※この作品はR-18です。

仮面ライダーデイナ・レイトショー   作:黒井福

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どうも、黒井です。

大変長らくお待たせしました!去年の11月からやっと更新です!

お題は「仁に想いを寄せる希美が仁に一晩だけ抱かれる」というもの。ではどうぞ!


一夜だけの情け

 希美からのその提案は、彼らにとって寝耳に水であった。

 

「この戦いが終わったらさ、一晩で良いの。彼と一夜を共にさせて」

 

「「【…………はい?】」」

 

 切っ掛けは希美が十代半ばの少年少女、レックスとリリィを連れて傘木社から逃げ出したところまで遡る。

 

 傘木社の幹部に名を連ねていた希美は、デイナ達との戦いに敗北し死に掛けはするも何とか生き延び再改造手術を受け、最終的に仮面ライダーヘテロとなった。その結果幹部から実験動物、飼い犬と言う立場にまで身を落とすが、どん底の待遇の中で偶然にも同じ実験動物として扱われていたレックス・リリィの2人と出会い、接する内に会社に見切りをつけ逃亡。他の幹部や社長・雄成からの追撃を受け、瀕死の重傷を負いながらも何とか2人を連れて脱走する事に成功した。

 だが逃げ出したところで3人には行く当てがない。このまま野垂れ死ぬのを待つばかりかと言うところで、希美の脳裏に仁の顔が浮かんだ。

 

 希美にとって、仁は不思議な男性だった。気怠そうな雰囲気を身に纏っておきながら、内には折れない一本の強い芯と熱い情熱を持っている。その情熱により希美は何度も敗北を味合わされた。

 だが不思議とその敗北が不快ではなく、それどころか敗北を重ねる毎に彼の存在が彼女の中で大きくなっていた。それは偏に、憧れによるものであったのかもしれない。流されるままに幹部と言う立場に置かれ、やりたくもない戦いに放り出された自分と違い強い信念を持って戦う仁に対する憧れ。

 

 気付けば希美は満身創痍の体を引き摺る様にしてレックス・リリィと共に仁の居る大学へと辿り着いていた。

 ボロボロの希美と、希美に寄り添う2人の少年少女を仁は偶然見つけた。

 

「あ、アンタは…………?」

「ぁ…………」

 

 見るからに満身創痍な希美の姿に、訳が分からず唖然となる仁。対する希美は、仁の姿を見た瞬間一瞬目を見開くが次の瞬間には安堵の笑みを浮かべ意識を手放した。

 意識が闇に落ちる直前、希美は自分が仁に抱いていた憧れの正体に気付く。それは恋慕の感情だ。年下でありながら、強い信念を持ち真っ直ぐ進む仁に彼女は次第に惹かれていたのだ。

 

 仁への恋慕の感情を自覚しながら気絶した希美が、次に目覚めたのは大学の中に隠されたラボのソファーの上だった。

 

「ここ、は……?」

「「ノゾミッ!!」」

「え、リリィ? レックス?」

「目が覚めた?」

「ッ!?」

 

 希美が目覚めると、彼女を心配して傍に寄り添っていたリリィとレックスが目に涙を浮かべながら飛びついてくる。まだ覚醒したばかりで状況の理解が追い付いていない希美が頭にハテナマークを浮かべていると、2人の声に希美が起きたことに気付いた仁が顔を覗かせた。

 それまで何処かぼんやりとしていた希美だが、仁の顔を見た瞬間一気に意識が覚醒し抱き着いた2人を跳ね飛ばす勢いで起き上がった。

 

「うぉっ!?」

「わっ!?」

「あ、ゴメン2人とも。大丈夫?」

「大丈夫? ってのはこっちのセリフだよ。どこか痛むところは?」

 

 仁からの質問に、希美は視線を自分の体に巡らせた。見ると体のあちこちに包帯が巻かれ、逃げ出す際に負った負傷の手当てがされている。お陰でまだ痛みはするが、それでも意識を失う前に比べればずっと気分は良かった。

 

「まだ体の節々痛むけど、大丈夫そうよ。この分なら直ぐに良くなるかも……ありがとう」

「ん、気にしないで」

 

 希美からの感謝に、仁は特に興味もなさそうな様子で返した。度重なる傘木社との戦いの末に、人間の体を捨て新人類へと覚醒してしまったと言うのに初めて出会った時から変わらぬ彼の姿に、希美は自然と熱の籠った視線を向けていた。

