題して ハーレムソードオラトリア です。
メインヒロインはリヴェリア。
今回の話は二人目のヒロインであるアリシアさんの最終話になります。
※性別反転有、R18
父、母、長女、次女。
庭の円形テーブルを四人で囲んで座り、一家は思い出話に花を咲かせていた。
懐かしそうにゆっくりと話す父。
父が話せば話すほど恥ずかさで顔を赤くする母。
真っ赤な母の可愛い様に笑みが抑えられない姉妹。
姉妹にとってのご褒美タイムは父を交えて第二ラウンドに移っていた。
「お母様がそうして夜伽役になったのはわかりました」
「お母様ったらやはりずいぶんと積極的ですわね?」
「本当にそうですわ。リヴェリア様がおられるのによくもまぁ……」
「う~~~っ」
「二人とも、あんまりお母さんを困らせちゃだめだよ」
「「はーい」」
めっ、と窘める父に二つ返事で頷きながらも姉妹の顔には笑みが張り付いたままだ。
この二人の表情にアリシアは見おぼえがあった。
──おおー! 元気ええなぁ、うちが案内したる! あぁ、もう、ほんま可愛ええなぁ。
姉妹が幼い頃によくなついていたロキの笑みにそっくりだった。
親たちが忙しさで目が回りそうだった当時、子供の世話をかってでいたロキは姉妹も含めた子供たちを連れてよく遊んでいた。
親たちからは眉をひそめられるロキのあらゆる言動も子供たちには大人気であり、その頃の影響をうけてか時折子供たちからロキの雰囲気を感じ取る。
このことはリヴェリアや他の母親にとっても小さな悩みになっていた。
まさかロキに似るとは。
父に似るか、自分に似るか。
どちらかといえば子どもたちは母親似なのだがどの子にも共通してロキの影があった。
「それでお父様。お母様との初夜のほうは……」
「おいつ頃に……」
そんなロキを感じさせる笑みを浮かべた娘たちの問いに答える前に、アイズは隣のアリシアをなだめるように撫でてから肩を抱きよせた。アリシアはいい加減羞恥のあまり倒れるか怒りだす手前だった。
「アリシア、話して平気?」
「平気じゃありません。ですが……約束ですから。構いませんよ」
「ん。じゃあ私から話すよ」
寄り添い合う両親の姿がたまらなく愛おしくて姉妹はテーブルの下で握り拳をぶんぶんと振っていた。
そんな娘たちの期待を感じつつもアイズはアリシアとの初夜を思い返した。
「あれは……私が十五歳になった頃で──」
リヴェリアへの二度目の告白が大失敗に終わってからそれほど日が経っていない頃だった。
◇◆◇
アリシアがアイズの夜伽役になってからそれなりの月日が経った。
それなりの月日の間にもオラリオを代表するファミリアの一員であるアリシアの周囲には月日に見合わない大きな出来事がそれなりにあった。
それは悲報であったり、驚異的なものであったり、どうしようもなくため息をつかせるものであったりしたのだが、とりわけ周囲をにぎわせたのは喜びが大きい出来事である。
それはアイズ・ヴァレンシュタインがとうとうLv.5に到達したことである。
アリシアをはじめとしたファミリアの先輩をあっという間に抜き去り、もう前にはフィンとガレス、そしてリヴェリアしかいない。
アイズは追いつきたい、隣に並びたい背中に向かって一直線だった。
(日に日に立派になっていく……ヒューマンの成長は早いと聞きますが、それでも驚かされます)
背を向けて立っているアイズを見つめながらアリシアはあっという間に子供から大人になっていくその背中に少しだけ寂しさを覚えていた。
まだ子供のまま、自分の手から離れなければいいのにと少し思ってしまった。
二人がいるのはアリシアの部屋だ。今宵は二人にとって約束の日である。
十五歳を迎えたら夜伽役としての本分を。
一緒にダンジョンで水練を行った際に交わした約束である。
昨日アイズの十五歳をファミリア全体で派手に祝ったこともあり一日開いた今宵、とうとう二人は肌を重ねるために一晩を共にしようとしていた。
