メイド長は見てしまった アズールレーン、母校のある日 作:ざぎねぅ
夕日が水平線に沈んでからいくら時間が経ったのだろうか、時計を見る余裕もない心情だった千代田は、その代わりに窓の外を目だけ動かして覗いた。布団に仰向けになりながら見るその景色に月はなく、ちらちらと輝く星々があるだけだった。
流れ星が見えたら、"指揮官をください"なんてお願いしてみようか。
そんな下らない想像を巡らせた千代田はもう寝ようと、掛け布団を足元へ取りにいくため上半身を起こすと、部屋の外から"がちゃり"と音がした事に気付いた。
きっと千歳が帰ってきたのだろうと思いつつ、そのまま手を足元に伸ばすと、
"どすん"
ちょうど壁を挟んだ隣。そこから布団に倒れるような。しかし1人分とは思えない音が、鼓膜と共に千代田の心の奥を揺らした。
―…
いけない事だと分かっているのに、千代田は上半身を起こした状態で、すぐ隣にある壁に耳を近づけた。
し、しきかん…んっ…ちゅ…
千歳の恥じらったような声と水音が、ほんの僅かに壁を震わせた。
んん…ちゅ……ん…ぱっ……ちゅる…んぁ
彼の舌は、姉の唇の中と、千代田の心の奥を舐め回している。
千歳は彼からの愛を一身に受け続け、悦びの声を上げている。
ん…ぁ…ん……しきかん…むね…触るの…?
彼は千歳の豊満な乳を、さぞや満足気に揉みしだいているのだろう。
あ…ん……きもち、いいよ…
ん…さきっぽ…?……んん!
千歳の嬌声は時間をかけて、より艶やかになっていく。そしていつしか、彼の手は千歳の大切な場所に這ったらしい。
そ、そこ…だめっ……ぅん…!
今までよりは激しい衣擦れの音が聞こえた。
彼女は指揮官の愛撫に耐えられず、体を1度身震いさせたのだ。
ん…んっ……ぅ…はぁっ…あ…んんっ
声を我慢して口を押さえているのか、壁越しに聞こえる声は今までよりこもっていた。
しかし、しばらくすればそのこもり声は元通りとなり、更に激しいよがり声となり響きだす。
んあっ…あぁあっ…ん、あっ…ぅあ!
し、しきかんっ…もう…ぁぁ…ぃ…いっちゃ…ぅうっ…!
今までで一番聞き取りやすかった音は千歳が達した声らしく、その証拠と言わんばかりに、痙攣によって彼女の息が漏れているのが聞こえる。
…んっ…んっ…んはぁっ…ぁぁぁ
そんな声を聞いた直後、千歳は声を荒げた。
あっ…だ、だめ、しきかっ…んあっ….いったばっかり…ぅあっ…だからっ……ゆび、いれなっ……んんん!
壁に阻まれ、ほんの小さく"くちゅっ"と音がすると千歳の声は更に荒くなっていく。
ああ!……もぅ…はげし、くぅ!…だめえっ!…あっ…ぁあ!
ぐちゃぐちゃと千歳の秘部をかき混ぜる音に混じって指揮官の声も聞こえてきたが、何を言っているか聞き取れなかった。しかしその疑問は千歳の言葉で解決する。
ゆび…んん、すんなり…んっ…入った…て?…だ、だって…ぁあ!
下品なほどに響く水音は更に勢いを増す。
ぅぁあ!…し、してたっ…ぁあ!…してましたぁ…!……しきかんのこと!……そうぞう、してっ…あっ…ゆび、いれて…んあ!…してっ…たっ……のぉ!……いっ…く!………ぁあ!
