新世界の第3村で、愛を育む二人(LRS) 作:ハル(LRS活動推進中)
レイの髪を切ってあげるシンジ。
アスカとの再会。
ケンスケとの会話、これからのこと。
(ケンアス風味です)
今回はLRS要素少なめですが、次回はもっといちゃいちゃ予定です!
朝日が登り、鳥達の声がする。
綾波は結局一度も起きることがなく、すやすやと僕の腕の中で寝息を立てていた。
そろそろ起こした方がいいんじゃないかとハラハラしながら声を掛ける。
「綾波〜おはよー…」
「ん……」
起きない。
頬をつついてみたり、髪を撫でてみたりしたが起きる気配がない。
軽く肩を揺すってみた。
「朝だよ、起きて綾波」
「んん……」
綾波はきゅっと目を瞑ると、ゆっくりを瞼を上げ、とろんとした顔で瞬きをした。
「……いかりくん?おはよう」
半身を起こし、目を擦る綾波。
「…………朝?」
「そうだよ綾波、早く戻らなきゃ」
やっと今の状況が掴めてきたようだ。
「……ごめんなさい、私寝てしまって……」
「うん、とりあえず帰ろ」
綾波の手を引き、小走りでトウジの家へと向かった。
家に着くと朝ご飯の途中で、皆が僕達を見る視線が痛かった。
「おいおい〜初日から朝帰りかいな」
「シンちゃんやるねぇ〜、おねーさんはもう安心だにゃ」
トウジとマリさんにひやかされる。
「うっ、いや、夜にちょっと散歩してて……気付いたら寝ちゃってて……」
「はいはい、碇君と綾波さんの分もあるから自分でよそって食べてね!」
「はい……」
トウジも委員長も同級生だった頃の感覚で接していたが、今はなんだか大人に注意される子供のようで気恥ずかしかった。
ご飯を食べながら会話をしてみんなの誤解も解け(?)、今日の予定やこれからのことを話した。
綾波の今日の農作業は昼過ぎかららしい。
綾波のように、僕もここで何か仕事を見つけなければいけない。
前回ここにいたときはケンスケを手伝わせてもらっていたが、世界が浄化された今、村のパトロール兼便利屋の仕事はケンスケ一人で十分だろう。
トウジの病院や復興支援、その他の仕事の手伝いをして村をまわり、自分が一番役に立てることは何かを探すことにした。
とりあえず今日は午前中に綾波の髪を切り、午後はケンスケのところに顔を見せに行くことにした。きっとアスカにも会えるはずだ。
***
仕事に行くトウジを送り出し、綾波と一緒に食後の片付けをした。
皿洗いとはいえ、やはり台所に立つと落ち着く。
委員長の料理は美味しくて素晴らしいものだったけど、居候させてもらっている身なのだから、何か役に立つ為にたまには僕が食事作りを担当させてもらってもいいかもしれない。
***
委員長にハサミと髪よけ用のレインコートを借り、椅子を持って玄関の外に出た。
綾波の髪を切る為である。
綾波を椅子に座らせ、レインコートを被せる。
委員長もツバメを抱きながら一緒に外に出てきて、ベンチに座りながらこちらを眺めていた。
「さて」
今綾波の毛はふくらはぎくらいまでの長さがある。
(ショートもいいけど、髪が長い綾波も可愛いんだよな…。邪魔じゃない程度に長いままにしておこうかな)
綾波の髪に手を差し入れる。
ふわっとした手触りと、軽く弾力のあるうねり。
「綾波って癖っ毛だったんだね」
「……そう?」
綾波の表情はこちらからは見えない。
「じゃあ、切るね」
髪が多いので、借りておいた輪ゴムで毛を束ね、背中の中程の位置でザックリとハサミを入れた。
毛先は軽くなるように調整し、仕事の時に括りやすいように鋤き過ぎず、ロングのシルエットで整えた。
前髪もかなり伸びていたので、視界が悪くないように切り揃えた。
頬の横の毛も鋤き、いつもの綾波らしさも出してみる。
前から顔を覗き、バランスを見る。
なかなかいい感じに仕上がったのではないかと思う。
「うん、かわいい」
「……あ、ありがとう……」
俯いて頬を染める綾波。
そんなところがまた可愛い……。
僕達の様子をニコニコと遠目から見ていた委員長は、
「綾波さんは照れ屋さんなのね〜ツバメ」
と、ツバメを介しながら綾波のことをいじっていた。
***
お昼は自分に作らせて欲しいとお願いした。
委員長とお父さん、綾波と僕の4人分だが、材料を使い過ぎないよう配慮しつつ野菜炒めと味噌汁を作る。
野菜の皮や芯は煮浸しにし、捨てるところがないように気をつけた。
ツバメも食べやすいように、細かくしてとろみを付けたおかずも準備した。
委員長のお父さんは初対面のときに怒鳴りつけられて以来あまり会話をすることがなかったのだが、「シンジ君、美味しいじゃないか」と喜んでくれたのでホッとした。
綾波は味噌汁を手に包み込むようにして、一口一口大切そうに飲んでいるのが印象的だった。
午後は綾波は農作業に出かけ、
僕はケンスケの家へと向かった。
***
丘を登り、廃駅を改築したケンスケの家に着いた。
入り口のドアが開いている。
「ケンスケー?」
声を掛けつつ、中を覗き込んだ。
奥へと入ると、キッチンの椅子に座りサンドイッチを頬張る女性と目が合った。
「アスカ!」
「やっと来たのね」
「昨日の夕方に村に着いたんだよ」
アスカがここにいるという話は聞いていたが、自分の目で見てその存在を実感し、安堵した。
ちゃんとこの世界に生きていてくれて良かった。
