変わりませんね……昔みたいに妙なレトリックで煙に巻かれるのもイヤですから、もうストレートにお願いしちゃいますが――」
そしてアーミヤは、ドクターの瞳を真正面から見据えて口を開いた。
「――私、今からドクターとセックスがしたいんです」
仔ウサギは舌っ足らずな幼い声で、だが怖じること無く凛と言い切る。
「まって、今なんて?!」
幼い少女の頼みとは信じられず、ドクターは思わず耳を疑う。
「けっこう勇気が必要なんですから、こんな事、女の子に2回言わせないでください……言い回しを変えますが、今日はあなたに抱かれたくてココに来ました」
「いやいやいや! アーミヤはまだ子供じゃないか!?」
「まったく、昔と同じこと言いだすんですから……本当に憎たらしいおクチですし、お耳も都合のいいときだけ聞こえないフリをなさいます」
アーミヤはドクターの頬をつまんで軽く引っ張り、続けてその手を耳朶に伸ばし輪郭を指でなぞる。
「丸耳の人達からすれば子供に思えるかもしれませんが、
「君が大多数からみて子供だという事実は変わらないし、僕はコータスじゃない。もっと言うならココは龍門に間借りしているロドスだよ……どちらかの都市の法解釈の範囲内で判断すべきだ」
「それならご安心を。有資格者による"生殖期における避け得ぬ性衝動への医療的処置"ならば駐留中の国家法で年齢的な問題がある場合でも免責されますし、ドクターはその有資格者です。教則テキストと関連法、そして資格証をPRTS経由で転送しますのでご確認ください」
たちまちニューラルネットを通じて脳内に直接、大量の書面と公的機関の電子署名済みライセンスが流れ込んでくる。それらを一読しただけでスッと記憶に定着するのは、かつて既知だったモノばかりだからか。ロドスに再帰してから何度か経験がある。
「マジかよなんでこんなライセンス取ってんだよ……」
彼女が口にした事の一部が裏付けられ、ドクターは思わず頭を抱える。疲労もあってか会話のペースを完全に握られていたが、どうやら冗談を言ってるわけではないようだ。
「あの、私は嬉しかったですよ」
「うん?」
「ドクターが問題のない形で同意と合意の元に事を進めてくださったから、ああ、私のことちゃんと考えてくれてるんだなって……」
「わかんねーぞ、単に子供とヤりたいだけの
「資格取得の際に精神鑑定が必須で、ケルシー先生がドクターを審査しました。そちらも問題ありません」
「仮にも神経学者だぞ? 今の僕でもポリグラフを騙す方法の10や20は知ってるさ」
「いくらご自身の事でも過去のドクターを悪く言うのはやめてください。ドクターは小児性愛者なんかじゃ……ありませ…いや…えっと……うん?」
アーミヤは口元に拳を当て、虚空を仰ぎ見、しばし黙考。
「……なに、その間は?」
「まあ、それは置いといてですね」
「流すなよ! 大事な話だろ!」
「大事な話、そう、大事な話です」
だが、続くアーミヤの一言が、憤ったドクターをも黙らせた。
「
疲労で鈍ったドクターの脳細胞も流石に意味を察する。
「あー、そうか、そうだよな……」
「はい。私と身体を重ねていただく為には、鉱石病患者に対する正確な知識があり偏見を持たない方でなければなりません。ヒトからヒトへの感染は末期患者の"爆発"の場合にほぼ限られますし、性行為などの肉体接触があった場合も簡易な除染を行うだけで問題はないんですが……ですが……」
「……鉱石病患者に対する迷信じみた恐怖と憎悪が一般市民から薄れることはないし、時には肉体そのものを汚物のように扱われる事もある、か」
「理解が早くて助かります。そしてこれが以前からドクターにお力添え頂いてた理由の1つでもあります」
「お力添え、ねぇ…」
どうにも旗色が悪い。
過去にもこうしてアーミヤにさんざん口説かれた事が伺える。今のドクターにとっては初めての対話におもえるが、彼女にとっては全てを準備し終えて臨む、強くてニューゲームというわけだ。
「それにね、他にもドクターじゃなきゃいけない大切な理由があるんです」
「……何だ?」
そして不意に、アーミヤは強烈な一手を打ってきた。
「私、ドクターのことが大好きなんです」
思わず視界が揺れる。
レユニオンの雑兵に棍棒でぶん殴られても、ココまで衝撃は受けないだろう。
「えへへ……どうやら、効果アリですね。うれしい、あなたが好きです、ドクター」
絶句した彼の顔を見つめながら、彼女は思慕を重ねて伝える。
なるほど、こういう場面で少女の真摯な言葉以上に堅固な物などありはしない。
「ここまで色々エクスキューズを重ねてきましたが、結局の所、こういう事の理由付けなんて、お相手が好きかどうか以外にありえませんよね」
「待った……」
「待ちません……というか、もう十分に待ちました。待って、待って、失ったあなたを探して今があります。これ以上は待てません。お顔を見る限り、ドクターも私のことを憎からず想ってくださってますよね? どうしてそこまで躊躇うんですか?」