 

「仁くん、あの人はどうですか?」

 

 そこに亜矢がやって来た。ひょっこりと顔だけ出して様子を見に来た亜矢に、仁は先程と違い感情を感じさせる目を向けた。

 

「うん、今目が覚めたところみたい。体に大きな異常は無さそうだよ」

「そうですか、良かったです」

 

 希美がとりあえず大事無さそうだという事に、亜矢も顔に安堵を浮かべる。それを見て仁の表情も柔らかくなるのだが、傍からそれを見ていた希美は胸が苦しくなるのを感じた。

 

 情報では知っていたが、仁と亜矢は付き合っている。恋仲として共に道を歩んでいる2人を見て、自分にはあの仁の優しい顔が向けられないのだと実感し空虚感に泣きそうになった。

 

 しかし希美が1人苦しんでいることに気付かず、仁は再び彼女の事を見ると改めて事情を訊ねた。

 

「それで? 何だってあんな所に? それもそんな子供2人を連れて、ボロボロになって……」

「ぁ、うん。実は――――」

 

 仁が目を向けると、希美は心を落ち着け感情を抑えると、事の経緯を説明した。

 

 これ以上この2人の少年達が傘木社の実験台になる様な事が無いように逃げ出す決意をした事。

 

 その際に幹部らの追撃を受け、2人を守りながら逃がす為ボロボロになってしまった事。

 

 瀕死になりながら逃げた先が偶々大学であった事等だ。

 

 一通り話を聞き、仁は顎に手を当てて考え込んだ。

 

「ふむ…………なるほどね。それで? あんた……志村さんはこれからどうする気?」

「どうする、て……」

「俺は正直、これを好機だと思ってる。曲がりなりにも傘木社の中心近くに居た志村さんなら、会社の情報とか色々持ってるでしょ?」

「勿論」

「なら、それで連中に攻勢を仕掛けるのもありかなって俺は思ってる」

 

 加えて言うなら、希美は敵対したとは言えその腕はよく理解している。彼女が味方として戦ってくれるのであればこれ以上心強いものは無いと言うのも今攻勢を考えた理由だった。

 どちらにせよ傘木社は自分達の情報が希美経由で流出する事を恐れ、希美の始末を考えるだろう。これから先、彼女は傘木社からお尋ね者になる。再び自由を失い、苦しい逃亡生活を送るくらいならこちらから打って出た方が合理的と言うのもあった。

 

 仁からの提案に、希美は少し考えチラリとリリィ、レックスの2人に目をやる。2人は希美を止める事も、促す事もしなかった。ただ静かに、彼女の決断を待っていた。

 その目からは希美に対する信頼が見て取れた。それを見て希美も決心がついた。

 

「うん、分かった。私も協力する。どの道会社を潰さない限り、この2人も危険なんだし」

 

 希美の答えに、室内に明るい空気が流れた。幾度となく敵として立ち塞がってきた彼女が味方になってくれるという事で、仁達の間に喜びが広がったのだ。

 

「やりましたね、仁くん!」

「ん。これで大分やり易くなった。教授、権藤さん達にも連絡を」

「分かっている」

 

 喜び勇んで傘木社への攻勢の算段を立てていく仁達。彼の隣には常に亜矢が寄り添って、仁も彼女が隣に居る事が当たり前の様になっている様子だった。

 

 そんな2人を見ていて、希美の胸がチクリと痛む。そして不意に、彼女の心に魔が差し今の状況を利用しようという考えが浮かんだ。

 

「その代わりと言っちゃなんだけど、一つ条件があるわ」

「何? あ、この2人の安全?」

「そこはアンタ達の事だもの。何も言わなくても保証してくれることは疑ってないわ」

「では、何を?」

 

 仁と亜矢は希美が何を交換条件に提示してくるのか分からず首を傾げた。そんな2人に、希美は今になってその条件を口にする事に緊張してきたのか口の中が渇くのを感じたが、生唾を一つ飲んで意を決して手を貸す事の交換条件を口にした。

 

「この戦いが終わったらさ、一晩で良いの。彼と一夜を共にさせて」

「「【…………はい?】」」

 

 まさかの条件に、仁と亜矢・真矢は言葉を失い、条件を口にした本人である希美は言った後で恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にして俯いた。

 希美の様子に、その言葉が冗談の類ではない事を察した亜矢は震える声で問い掛けた。

 

「えと、あの、志村さん? その、本気なん、ですか?」

 