以前は下着にパーカーのみという見るのも気が引ける格好をしていたのに、今はちゃんと服を着ていた。
白いTシャツに赤いホットパンツ、ケンスケに借りたのであろう大きめのミリタリージャケットを羽織っていた。
アスカが髪飾りにしていたエヴァのインターフェースも付けていない。
そして驚くべきは……大人の身体に、多分昔のミサトさんくらいの歳であろう見た目に成長していた。
「なんでアンタはガキの姿のままなのよ?」
多分それは、アスカが「大人になりたい」と強く望んでいたからだ。
自分の中の思い描く姿が、この世界に還るときに具現化されたのだろうか。
裏世界で対峙したときに成長したアスカの姿を見ていたから、そうなのだろうと思う。
「アスカがそうなりたいと願ったからだと思うよ」
僕はといえば14年間の記憶が全くないこともあるし、突然大人になるイメージなど全く想像できなかった。
綾波も自身のイメージは14歳の姿のままだったのだろう。
マリさんは……あえてあの姿を望んだのかもしれない。
「ケンケンのやつ、大人になった私の姿をみて目ぇ回しちゃってさ」
満更でもなさそうに話すアスカ。
よかった。アスカは大丈夫そうだ。
「ケンスケは裏山?」
「そ。今日は一日そこって言ってたし、行けば会えるんじゃない?」
「わかった。行ってみるよ」
「また来るよ、アスカ。
……あ、たまには村の方にも顔見せなよ。
委員長が会いたいって言ってた」
「考えとくわ」
アスカに別れを告げ、ケンスケの家を後にした。
「ありがと、バカシンジ。」
***
山に登り、湖のあるところへと向かうと、釣りをしているケンスケを見つけた。
「ケンスケ!」
「碇!帰ってきたのは聞いていたよ」
みんなここでちゃんと生きている。
変わらない生活を送っている姿を見て安心した。
「アディショナルインパクトが起こった時は正直もうダメかと思ったよ。碇が助けてくれたんだろう?ありがとうな」
ケンスケはどこまで知っているのだろうか?
ヴィレから情報を得ているとはいえ、かなり詳しいようだ。
「碇に伝える連絡事項が沢山あってな。いい知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?……なんて言ってみたいところだが、いい知らせしかない」
「なに?」
「ミサトさん達と連絡がついたよ」
「ミサトさん!!」
アディショナルインパクトを止めるためにミサトさんが命懸けで槍を僕の元に届けてくれた。
そのミサトさんが生きていてくれた。
そのことを聞いただけで涙が溢れそうになる。
「ヴンダークルーもみんな無事だったそうだ。ミサトさんもここに来たいと言ってたけど、責任者だし先に片付けなきゃいけないことが山積みらしい」
「ミサトさんもここに来るの?じゃあ、もしかしてリョウジ君に」
「ああ」
「そっか、よかった……!」
ミサトさんとリョウジ君が会える。
ミサトさんは一緒に住むのだろうか?
リョウジ君にも会いたい。
復興支援の仕事をしているだろうから、今度手伝いに行こう。
ミサトさんだけじゃなく、リツコさんやトウジの妹のサクラちゃんにも会えるのだろうか。
リツコさん達がいれば復興のスピードも格段に上がるだろう。
……そして、あと一人居場所がわからないのは……カヲル君。
「あのさ、渚カヲル君のこととか何か聞いてない?」
「渚カヲル?いや、その名前は耳にしたことがないな」
「そっか」
彼もこの世界のどこかに居る筈だ。
ミサトさん達に会ったら彼のことも聞いてみよう。
「あと、KREDITが本格的に復興支援に乗り出すらしい。多分ヴィレは解散して、これからはKREDITが母体になるだろうね」
「うん。何か手伝えることがあるといいんだけど」
「碇は無理に責任を感じる必要はないよ。これからはここでゆっくり過ごすといい。綾波とね」
「えっ?綾波は……うん。」
「否定しないのかよ」
冗談を言い合いながら、学校でケンスケ達と一緒にいた頃を思い出した。
「あと式波には会ったか?」
「うん。元気そうだった」
「エントリープラグが突然落ちてきてさ。中から成長した式波が出てきたときは驚いたよ」
それはアスカがケンスケの元に帰りたいと願ったからなのだが、二人の話なのであえて伝えるのはやめた。
「ありがとう、ケンスケ。アスカを支えてくれて」
「支えになれるよう努力するよ」
その後もケンスケと談笑を続けた。
アスカが急に沢山喋ってくれるようになったこと、ご飯が食べられるようになったのを喜んでいたことなど、アスカの様子を詳細に話してくれた。
ケンスケのこういうところは14歳の頃から変わってないなと思い、微笑ましくなった。
好きなことになると饒舌になるタイプだ。
アスカへの想いもしっかりと伝わってきた。
自分が仕事を探している話をしたら、アスカにも働いてもらわないとなと言っていた。
***
釣りの後は機材の整備を手伝いながら夕方までケンスケと話し込み、別れを告げて丘を下りた。
やることも、やれることも沢山ありそうだ。
こんなに前向きな気分になれたのは久しぶりだった。
——明日は何をしようかな。
先に家に帰っているであろう綾波のことやこれからのことを考えながら、軽い足取りで家路に着いた。
つづく