1日目:初
2日目:犯
3日目:躾
4日目:堕←
5日目:
6日目:
7日目:
結末:
※R18
その日は始まりからして違っていた。
死合いと呼ぶべき立ち合いの場に最初に足を踏み入れていたのは【猛者】ではなく【剣姫】であった。
【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインは【猛者】オッタルがやってくるまでのつかの間の一人の時間を目を閉じて待っていた。
思い浮かぶのは昨晩刻まれた雄に貪られた雌の記憶。
(……熱い)
【剣姫】としては屈辱的な記憶であり、許せない、辱められたその行為。
だが『雌』としては圧倒的な安心感と快感を感じる、多幸感に満たされた行為でもあった。
じんわりと思いだすだけで臍の下にある『雌』の本心が再度ソレを求めるように疼いた。
しかし、『雌』としての歓喜を確かな熱として感じつつも、剣を取り今から死合いに挑まんとする【剣姫】としてのアイズは殺意という黒い光をその瞳に浮かばせていた。
(自分が……よく、わからない。私は【猛者】のアレが嫌いだとはもう感じられなくなってる。けど、このまま済ませたくない気持ちが、確かに……ある)
完全に気持ちが傾いてるわけでもなければ揺れ動いているわけでもない。
どちらも確かにあった。
『雄』に守られたい──抱かれていたい『雌』の本心。
【猛者】を許せない──殺したい【剣姫】の復讐願望。
相反するが確かに共存しているこの矛盾に満ちた状態こそ天秤にかかった本能と感情だ。
であるならばその天秤を傾けるのは残った最後の気持ち、理性の力である。
本能は囁く。
『あの雄は私を守ってくれる』
感情が叫ぶ。
『あいつは掠奪者だ。許すわけにはいかない』
そして理性は逡巡する。
『どちらも正しい』
だからこそ天秤は傾かない。
だからこそ結論は出ない。
アイズは悩む。自分を助けてくれる誰かをずっと待っていた気持ちを自覚してしまうがゆえに無理やり抱きかかえようとするオッタルの手を跳ねのけられないでいた。
愛を囁かれたなら悩まずに断っただろう。だが求められている理由は愛ではない。そんな余計なおもいではない。
雄雌の番として。
より強くなるためのパートナーとして。
アイズが求め共感できる関係を望まれているからこそ、凌辱された身でありながら拒めずにいた。
「だから……返事を先延ばしに、した」
胎が疼く。
もしかしたらもうできているのかもしれない。
そんな直感めいたものがあった。
もしできているのなら、自分はどうするのか──。
「……もしできちゃってたら、それで決めたくない」
もし、もうすでに。
自分の胎に子が宿っているのなら───。
それを言い訳にして決めることだけは間違っている。
自分で選ばなければならない。
そのためにも本気でいかなければならない。
「……【猛者】」
悠然と歩を進めてやってきたオッタルをアイズは視線で殺すかのように見つめた。
アイズが先に自分を待っていたことに驚くそぶりもなくオッタルは絶対的強者としてアイズの視線を受け止めていた。
「いい目だ。喰いがいがある」
揺るがぬその態度こそ奪い貪る強者としてのあり方そのものだった。
アイズが憎しみ安堵するほどの掠奪者であり雄だ。
今だ傾かぬ天秤はそれゆえにアイズに冷静さを生み出していた。
昨日までの怒りに満ちた乱雑な力に支配されているのではなく、逆にそれを支配している。
ゆえに【剣姫】として殺意を感じ、『雌』として熱を感じても、脳裏は冷めたように冷静にそれらをコントロールしていた。この場に不必要な『雌』の願望など醸し出されることもない。
そんな状態のアイズだからこそオッタルは「喰いがいがある」と評した。
力を総べて技となす。
全開の力を全力の技にする。
これをアイズに求めているオッタルにとって四日目にしてようやく期待できるようにみえたのだ。
【猛者】の掌の上で踊っていることを自覚してふとアイズは思った。
(全部、この人の掌の上なら───)
向かう先は決まっているのでは? と。
◇◆◇
大剣の振りおろしをデスペレートを叩きつけるようにして到死圏外に追いやる。
───防いだ。
なんて思う暇もない。脚を止めた自分に暴風のような乱撃が降り注ごうとしてくる。
叩きつけられて流された勢いを利用してすぐさま攻撃に転じているのだ。
───「【目覚めよ】!」
残していた残り僅かな『風』がぎりぎりで間に合う。
瞬間的に【猛者】を上回る速度を引き出して乱撃の初撃をかわし、その背後にまわる───とみせて上に跳んだ。
見物していた【フレイヤ・ファミリア】の団員の中でも反応できた数名が息をのんだ。
───「はぁぁあああっ!!」
とった!?