 顔を引き攣らせながら亜矢が問い掛けると、希美は赤い顔で小さくコクリと頷いた。すると今度は真矢が表に出てきて、その要求の裏に隠された彼女の気持ちを確かめに掛かった。

 

「そんな事を要求してくる……って事は、あなた仁君の事を?」

「う……うん。私も、彼の事……好き、みたい……」

 

 改めて仁に好意を抱いている事を口にすると、場違いとは思いながらも胸に温かい何かが広がるのを感じずにはいられなかった。その感覚に希美はやはり自分は仁の事が好きなのだと確信した。

 

 だが当の仁はと言うと、その要求に対しあまり乗り気ではない様子を見せた。

 

「それは……ちょっとなぁ。俺、亜矢さんと真矢さんが好きだし……2人以外とは……」

 

 義理堅いと言うか貞操観念が思っていた以上に固い仁は、報酬扱いで一晩だけとは言え恋人以外の女性と肌を重ねる事に対して否定的な様子だった。それは彼が一途であり、亜矢と真矢を愛している証拠であるのだが、それを聞かされた希美の胸はズキリと痛んだ。

 

 やはり、所詮叶わぬ恋。今更声を上げても、彼からの愛は欠片も受ける事が出来ない。そんなのは分かっていた事だ。この要求だって、魔が差して口から出てしまっただけ。ダメもとで言ってみただけで、叶うなどとは期待していなかった。

 要求が受け入れられなかったとしても、彼らに手を貸す事は決めていたから何も問題は無い。

 

「分かったわ。今のは無し。冗談って事で流して。大丈夫、ちゃんと手は貸すから――――」

 

 痛む心を抑え、滲みそうになる涙を堪えつつ希美は要求の撤回と傘木社への攻撃には協力する事を約束しようとした。

 だがそれを亜矢が遮った。

 

「待ってください、志村さん」

「ッ、何?」

「幾つか、質問に答えてもらえますか?」

「い、いいけど……?」

 

 何やら真剣な様子の亜矢に、希美も自然と背筋を正した。聞く姿勢の整った彼女に、亜矢は静かに口を開く。

 

「最初にズバリ聞きますけど、志村さん……仁くんの事は何時から好きでしたか?」

「え? えと……病院の時から……かな」

 

 病院の時と言うと、峰の兄・健が入院している病院に傘木社が襲撃をかけた事件の事だろう。希美とは別の幹部の手により重症を負って長年昏睡状態だった健を始末するべく派遣された希美だったが、彼女は健を手に掛ける事が出来なかった。流されるままに従っている自分と違い、己の意思で会社に反旗を翻した健に希美はトドメを刺す勇気が出なかった。

 そうこうしている間に仁達に見つかり戦闘となってしまうが、仁が当時開発したBHエレキテルカートリッジの力に敗北。隠蔽装置が作動し焼け死ぬかと思ったその時、彼女は仁により半ば強引に隠蔽装置を体から引き抜かれて一命を取り留めたのだ。

 

 尤もかなり力技で抜き取られたため辛うじて、命を繋ぎ止めただけであり危険な状態である事に代わりは無かった。しかもその後、やって来た雄成により希美は会社に連れ戻され再改造。幹部クラスから実験動物に堕ち、恐竜ベクターカートリッジの実験に使われた挙句仮面ライダーヘテロにさせられ再び仁の前に立ちはだかる事になったのだが。

 

 敵対する事になってはしまったが、希美はその頃から仁に対して一定以上の好意は抱いていた。だがあの頃の彼女には選択肢が無かった為、仁と戦う以外に道が無かった。だから何度も立ち塞がって来たのだが…………

 

「そう……分かりました。……じゃあ次よ」

「う、うん……」

 

 その後も亜矢と真矢による希美への問い掛けはいくつか続いた。その様子は今までにない位真剣で、仁ですら横から声を掛けるのを躊躇う程であった。

 だが質問とそれに対する答えから察するに、亜矢と真矢は希美が仁の事をどれだけ愛しているか? 彼の事を本気で愛しているかなどを確認しているようだ。

 

 希美と幾つか質疑応答をした亜矢は、真矢と話し合っているのか暫し黙った。が、徐に小さな溜め息を吐くと笑みを浮かべた。

 

「……分かりました」

「えッ!?」

「亜矢さんッ!?」

 

