新世界の第3村で、愛を育む二人(LRS) 作:ハル(LRS活動推進中)
幸せな二人を願う全ての人へ。
黄金の稲穂がこうべを垂れる季節となった。
雲ひとつない晴天に空気は澄み、心地の良い風が吹いていた。
今僕の目の前に、着飾られた美しい女性が立っている。
純白のドレスに身を包み、白い花のブーケを手にしたその女性は、僕と目が合うと少し照れながら微笑んだ。
彼女へプロポーズをした日から、4ヶ月が経っていた。
早々に籍を入れて彼女は「綾波レイ」から「碇レイ」となったのだが、実は互いの呼び方は未だ「綾波」「碇君」のままだ。
それには理由がある。
入籍した日、「レイ」「シンジ君」と照れながら名前を呼び合った。
言い間違えを訂正しながらもなんとか数日は持ったのだが、数日後の情事の際、切羽詰まって互いの名を呼ぶ時にどうしても元の呼び方が出てしまったのだ。
そのときにお互いに「やっぱり元のがしっくりくるね」ということになり、当分は「綾波」「碇君」のままでいいかということで落ち着いた。
それに僕は「いかりくん」と呼んでくれる彼女の声がとても好きで、自分にとってはその響き自体がとても大切なもののように感じていた。
そして、彼女の方も僕が「あやなみ」と名を呼ぶことに関して同じように感じているようだった。
結婚式をすることになったのは、村の人たちの後押しがあったからだ。
元々は籍を入れるだけでいいと思っていたのだが、委員長や小母さん達が率先して「式を挙げるなら今のうちよ!」と、かなりの勢いで薦めてくれた。
それに、ドレス姿の綾波を見てみたかったというのもある。
彼女の白いドレスも僕の白いタキシードも、村で結婚式が行われる際に共同で使用しているものだが、小母さん達が僕らの身体に合うようサイズを調整してくれた。
ドレスのデザインはとてもシンプルだけれど、彼女の魅力を引き出すには十分だった。
ノースリーブのスッキリとした上半身に細くくびれたウエストが際立ち、腰から裾へと向けて布地が大きく広がっていた。
青く輝く銀の髪は編み込んだものをえりあしで纏め上げており、透けたヴェールに覆われている。
彼女が頭に着けているウェディングヴェールは、マリアヴェールという種類のものらしい。
顔は覆い隠さず、聖母マリアのような見た目で顔周りを囲うように被せるタイプのものだ。
「綾波さんにはこれが似合うと思って!」と委員長が手編みのレースで仕上げてくれたのだ。
手には白いガーベラのブーケ。
大ぶり過ぎず纏まった形で、彼女の揃えた手に収まっていた。
綾波は普段化粧をせずとも整った顔立ちをしている。
けれど今日は唇に紅を刺し、頬にうっすらと赤みを乗せていた。
化粧をすると白い肌がより白く透けて見えるのだと初めて知った。
純白に包まれた姿で佇む綾波は、女神と見紛うほどの美しさだった。
やはり彼女には白が似合うと改めて思った。
その姿をしっかりと目に焼き付ける。
綾波のことをいつも可愛い可愛いと思っていたけれど、彼女はいつのまにか大人になっていた。
身長も伸び、不健康そうだった細い少女の身体は、いつの間にか大人の女性らしい身体つきになっていた。
二人で暮らし始めてからというもの、日常のように触れていたからか、変化をあまり意識していなかった。
最近はゆったりとした服やスカート、作業着などを着用している姿が多かったので、身体のラインが出るような格好はあの白いプラグスーツ姿以来だったかもしれない。
こんなときなのに綾波の身体のラインに見惚れていたなどと知られたら、アスカや委員長に殴られそうだ。
準備を終え、いよいよ皆の前に出る時が来た。
「緊張してる?」
「うん。少し」
「僕もだよ」
少ないながらも言葉を交わし、互いの気持ちを共有する。
彼女が、僕の腕に手を添えてきた。
新郎新婦として呼ばれ、二人で連れ添いながら皆の前に出る。
村での結婚式は人前式が主で、立会人は村の知り合い全ての人たちだ。
4年の歳月で村の中心事業に関わることも多かったからか、かなりの人数が集まっていた。
よく知った顔ぶれの友人達は手前の方に集まり、各々違った表情で僕らを見つめていた。
今から、村の代表者が誓いの言葉を伝え、自分達はそれを皆の前で承諾する。
「新郎 碇シンジ。あなたは綾波レイを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、共に助け合い、死が二人を分つまで妻を愛すると誓いますか?」
「はい、誓います」
前を向き、ハッキリとした言葉で自分の意思を伝えた。
次は綾波の番だ。