アリシアはエルフらしく肌の露出が控えめな寝巻を丁寧に脱いでいく。
はじめはアイズに脱がせてもらおうかとも思ったのだが、脱がされる恥ずかしさに耐えられそうになかったので脱ぐまで背中を向いてもらっていた。
「アイズ、もう……こちらをむいてもいいですよ」
アリシアは覚悟を決めてアイズを呼んだ。
アイズが振り返るとそこには耳のさきまで赤くしたアリシアが毛布を抱き寄せてその身を隠している。その横に綺麗に畳まれている着衣が置かれているのが見えた。
「……アリシア、もう、いいの?」
「いい、ですが……お、襲うようにするのはいけませんよ? リヴェリア様だと思って! 優しくしてくださいっ」
ゆっくり近寄ってくるアイズの姿がいつもより大きく見えた。
射精管理を始めた頃よりも頭一つ以上伸びた背はもうじきアリシアに並ぶだろうが、まだ低いはずなのにアリシアにはよりも大きい存在に見えた。
「リヴェリアと思ってするのは、できないよ。アリシアはアリシアだよ。大切に、優しくする」
「……おねがい、しますね」
「ん。めくるよ?」
「ど、どうぞっ」
ゆっくりと押し倒され、寝台に寝かされると身体を覆っていた毛布が剥ぎ落された。
隠されていたその豊かで柔らかなボディーラインが露わになるとアイズが喉を鳴らした。
再度アリシアを強烈な恥ずかしさが襲った。
アイズの様子は獲物を前にした雄そのものだった。
「っ……あ、あ、よ、よくみて、くださいね」
あんまりみないで、と言いかけるのを止めて、アリシアはぎゅっと力を込めて覆い隠そうとする自分の手足を引きとめた。
自分はあくまで夜伽役である。アイズが女体を知るために余すところなく見てもらわねばならない。
(私は、夜伽役……! だから、こうしてるのですからっ)
そう自分に言い聞かせてアリシアは恥ずかしさでくらくらしつつも自分から身体を隠すことはしなかった。
「うん。よく、みせて」
そんなアリシアをアイズは遠慮のない雄の眼差しで眺めていた。
首筋、胸、その頂、そして臍へと視線が移り、艶やかな一本の縦筋で目がとまった。
「っ~~~~!」
雄の視線は確認しなくても何処を見ているかよく分かった。
触れられてもいないのに見られている場所に熱がこもるようだった。
「ここ、毛は……エルフは生えないの?」
アイズが縦筋を指でなぞりつつ、何も生えていないその様に首をかしげている。
初めて他人に秘口を触られてビクつきつつもアリシアは何とか悲鳴ではなく言葉を口にした。
「べつに、生えないというわけでは、ありません。……綺麗に処理をしているだけ、です。同族であれば皆、同じはずですよっ。リヴェリア様だって、そのはずで!」
「そう、なんだ」
「そ、そのはず、です」
少なくても故郷や一族の女性はみな綺麗に処理していたので、自分がおかしいわけではない。
そんな焦り交じりの訴えが届いたようでアイズは納得したように頷いた。
「アリシア、準備、してもいい?」
「準備、ですか?」
「ん。このまま挿れたら、きっと痛いと思うから。ほぐしたほうがいい」
前戯のことだと理解してアリシアはこわごわと頷いた。
知識としてソレが必要なことは理解していたし、自分はソレをアイズに学ばせるためにこうしているのだと分かってもいた。
(でもっ、恥ずかしすぎます……!)
頷いた後は目をつむってしまう。とても見ていられない。
きゅっと目を閉じていると秘口に温かくも滑らかな感触が伝わってきてアリシアは悲鳴を上げた。
「ひゃぁ!?」
驚きのまま目を向けられなかったソレを確認するとアイズが縦筋を舐めていた。
悲鳴を上げた自分をみて動きを止めたアイズと目が合う。
「ごめん。驚かせちゃった」
「おどろ、かせ、というか、その、あの、あの、えっと」
ソレはそうやってするものなのですか?