 肩から力を抜いた亜矢の言葉と雰囲気に、希美だけでなく仁すらまさかと言う顔をする。特に仁の受けた衝撃は相当なモノであった。もし仮に仁と亜矢の立場が逆で、どこぞの誰かが一晩だけで良いから亜矢を抱かせてくれと言われたって絶対に許さない。どんな条件を提示されようと、自分以外の誰かが彼女と肌を重ねるなど我慢ならなかった。

 

「亜矢さん真矢さんッ! 俺は、2人以外となんて……」

 

 案の定仁は希美を抱く事を渋るが、それは想定していた亜矢が彼を宥めた。

 

「仁くん、落ち着いてください。私達は別に仁くんとの関係を軽いものと考えてる訳ではないんです」

「じゃあ何で?」

「彼女が、私達と同じだと思ったからです」

 

 希美は決して吊り橋効果で仁に惚れた訳ではない。彼女は彼女なりに、仁の人として、男としての魅力に惚れて愛したのだ。

 勿論それだけなのであれば、彼女も希美に仁を許すつもりはない。だが彼女は、仁と亜矢が既に結ばれている事を承知で、一晩だけの夢を見たくて仁と一晩だけ結ばれる事を希望したのだ。その後仁が亜矢と幸せに暮らすのを遠くから見守るだけの事になろうとも。己の愛が彼に受け止めてもらえなくとも、だ。

 

 仁に対する本物の愛、そして報われなくとも一晩だけ愛されればそれでいい。そんな健気とも言える彼女の想いに、同情すると同時にどこか通じるものを感じたのだ。そしてそんな彼女になら、一晩だけ仁を許しても良いと思えたし、また彼女も仁に愛されて欲しいと思った。

 

「だからお願いです。仁くんも、志村さんの事を一晩だけで良いので愛してあげてくれませんか?」

「ん~…………」

 

 亜矢からの懇願に、仁は渋い顔をして希美の事を見た。希美は仁に対し、不安を滲ませながらも熱の籠った目を向けている。その表情に仁も思わず唸らずにはいられない。罪悪感に苛まれたのもそうだが、何よりも熱が籠って潤んだ目で上目遣いに見られる、その魅力に当てられたのだ。亜矢と真矢しか眼中にない仁だったが、2人の言葉に希美を今までと違う目で見ると彼女の魅力に気付かされた。

 

 亜矢と真矢に比べれば切れ長で鋭い目。亜矢に比べれば控えめとは言え、それでも十分に自己主張した胸元。性格も普段はキツめだろうに、今は見た事もない位しおらしい。それらを落ち着いた眼で見れば、彼女の事もまた魅力的な女性に見えた。

 

 因みにそんな彼女の隣では、レックスが仁の事を睨み付けている。血は繋がっていなくても姉のように慕っている女性を、抱くか抱かないかで話しているのがどうにも面白くないらしい。

 

 そんな彼の目に気付かず、仁は大きな溜め息を吐くと頷いた。

 

「分かった……一晩だけね」

 

 仁が一晩希美を愛する事を決めると、希美が目尻に涙を浮かべながら嬉しそうな顔をした。その顔を見ると、彼女を愛するのも悪くないかと言う気になる。

 

 こうして傘木社との戦いが終わった後、仁は希美を一晩愛する事が決定するのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 そして数日後。

 

 希美の協力を得ての傘木社への攻撃は見事に成功した。攻撃するに当たって宗吾を説得し希美を戦力に加える際に一悶着あったが、それ以外は極めて順調に進んだ。それどころか、戦闘の過程で仁が新たな力・ニュージェネレーションフォームを会得するなど、これ以上ない程最高の結果を残した上での勝利であった。

 

 ただ傘木社を潰す事は出来たが、完璧ではなく雄成を始めとして残党が多く逃げてしまった。今はS.B.C.T.が行方を捜索している最中だ。

 

 で、仁が今何をしているかと言うと…………

 

「一応確認するけど、本当に良いんだね?」

「も、勿論……!」

 

 今、仁は希美と共に所謂ラブホテルと言う場所に来ていた。

 

 今回希美が仁に手を貸す条件、それは戦いが終わった後に仁が一晩希美の相手をする事。その報酬を支払う為、仁は希美と共に適当なラブホテルに来ていた。流石に自宅は亜矢・真矢との聖域であり、そこを心を許したとは言え彼女以外の女性と肌を重ねる為に使いたくはない。そう言う理由から仁はラブホテルへと足を運んでいた。

 