そう言って、"がさっがさっ"という布の音がまた聞こえて来る。2度目の絶頂か。
そんな時、千代田は自分の違和感に気付いた。
―ぁ…
千代田はいつの間にか右手を自分の股間に伸ばしていた。そして、そこが自分の愛液で満たされていたのが分かった。下着の意味を成さないほどに漏れ出た愛液は、太腿にまで垂れている。
自分でも分からないところで興奮していたのだ。
それに気付いた瞬間、鼓動は速くなった。しかしそれに比例するように、虚しい気持ちが心を覆ってゆく。
それでも我慢できず、濡れた布に覆われた、しかし外から見ても分かるほどに膨らむ小さな快楽の種を撫でた。
―ん…
初めは微々たる感覚、
―はあ…ん…はぁ…んん…
それはやがて、荒がる息と共に少しずつ大きくなっていく。
くにくにと種をこねくり回す手はその動きを激しくし、更なる悦びを求めだす。
―ぁ…はあ…ぅん……あ…んっ…
もしかしたら隣の部屋まで聞こえるかもしれない。そんな風にも思ったが、もうどうにでもなれと声を我慢するどころか、この声を指揮官に聞かせるように息を漏らし、遂には小さな絶頂を迎える。
―ぁ…あぁぁ……ぃ……くっ…んん!
背中が何度か跳ねると一旦、冷静に今の状況を見直した。いや、冷静ではないかもしれない。何故か。
―…ん……はぁ…ぁ…
今、絶頂を迎えてもなお溢れ出さんとする愛液で、自らの秘部を未だに撫でているのだから。
そして今度は、そこを覆っている布をずらし、直接触れる。
―んっ…!
今までより強い刺激で、もう一度だけ背中が跳ねた。
―はぁ…はぁ……んぁ…ぁぁ…ん…
自分を慰めながらも、今一度この状況を考える。
―は…ぁぁ…
今自分は隣の部屋で行われている、愛し合う者たちの営みを盗み聞きし、股間を弄っている。
―んん…ぁ…ぁ…
姉の喘ぎを聞きながら、指揮官に触れられる事を想像して、快感を得る事に浸っている。
―んっ…あ、あぁ…んんっ…!
こともあろうか千代田は指揮官の事を愛しているのだ。
言ってしまえば自分の姉に好きな人を取られてしまっている。
姉のことは愛している。それこそ彼と同じ程に。
確かに彼女には幸せになって欲しいし、実際にそう思って無意識的に彼から身を引いてしまった。心の奥底では姉を優先したのだ。
これは本当だ。
しかし、しかし。
なんと虚しい事だろうか。
今は自分の姉に嫉妬して、それでいて彼女の喘ぎを餌に彼の手を想像して果てようとしているではないか。
―はぁ…はぁ……………
やっとその状況を客観的に見つめる事ができた千代田は、激しく股ぐらをまさぐっていた手を止める。
―はぁ……はぁ………………
こんな事をしていて、情けなくはないのか。もう彼には姉がいるのだ。自分には彼の隣にいる権利などない。
なのに何故、諦めきれないのか。
―んっ…
当然だ。まだ好きだから諦められないのだ。
しかしどちらにせよ希望はない。ならば、彼らの営みを自分の慰めの糧にしたって良いだろう。それとも、それすら許してくれないのだろうか。
千代田は再び手を動かし始める。今までより、速く。
そうした時だった。隣の部屋に少し変化が起きる。
私の初めて…奪われちゃうん、だね…
うん…きて…
そうか、姉はついに処女でもなくなるのか。しかしどうでもいい。
千代田はやはり動かす手を止めず、それどころか2本の指を熱い花園の奥へ押し込んだ。
―ぁあっ…!
ぅぅ…ぁぁぁっ……入っ…た…?
タイミングよく姉も同時に入れられたらしい。その直後から、今まで聞き取りづらかった指揮官の荒げる声が聞こえて来ると、千代田は更に興奮する。
―ん、ん…ぁぁあっ………ぁあっ…!
ぃ…ぁ…ぁ……ぁあっ…!…い、いいよ…しきかんっ…もっ…とぉ……んぁ…!
千歳と千代田は合唱するように嬌声を上げている。しかし千歳は今にも絶頂に達しそうな快楽と彼からの愛を、そして千代田はただひたすらに虚しい快楽を貪り食っていた。
―あぁ…あっ……んっ…あ…んん!
