この訳もわからない状況も今日で四日目となった。
「提督、潜水艦娘の遺体の詳細検分を許可願います」
私はアレから気になっていた事を確かめる為に潜水艦娘の遺体検分の申請を提督に出した。
「何か気になる事でもあるのか、それならば許可するが…」
提督が書類にサインをしながら聞き返してきた。
「以前にも話しましたが、まだ憶測の段階ではありますが潜水艦娘が事の発端のような気がしまして…」
「そうか…但し、明石まで奴等の仲間になられては困るから遺体は拘束の上で検分してくれ」
私は提督の許可を貰うと、遺体安置所代わりの保管倉庫へ向った。
「ご苦労さまです、潜水艦娘の遺体検分に来ました」
私は入り口で警戒をする警備兵に提督の許可証を見せた。
「確認しました」
警備兵が入り口扉を解錠してくれた。
「気を付けてください、遺体袋の中には動いているものもありましたから」
警備兵が遺体袋を指さした、確かに動いている物が何袋か存在していた。
「ありがとう」
私は警備兵に礼を言うと潜水艦娘が入れられた遺体袋を探した。
「これね」
私は一緒についてきた夕張と急造の拘束台に乗せると袋を開けた。
「流石に頭を撃ち抜かれたから動き出さないみたいね」
夕張が安堵の声を上げながら遺体の詳細を検分し始めた。
「それじゃ始めましょう」
私と夕張ちゃんは其々に検分していった。
「ねえこれ見て」
私は伊58の首筋に、何かを打たれた跡を見付けた。
「注射ですかね?」
「でも…予防接種とかは腕でしょし…なんだろう」
私は遺体から各部位の写真や細胞と血液のサンプルを回収すると他の娘の遺体も同じように回収していった。
「何か解かればいいのだけど」
私は回収したサンプルを持って遺体安置室内に同じ様に急造した検査室に向った。
「明石さん、一応は防護服着たほうが良いのでは?」
夕張ちゃんが私の分の防護服を持ってきた。
「そうね、何があるかわからないもんね」
そして私と夕張ちゃんは防護服を着込むとサンプルの検査を開始した。
細胞や血液の解析を始めてどれ位時間が過ぎただろうか、
「明石さん、これっ!」
夕張ちゃんがいきなり大声を上げた。
「とうしたのよ」
私は夕張ちゃんの机を覗いた。
「この血液サンプルを見てっ!」
私は言われるがままに顕微鏡を覗いた。
「なによっ!これ」
其処には得たいの知れない何が蠢いていた。
「これって……まさか……何かの病原体なの?」
私は内線を取ると提督へ報告した。
「明石です、大変です仮称ゾンビ化した遺体から正体不明の新型ウィルスが見つかりました、つきましては遺体の速やかなる焼却処分を!」
私の慌てた声に提督も事態の重さを理解すると、私に戻るよう指示を出した。
「明石、直に戻れ…あとの処理は改めて決める」
私と夕張ちゃんは直に遺体安置室替わりの倉庫から出ると執務室へと戻った。
「明石、さっき内容からすると焼却処分はかえって危険なのではないか、その遺体を焼却した灰が降り注ぐことになるよな、それならば倉庫を完全封鎖した方が安全なのでは?」
提督の危惧することも一理あった。
「確かに今考えると仰るとおりです、でしたら遺体を保管する場所を今の倉庫からドッグ脇の地下弾薬庫に変更しましょう、彼処なら倉庫そのものは地下にありますしエレベーターを使わないと地上には出れませんから安心かと」
私の提案を受けて提督が手空きの隊員を招集して遺体を地下弾薬庫へと移動させた、勿論全員に防護服を着ての作業だった、無論其処まで辿り着く間にも沢山の元艦娘だった仮称ゾンビが襲ってきた。
「ついこないだ迄の仲間が……辛いな」
提督が襲ってきた山城だったそれや陸奥だったそれ……以外にも沢山いたそれを遺体袋に入れながら呟いていた。
「この分だと、扶桑さんや長門さんも絶望的でしょうか…」
私も同じ気持ちだった、そして総ての遺体袋を地下弾薬庫に移送完了すると、私達は防護服を脱いだ。
「提督、ここまで来たついでに食堂を覗いてみませんか」
私は食堂の偵察を提案した。
「そうだな、まだ食堂は見てなかったな」
提督も同意すると食堂を目指した、そして私達は食堂の入り口に辿り着いた。
「先ずは厨房からいきます」
同行した陸自隊員が小銃を構えつつ厨房へと侵入した。
「ルームクリアー、敵影無し」
厨房にはいないようだった、
「これより食堂へ向かう」
陸自隊員が厨房から食堂へと移動しいった。
「厨房の冷蔵庫は…おかしいです、空というのは、ありえませんね」
私と夕張ちゃんで厨房内の冷蔵庫を確認した所、総て空になっていたのだった。
「生存者がいるのかしらね?」
夕張ちゃんが希望的な事を口にしたその時、食堂へと向った陸自隊員が2階のラウンジへ向かう旨の報告が入った。
「食堂内生存者無し、これより2階へ向かいます」
私達もあとについて2階へと向かう事にした。
「報告!」
2階へ先に向った陸自隊員から無線が入った。
「2階ラウンジにて複数の生存者発見、これより保護します」
私達もラウンジへと向かう階段を駆け上がった、そして到着すると其処には10名が保護されていた。
「報告、長門、扶桑、川内、球磨、多摩、睦月、如月、文月、皐月、祥鳳の10名を保護いたしました」
私の目の前にやつれ果てた長門達が座り込んでいた。
「提督よ…よくご無事で…」
長門が驚いていたが、私は思わず長門に抱きついた。
「兎も角、よく無事で……工廠へ急ぎ帰戻って貴女達の健康状態をチェックするね」
私達は工廠へと戻る事にした。
そして工廠に付くと直に健康状態のチェックを始めた。
「四日目間も良く無事で…」
長門が口を開いた、
「駆逐艦たちに食料や水を優先したから最初の一日だけは何とか食べ物とか口にしたがあとは飲まず食わずだったよ……それと外に出た陸奥と山城が戻らない」
私は真実を伝えた。
「そうか……陸奥や山城までもが」
長門は堪えていたものが切れたのか泣き出していた。