※この作品はR-18です。

新世界の第3村で、愛を育む二人(LRS)   作:ハル(LRS活動推進中)

1 / 12
プロローグ「僕は、綾波に会いたい」

青い空。そして見慣れない青い海。

 

僕はエヴァのない世界を願い、その通りの世界になった……のだと思う。

 

誰もいない。綾波やアスカ、カヲル君はちゃんとこの世界に生きているのだろうか。

 

マリさんは絶対に迎えに来ると言ってくれたが、果たしてその言葉は約束と言えるのだろうか。

実際に僕の背中を押してくれた言葉ではある。

それに、その約束を綾波に伝えることで彼女を安心させることもできた。

 

あのとき綾波を新しい世界に送り出したけれど、その後どうなるかなんてわからなかった。

僕はエヴァのない世界を求めたけれど、命を落とす覚悟もできていた。

世界を改変する為には犠牲が必要だと思っていたから。

それはもしかしたら、綾波の願いを否定する行為だったかもしれないけど。

それでも、僕は彼女に生きて欲しいと思っていた。

 

 

自分の輪郭が消えていくような感覚。

自分は今生きているのか、死んでいるのか。

 

ここには誰もいない。

ここがどこの海なのかもわからない。

みんなのところに行きたいけれど、どうしたらいいかわからない。

世界の色がなくなっていく。

動けない。動きたくない。

変わった世界を見届けられたのだから、このままここで消えてしまっても———

 

 

ザバーーーン

 

「ふ〜間に合った!ギリギリセーフ!」

 

突然目の前に現れた改8号機。

その機体の質量により押し出された波に飲まれる。

 

「お待たせ、シンジ君!迎えにきたよん」

 

「マリさん!」

 

色を失い、輪郭すら消えかえていた世界に、再び彩が戻っていくのがわかった。

 

バシャン!と、消えていく機体から落ちた彼女は、海面から顔を出すとにこやかに笑いかけてきた。

 

マリさんは約束を守ってくれた。

今また違う世界へ旅立ちそうになっていた自分を引き戻してくれた。

 

スカートの裾を絞りながら、マリさんは言った。

 

「ふ〜、これからも頑張って生きなきゃね!

 そんで、ワンコ……シンジ君はどうしたいのかにゃ?」

 

「僕?僕は……」

 

自分の望み。つい先程までエヴァのない世界を創ることだけを考えていて、押し殺していた僕の望み。

その想いに耳を傾けた。

 

 

「僕は、綾波に会いたい。」

 

 

自分でも驚くほどにハッキリとした言葉が、口から発せられた。

 

「オッケー!目的地決まり!早速向かおうか!」

 

なんと軽い承諾だろうか。

マリさんは今まで僕の周りにいなかったタイプの人種だ。

でも、この軽さが今はとても有難かった。

 

「ありがとう。マリさん」

 

「んー?いいよん、約束だし」

 

「約束?」

 

「まあねぇ〜。色々あるんだにゃ」

 

なんだかはぐらかされたような気もするが、今は深く追求はしないことにした。

 

「じゃーん!エヴァの緊急脱出用バッグ!ちゃっかり持って来た私、流石だにゃ〜」

 

マリさんはそう言いながら、グレーのポーチを取り出した。

それは防水仕様になっており、中にはレーションやGPSなど、非常時に使える用品がセットされている。

 

GPS端末の電源を入れ、現在地を表示させる。

 

「そんで君の意中の彼女はどこにいるのかにゃ?」

 

「多分、第3村にいると思います。……多分ですけど。」

 

綾波の居場所。

黒いプラグスーツを来たアヤナミはあの村にいたいと言っていた。

なんとなくだが、綾波もそこに居るような気がしていた。

 

「オッケー、第3村ね!姫がいた集落のとこね」

 

「マリさんの行きたいところはいいんですか?」

 

「ん?いーのいーの、私も姫に会いたいしモウマンタイ」

 

多分アスカもケンスケのところに帰っている筈だ。

地図を広角にしながら、現在地と第3村の位置を表示させる。

 

「お、何気に近いじゃん!これなら2日歩けば村に着けそうだね」

 

「よかった…!」

 

意外にも近い場所だったことに驚いた。

これなら途中で力尽きることもなく辿り着けそうだ。

 

「よし、じゃあ早速向かいますかね!服はびしょびしょだけど……とりあえず歩きながら乾かして、夜は裸で寝ればいいっしょ」

 

「!?!?」

 

「あははっ!シンちゃんはウブだにゃあ」

 

マリさんにからかわれながら、僕たちは浜辺を後にし、目的地の第3村へと歩き出した。

 

 

*

 

 

……土の匂いがする。

 

重い瞼を開くと、石段と木造の建物が目に入った。

今自分は土の上に横たわっているようだ。

視線を動かすと、白いプラグスーツの手が目に入った。

少し指を動かし、自分の意識と体の動きが繋がっていることを確かめる。

 

「……私、生きてる」

 

体を起こし、その場に座り込む体制のまま意識を整える。

 

碇君が私を送り出してくれた。

 

私は今、生きている。

 

そして、ここは知っている場所。

 

そのまま玄関を見つめていると、背後から声をかけられた。

 

「そっくりさん!帰ってきてくれたのね!」

 あら?でもすごく髪が伸びて……」

 

……この人はここの家主の奥さん。手に抱えている赤ちゃんのお母さん。

でも私は知っている。この人は……洞木さん。

第3新東京市立第壱中学校で委員長をしていた、同じクラスの人。

 

「……洞木さん」

 

「え?」

 

ゆっくりと立ち上がり、視線を合わせた。

 

「私は……綾波レイ」

 

「綾波さん?」

 

洞木さんは目を丸くした後、すぐに笑顔になり言葉を続けた。

 

「私のこと覚えてるの?わあ、綾波さんなのね!久しぶり!」

 

空いている方の手で、ぎゅっと手を握られた。

肯定のために頷く。

 

そして、腕に抱えている小さな存在に目をやった。

 

「……ツバメ。」

 

彼女の手に抱えられている赤ちゃん、ツバメ。

つぶらな瞳が私の顔をじっと見つめている。

 

そして以前「私」がしていたように、ツバメのやわらかな頬を優しくつついた。

 

「ツバメも、一緒に働いたみんなのことも、覚えてる」

 

「そっくりさんの記憶があるってこと?」

 

こくりと頷く。

 

「は〜不思議ね。でも信じるわ。だって…… 」

 

洞木さんは腕に抱えている小さな存在に目をやると、こちらに向けて微笑み、言葉を続けた。

 

「人見知りのツバメが、あなたに抱っこしてもらいたいって」

 

ツバメがこちらに向けて両手を広げ、キラキラとした瞳で私を見つめていた。

恐る恐る手を伸ばし、ツバメの両脇に手を差し入れ、抱きかかえる。

 

初めてなのに、初めてじゃない。

あたたかい。やわらかい。

この重みを何度も感じたことがあった。

もう一度抱っこしたいと思っていた。

 

洞木さんはニコニコとツバメと私の様子を見つめていた。

そして玄関の戸を開け、私を招き入れるようにして、言葉をくれた。

 

「おかえりなさい」

 

「……ただいま。」

 

「私」が帰りたいと思っていた場所。

私が帰ってもいい場所。

 

私の髪で遊ぶツバメを抱えながら、あたたかな光が漏れる玄関に足を踏み入れた。

 

 

つづく

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。