回転斬りとでもいうべき動きで空中を一回転してデスペレートの刃が【猛者】の頭部を両断し───ない。
「ぬぁあっ!」
振りおろしの柄を、大剣を手放して空いたその手でつかむと回転斬りの勢いをそのまま利用されてあらぬ方向に投げられる。
『風』で増した勢いのせいで一瞬で距離が空いたのが救いか、坂を転げ落ちる石粒のように舞ってようやく止まった時には隙だらけだったが追撃はなかった。
(あれ、でっ、届かない!?)
アイズは会心の一撃が届かなかった衝撃に顔をゆがませた。
悔しさよりも驚きが勝る。
これまでの中でも間違いなく最高の動きだったはずなのに流された。
「いったい、何度……」
何度こちらの全力を流して見せると言うのか。
信じがたい強さを見せるオッタルが大剣を持ち直すのを見てアイズは纏っていた『風』を解除して節約する。要所で『風』を纏う技術はほかならぬ【猛者】から学ばされたものだ。
「お前はこの数日で『風』を纏わずとも俺の攻撃から逃れきれることを示した。そして『風』を纏い続けても俺に痛打は与えられないことも分かったはずだ。なのにどうして常に纏う」
立ち合い開始早々に『風』を纏ったアイズをその剛剣で吹き飛ばしてオッタルはアイズにもっと力の出し方を工夫するように要求した。
そうでなくてはつまらないと。
「フィンの動きを思い浮かべろ。あいつは『風』がなくともその変幻自在の技で遅い攻撃を速く、速い攻撃を遅くみせる。軽い斬撃にこそ最大の威力を隠す。お前にそれほどの技量がないのは百も承知だが、お前には『風』という便利なものがある。上手く使え」
何も言わないと思えば口をひらき欠点を指摘する。
悔しさを噛みしめつつ的確なその指摘をアイズは早速取り入れると、この日ずっと『風』を節約し、勝負所の攻防での返しに使い続けていた。
それでも先程のようにオッタルに決定的な一撃を浴びせられることはなかった。
だが、大きな進歩があった。
それは日が暮れてもアイズにはまだ『風』を纏う余裕があり、それは互角に戦える余裕があることを示していたことだ。
既に夕焼け空が青黒い夜闇に犯されて染められていた。
もうじき月明かりが下界を照らす時刻になるだろう。
それなのにまだ悔しさに顔をゆがめられる余裕が自分にあることをアイズはまだ自覚していなかった。
だから、オッタルが構えを解いて武器を背中に納めるのをみて訳が分からなかった。
「……?」
「終わりだ」
「……終わり?」
「そうだ。今日はこれまでだ」
「…………どうして?」
「もう頃合いだからだ」
空を見ろ。
そう言われて初めてアイズは夜を迎えていたことに気がついた。
「……いつのまに」
この時間まで戦ってまだ立っていられる。まだ戦える。
それは技量不足と言われた自分の確かな成長の証のような気がしてアイズは浮き上がるような気持ちの高揚で自然とその手を握り締めた。
「【剣姫】、ついてこい」
「! ど、何処へ! なにを……っ」
そんなアイズの元への元へ立ち合いが始まったとき同様に悠然としたままオッタルが向かってくる。
アイズは咄嗟に身を守ろうと剣を構えて、それを解き、しかし、また構えて、中途半端に後ずさった。
また貪られるように犯される───そう思った瞬間、剣を構えようとする【剣姫】と期待する『雌』がぶつかり合った結果の動きだった。
どうしたいのかまだ分からない自分自身に戸惑ってアイズはオッタルが進んだだけ後ずさった。
そしてすぐにそれ以上さがれなくなり、迫ってくるオッタルを待つしかなくなった。
剣を構え、剣を下げ、剣を構え───。
「ぁ……」
オッタルが間近に迫った時、剣を下げていた。
ぎゅっとアイズは目を閉じた。
天秤が傾いたのかどうか、自分でもわからず、アイズはただオッタルに自分を委ねるしかなかった。
だがそんなアイズを尻目にオッタルはアイズの横を抜けて室内に戻っていった。
「……あれ?」
なにもしない?
