階級ですが一尉や三尉というように数字が入る為、文字にすると横棒なのかカタカナのニなのか区別が付きにくいので旧軍隊の階級で統一しました。
「ルームクリアー、2階に人体によるものと思しき熱源確認!」
私は警備兵と共に工廠2階の事務室へと向った。
「!」
私は我が目を疑った、何故なら其処には奴等の仲間と化した大井や仮称ゾンビと化した工廠作業員がいたのだから。
大井達は全身の至る所を噛み千切られ一部は骨まで露出させていた。
「う…そ…だろ」
そして大井だった其れはゆっくりとこちらを振り返った、服も至る所が裂けていて乳房や脇腹が露出していた……勿論露出した部位は噛み千切られていて皮下組織が露わになっていて血が滴り落ちていた。
大井だった其れは口の周囲を血で真っ赤にしてうめき声と共に大きく口を開けて私達に襲い掛かってきた。
「大井済まない」
私は心の中で大井に謝ると、こめかみに照準を合わせていた引き金を引いた。
「グァ」
大井だった其れはうめき声と共に崩れ落ちた。
「大井……」
私は大井だった其れが首からかけていた認識票を回収した。
「提督、ご無事で!」
中には夕張と明石、北上、大淀がバリケードを構築して籠城していた。
「君たちだけか?」
私は周囲を見廻した。
「奥の部屋に作業員が6名ほどいるよ」
北上が作業員を連れてきた。
「艦娘は明石達を足しても8名ですか…」
如月大尉が表情を曇らせた。
「大井っち……」
北上が廊下で横たわる大井の亡骸を呆然と見下ろしていた。
「北上さん…今は…」
如月大尉が声をかけてくれた。
「確かに今は感傷に浸っている場合ではないな」
私は大井と作業員の遺体を工廠の一階へと移動させた。
そんな時だった、工廠入り口の扉が開かれて人影の一団が入ってきた。
「ここまでくれ…ヒィィ!!迷わず成仏してプリーズ!」
階下で話し声と悲鳴が聞こえた。
「驚かせて済まない」
私は階段裏から顔を出した。
「もぅ提督!驚いたじゃないですか」
見慣れた金髪と青い制服が目に入った。
「愛宕…高雄に霧島も一緒か、無事で良かった」
私は階段を降りると愛宕に近寄った。
「私達も忘れたらノーなんだからね」
溶接用のガスボンベに背中を寄りかからせた金剛に続いて比叡、榛名、霧島が顔を出した。
「金剛…取り敢えず事務室へ」
私は、金剛達を2階の事務室へと行かせた。
「金剛姉妹と高雄、愛宕の6人と…君達は?」
私は金剛と一緒にやって来た迷彩服姿の一団を見た。
「私達は、陸上自衛隊○○駐屯地所属の隊員で、総勢25名であります」
そう言って彼女達は私に敬礼した。
「君たちの中で最上位のものは?」
「自分であります、槇村明日香といいます」
「階級は?」
「中尉であります」
私は彼女の階級を聞くと、
「では槇村中尉、君達はここにいる如月大尉の指揮下に臨時で入ってもらう」
陸自の隊員達は素直を従った。
「了解であります、やはり艦娘主体の海軍は女性士官が多いですね安心しました、私達も後方部隊ですので殆どが女性隊員なもので」
陸自の隊員もまた九割が女性だった、私はこの混成部隊に最初の任務を言った。
「私と男性隊員で工廠内の遺体を全て死体袋に入れた後、隣の倉庫に移動させる、君達はその間に地下武器庫から銃火器の移動をしてもらう、金剛は銃火器を受領後食料及び医薬品並びに生活必需品の確保にこの96式装輪装甲車と16式機動戦闘車で向かってくれ」
先程地下の武器庫から専用エレベーターで工廠内へと移動させた車輌を指さした。
「操縦は自分達で行います、艦娘さん達は指揮をお願いします」
私は車輌部隊員に鎮守府内の地図を見せると、各種資材倉庫の位置を把握させた、そして陸自の隊員達が速やかに運転席へと乗り込むと金剛達も続いて乗り込もうとしてタイヤに足を掛けた。
「金剛ちょっと待て、乗る前にこれに着替えろその格好で乗り込んだらスカートの中丸見えだぞ……いくら非常時で男の目が少ないとはいえ乙女の恥じらいは忘れるなよ」