ぁあっ…しき…かんっ…すきっ……すきすきぃ…んんっ…ぁ…んぁ……ぁあ!
千代田は周りのことなど何も気にする事なく、荒く、甘く、そして苦すぎる吐息を目の前の壁に吹きかける。
しかしそうやって自分の世界に入り浸っても、心のずっと奥の方から、どうしても漏れ出て来るものがあった。
―ごめん…なさい…ぁっ……ぁあっ…んっ…ごめ……なさいぃ……ぅぅ…ぅぁああ…
それは彼らに対する謝罪の言葉だった。何故かは分からない。
―ごめん…んっ……ぁあっ…ごめん…ふぁああ
しかし、滝のように流れるその言葉は止まる事を知らず、もう枯れたと思っていた雫となり、やがて千代田の頬に川を作ってゆく。
―ごめんなさいぃ…ぁあっ…んぁ!…あ、あああ……ぅぁぁぁ…!
泣き声に混ざる喘ぎを部屋に響かせつつ、そうしても尚、千代田は隣の状況を盗み聞く。
ぁあっ…!…んんっ…しきかん…ぃ…いっしょに…んあっ…いっしょに…いこっ…あ、あぁっ…
彼に抱かれ、今まさに絶頂に至ろうとする千歳の裏で、千代田はその事実に背が凍るほど心を深淵に沈めた。
程なくして、底なしの深淵の奥から凄まじい勢いの快楽が流れてくる。
しきかん…ぃっ…!……あああ!
―ぁ…ぁ…あっ…………………んん!
まさに身体中に電気が流れるような感覚を覚え、そして濁流のように全身を覆う暗い快楽に、一瞬、しかし千代田にとっては永遠と思えるほどの長さ意識を失った。
静かな空気を取り戻した暗い部屋に、1人呼吸を整えて千代田は静止していた。何度目か分からない絶頂を終えても、まだ自分の指を咥えたままの彼女の秘部は、彼のモノを諦めていないかのように、ひくひくと震えている。
―…
ただ1つ。背徳感が残った。恐ろしい程の寒気を覚える背徳感だ。
―…
そしてまだ、千代田は待っている。隣人の秘めたる愛の営みが再開されるのを、今かと待っている。
今度は…私が上になるね…
―…
きた。
んぅ…んっ………あぁ…
―はぁ…はぁ……
千歳の声と共に動作が再開された千代田の指。動かすほど部屋に響き渡る水音はもはや、彼女の更なる背徳感を求める激しさを表していると言っても過言ではないだろう。
千代田はこの極短時間で、自分の中の何かが落ち抜け、変わってしまったのが分かっていた。
だからこそ今こうやって、救われない事は分かっていても縋るように、少しでも、体の気分だけでも良くしようと、暗く歪んでしまった心と直接繋がる秘部を弄るのだ。
―はぁ…はぁ…んっ…あぁ…
求める。求める。背徳から溢れる出る快楽を求めた。その税だと言わんばかりに生まれ出る、どす黒く底もない罪悪感は、心というところから首にかけて素通りさせ、目から流れる雫へと逃した。
勝手に流れ落ちるだけのものなど気にしない。そう、気にしない。気付かない。そんなものは無い。そう思いたい。
そしてただ、刺激し続ける。
し、しき…かんっ…ぁあっ…!
―はぁはぁはぁ…はぁはぁ…ぅぁぁぁあ…
快楽が大きくなるたびに背徳感は大きくなり、罪悪感はそれを超えてゆく。
段々と新しい感情が芽生えた。
それは恐怖だ。
2人がしている事を聞きながら自分を慰めていた事を彼らに知られたら、どうなるだろうか。指揮官は自分を気持ち悪がるだろうか。
今更、そんな下らないと思えるくらいの恐怖が彼女を包んだ。
―はぁ、はぁ…んっんっ…あぁ…ぁぁぁ…
しかしそれすら背徳感に混ざり込み、快楽に変換されてしまう。
ぐちゃぐちゃと、淫らに自分の穴をほじくればほじくりかえす程に、暗い快楽が溢れ出てくる。
―は…ぁぁ…ぁ…ん…あぁ…
やがて壁の向こうから聞こえる、彼が優しく千歳に打ちつける腰の音が、僅かに大きく、そして速くなった。それに伴い千歳の声も更に余裕の無いものとなる。
あっ…ぁあっ…しきかっ…はやっ…い…よ…んぁあっ…!……いく…の…?
