身体を纏う寝苦しさに、不意に意識が現に戻されてしまった。
身体の内から湧き出る熱、早まる鼓動──例の症状の様だ。
画面越しで会話し、共に曲を作るだけの関係だった彼女達とまみえるようになった頃からだろうか。忘れた頃にこの症状が現れる。
世間から奇異の視線に刺され乍己の性に似合わぬ装いをしていても、まるで此れが己の性であると、此れが己の使命であると理解させる様に主張する。
日が顔を出すかの様に張り詰めた下衣の隙間から覗く頭を親指で撫でる。
「んッ……」
下半身から脳まで走り抜ける快楽に思わず吐息が溢れてしまう。
欲を吐き出すまでは治るつもりはないらしい。
嘆息を漏らすとなるべく音を立てぬ様に寝床の中で下衣を下ろす。
己の見た目に似合わぬ怒張が露わになる。
雄々しいと言うのだろうか。周りからそう在れと言われていたものがこの様に顕れると言うのは皮肉である。
怒張へ指を滑らせると指先から熱が伝わり、刺激に反応する様に怒張が大きく跳ね上がる。
自らがそれを忌もうとも、其の感情は関係がないと思考が感情を上書きする。
其の欲のままに掌で熱を冷ます様に包み込み、ゆっくりと抽送を始める。
どれ程に己の身体の一部ではない物であると意識しようとも、其の行為により走り抜ける快楽が己の身体である事を強く実感させる。
何をすればより刺激を得られるか、何をすればより快楽を得られるか、身体が答える。
其の欲に導かれるまま包み込む手の加減を調節していく。
抽送の合間に先端へと指を這わせると、鈴口と指を結ぶ粘り気を帯びた糸が月明かりに照らされる。
「はッ……、ぁッ。 ごめ……ん、──ッ」
この様な時に想っていることに対する謝罪と共に声にならない声で彼女の名を漏らす。
声。容姿。香り。名を呼ぶ事でより鮮明になる彼女のイメージに抽送はより速さを増してゆく。
己の性が、欲が、淫らな彼女の姿を映し出す。
背徳感に襲われ乍も、思考に映る彼女から目が離せない事実に己の性を強く実感してしまう。
「──……ッ、──ッ」
声を漏らさぬ様に枕へ顔を埋め乍何度も彼女の名を呼ぶ。
快楽に呑まれ、朧げになる思考。
まるで、彼女に触れられていると錯覚してしまい、手の動きに合わせて無意識に腰が揺れる。
次第に、自らを限界へと追い込んでいく様に抽送をより速く、より荒いものへと変えてゆく。
強まる刺激に身を捩らせる度に薄桃色の髪が布に擦れ、乱れてしまう。
普段であれば髪が乱れるなど許せないだろう。だが、今は其れに意識を向ける余裕などなかった。
限界へと近付くと、先端を濡らす蜜も更に溢れてしまう。
蜜が扱く手に触れると、抽送に併せて蜜が塗り付けられ、その粘度に動きの滑りが良くなる。
しかし、蜜を纏う手が反復する度にクチュリ、ヌチュリ、と粘っこい水音が部屋に響いてしまう。
今部屋の前を通られて仕舞えば、どれ程声を我慢しようとも、水音で気付かれて仕舞うだろう。
その感情とは裏腹に、抽送は止まることはなく、寧ろ比例して強まる興奮を表す様に、大きく水音を響かせつつ激しいものへと成ってゆく。
「紙……、を……取らな、きゃ……ッ」
内に溜まる快楽も我慢の限界が近付いてくる。
吐き出す物を受け止める為、紙を取ろうと手を伸ばす。
だが、其の手には目的の物が触れることはなかった。
手の先へ視線を向けると、箱はテーブルの上。手を伸ばしても届かない箇所にあった。
しかし、限界まで走り抜けようとする抽送は止められない。
背に腹は変えられない、と咄嗟に伸ばした手を下腹部へ移し、先端を掌全体で包み込む。
びくんッ──と電流を受けたかの様に全身が大きく跳ね上がると、握る手にポンプの様に蠢く感触と共に先端を包み込む掌に熱と粘り気を感じる。
脱力した身体を起こしつつ種を受け止めた手を広げると、強い粘り気を帯びた液がそれぞれの指へ橋を繋いでいた。
「……、最低……」
それは、彼女への罪悪感なのか、それとも、頭に残る彼女がそう言わせたのかは分からない。
その言葉を反芻し乍汚れた手を手巾で拭い、洗面台へと向かう。
手巾と共に掌に纏わり付いた罪を落とす為に、何度も何度も手を濯いだ。
──その罪は落ちない。
何を想う
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『K』
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『雪』
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『えななん』