アイズが目を開けてコソっとオッタルのほうを向くと丁度目があった。
「ついてこいと言っただろう。何をしている?」
少し呆れるような雰囲気すら感じさせて指で来るように促している【猛者】の姿がそこにあった。
◇◆◇
オッタルが先導した部屋はまるで小さな家のようだった。
二人用のテーブルに二つの椅子。
狭いスペースにできる限り詰まれた樽。
小さな竈に小さな台所。
「ここは……なんの部屋、なんですか?」
ここで誰かが暮らしているようでもないのに、暮らせるようなスペースが広がっている。
寝る場所がなさそうなので小さな家にしても狭いこの部屋が何の部屋なのかアイズにはよく分からなかった。
「物置だ。……昔はそうではなかったが。今では物置でしかない」
物置部屋にしてもいまいち用途が違う気がするが。
それにしたってどうして自分を物置きに? とアイズが視線で問うていると「座れ」と促される。
椅子を引き寄せてとりあえず言われた通りに座ったアイズは信じられないものを見た。
【猛者】が竈に火を入れて、鍋をかきまぜているのだ。
「……なにをしてるんですか?」
「見て分からないのか」
「えっと、鍋に火を……?」
「そうだ」
そこで会話が途切れる。
アイズは次第に漂ってくるスープのいい香りに「やはり【猛者】が料理を!?」と驚愕した。
そして猛烈な空腹が襲ってきた。
ぎゅるぅ。
「───ぁ」
お腹が盛大になり、恥ずかしさで顔に朱がうつる。
だが恥ずかしい気持ちとは裏腹に耐えようと思って耐えられる類のものではない。
ぎゅるぅっ、ぐぅっ。
「───!」
お腹を両手で押さえても変わるわけがない。
分かっていても鳴り響くお腹の泣き声はしょうがないことだった。
アイズはここにきて今日まで水しか口にしていなかったのだから。
Lv.6の冒険者として食事を抜いても今日まで空腹を意識しないまま活動できた。日中の死合いに夜中の乱れ合い。空腹を意識する暇もないほどの密度で過ぎていた。
だが一度意識してしまえば到底無視できない。
(お、なか……すいた)
お腹を抑えてテーブルに突っ伏すようにしてたえる。
そうしているとゴトンという音とともに何やらいい匂いが近寄ってアイズは顔をあげた。
「喰え」
オッタルが彼には丁度よさそうでアイズには大きいボウルのような器にスープをよそってテーブルに並べていた。
「い、いただきます」
「かわりはない。落ちついて喰え」
なぜいきなり食事を?
このスープはあなたが?
問いたいことだらけであったがそんなことは後回しにしたいほどに空腹を感じていたアイズはスープを慎重に口に含んだ。
「……!」
おいしい。
一口含んだだけで広がる野菜の優しい味に干からびていた身体に水が注がれたかのような満たされていく感覚を覚えた。
アイズは慌てずゆっくりとスープに口をつける。おかわりがないというオッタルの注意が残念に思えるほどの感激を感じていたが実際のところスープの味はそれほどのものでもない。ただの野菜スープだ。
平凡なだけのスープに感激するほど身体が渇いていた。
「これも喰え。かわりはない」
パン……!
