剣閃が空を裂く。
道中を遮る存在すべてを引き裂きながら標的と定めた相手に向かって刃がとぶ。
その時間は瞬く間もない一瞬のこと。
息を吸って吐くまでの時間も要さない。
ソレは本物だった。
本物の殺意に満ちた刃だった。
(訓練──!)
ベル・クラネルはソレを目で捉えながら師匠に抗議するように目を見開いた。
訓練で繰り出すにはとてもじゃないがやりすぎだろうと。
そんな抗議の視線が自分に向けられたのを理解してもベルの師匠である【剣騎】の刃は止まらない。止めるつもりも手を抜くつもりもない。
(死ねぇぇぇえ!!)
もとより訓練の最中に痛い目を見させてやろうという思惑をもってこの場に立つつもりではいたが【剣騎】の怒りを殺意にまで沸騰させたのは大切な娘を訓練相手が泣かせたのを直前に知ったからだ。
──姉さん、大泣きしておられました。
長男から伝えられたその理由をきいて怒りが剣に宿った。
泣かせるなとあれほど伝えていたはずだった。
幸せにしろと伝えていたのだ。
なのに義理の息子はそれに背こうとした。
(死ぬなら! ここで! 私に斬られて死ね!)
殺す。
ダンジョンでモンスターに喰われて死ぬ。
そんな亡骸すら残さない死にざまを晒すつもりならここで殺す。
六日もダンジョンをさまよって生還して見せた義理の息子を褒めるつもりなど毛頭ない。
手足は虫食いの有様で引きちぎれる寸前だったそうな。
這いつくばりながらマフラーにしみ込んだポーションを啜って生きつないで見せたそうな。
家族のもとへ、妻のもとへとの気持ちで這い戻ってきた。
だが、そのことだって褒めるつもりはない。それが当たり前だ。
(二度とあの子を泣かせるような真似をするな──!)
【剣騎】の剣が怒りの色をのせて義理の息子を殺しにかかる。
怒りをみせつけるように奔るその剣閃はあからさまで──ゆえに御しやすい。
「ぐぁぁぁぁぁああ!?」
「と、父さん! やりす──!」
父親たちと違って反応が一つも二つも遅い息子たちの声が響き渡る。
【剣騎】の刃にこもった殺意に気が付いた息子の慌てた反応が、驚きで止まる。
本気の殺意で振られた迷宮都市最強の剣に、ベルの息子は耐えていた。
「いたた──、ちょ、お義父さん!? う、うでが吹き飛ぶ寸前! 寸前ですよ!?」
「……兄上様。アレをもらって死んでいないのですか!?」
「死んでないわーーい! せっかく生きて戻ったのに死ねるか! ギリギリくっついてる! て、いたいあいあああああ!!?」
「うわぁ!? 骨までいってるじゃないですか!?」
「私の愛刀ごと骨までいってるよぉ!? は、はやくポーションを、回復をぉぉぉ!」
アイズは大慌ててで傷の対処にあたる息子たちに無言でバックパックを投げ渡す。
長男が詠唱にはいる。その回復魔法とポーションがあればたとえ千切れ飛んでいても治りはするだろう。
背を向けて少し距離をとれば後ろからベルが昔のように、控えめについてきてくれた。
「アイズさん、ちょっとだけ、やりすぎじゃないですか?」
「ベルには──そうみえる?」
あんな殺気のこもった刃は訓練にしてはやりすぎだ。
双方の妻たちに見られたら間違いなく激怒される。
だが言ってしまえば、ただの殺気の籠った刃でしかない。
「僕には──あれくらいでちょうどいいとは、思いますけど」
この点に関しては少々感覚がズレているベルは少し考えて、あれくらいならいいだろうと思ってしまう。
二人してすでに英雄の頂点の領域に位置する男たちである。
あのアイズの刃には殺気も力もあったが、何一つ技がなかった。
初動を隠すこともなければ、大振り極まりない予想が容易な太刀筋。
ベルとしてはあれくらいならどうにかしないといけないな、と思えるほどに息子への期待があった。
「なら、いいじゃない」
「あはは……あの子たちの受け止め方は違うというか」
「あの子たちは現役なんだから……怖さも酷さも受け止めてもらう」
父親たちは振り返り息子たちを眺めた。
腕がついててよかったと喜ぶその姿は幼い頃のままのようなのに、【剣騎】の刃で死ななかったのだから幼い頃のままではない。
もう立派な冒険者だった。
「私の怒りでも死ななかったんだから──モンスターに殺されるなんて、ありえない」
そう思うことでこの件はもうおしまいだとアイズはベルに片目を閉じて見せた。
15分で書き
5分で整えて
実質20分ほどでこのでき……下手くそすぎる。
義理の息子は超強いけど、父親似女誑しなので【剣騎】さんは容赦がない。
今回フォント機能を使ってみたのですがどうでしょうか?
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いいね。
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よくない。