「新婦 綾波レイ。あなたは碇シンジを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、共に助け合い、死が二人を分つまで夫を愛すると誓いますか?」
——沈黙がその場を支配した。
何故か綾波が言葉を続けない。
村の人々がざわつき始めた。
「綾波……?」
焦り、彼女の方を向くと、思い詰めるような表情で手元を見つめていた。
「私は……」
彼女が口を開く。
全ての人々が沈黙し、固唾を飲んで綾波の言葉を待った。
「私は、死が二人を分かつとも、彼を愛し続けると誓います」
ゆっくりと、一言ずつ丁寧に、言葉を紡いだ。
「綾波……!」
そうか。うん、そうだね……綾波。
「……僕も、死が二人を分かつとも……君を愛し続けると誓うよ」
『死』。
僕は綾波という存在を何度も失った。
それでも、僕は彼女を想い続けた。
彼女も、僕を想い続けてくれていた。
誓いは言葉の羅列でしかないけれど、その意味を一番深く強く感じているのは当の僕たち自身だ。
分かつ「まで」ではない。
例え死が二人を分かつとも。
死しても、失っても尚想い続けたから、また逢えると信じていたから、この"今"がある。
エヴァに関わり、数奇な運命を共に歩んできたからこそ、実感する言葉だった。
ワアッと村の人からの歓声が沸いた。
トウジも、委員長も、ケンスケも。
アスカも、マリさんも、カヲル君も、ミサトさんも、リョウジ君も、サクラさんも。
小母さん達や子供達、村の人たちみんなから笑顔で「おめでとう」と祝福の言葉を貰った。
そして僕たちは、本当の"家族"になっていく。
これからもずっと一緒に生きていこう。
僕と、綾波と、
……そして、彼女のお腹に宿った新たな生命と共に。
終劇
あとがき
ここまで長々とお付き合いくださりありがとうございました。
話を読んで、少しでもポカポカしていただけていたら嬉しいです。
ラストは結婚式と、子供を授かった事実を皆様に伝えたところで終わりにしました。
今回前半に書いている「式を挙げるなら今のうちよ!」というのも、綾波の懐妊を村の人たちはみんな知ってるので、「体調が悪くなったりお腹が大きくなる前に式あげちゃいましょうよ!」「子供が産まれたら絶対無理だし今のうちよ!」という意味を込めていました。
今は妊娠8週目の設定です。ギリギリつわりが始まる前くらい。
子作り&妊娠発覚〜出産子育ての話も書きたいと思ったのですが、それだけでかなり長くなりそうだったので、このシリーズは一旦ここで完結としました。
お話の要素としては、シンエヴァのその後、黒波とポカ波の統合、マリの行動の理由、再会、髪にまつわる話、告白、プログラムを超えた好意、初キス、二人暮らし、縁組、初夜、積極的な綾波、仕事や村の人たちとの関わり、黒波の3つの願い回収、初潮、プロポーズ、結婚、誓いの言葉、そして念願の二人の子供……と、描きたかったものを全部詰め込みました!
二人の関係としては、見ていて恥ずかしくなっちゃうような、砂を吐くほど甘々な二人を目指してます。
読んでいて恥ずかしい!と思っていただけていたら嬉しいです笑。
脳内ではアニメのように映像が流れてるのですが、それを文に起こすのはなかなか難しいですね…。
あと結婚したら名前呼びするのも憧れるし好きなのですが、やっぱり「碇君」「綾波」とお互いに呼び合う二人が好きで、全ての台詞に関して「脳内で音声再生できるか(キャラとして違和感がないか)」というのも拘っているところだったので、そのままの呼び名になりました。
そして、今回全体を通して一貫させたテーマは「願い」でした。
エヴァは「何を願うの?」という言葉が印象的で、本編ではその人が何を一番欲しているのか、それを自問自答してわからなかったり言えなかったり葛藤したりしていました。
今回出てきたキャラはネオンジェネシス後なので、皆その「願い」についてはちゃんと言葉にするようになっています。
願って、それを自覚しなければ、叶うものも叶わないのではないかなあと。
第3村の人達はそんな「願い」を素直に言葉に出させてくれるような温かさがありますよね…!
なので、シンジ君の願いも綾波の願いも沢山叶えてあげられたかなと思います。
そしてあえてメタ的に言うと、「二人に幸せになってもらいたい」と願った私やLRSの人達の想いです。
本当に、この二人には幸せになってもらわないと困ります…!!
今回のお話はこれで完結ですが、この世界線ベースで合間合間の短編もあるので、少しずつ載せていきたいなと思っています。
あとがき含め、ここまで読んでいただきありがとうございました。
LRSに幸あれ!!!
※感想、評価いただけますと嬉しいです…!