私はやれやれという表情で金剛のミニスカートを指さした。
「の、の、覗いたらノーだからね」
そう言うと金剛達顔を真っ赤にして明石から作業用のツナギを受け取ると事務室奥の部屋で着替え始めた。
「おまたせネー…こんな可愛げもないカッコで……」
多少時間は掛かったが金剛達がツナギに着替え終えると車輌に乗り込んでいった。
「73式大型トラックが工廠裏に4台程ありますけど…」
夕張が大型トラックの存在を教えてくれた。
「73式があるなら助かるよ、物資を一挙に運べるからな」
私は追加指示を出すと金剛達にトラックも同行させた。
私は金剛達を送り出すと、明石、北上と工廠2階にある作業員用の個室から不要な物を搬出していた、そして簡易的ではあるが調理場を事務室奥に急造した。
「2階の階段を上がった奥にある作業員用の個室向って左側女性用、右が男性用だ」
残った警備兵が事務室に会議室から机と椅子を運び込んで簡易食堂を設営していた。
「シャワールームは元々あるので、時間による男女分けをするとして…問題は冷凍冷蔵品の保管方法か…」
食料品は何時までも保存の利く物ばかりとは限らないからだ。
「確か……車両部に2トンの冷蔵冷凍車があったと思いましたが」
大淀がその存在を思い出してくれた。
「車両の保管場所は確か…本部棟の裏手だったと」
私は大淀から車両の駐車場所を聞くと地図で確認した。
「此処か…金剛達が戻り次第、確認しに行ってみるか…」
私は先ず金剛達の帰還を待つ事にした。
「提督、報告ネー」
無線機から金剛の声が聞こえた。
「こちら工廠、どうかしたのか?」
私は返答した。
「売店並びに物資保管倉庫で食料品を無事に回収ネー、大型トラック満タンネー、一旦帰りマース」
金剛からの報告に、私と明石は保管用の棚の作成を急いだ。
その後金剛達は無事に誰一人怪我もなく帰還した、大量の物資と共に。
「袋菓子にレトルト食品…シリアルにカップ麺に袋麺……揚げ物におでん?…菓子パン類に……各種飲料水…缶詰類とおつまみ系?…!これはでかしたぞ」
そうアルコール類もありったけ回収してきたのだ、多数のおつまみと共に。
これ以外にもコンビニで取り扱っている下着や鎮守府内医局で取り扱っている範疇の医薬品、衛生用品等も一緒に回収していたのだった。
「これだけあれば、当面はなんとかなりますね…」
大淀が回収品目のリストを作成してくれた。
「鳳翔さんの話だと店舗内の冷蔵庫には手付かずの生鮮食料がまだ残っているそうです、電力もまだ供給されている今のうちに可及的速やかに回収したほうが宜しいかと、それとこの工廠には大型発電機と地下燃料タンクが併設されていますから燃料さえ確保できれば電力は確保出来ます」
私は明石から発電機については説明を受けた。
「やはり燃料か…」
私と明石のやり取りを聞いた陸自の隊員が声を掛けてきた。
「提督よろしいでしょうか、我々は燃料の輸送隊でしたので駐屯地にさえ戻れれば燃料満載のタンクローリーを持ってこれますが…」
「本当か!、それなら頼みたい」
私は陸自の隊員にタンクローリーの回収を指示した。
「明石及び陸自隊員はタンクローリー回収を」
明石が敬礼すると帰還したばかりの96式装輪装甲車式で駐屯地へと向かっていった。
「金剛済まないが明石達の掩護を」
金剛は16式に颯爽と乗り込むと、明石のあとを追って出発した。
そして日も落ちて当たりが薄暗くなり始めた時刻になって金剛達は8両のタンクローリーを従えて工廠に戻ってきた。
「金剛以外は任務完了ネー、8両のタンクローリーのうち2両は軽質油……早い話軽油ネー、残りはA重油デース」
明石がサムズアップしていた。
「これで発電機用と車輌用の燃料の心配は当面しなくて済みます」
夕張が地下タンクに燃料を給油し始めた。
私達は遅くなったか鳳翔と間宮が用意してくれた夕食を摂ることにした。