自分では指で軽くする程度しかしたことがないアリシアは前戯のやり方について詳しく知っているわけではない。一応、アイズの夜伽役になると決めてからは性知識についても学びなおしたつもりだったが、他人に知られるわけにもいかず、書庫には特別詳しい本があるわけでもなかったのでたいして知識が増えたわけではなかったのだ。
「続けて、いい?」
なのですることが当たり前のように言われれば首を縦に振るしかない。
アリシアは頷いて、今度は興味が勝り目を開いてアイズの愛撫を眺めた。
れろ、ちゅぅ、ぺろ。
優しさが伝わってくるような控えめな舐め方、吸い方でアイズの舌が秘口に入り込んでくる。
時折、上の豆をより優しく吸ってくる。
アリシアはその様を目で見て、肌で感じて、もどかしいような小さな痺れとともに初めて人に与えられる快感を知った。
「んっ……んぅっ」
気持ちいい。
それが嘘偽りない感想だった。
自分でするのとは明らかに違った。
アイズが一舐めするたびにぞくぞくするような波が押し寄せ、一吸いするたびに痺れるような衝撃が襲った。
(きもち、いい。アイズも、こんなふうに、感じていたので、しょうか……?)
優しい愛撫に瞳を蕩かしながらアリシアは自分が口でしている間、アイズが同じように感じていたのだろうかとふと思った。そうであってほしかった。
(こんなに、気持ちよくて、幸せな感、か、くっ。なら、きっとアイズも、私を……?)
私を、好いてくれてるはず──?
そんなふうに考えた自分に気が付き、思考が途切れる。その考えは直視してはいけないものだった。
アリシアはアイズが自分を求めることを、自分を好いてくれることを期待していた。
期待している自分がいることに気がついていた。
だが、それを認めてしまえば、自分の行いを許せなくなるとも知っていた。
だから、気がついていてもその想いを認めることはしなかった。
(私は、リヴェリア様のためっ、アイズ、のっ、ために、夜伽役をしているのであって──)
アイズと愛しあいたいわけでは、ないのだ。
そう言い聞かせて否定しないといけないほどに、アリシアの恋心は大きく実っていたのだ。
「あいず……きもち、いい……」
「じゅるぅ。……ん、っく。ん……うん、伝わってるよ。アリシア」
ぴゅぅっと押し寄せてきた妖蜜を吸い、口元をぬらしながらアイズが顔をあげる。
そしてゆっくりとズボンを脱いで床に落とした。
そうして当然だとアリシアが驚かないほどにでき上がった空気が二人を包んでいた。
「わ、ぁ……」
おっきい。
見なれたはずの肉棒なのにやけに大きくて立派に見えた。
胎の奥がキュンと疼いた気がして、アリシアは小さく身じろぎした。
準備ができた。
お互いにその時が来たと分かった。
アリシアは自然と手を伸ばしてアイズを求めた。
「抱いて、ください。旦那様」
ぷちっという破瓜の小さな音までは二人とも聞きとる余裕がなかった。
◇◆◇
アリシアは一人、外の騒ぎから離れ、暗い部屋の中で初めての夜を思い出していた。
お腹をなで、あの時の痛み、あの時の疼き、あの時の快感、そしてなによりあの時の幸せを思い返した。
(ああ……それも、もう終るのですね)
想えば想うほどそれを失うのだという寂しさと切なさがこみあげてくる。
今日はアイズがリヴェリアに三度目の告白を、最後の告白をしに行く夜だった。
初夜から今日までの間、アリシアは夜伽役としてアイズと夜を共にする幸せを味わってきた。
初じめての頃では考えられないほどに夜の営みに慣れ親しみ、快感を受けいれ、与え、お互いに愛し合うような夜を過ごしてきた。
だが、それも今日までであった。
Lv.6になったアイズが──リヴェリアに追いついたアイズがとうとう答えをもらいに行くのだ。
アリシアには返事がイエスだと分かっていた。
アイズのリヴェリアへの愛はリヴェリアにその言葉を引き出せるほどのものだと分かってしまうのだ。
だから、今夜が最後。
(最後の……機会)
自分に素直になる、最後の機会だ。
十三歳の子供だったアイズのオイタを咎めてから今日までの三年と少しの間。
アイズに感じてしまった恋心。
想ってはいけないソレは失おうとしている今、とても目が離せるものではなかった。