「君の好意は普段からダダ漏れだし、それが解んないほど朴念仁でもないけどさぁ……今はお互いに立場ってモンがあるだろ」
「そうですね、昔ドクターにお世話になってた頃の私は、ロドスの重役でもなんでもない、ただの小娘でしたし……子供相手だからこそ、関係も持ちやすかったんでしょうけど」
「あ、いや、すまない、そう言う意味で言ったんじゃ……」
「いえ、いいえ。今のは私が意地悪でしたね。でも、立場がある今だからこそ、食事や睡眠と同様に性的欲求も適切に処理されるべきじゃないですか? 現場のみなさんだって、思考のかなりの部分を性欲に支配されてる相手に命を預けるのはイヤでしょう?」
「……そんなに、ひどいのか?」
沈痛なお面持ちのアーミヤに引きずられるように、ドクターの声もまた沈む。
「そうですね……なんというかコレはもう言葉で説明するより体感いただいたほうが早いんですが、ドクター、お手を拝借してもよろしいですか?」
「え……? うん……?」
アーミヤは戸惑う男の腕を掴み、食事の席へといざなうかの如く実に自然に導いた――その手を、スカートの内側へと。
「……わかりますか? 発情が酷い時は何もしてなくても……こんなに濡れちゃって……」
触れさせられた下着は既に、仔ウサギの割れ目から漏れ出た愛液で湿潤しきっていた。
思わず腕を引っ込めかけたが、少女の両手は思いのほか力強く、それを許さない。
「丸耳のヒト達にはわからないでしょうけど……こんなに発情臭をぷんぷんとさせていては、裸で歩いているようなものです、人前にはとても出られません」
いや、言われてみれば獣の特性を持たないドクターの嗅覚でも、既に感じ取れる。濃厚なメスの臭いを。
「ごめんなさい、いやらしい女の子でごめんなさい、私、わたしっ……今日まで自分で慰めて我慢してきましたけど、本当にもう、限界なんですッ…あっ、指っ、本物の、ドクターの指ぃ……」
触れさせているだけでは我慢できなくなったのか、アーミヤは男の指先を割れ目に沿って上下させ、人肌に温もる淫汁を絡みつけていく。
「ごめんなさい、はしたない女の子でごめんなさい……ドクター、あなたがいなくなって、やっと見つけて、こうして再び触れて欲しくてっ……やっと、やっと、本物の……んっ、んんっ……」
喘ぐ吐息は既に艶めかしい。ドクターもまた自身の呼吸が乱れつつあるのを自覚した。
「ねぇ、ドクター……」
その隙を感じ取ったか、アーミヤはするりと片手を開けて直下のドクターの股ぐらへと伸ばす。やがて少女の手が探り当てた陰茎は、硬化には至らないまでも、芯が通りつつあった。
「えへへ……ほんの少しですけど、反応してますね?」
「いや、コレは……」
「コレは? そうですね、パスタで言うとアルデンテって所でしょうか?」
「……だったら、君のはたっぷり餡かけ天津飯って手触りだよ」
「まったく酷いものでしょう? こんなに悪化する前に定期的に発散できていたら良かったんですけど、こうまでなったら――」
更なる勃起を促すように、アーミヤはペニスをスラックス越しに撫でさすり、言う。
「――受精させてもらうまでは鎮まりません」
その声、その顔、最早おぼこい小娘に成せるものではない。
紛れもなく盛りを迎えた一個の雌。
「まって、受精って、何ッ?!」
「まさか、この場面で成人男性が知らないフリとかアリですか?!」
アーミヤは信じられないものを見る目で、ドクターの顔を覗き込んだ。
「いやっ、意味はわかってるよ!? 意味ぐらい!」
「……わかりました。もう。あなたの都合よく難聴になるお耳でも、聞き違えも取り違えもおきないようにハッキリとお話します……でも、言わせたからには必ずお返事いただきますよ? い・い・で・す・ね?」
彼女のあまりの迫力に、ドクターは言葉を失い押し黙る。
やがて沈黙を肯定とみなしたか、アーミヤは緊張した面持ちで言葉を紡ぎ始めた。
「い、い、今からっ、私とドクターで避妊具ナシの生ハメ交尾をしましょうッ……!」
元から紅潮していた彼女の頬が更に赤みを増す。自身の言葉に興奮したのか、仔ウサギの身体の奥底からじくじくと更なる愛液が分泌されるのを、男の指先が捉えた。
「お、お、おまんことッ…お、おちん…ちん……の粘膜を直接触れ合わせて……」
どぎつい淫語を吐き出した、その唇が恥辱に引き結ばれ、また開く。
「すけべぇなお汁で……その、ねちょねちょになるまでお互い繋がり合って……」
ここまで気丈にドクターを直視していたアーミヤの顔が遂にうつむいた。
「私のドロドロになった膣内でドクターのおちんちんに射精して、ほしいん、です……」
それを想像したのか少女の身体がぶるりと震える。赤面は頭頂を突き抜け、兎耳までもを朱に染めた。
「あの、だけど、受精でホルモンバランスが整って発情が治まったのを確認できたら、着床阻害剤を飲むので、妊娠のリスクはありません、だから……だからっ……」