 そして2人は部屋に入ると、シャワーを浴びて互いにベッドの上でタオル1枚巻いた状態で向かい合っていた。

 

 向かい合っている2人の様子は対照的だった。

 

 仁はどちらかと言うと比較的落ち着いている。伊達に亜矢と何度もセックスを経験していない。亜矢以外の女性が相手であろうと、今更女性の裸を見た程度で取り乱すようなことはしない。

 

 問題は希美の方だ。彼女はこの歳になるまで恋の一つもしたことが無かった。恋すらした事が無いのに、初めて恋をした仁を相手にこうして今から体を重ね合わせようとしている。もう希美は緊張で心臓がバクバク言っていた。

 だが彼女自身はそれを極力表に出さないようにしている。理由は単純に、仁を相手に見栄を張りたいからだった。経験とかはともかく、単純な年齢は希美の方が年上だ。その年上としての意地を、ここで見せておきたかった。

 

 尤も仁は彼女の虚勢などとっくに見抜いているのだが。

 

「それじゃ……」

「ッ!?」

 

 仁は徐に希美の頬に手を添えると、彼女の唇をそっと奪った。唐突なキスに希美の肩がビクンと震えるが、ここで引いては負けだと仁の首に腕を回した。そしてまだ触れているだけの仁の唇に舌を捩じ込み、彼の口内に舌を這わせた。

 

「ん! ん、ふ……!」

「(ふぅん?)……れろ」

「んん!?」

 

 最初希美の方から舌を絡めてきた事に仁は少し驚いたが、よくよく観察すれば希美自身かなり無理をしているのが丸分かりだった。何しろ目を瞑って体をぴくぴく震わせながら、舌もおっかなびっくりと言った感じで動かしているのだ。

 

 どうやら希美は思っていた以上に初心な性格をしていたらしい。亜矢だって、初めての時はここまで手探りの様な動きは見せなかった。

 ただ手探り感はあるが、それでも何処かで仁に対しリードを取ろうと言う気持ちはあるのか積極性はあった。次第に自分から舌を絡め、唾液毎仁の舌を吸い上げようとしている。

 

 ともすれば健気に仁を求めようとしている希美に対し、経験豊富な仁は容赦しなかった。彼はキスに夢中になっている希美の隙を突く様に、彼女の胸元のタオルを取り去り剥き出しになった胸を揉み始めた。

 

「んむぅっ!? ん、むぅぅっ!」

「ん、んん。ふ、ん」

「むっ!? むぅぅっ!! んむむぅぅぅっ!?」

 

 突然胸を揉まれた事に驚き咄嗟に抵抗しようとする希美だったが、仁は片手で彼女の体を抱き寄せ密着させた状態で彼女の胸を弄んだ。亜矢に比べれば小さいかもしれないが、それでもしっかりと大きさを主張している乳房に指を沈め、硬く勃起した乳首を指先でコリコリと弄る。

 更には動揺して動きの鈍くなった希美の舌に逆に舌を絡め、自分の口の中に引っ張り弄んだ。胸と舌、両方を同時に弄ばれ希美は快感に体から力が抜けていく。

 

「ん……♡ んぁ、ふぁぁ♡」

 

 遂には快楽が上回ったのか、仁に全てを委ねるように抵抗を止めされるがままとなる。頃合いと見たのか、仁はキスを止め解放した彼女をベッドの上に横たえた。

 早くも骨抜きにされた希美は、くたっと脱力した体をベッドの上に投げ出し頬を上気させている。普段気の強い彼女がこんな無防備な姿を見せている事に、亜矢と言う相手が居ながら仁は不覚にも生唾を飲んでしまう。

 

(俺も男、か。ま、今回の事は報酬でもあるし)

 

 気を取り直した仁は、横たわった希美の上に覆い被さると右手を彼女の膣口に這わせた。既に十分濡れており、膣口からは愛液がとめどなく溢れだしている。

 それでも初めてだろう彼女の事を考え、彼は指で彼女の膣を開きほぐしてやる。

 

「んぁっ♡ はん♡ やぁぁ♡ そ、そこ、ダメぇぇ♡」

「駄目ならもう止めちゃう?」

「や♡ ちが、そうじゃなくて♡ わ、私、初めてだから、その……」

 

 言い淀む希美の口を、仁は一瞬唇で塞ぐ。その間に彼女の腰を抱え、こちらも勃起したペニスを彼女の膣口に触れさせた。熱く硬いペニスが膣口に触れた感触に、希美はビクリと肩を震わせる。