夜が更ける。
外の騒ぎが鎮まり、ホームの中が静まっていく。
もうじき、アイズがやってくる。
この三年間性処理のためという名目で逢瀬を重ねてきた。
夜にアイズがやってくるのはそのためだった。
でも今夜は違う。リヴェリアの部屋に行くための入り口としてこの部屋にやってくる。
その手引きは夜伽役としての最後の役割に相応しい。
だが、だが、だが──。
「アイズ……この部屋を出たければ、私を、抱いてください」
やってきたアイズの前に立ち、肌蹴た装いを晒して、アリシアは恋する乙女として抗った。
◇◆◇
やがて寝台が軋む音と乱れた吐息だけがお互いの耳に届いた。
だが乱れた吐息を洩らしているのはアリシアのほうだけだった。
こと我慢することにかけてはアイズのほうがアリシアよりもよっぽど得意だったのだ。
アリシアは抑えられない昂ぶりと快感が達してはじけようとするのを必死に我慢するので精一杯になっていた。
──「先に達した方が、お願を、きく」
そう約束して二人は交わっていた。
そうしないとアリシアはアイズを行かせるつもりはなかった。
最後に自分を選んでほしかった。
もう一度、そのつもりで自分を味わってほしかった。
そうすれば気持ちが揺らいでくれるかもしれないと期待した。
「っつうっ、うっ、あ、あ、っんッ!」
アイズの肩に手をかけてしがみついて、アリシアは我慢する。耐える。
しかし、もうこの時点で先に果てるのが自分だと分かってしまう。
快感を与え責める側に回れていない以上、自分がアイズを先にイカせるのは難しいと経験から察してしまう。
自分が上になって一方的に動けるのであればアリシアは先にアイズをイカせれる自信もあった。
いつもはそうして交互に受け攻めを交えて夜を過ごしてきた。
だが、今夜、アイズは絶対にアリシアに主導権を渡さなかった。
「あ、ぁ、ぁ、ぁっ、あっ」
やっぱり、勝ち目なんてなかった──。
なんてみっともないことをしたんだとアリシアはもうじき終ってしまう最後の営みの最中、惨めな思いでいっぱいだった。
アイズはアリシアの想いを受けても、小揺るぎもしなかった。
必要なら分からせるとばかりに、一方的な交わりをするほどに相手にしていなかった。
アイズの好きな人は、振り向いて欲しい人は、ただ一人だけなのだ。
それがわかっていたのに、最後の最後で、自分の気持ちに蓋をしきれなかった。抗ってしまった。
(みっともないみっともないッ! こん、な、こんなぁっ)
こんなみっともない終わり方、情けない。
女としても夜伽役としても失格だと涙を流して、アリシアはその身体を震わせた。
「ッぅっ~~~~ッ♡」
我慢の限界に達した震えがアリシアを痙攣させるように何度もビクつかせる。
だが、痺れるような蠢きに貪られても、アイズの種が放たれることはなく、へばりつく雌の頬張りを引き剥がして、交わりは終わった。
「ひっぐ、うぐ、ひぅ」
「アリシア……」
「ごめ、んなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……っ」
アリシアは泣いて謝った。
申し訳ない思いでいっぱいだった。
情けない気持ちで惨めだった。
「私は……夜伽役にも、女としてもぉ、なさけないっ。アイズ、ごめん、なさいっ」
あなたを裏切るようなことをしてごめんなさい。
アリシアはアイズの胸で謝り続けた。
そんなアリシアを抱き寄せてアイズは寝台の上に座った。
もう背丈が変わらない二人はしっかりとお互いを見つめ合った。
それは二人が一番好きな姿勢だった。
「……アリシア、好きだよ。私、アリシアのこと、好きだ」
「あいず……」
アイズは心からの本心を告げる。
大好きだった。愛していた。アイズもアリシアのことが好きだった。
手放したくない大切な恋人だった。
「でも、ごめん。リヴェリアのことはもっと好き」
だが、リヴェリアへの想いがぶれることはなかった。
それが答えだった。
「……しっています」
「大好きだよ。アリシア」
「嬉しい。けど、寂しい。初めてです。こんな……気持ち」
「アリシア……」
「あなたは私にたくさんのはじめてを、くれました。……ありがとう。アイズ」