伏せられた顔は健気にも引き戻されたが、目の端には涙がにじんでいる。
「私の子宮にたっぷり、種付け、して……くれま、せんかぁ……?」
薄れゆく語尾に連れ立つように、ドクターの腕を拘束していた力もまた緩んで抜け落ち、アーミヤは空いた片手で顔を覆ってイヤイヤした。
――それでも、ペニスに添えた手は離さない。
「ぴくんって、ちょっと動きましたし、少しづつ膨らんできましたよぉ……やっと、女の子としての自信を取り戻せそうです」
「まあ、うん、なんだ……流石に今のはヤバいよ……」
ドクターは自由になった己の手をぼんやりと目にする。
淫靡な粘液がべったりと絡みつき、指と指の間には銀糸がひいていた。
「しかし、まんこは慣れた感じで触らせて来たクセに、エロい事をクチに出すのは恥ずかしがるんだな」
「性分です、ほおっておいてくださいッ……!」
「仮説としてはこうだ。生殖衝動が激しい時期のコータスは単純な性的接触を視床下部あたりの脳の原始的部分で処理する傾向が強いため恥辱を覚えにくいが、一方で淫語の発声やそれに伴う性的連想は高次な前頭前野で――」
「――解説なんて求めてませんっ! 私が欲しいのはお返事ですっ!」
興味深い事例だったので、ドクターは職業的な見地から所見を述べただけだったのだが、アーミヤはそれをはぐらかされたと解釈したか、怒りの瞳で睨み据え、一喝する。
「だいたいっ、私がこういうエッチな物言いを覚えちゃったの、昔のドクターのせいですからねッ?!」
叩きつけられた内容を脳内で反芻し、ドクターは呻くように言葉を絞り出す。
「いや、マジかよ、勘弁してくれ……結局"昔の僕"って保護者ヅラして児童にエロい事を仕込むクズ野郎だったんじゃねえの!?」
アーミヤは黙考し、やがて重々しく口を開いた。
「……なるほど」
そして、なるほどなるほどと更に2回続け、スウっと表情を失い、
「記憶を失ったからこそできる、過去を俯瞰で鑑みた客観的なご意見ありがとうございます。言われてみれば確かに、昔の私達は性的搾取・被搾取の関係だったかもしれません」
「アーミヤ、やめて、そこで真顔やめて」
「私も今よりずっと小さかったし、初めての関係に舞い上がって気づかなかったのかもしれません――ドクターがロリコン野郎だったってことに」
「いや、薄々は気づいてただろ! さっきもその話になった時に一瞬考えこんでたじゃん!」
「
「……君には悪いが、実際、ほとんど他人事だからな。覚えがない」
少なくとも、今のドクターにとっては。
「じゃあ、
ドクターに向かって宣言するアーミヤのその表情は、羞恥混じりの覚悟と決意に満ちていく。
「ドクターは、女の子が…お、おもらしするまでイジメるの大好きですよね?」
「何を馬鹿な事を……え、いや……なんだ、これ……」
馬鹿なことを言うな。そんなハズはない。
ドクターは否定しようとし――否定しきれない。
「その顔……よかった、コレは
「な、なんで、それをッ……」
そう、おぼろげながらも忘却の淵から記憶が蘇りつつあった。
かつて、眼前の仔ウサギにその劣情を抱いていたことを。
「なぜ知ってるかって? 当事者だからです。女性器に興味を持ったり触ったりは生殖の過程で生じるごくごく普通の欲望だと思いますし、私も性欲が強いほうですからそれを否定しません、出来ません。でも、あの……おしっこは変態だと思います」
身に覚えはない――いや、男の下半身はこの場の何より雄弁に反応した。
「本当に大好きなんですね? おちんちん、どんどんおっきくなって……『子供相手だと勃たないから』とか、もう絶対に言わせませんから……」
おそらく過去のドクターが実際に口に出した台詞なのだろう。
アーミヤは硬度を確かめるように陰茎への愛撫を続け、涙声で恨みがましく訴えた。
「まだありますよ。四つん這いにさせて後ろから突き上げながら、お、お尻の穴を愛液で濡らして指を入れたりするのもお好みでしたよね……お尻の穴はモノを入れるところじゃありませんよ?」
「ち、違っ……!」
「違うって、何が違うんです? 結合部を鏡に写して『どんな風に繋がってるか説明してごらん』って実況させるのが好きだったのも、私の記憶違いですか?」
「いや、その、本当にすまない……」
知らず、謝罪が口をついた。
記憶はぼんやりとして定かではない、だが、その罪悪感は本物だった。
「本当に、どうしたら、良いんだ……」
そして、ポツリと、それだけがドクターの口からこぼれ出る。
この短時間で突きつけられた衝撃的な事実の数々と混沌たる現状は、労働で理性を使い果たした頭脳の処理限界を超えていた。
「お顔を上げてください、ドクター。どうかご自身を責めないで」
気づけば、少し悲しげな顔をしたアーミヤがいたわるように声をかけてくれていた。
「私が未熟なばかりに感情のままに言い過ぎました。ごめんなさい、ドクターがココまで思いつめてしまうだなんて分かってなくて……」
「君が謝る必要はない、悪いのは……」
――悪いのは、誰だ?
