※この作品はR-18です。

メイド長は見てしまった アズールレーン、母校のある日   作:ざぎねぅ

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 この資料、違うファイルと繋がっていて、後々重くなるから覚悟してから見ることね。


file2-1 ちとちよ・とらいあんぐる!

母校―

 

―はぁ、やっと帰ってこれた〜

 

 委託から帰還した千代田がそう溢した。今回の任務はいつもより期間が長く、遠出をするようなものだったので、彼女は相当疲れたように項垂れている。そんな姿の千代田にその姉、千歳は頭を撫でる。

 

―よく頑張りました

 

 千代田は頭にさらさらと滑らせる千歳の手を感じ、くすぐったそうに目を細める。

 

―へへへ

 

 ひとしきり撫でると千歳が言う。

 

―千代田、そろそろ委託の報告、行くよ

 

 千代田は、最近自分の姉に違和感を覚えていた。

 

―あ、うん。そうだね、千歳姉

 

 彼女がどことなく、今までよりしっかりしだした感じがあるのだ。それに、

 

―今日は…何を作ってあげようかな…

 

 今日もだ。今日も千歳は指揮官に料理を振舞うつもりだ。このために結構な時間、千代田は千歳に料理を教えていた事を思い出す。

 

―…

 

―〜♪

 

 よほど楽しみなのか、千歳は鼻歌まで口ずさんでいる。

 何分経っただろうか。2人で歩いていると、彼女達はいつのまにか執務室の前に着いていた。そして、ノックの音が聞こえる。

 

―…指揮官

 

 少し前までは千代田が執務室の扉をノックし、指揮官を呼んでいた。それが今では真逆だ。

 程なくして指揮官の声が聞こえ、扉が開かれた。

 

―お疲れ様、2人とも

 

 労いの言葉をかける彼は同時に、2人に優しく微笑む。

 千代田は指揮官と接していくうちに、姉である千歳に向けるものとは異なる愛を彼に向けるようになった。彼の顔を見ると、胸が高鳴る。しかしそんなものはすぐに、千歳の表情を見る事で消えてしまった。

 

―指揮官…今日も夜ご飯、作ってあげるわ

 

 そう言う千歳の表情は恋する乙女と言ったところか、頬を若干染め、緩ませている。彼女らしくない。と言っては失礼か、色気すら感じさせるものだった。

 そんな千歳に指揮官は少し恥ずかしそうに言う。

 

―本当かい?最近俺、実はお前の作る料理を楽しみにしているんだ

 

 その言葉に、千歳は更に表情を緩ませた。

 

―…

 

 なんだろうか、この気持ちは。

 

―……それでね…

 

―…なに、そんなセイレーンの個体が……

 

 指揮官に千歳を取られてしまう事が嫌なのか。

 

―…でも……

 

―……そうか、よくやってくれた…

 

 いや、指揮官が遠くに行ってしまうのが嫌なのだ。

 

―千代田、今回の任務で何かおかしなところはなかったか?

 

 彼の声が千代田の耳に入った。

 

―…えっ?

 

 何も聞いていなかった。そういえば今は任務の報告をしに来ていたのか。

 呆けた返事をした千代田に指揮官は言う。

 

―どうした、千代田。様子がおかしいぞ

 

 報告とは全く関係ない事を考えていた千代田は咄嗟に言い訳をする。

 

―あ、ちょ、ちょっと疲れちゃっただけだから、気にしないで良いよ…

 

 そう言いながら、苦笑いもした。

 

―今回は期間が長い任務だったからな、しっかり休むんだぞ

 

―…うん

 

 指揮官は千歳にも聞く。

 

―千歳は疲れてないのか?

 

―うん…だいじょぶ、だいじょぶ

 

 千代田とは逆に千歳は、ほわほわとしているが元気に答えた。

 

―なら、良いか

 

 そうして、任務の報告は再開された。

 数分経って報告を終えると指揮官が言う。

 

―じゃあ千歳、夜ご飯楽しみにしてるよ

 

―うんっ

 

 最後の彼の言葉に、千歳は声を弾ませた。

 

――――――――――――――――――――

 

千歳の部屋―

 

 

 千歳は指揮官に料理を振舞い、同時に2人で夕食をとっているらしい。一方、千代田は自分で夜ご飯を作って早めな時間に食べた。

 正直に言って千歳より千代田の方が料理は上手い。千代田が千歳に料理を教えているのだから、当たり前か。指揮官に食べてもらった事は特にないが。

 

―よいしょ…

 

 千歳が戻ってくる前に、いつも散らかっているこの部屋を綺麗にしなければ。

 

―…ふぅ、これでよし

 

 しばらく経って部屋が片付く。すると、

 

―ただいま…

 

 扉が開くと、この部屋の主である千歳が入ってきた。

 

―おかえり千歳姉。もう、また部屋がぐちゃぐちゃになってたよ

 

 本来ここは千歳の部屋であるから彼女が片付けるべきだったが、千代田の千歳を思う気持ち故、どうしても彼女を甘やかしてしまう。そんな千歳は、なにかもじもじとした様子をしだした。

 

―あ、え…えっと…

 

―…?