 

「ちゅ……それじゃ、そろそろ行くけど……大丈夫?」

「ん、うん♡ 来て……♡」

「それじゃ……」

 

 仁はお望み通り、希美の膣にゆっくりとペニスを挿し込んでいく。十分に濡れて解された筈だが、やはり初めてだからか圧力は強い。仁のペニスが膣内をかき分けて進む圧力に、希美は思わずベッドのシーツを掴み奥歯を噛みしめ痛みを堪えるように体を丸めた。

 

「う、く! き、つ……うぅ!」

「大丈夫?」

「へ、平気。これくらい、何てことないわ」

 

 亜矢の時に比べて強く堪えるような希美の姿に、ちょっと心配になった仁が訊ねるが希美は何てことは無いと返す。

 

 そのまま仁がペニスを進めていくと、先端が膜の様な物に触れるのを感じた。希美の処女膜だ。激しい戦闘や暴力に晒されてきた彼女なら自然と破れていてもおかしくは無かったが、驚異的再生力が処女膜すら再生させてしまったらしい。

 

 ペニスが処女膜に触れた瞬間、仁は一旦腰を止め希美の事を見た。希美の方も仁のペニスが処女膜に触れたのを感じたのか、その表情には期待と同時に不安が見え隠れしている。

 仁が見ると、希美も仁の事を見返してきた。そして彼女は無言で頷いた。それを見て仁は腰を更に進めた。

 

 仁が腰を進めると、希美の処女膜が破られる。ブチリという音が希美の脳天に届き、同時に鋭い痛みが全身を駆け巡った。

 

「んぎっ?! んんんんんんっ!?」

 

 処女膜が破られた瞬間、希美は赤子の様に背を丸め仁にしがみ付いた。仁は痛みに耐える希美を優しく抱きしめ、頭をそっと撫でる。

 

「ふっ! ふっ! も、もういいわ。大丈夫。だから、動いて……」

「本当に大丈夫?」

「いいから、動いて! 痛みには慣れてる。むしろ動いてくれた方が良いわ」

「それなら……」

 

 望み通りに仁は腰を動かした。最初はゆっくりと、だが希美の反応を見て次第に動きを早くしていく。

 

 接合部からは破弧の証の血が垂れ、ベッドのシーツを赤く汚すが希美にそれを気にしている余裕は無かった。

 

「んん! あ、は! うぁ! あん! はぁ!」

 

 仁のペニスが膣内を抉る度に、痛みが段々と引いて行き代わりに快楽が全身を駆け巡る。その感覚に先程痛みを耐えていた顔も再び蕩けていった。

 

「あ♡ あん♡ あは♡ はひ♡ これ、すご、いぃ♡」

「志村さん、もう痛くはない?」

「痛くない♡ むしろ、気持ちいい♡ 門守♡ もっと、もっとぉ♡」

 

 両腕で仁の首を、両足で仁の腰を掴んだ希美が口の端から涎を垂らしながら懇願する。初めての性的快楽に陶酔しているらしい。普段は絶対見せないような蕩けた顔に、仁は彼女の口の端から垂れている涎を舐め取りそのまま彼女の口を塞いだ。

 

「んむぅ♡ じゅるる♡ れろれろ♡ ん、ぷあ♡」

 

 キスをしながら、希美は一突きされる度に仁のペニスを膣肉で締め付けた。もっと快楽を求めるような締め付けに、希美だけでなく仁も快感に絶頂に達しようとしていた。

 

「志村さん、そろそろ出そうだけど……」

「出して♡ 私の膣内、射精してぇ♡ 私の中を、門守で満たして♡」

 

 希美の膣肉が仁のペニスを殊更にきつく締め付ける。その締め付けに仁も一気に絶頂に上り詰め、希美の子宮に向けて射精した。

 

「くぅっ!」

「んぃ♡ んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!♡」

 

 仁が膣内に射精し、熱く濃厚な精液が希美の子宮内を満たしていく。その熱と満たされる感触に希美も一気に絶頂したのか仁にしがみ付きながら体を仰け反らせる。

 

 絶頂の余韻で体をビクビクと震わせる希美を、仁は優しく撫でて宥めつつ息を整える。2人の間で希美の胸が潰され形を歪めるが、そんな事を気にしていられる余裕はない。今は絶頂と射精の余韻に浸っていたい。

 