この罪悪感はどこから来た?
だが、ドクターが答えを出す前に、アーミヤは慰むような言葉を差し挟む。
「悪いのは、昔のドクターですよ。記憶を失った今のあなたとは連続性があるかすら定かではありません……それにほら、私、えっちな子じゃないですか? ああいうの、自分でも結構楽しんでじゃってましたし、気にする必要はありません」
慈愛に満ちて微笑みかける彼女の姿は、懊悩するドクターにとって赦しを与える菩薩に見えた。
「でも、それでは、君が……」
「ふふ、優しいんですね。それでも罪滅ぼしをしないと気がすまないというのなら――」
アーミヤは諭すように語りかけ、疲労しきったドクターの脳細胞にかわって進むべき道を指し示す。
「身体はすっかり開発されちゃったのに、発情期につがう男性も見つけられずに困ってる女の子が、あなたの前に今います。どうしてあげたら一番喜ぶと思います?」
ドクターの脳裏の奥底で、何かが警鐘を鳴らしている。
だが、その正体もつかめぬままに、許しを請う心は彼女の求めに応えていた。
「あの、じゃあ……ヤる?」
遅れて、唖然とする。
今、自分は何を口走った。
そして、ドクターが応じる姿勢を見せるやいなやアーミヤの雰囲気が一変した。
慈愛の気配が消え失せ、門閥貴族ウェイなど一都市の代表とも堂々と渡り合う精悍なまでの表情を、彼女はドクターに差し向けていた。
「そんな如何様にも解釈できる玉虫色のお返事では納得できません」
コータスの少女アーミヤの愛らしい声色、小さな体躯、柔らかな物腰には誰もが一度は騙される。だが、実際には。ロドス・アイランド製薬の最高執行者を務める――苛烈なまでの
「明確にお願いします。公文書に残せるほどに明確に」
突きつけられた刃は余りに鋭く、気圧されたドクターは一字一句を区切るように宣言していた。
「今から、アーミヤと、セックスが、したい」
子供にコレを強要されるという恥辱。
背筋にぞくりと走った寒気は恐怖か……あるいは恍惚か?
「その言葉、違いはありませんね?」
「すっげぇ釈然としないけど、まぁ、こうなったら完敗だよ……」
「事前にキルゾーンを形成し、追い込んで仕留めろ――ドクター、かつてあなたに教わったことです」
自分の男を取り戻すためなら一軍を率いて非友好的な
かつてのドクターが創り上げた強大な怪物が、今や彼自身を捕食せんとしていた。
「よ、よかったぁ……やっと、やっと、お返事がいただけましたぁ……」
だが、だが。
一瞬みせた覇気が嘘のように抜け落ち、アーミヤはドクターの胸に顔をうずめて突っ伏した。
流石に精根尽き果てたか、身を預けて甘えるその姿は外見年齢そのままに子供だ。"強くあらねば"と常に自らを律し続ける彼女が、こうまで気を許した姿を見せるのは、今やドクターかケルシー医師の前だけであろう。
「さっきから自爆技を連発しすぎて、流石に恥ずかしさの限界です……180秒ほどスタンしますので、ごめんなさい、もう少しだけ、どうか、このまま……」
ぐったりと寄りかかる肢体を反射的に抱きしめれば、火照るような人肌の温もり、そして汗からは男を誘う匂いが揮発し、仔ウサギの発情が手にとるようによく解る。
「もう、離れません、離しませんから……」
「アーミヤ……」
彼女の頭を撫でてあやしながら、ドクターの自失していた現状認識がようやく追いつく。この小さく軽く、香る体臭には乳臭ささえ残った、未成熟な雌個体と今から交尾しなければならないのだと。