オッタルの差し出したいかにも噛みごたえのありそうな、保存食に適していそうな気さえする乾いたパンを受け取ってアイズは歓喜した。明らかにスープに浸して食べることに適していたソレが今一番欲しかったのだ。
「おいし……」
浸せるだけ浸す。
そうしてスープを吸ったパンをむしゃりと噛みしめれば予想していた理想的な味が何も入っていない胃袋へ落ちていく。
アイズはじんわりとその満たされていく感覚を味わいながら、久しぶりの食事を満喫していた。
無心になって食べていれば食事が終るのも早い。パンとスープを丁度綺麗に同時に食べ終わったアイズは「ごちそうさま、でした」と食事を終えた。
「後始末は俺がする。お前はあの部屋に戻って休んでいろ」
アイズよりも早く食べ終わっていたオッタルが二人分の器を抱えて狭いキッチンにもっていく。
手伝いたい気持ちが湧いたが巨躯な【猛者】とそれに似合わぬ狭いキッチンには自分の居場所がないことは一目瞭然であった。
とはいえこのまま素直に戻って休んで終わりとは思えなかったアイズは疑問を目の前の大きな背中に投げかけた。
「どうして今日は食事を……どうして、襲わないの?」
「俺は必要なことをしているにすぎん。今日のお前の動きは明日に期待していいものだと判断した」
…………。
(それだけ?)
続きを! と言葉を待っていたがまったく返事が来る気配がなかった。
だがオッタルの言うことは理解できた。それは常に一貫していることであった。
冒険者として。そして『雄』として。
オッタルはアイズにその価値を示し続けようとしている。
容赦なく叩き潰すような死合いも。
貪るような愛などない交わりも。
全てはアイズに自らの価値を示すためのものだ。
【猛者】は【剣姫】を得るに値する存在だと認めさせるためのものだ。
この食事もその溜めに必要なこと、だということだ。
「……食事を与えて、今夜襲わないのが?」
だがそれが必要なことだというのはどういうことなのか。
食事を今夜与えることがどうして必要なことになるのか。水さえ得ていれば空腹を意識せずにこの鍛錬の日々を終えただろう。
今夜交わらないというのもなんで今夜だけ襲わないのか。『雄』として、勝者として当然の権利を味わうのではないのか。
アイズの疑念は深まるばかりである。
「そうだ」
「どうして、そうなるん、ですか?」
「空腹を感じていないとしても動きには影響が出る。【剣姫】、お前は今日、万全であれば俺に剣を届かせていただろう剣閃があった」
「……! ほ、本当に?」
アイズの驚きにオッタルは背中を向けたまま頷いた。
鍋を洗う姿は何一つ様にはなっていないが不慣れというふうにも見えずどこかおかしかった。
「最後の一撃は特によかった。だからこそ一度お前の調子を取り戻させることが必要だと判断した。このまま休みをいれずに戦えばただただ俺が勝つ。それだけで終わっては意味がない。お前にとっても、俺にとっても……。最大の糧を得るために必要なら食事を用意する手間をかけて当然だ」
褒められた。
【猛者】が自分を褒めた。
最後の一撃は特によかったと言った。
そのことが光栄で嬉しかった。
───この『雄』に認められるのは『雌』として幸せであった。
(っ……!)