 等と考えていると、唐突に希美が復活し仁を押し倒し上下を入れ替えた。

 

「うふふ♡ 今度は、私の番よ♡」

 

 騎乗位の体勢になると、仁の返答も聞かず希美は腰を上下に動かした。射精した直後だと言うのに未だ硬さを保つ仁のペニスが、希美が体を上下に動かす毎に彼女の膣内を抉っていく。その快楽に希美は体を上下に揺らしながら顔を蕩けさせた。

 

「あひ!♡ ひぅ!♡ こ、これ♡ これ好き♡ ねぇ門守……ううん、仁♡ 仁も、気持ちいい?♡」

「ん! あぁ、気持ちいよ、志村さん」

「んもぅ♡ そんな他人行儀止めてよ♡ 希美って、名前呼んで♡」

 

 初めてのセックスの快楽で精神的にかなりハイになっているのか、希美は互いに名前呼びをする事を求めてきた。或いはセックスの快楽に慣れてきた事で、己が年上であるという事を仁に刻みたいのかもしれない。何時までも彼にいいようにされていては年上としてのプライドに響くのだろう。

 それを表す様に、希美は仁からの返答を待たず彼の口を唇で塞ぎ口内を舌で蹂躙した。その間も腰を上下に動かし、彼を組み敷いて優位に立ち続けようとしていた。

 

 しかし今彼女が相手をしているのは、亜矢と真矢という1人で2人の女性を相手に何度も夜を共にしてきた経験豊富な男。セックス初心者で少し調子に乗った程度の女にされるがままでいるような弱い男ではなかった。

 

 仁は希美が腰を上下左右に動かし同時にキスに夢中になっている間に、彼女の腰を掴むと下に引っ張りながら同時に下から突き上げた。

 

「んぐぉぉぉっ!!♡♡」

 

 突如下から突き上げられる快感に希美は一瞬脳内で火花が散った感覚に陥り、思わずキスを止め体を仰け反らせる。そこに仁は再び下からペニスを突き刺す様に突き上げ、希美に強烈な快楽を叩き込んでやった。

 

「あひぃっ!♡ んな、あぁ♡」

「まだまだ動きが拙いね、”希美”」

 

 予想外の快楽に目を白黒させている希美の耳元に口を近付け、彼女の名をそっと呟く。すると希美は名を呼ばれた事に歓喜に体を震わせた。体だけでなく、心でも彼に近付けた。その感触に、それだけで絶頂しそうになる。

 

 そんな彼女の快楽に気付きもせず、仁はそのまま下から希美を突き上げた。その際、仁は予め確認しておいた希美のGスポットを集中して刺激する様に腰を動かす。

 

「はひぃぃぃっ!♡ んぎ♡ くひぃっ!♡ しょこ、しょこらめぇ♡ か、感じしゅぎるぅっ!♡」

「ここが良いんでしょ? ほらほら」

「いぎぃぃぃっ!!♡ らめぇ♡ わらし、おかひくなりゅぅ♡」

 

 下から仁に突きあげられ、子宮口までを刺激される快楽に希美は呂律の回らなくなった口調になりながら喘ぎ声を上げる。舌を突き出し、涎と涙を垂らしながら快楽に身を委ねつつ希美自身も体を上下に揺すった。それに合わせて仁が腰を突き上げてやれば、希美の胸が大きくブルンと揺れる。その光景に仁は両手を彼女の胸に伸ばし、揺れる胸を鷲掴み乳首に至るまで弄んだ。

 

「あぁぁぁぁっ!♡ 仁♡ 仁、しゅきぃ♡ だいしゅき♡ だからもっと、わらしの事、滅茶苦茶にして♡ 一杯にして♡ 私の中、仁で満たして♡」

「いいよ、ほら!」

 

 仁が下から突き上げるのと、希美の上から腰を落とすタイミングが重なり合う。その瞬間仁は希美の膣内に射精し、最初に射精した分も合わせて希美の膣内を仁の精液が満たしていく。

 精液が膣内と子宮を満たしていく快感に、希美も二度目の絶頂に達した。

 

「くはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! イックゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!♡♡」

 

 体を大きく仰け反らせて絶頂する希美。そのまま暫く固まっていた彼女だが、次の瞬間糸が切れたかのように倒れた。覆い被さる様に俯せに倒れた希美を、仁は優しく受け止める。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……♡」

 