「私こそ……ありがとう。アリシア。……行かせてほしい。リヴェリアのところへ」
「……いってらっしゃい。アイズ」
言葉を交わし終ると自然と唇が重なり合い、二人の影がぴったりと一つの影になった。
最後の口付けは涙の味がした。
アリシアはこの味を、この感触を、この想いを胸にしまって大切にしようと決めてアイズから離れた。
こうして夜伽役として寄り添った二人の関係は終わったのである。
◇◆◇
話を聞き終わった姉妹は何とも言えない表情になった。
もちろんこれで終わっては自分たちが産まれてくることもなかったのでハッピーエンドへと続くことになるのだろうが……聞いた話では目の前でラブラブな様子をみせる両親が悲恋に終わったかのようではないか。
結果的に幸せならそれでいいとはいえ話の〆がコレではいただけない。
姉妹は揃って続きを促した。
「「それで?」」
一瞬お互いに視線で意思交換し。
「そのあとは」
「どうなったのですか?」
姉妹は握りこぶしををテーブルの上にのせて催促する。
すると続きをせがまれたアイズが少し目線をそらした。
そのあからさまな話したくないことがある様子に姉妹の視線はアイズからアリシアへと移った。
「そのあとは……アイズ? 話してもいいのですか?」
するとなんと立場が逆転している。
初夜の様子の話ではアイズの肩に顔をうずめて恥ずかしがったアリシアが今度は余裕をもって……というよりも冷やかな笑みを浮かべているのだ。
「ぅ……うん。いい、けど」
頷くアイズはあの時の心底追い詰められた記憶が蘇ってきて思わず頭を押さえた。
そこにたんこぶがある気がした。
◇◆◇
「というわけなのです。……リヴェリア様っ。アイズは決して、けっして! 二心に揺れたわけではありません! 咎められるとすればそれは子供だったアイズを正しい方法で導けなかった私にありますっ」
早朝、眠れない夜を過ごしていたアリシアは朝一番に様子を窺いに行き、そこで何が起きているのか察知して扉を叩いていた。
アイズを見送ってから一人で過ごす夜を寂しく思っていた時に、再びアイズが訪れた時は「もしや私を選んで……?」という気持ちが一瞬芽生えたが、担がれたレフィーヤを見て芽生えと同じ速度で萎えていた。
「今度戻ってきたらもう返しませんよ! 早くいきなさい!」
「ご、ごめん」
「にゅぁ~~~?」
目を回して気を失っているレフィーヤを寝かしつつアイズにちょっと怒って見送っていた。
その後、アイズが夜中戻ってくることはなく「うまくいったのですね……おめでとう。アイズ」と涙ながらに祝福していたのだが……。
「まさかこのような誤解を招く結果になっていようとは……誠に申し訳ありませんっ」
リヴェリアがあまりにも上達していたアイズの営みに浮気を疑ってゲンコツを何度も落していた。
既に大きすぎるたんこぶが三段の塔になって痛々しい姿を晒している。
アリシアは自分のせいで二人の間に溝を作るわけにはいかないっと平謝りしていた。
「……事情はわかった」
着衣を整えていたリヴェリアが痛みを堪えて座りつつ、静かに目を空けた。
事情を説明させて下さいと頭を下げたアリシアの話を黙って聞いていたリヴェリアは何処か落ちついた様子であった。
「アリシア。お前が回した気づかいはありがたく頂戴してしまったあとだ。文句は言わない。実際痛みよりも、快感が勝った。お前が夜伽役を務めていなければもっと酷い結果に終わっていたかもしれない」
「リヴェリア様……」
「だが、私の夫になろうという男に手を出したのだ。アリシア、覚悟はできているな」
「は、はいっ。どのような罰でもお受けいたします!」
より深く跪き頭を下げるその様は首を捧げた罪人のようであったし、実際アリシアはリヴェリアに死ねと言われれば死ぬつもりであった。
目をまわしていたアイズがよろよろとリヴェリアを止めようとするが再度のゲンコツで床に倒れ落ちる。四段目のたんこぶタワーが増築されて頭をあげられなかった。
「アリシア・フォレストライト。お前には責任を取って……私の従者になってもらう。アイズとの夜伽役も、私ができぬうちは認めよう」
「……は? リヴェリア様の従者に、わた、わたしが……?」