千歳が言うように、もう彼は果てるようだ。
一定のリズムで千代田の鼓膜が震える。
私もお姉ちゃんのようにされたい。
願ってはいけないこと。叶ってはいけない思い。指揮官には千歳の、自分の姉がいるのに、千代田は未だその胸中の思いを自らの心に響かせた。
そう、心に響かせるだけだ。
そんな彼女の隣で、千歳は嬌声をあげてまた絶頂に至った。
しきかん…わたしも…いっちゃうぅ…ぁっ……んぁあ!
ということは、彼もだろう。
彼も今頃、千歳の中に彼の愛を、姉だけに向けた愛を放っているのだろう。
そう思った時、全て諦めた感じがした。もう彼は自分に見向きもしないのだ。話したとしても、それはきっと姉のため、姉を喜ばせるための餌に使われるだけなのだ。そんな気がする。
そう自分に言い聞かせただけかもしれない。だから諦めた"感じ"がしたのか。
では、本当はどうなのだろうか。そう思った瞬間、快楽の波が押し寄せてきた。
―ぁあっ…し…しき…かんっ…ぃくっ…!!
千代田も千歳と同じように体を跳ねさせる。
しかし、あれ…
言ってしまった。
絶対にこれだけは言ってはならないと決めていたのに、しかも言いながら達してしまった。
彼のことを呼んでしまった。
―ぁあっ…あっ…んぁっ…!
腰と背ががくりがくりと、大きく脈打った。
もうたがが外れてしまった。もう後には戻れない。
―はぁ…はぁ…
今までは、ただ自分を慰めて勝手に気持ち良くなっていただけだと言い訳できた。
―はぁ……はぁ…
しかし彼を呼び、絶頂に至り、今まで感じたことのない快感を覚えて体を震わせてしまった。そんな言い訳はできなくなってしまった。
彼を求めてしまったのだから。求めてはいけないのに、言葉に出してしまったのだから。
あぁ…ん…はぁ…
千代田の隣、壁を挟んで千歳が息を切らして絶頂の余韻に浸っている声が聞こえる。
―…
今まで激しく弄っていたのは何だったのだろうかと言うほどに、その手の動き止まった。秘部から指を抜くと、滝かと思うほどに愛液が漏れるのが見ずとも分かった。
しばらくすると、虚無のような千代田の耳に、千歳の幸溢れんばかりの声が届く。
指揮官…お風呂、はいろっか…
ああ、見える。見えていなくても目に見える。全てを終えた、初めてを彼に捧げた姉の、心底幸せそうな顔が。
嫉妬はもうない。逆恨みもない。しかし、どうとも言えない苦しい寂しさと悲しさが、心に押し寄せてくるだけだった。
―…ぁぁ
溜息とも感嘆とも言えない息が漏れた。
―…うぅ…ひぐっ…
夕方が終わる頃には枯れていた涙が、彼らの営みが始まった時からまた、何故か溢れ出していた事を思い出す。
―ぅぁぁぁ…ふぁぁ…
多分これからも涙は枯れないだろう。何故か。
―あぁぁぁぁ…
覚えてしまったのだから。いけないと分かっていながら、彼らの営みの傍らでするのを。きっとこれから何度も彼らの隣でするのだろう。己の気を良くすることを。
―ふぁぁ…うぅ…ぁぁ
いや、良くはならない。だからこうなるのだ。
―しきかぁん…あぁぁぁ…
涙が溢れるのだ。
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