 仁に二度も射精され、自身も大きく絶頂した希美の顔はこれ以上ない程満たされた顔をしていた。たった一夜とは言え、仁にこれだけ愛されればもう満足と言った様子だ。

 

 だが仁の方はそうではなかった。彼は体を起き上がらせ、希美の膣から一度ペニスを引き抜き彼女を俯せに寝かせると、彼女の腰を持ち上げ膣口に再びペニスをあてがった。

 

「……へ? あ、あの、仁?」

「……俺、まだ行けるんだよね」

「う、うん?」

「亜矢さんとも普段はこの倍はヤってるんだ。ここまで言えば、後は分かる?」

 

 つまりはこれから第3ラウンドが始まるぞという事。とは言え興味が無い相手とのセックスであれば仁も社交辞令的にさっさと終わらせるだろうから、ここまでやってくれるのは彼も希美に心を許した証拠であるのだが、希美にその事に気付く余裕はない。

 

「お、お手柔らかにお願いします」

 

 体に力は入らず、逃れる術はない。何より先に始めたのは自分の方だという事で、希美は全てを諦め、ただこの時間を少しでも楽しもうと仁を受け入れるのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 気付けば、窓の外が明るくなりつつある。だが仁は未だに希美の腰を掴み、愛液と精液でドロドロになった希美の膣内にペニスを抽送させていた。

 

「くっ!」

「あ、ひぃ……♡」

 

 何度目になるか分からない射精に、希美の体がピクリと震えた。もう喘ぐ体力も残っていない。

 

 射精を終えた仁は、漸く満足したのかゆっくりとペニスを引き抜き希美を解放した。精液で彼女のお腹はポッコリと膨れ、収まりきらなかった精液が2人の下で水溜りを作っている。

 

「も、らめぇ……も、やすませて……」

 

 脳の許容量を超えた快楽と限界まで体力を削られた事で、希美はうわ言の様に同じ言葉を繰り返していた。落ち着いた仁は、流石にやり過ぎたかとバツの悪そうな顔をしつつ彼女の隣に横になる。

 

 横になって暫くすると、希美の方も体力が回復したのか落ち着いた様子を見せた。

 

「はぁ……はぁ……ありがと、仁」

「ん、満足してくれた?」

「うん……」

 

 希美が横になりながら仁に感謝した。最後は少し一方的だったが、それでもこれだけ愛してもらえればもう悔いは無い。別にこれから死にに行く訳ではないのだが、これだけ愛してもらえれば仁が亜矢と結婚しても少し胸が痛くなるだけで済む。自分の失恋を受け入れられた。

 

「そっか……ごめんね」

 

 仁は希美に一言謝り、頬にそっとキスをした。こうして肌を重ねて、彼女の内面を直に見て、彼女にも魅力がある事を仁は理解した。もしかすると、亜矢と出会う事がなければ彼女と付き合っていたかもしれないと言う気すらしてくる。

 とは言え、仁が心に決めた人物は亜矢1人のみ。そこを曲げるつもりは毛頭なかったので、このたらればの話は不毛以外の何物でもない。

 希美もそこは分かっているので、この一夜を大切な思い出にして仁の事はすっぱり諦めようと心に誓った。

 

 誓った…………のだが…………

 

「さ♡ 仁くん♡」

「え、えと……♡」

「あ~……」

 

 傘木社との戦いが終わった後も、仁は亜矢だけでなく希美とも肌を重ね合わせていた。

 

 亜矢は希美の事を受け入れ、共に仁を愛する事を決めた。最初その事を聞かされた時希美は大いに面食らったが、愛人と言う形であっても仁を愛し愛される事が出来るのならばとそれを受け入れ、時に彼女1人で、時には亜矢と共に仁に愛される日々を送る事となった。

 

 そうして仁に愛されていた希美に、ある変化が起こる。

 

 仁と亜矢の間に双子の赤ん坊が生まれ、亜矢が暫く仁の相手が出来ないからと希美が1人で仁の性欲を受け止めて数週間後。

 

 なんと希美も仁との間に子供を妊娠した。しかもこちらも男女の双子だ。

 かくして希美の家族は増え、リリィとレックスにも弟妹が出来るのであった。




読んでいただきありがとうございました。

いやぁ、今回はなかなかに難産でした。何せ仁は一途な男なので、どうやって希美を抱かせることを納得させるかでなかなかに難航しまして。
おかげで構成がなかなか決まらずここまで時間が掛かってしまいました。改めてお待たせして申し訳ありません。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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