リヴェリアの従者になるというのは余りにも光栄で名誉なことである。
とてもそれは罰ではない。
まして夜伽役もまかせるというのはどういうことなのか。
「私の従者では不服か?」
「め、滅相もありません! ですが、リヴェリア様……お許し、くださるのですか?」
自分とアイズの関係を、許してくれるのか。
そんなことはありえないと思っていたアリシアは信じられない思いで頷くリヴェリアを見つめていた。
「許すも何も……私よりも先に関係を結んでいたお前たちの間柄を認めないわけにはいかない。私は浮ついた男に身を許したわけではない。お前とアイズは心から通じ合っている。身体だけの関係ではないならば……男には責任を取らせる。それが当然だ。むしろ、アリシア。お前は私を許してくれるか? お前よりもあとからアイズと結ばれた、この私を」
「あ、当たり前です。リヴェリア様。私は、アイズの恋心を応援していました。リヴァリア様への愛が花を咲かせるのを願っていました。……私がアイズに恋してしまったのは本心ですが、お二人が結ばれればいいと思っているのも本心なのですっ」
「そうか……であれば。アリシア。今日からお前は私の従者だ。そして……同じ男を愛し、同じ男に愛される者だ。改めてよろしく頼む」
「リヴェリア様……誠に、ありがとうございます。……よろしくお願いいたします」
頭を垂れるアリシアはリヴェリアの手を取って立ちあがった。
望外の望外。
望むことすらなかった最も望ましい結末にアリシアは夢でないかと疑うほどであった。
だが、そんな感激の面持ちであるアリシアとは裏腹に、全ての話をきいたリヴェリアは冷めた表情をアイズに向けていた。
「で? アイズ。……他に話すことはあるか?」
「……? リヴェリア様?」
アリシアはリヴェリアの言葉の意味が分からず、何を疑っているのか理解できなかった。
何と言っても既に全て話し終えている。
アイズがリヴェリアに不貞を疑われることなどもうなにもないはずだ。
「…………ぁの、えっと」
だが、アイズの反応は違った。
たんこぶタワーの下で汗を滲ませて小さく震えて言葉が出ない。
「アイズ……? どう、したのですか?」
「アリシア。どうしたもこうしたもない。……この男、まだ他に相手がいる」
びくうっ!
アイズがびっくりするほど素直な反応を見せる。
それが全てを現しているのだが、アリシアには理解が追いつかない。
自分以外に誰か相手がいる??
「はい? え? え?? あ、アイズ? そんなことは……」
「ご、ごめんなさいっ」
「アイズ―――!?」
縮こまるその様子はオイタしたのを咎めたあの時とそっくりであった。
◇◆◇
「まぁ、あの頃の話を?」
「うん。あの子たち、すこし納得したような……軽蔑したような目で見てた」
「よしよし。……旦那様。あの子たちは旦那様のことが大好きですから。きっとふりだけでございます」
アリシアとの馴れ初め話から、リヴェリアに激怒された話をするに至り少々落ち込んだアイズはその三人目の──関係をもった順で言えば最初の相手の膝に頭を乗せながら、娘たちのどこか軽蔑した眼差しを思い返しては気を落していた。
どうやら娘たちはアリシアが自分の最初の相手だと思っていたらしい。
アイズはそうなる前にそうなった目の前の相手を見上げる。
アリシアが初めての相手になる前に、こうなったのは、男仲間のせいでもあるかもしれないが……。
「君がそれくらい可愛かったからだと思う。──春姫」
手を伸ばして頬をなでるとくすぐったそうに微笑む狐人の妻こそアイズの初めての相手であった。
剣騎アイズ・ヴァレンシュタインの内妻 終わり 続く
お読みくださりありがとうございます。
今回でアリシアさん編は終わりました。
リヴェリアもアリシアさんも二週目というかおもいついた小話がいくつでもあるので、今後書く機会はあると思いますが、とりあえず想定しているヒロインを一週させようかなと思っています。
というわけで次回からは剣騎の初めての相手、春姫編です。
春姫こそ最大のエロ狐(語弊がある)なのでいい感じで書けると期待しています。
よろしければご感想などいただけましたら幸いです。