 

 千歳なりに、ずっと千代田に甘やかされるの事に負い目を感じているのかと思ったが、次の言葉でその考えは違うと分かった。

 

―あのね…

 

―うん

 

 千歳は恥ずかしそうに話し始めた。

 

―私、指揮官とずっと一緒にいたいなって、思うの…

 

―え…?

 

 予想外の言葉だった。そんな状況に、千代田は静かに聞き返した。

 

―えっと…お付き合いっていうか…

 

 千歳はそう言うと、顔を真っ赤にさせる。そして千代田は反射的に言ってしまう。

 

―あ、そ、そう言うことか〜!だ、大丈夫だよ、千歳姉なら!きっと指揮官とお付き合いできるよ!

 

 思ってもいない事。違う、本音だ。千歳には幸せになって欲しいと心から思っていると、千代田は自負している。それでは自分の気持ちはどうなるのか。指揮官に対する思いは。しかし、ジレンマに悩む前に千代田はその身を指揮官から一歩、引いてしまった。

 

―ふふ…ほんと?

 

―ほ、本当だよ…ははは

 

 そんなやり取りの後、今度千歳は、今日の指揮官とのやり取りを話し出す。ご飯を作ってあげた事、おいしいと言ってくれた事、今度2人で出かける事。

 千代田は、もう指揮官にこれ以上近づけない事を悟った。でも、その分千歳が幸せになってくれれば良いと、半分言い訳に近い言葉を自分に言い聞かせた。

 

――――――――――――――――――――

 

千代田の部屋―

 

 

 数日後、指揮官が休暇の日。この日、彼と千歳は母校の中ではあるが出かけている。緊張するから待ち合わせ場所までついてきて欲しいと言う千歳と共に、広場まで行った時のことを思い出す。

 

 

 早めに広場に着いた千歳と千代田は、こちらに向かってくる指揮官に気づく。

 

―あ、お、おはよう。指揮官…

 

―おはよう千歳。千代田もおはよう

 

 千代田は指揮官の右手を見た。やっぱり、指輪が付いている。今朝千歳の右手に指輪が付いていたから確認したのだ。たぶん昨日の夜に渡したのだろう。

 いよいよ自分に指揮官が振り向かないことを確信した千代田は、心臓の鼓動が速くなるのを感じる。人間の臓器なんて自分には無いのに。しかしそれを誤魔化すように、千代田は声を張った。

 

―おはよ、指揮官っ。しっかりエスコートしてあげるのよ!いい!?

 

―わ、わかってるよ。それじゃ、行こうか、千歳

 

―う、うんっ

 

 2人の小さくなる背中を、見えなくなるまで眺めてから部屋に戻ったのだった。

 

――――――――――――――――――――

 

海岸近く―

 

 

 夕方、気晴らしに散歩でもしようと外に出た。海岸が見える通りをただ歩くだけ。

 

―…

 

 遠くに、姉と指揮官が居た。何を話しているかは分からないが、2人とも恥じらっているように思える。

 

―…

 

 

 見つめ合っている。

 

 

―…

 

 

 

 2人の影が重なった。

 

 

 

―…!

 

 千代田は振り返って、全力で走り出した。もちろん、自分の部屋へだ。

 もう見ていられなかった。耐えられなかった。

 

 "あそこに居るのが自分だったらどれだけ良かったか"

 

 そんな事を思う余裕は無いほど必死に走った。ただ、涙だけは流さないようにした。

 

――――――――――――――――――――

 

千代田の部屋―

 

 

―はぁっ…はぁ…はっ…

 

 バタンッと閉まった扉に背を預けて、千代田は息を整える。そのままベッドに腰掛けた。段々と、声が漏れ始めた。

 

―はぁ…ぅ…ぁ…ぁぁ…はぁ…あぁ…

 

 我慢していたのに目からは雫がぽろぽろと溢れていく。

 

―く…ぅ…うぅ…ぁ…あぁ…

 

 嗚咽も止まらない。

 

―ぅぁぁあぁぁ…

 

 雫は拭っても溢れていくばかりだった。

 

 雫が枯れたのはいつだろうか。窓からそれを輝かせていた橙色の日は、温もりのない街灯の光に変わっていた。




 感想、評価など、良かったらお願いね。

 また、私が主に活動している世界の資料もあるから、そちらも見てもらえると面白いと思うわ。

 あと、アンケートもあるからそれもお願いね。

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