船橋内ラウンジに於いて我々は交代で仮眠を取ると船内の探索を開始した。
船橋各所の探索を行っていた海兵隊員が報告をしてきた、
「提督、船内全域でハロン消火剤が噴射された形跡があります」
私は噴射した理由である火災の痕跡を探した。
「火災が起きたのか?」
「その形跡は見当たらないですが……」
私の疑問に夕張が答えた。
「なら何故、誤操作なのか?」
私は海兵隊員に引き続きの調査を指示した。
「原因の究明と船内にいたであろう作業員の捜索を引き続きあたってくれ」
私の指示に敬礼すると捜索を再開した。
「なんていうか嫌な気配がするだけど…」
夕張が何かを気にしながら小声で私に話しかけてきた。
「嫌な気配がするとは?」
「うまく言えないけど…何が蠢いているというか…」
夕張の不安を聞いていた最中のことだった、
「報告!医務室付近にてゾンビの一群と遭遇」
「報告!貨物室にてゾンビの一群と遭遇」
「報告!研究室付近にてゾンビの一群と遭遇」
他フロア捜索の海兵隊員から緊急の無線が入った。
「船内作業員も感染していたのか…そういう事か、ウィルスが漏洩した為に作業員ごと処分したという事か……」
私は操舵室の放送設備を起動させると、
「船内捜索中の隊員へ、敵と遭遇時は各自の判断で応戦を許可する、各自の安全を最優先とせよ」
捜索に参加している全員から了解の返答が入った。
「こちら医務室、ゾンビの排除完了しました、これより医務室の調査を開始します」
それからは船内の至る所でゾンビとの遭遇戦が散発的に起きた。
「今の処ゾンビ化した隊員はいません、それと医務室調査隊員からの報告ではどうやらこの施設がの発端のようてす」
海兵隊中尉が報告してきた。
「そうか、隊員は無事か……やはりこの貨物船が発端だったのか」
「はい、医務室に割れたアンプルと複数の使用済み注射器を発見したそうです……それと拘束台に潜水艦娘のネームプレートもあったそうです」
海兵隊中尉の報告を私は黙って聞いた。
「任務中に拉致されて、ここで人為的に何らかのウィルスを接種されて返された……という事か」
私の頭の中でなんとなくではあるが、この事件の流れが見えてきた。
「報告、最下層の研究室と思しき部屋にてワクチンらしきものを発見しました!」
別の海兵隊員から報告が入った。
「本当か!」
私と海兵隊中尉はワクチンらしきアンプルを発見したと報告のあった最下層の研究室へと向った。
「この部屋か……やけに寒いな」
「仕方ないですよ、低温実験室のようですから」
私と海兵隊中尉がそんな会話をしていた。
「提督、こちらです」
発見した海兵隊員がワクチンがあった冷蔵庫へと案内してくれた。
「これです」
海兵隊員がガラスケースに納められている何かのアンプルを指差した。
「此れがワクチン……」
確かにアンプルに貼られたラベルには何かのコード番号が記載されており、他所から押収した資料にある今回のウィルスに割り振られた番号と一致していた。
「ワクチンじゃなくてウィルスそのものじゃないのか?」
海兵隊中尉がアンプルを手にするとそのラベルを注意深く読んだ。
「確かに海兵隊中尉の言うようにコード番号から推測するにウィルスそのものの可能性が高いな…」
私は少し考えると、
「このアンプルについてはワクチンとは考え難く、恐らくはウィルスその物と考えられるので回収は許可できない、パソコンについては総て押収せよ、なお紙ベースの書類についても内容の如何問わず総て対象とする」
その日の内に施設にあったパソコンと書類を回収すると私達は鎮守府へと帰還する事にした。
後日調査の結果、あのアンプルはやはりウィルスそのものであった、そして貨物船は外部への出入り口を総て溶接封鎖し立入禁止とした。