「まさかっ!」
提督が驚いた、それもそのはずです。私と夕張ちゃんが持ち帰った検査結果と細部写真がその理由です。
「潜水艦娘は一様に首筋に何か注射された痕跡があり血液内に正体不明の細菌が発見されました、更に大脳も一部が壊死していて……その生物の本能である捕食の欲望に従って襲っているようです、尚生前と云うか記憶や理性は失っているようです…死者というよりは本能で動く動物といった感じです」
私と夕張ちゃんからの報告に提督は表情を暗くしていた。
「しかし、そんな病気…いや細菌なんて聞いたことないぞ」
提督が驚くのも無理もなかった。
「提督、落ち着いて聞いてください…この細菌は人為的に造られたものです…自然界には存在しません……」
「一体何の為に誰が」
提督が私の見解を聞いて呟いた。
「誰が造ったものなのかは解りません…勿論ですがワクチン類も存在しないでしょう」
「遺体についてます焼却処理は以前提督が仰っていた通りかなり危険である可能性があります」
「伝染について噛まれただけなのか別な経路があるかは今の処未知数です…ですが今の処空気感染は無いようですので噛まれた時のみというのが有力です」
私と夕張ちゃんは現在までに判明した事を提督へ報告した。
「そうか…それならば先ずやるべきは地下弾薬庫の換気口を全て閉鎖とし外気との接触を絶つのが一番か…最終的にはコンクリートを流し込んで埋めてしまうしかないか……」
私も提督と同意見だった。
「……」
私達の間に暗く重い空気が流れた。
「提督、失礼します」
青葉が会議室に入ってきた。
「この映像をご覧ください」
青葉が四日前の正面ゲートにある監視カメラの映像をスクリーンに映し出した、其処には制御を失ったトラックがゲートにぶつかりその後大量の仮称ゾンビが警備兵に襲いかかる瞬間が映し出されていた。
「時間は深夜か…市街地の方が先に広まっていたのか」
私はある事に気が付いた。
「えっと、鎮守府は潜水艦娘と侵入してきた民間人の仮称ゾンビの両面攻撃によって……壊滅したと言えます、となると深海棲艦の作戦の一貫なのではないでしょうか」
私の言葉を静かに聞いていた提督が口を開いた。
「その可能性もあるな…しかし今はこの事態が何処まで拡散しているかだな……電気は使えるが、通信網は近距離無線以外は使えなくなっている、テレビも駄目だ……となると考えられるのは日本全土がこうなった可能性も考えれられる…勿論、この近隣地域だけと言う事も有り得るがな」
ここに来て陸自の隊員が意見を出した。
「提督宜しいでしょうか」
「構わないが」
「近隣の市町村へ偵察に向かいましょうか?」
「危険ではないのか?」
提督は新たな犠牲を出す可能性を考えていた。
「96式装輪装甲車をお貸し願えますか」
「成程、あれならNBC防護だかなら、良かろう…但し無茶はするなよ」
「了解しました」
その後は近隣の市町村偵察任務の詳細を決めていった。
「それならば先ず市役所のある此処からだな」
提督がとある市を最初の目的地に指定した。
「市役所なら広域放送設備ありますから、生存者への脱出経路を伝えられますね」
「では、明日より作戦開始とする」
提督が最後に締めた。