胎が熱い。
お腹はもうなっていないのに、そのさらに奥が啼いていた。
辛さすら感じさせる『雌』の疼きだ。
「……どうして、今晩襲わないの?」
今なら、嫌じゃないのに。
自分という糧を味わわないのはなぜなのか。
アイズの桃色の光を映した期待の眼差しをうけても振り返らず、オッタルは───背中越しで分かるほどはっきりとため息をついた。
「お前を労わりながら抱くことなど俺にはできん。ただ貪るのみだ」
「……はい」
この数日の夜を振り返ればそれは分かる。
そうすればいいのにしないのはなぜなのか。
「日が空いた食事のあとだ。俺がお前を貪るのはいいが……食事を無駄にはできん」
「はい?」
「せっかく与えた糧を吐き出させるような抱き方しかできんということだ」
あ……なる、ほど。
ちょうど鍋を洗い終えたオッタルが何を危惧しているのかようやくわかり、アイズは納得した。
つまるところ、ちゃんと休めということである。
事実、その夜、オッタルはアイズに何かしようと思ってはいなかった。
勝者として貪るものは翌日のより質の高い闘争の交わりだと考えていた。
この四日目の夜に何かしたいともったのは、交わりたいと思ったのは『雄』ではなく『雌』であった。
◇◆◇
『雌』は眠れなかった。
目が覚めてしかたがなかった。
身体が熱くてたまらなかった。
胎が疼いて欲しがった。
───『雄』を。
「これ……だめ、だっ」
『アイズ』は胎を腹の上からさすり、その奥の疼きがどうしても取れないことを理解した。
一人で済ますにはそこは指が届くような深みではなかったのである。
「っぅ」
ぎゅっと目を閉じて何も考えないように努める。
ここがダンジョンだと思えば眠れると思っていた。
限られた貴重な睡眠時間だ。休んで明日こそ【猛者】に届く剣をと望んでいた。
だが、駄目だった。
浴室のひんやりとした材質の床に寝ころんでいるのに、全身の熱が抜けない。
熱い。熱くてたまらない。
その熱を発している自分の中の『雌』がご褒美を求めて騒ぎたてている。
───あの『雄』がほしい。
自分をかき乱す『雌』の欲求は無視しようとすればするほどはっきりと伝わる。
もはや痛みすら覚えそうな我慢するのが辛い疼きに『アイズ』は耐えられなかった。
眠りたい、休みたい気持ちはあっても、それができない。
(なら───)
この疼きを別のもので発散するしかない。
アイズは剣を持って浴室を抜けだした。思いっきり剣を振って発散しようと思ったのである。
幾ら立っていられたとはいえ蓄積した疲労がある。
すこし疲れれば『雌』の疼きも納まると思ったのだ。
だが、そんなアイズが抜けだした先で見たのは求める『雄』の姿だった。
「なにをしにきた」
【猛者】がいた。
鬱憤を晴らすかのように遠目からでもわかるほどの嵐のような剣撃を披露していた。
その声はアイズを咎めていた。どうして休んでいないのかと。
(……あぁ、だめ、だ)
咎められ、促されてもアイズはそのまま引き返すことができなくなっていた。
───欲しい。
───欲しい。
───ほしいほしいほしい。
───ほしいほしいほしい。
見てしまった『雄』の姿に目を奪われ、身体が反応しきってしまった。
切り変わってしまった。
【剣姫】から『雌』へとこの時、この瞬間だけ天秤が傾いていた。
理性が引き返すべきと幾ら訴えても無駄であった。
疼きが高鳴る鼓動と一つになって本能が『アイズ』を動かした。
「……どうしても、眠れない。どうしても───」
───あなたがほしい。
『アイズ』は剣をその場に手放して両手でバトルクロスを持ち上げた。
脈打つような疼きとともに下着から『アイズ』のよだれがにじみ出ている。
「……抱いて、ください」
精一杯、『雌』として誘う。
羞恥心すら感じる隙がないほど『雌』の本能に目覚め、でき上がっていた。
この夜、アイズは初めて自分から抱かれることを望んだ。
◇◆◇
浴室に連れ戻されたアイズは初めて目にしたソレに驚きと期待を抱きながら──あくまで一人ですることを命じられていた。
抱いてほしいという『アイズ』の欲求をオッタルは聞き入れなかったのである。
「吐かせるほど貪るつもりはない。……するなら一人でしろ」
満足して早く寝ろ。
オッタルはそう言って固まっていたアイズの前に自らの硬く反り上がった剛棒をさらし、浴槽の縁に座った。
それはアイズにとって初めての奉仕であり褒美であった。
自ら進んで行う雌雄の交わりであり、雌が雄に捧げ、雄から頂戴するものだった。
ぬちゅ、ぬるぬる。ぬるぬる。
かつて自分の初めてを奪う手伝いをした潤滑油をオッタルの硬く直立した得物に塗りつける。
こうして直接目の当たりにすればこれが自分の中に入っていたなんてとても信じられない。
「おっきぃ、です」
「体躯に見合うだけのものだ」
「それに、熱いし、硬い……立派、です」
雄々しいという言葉がとっても似合う。
アイズは先から根元まで潤滑油を塗りつけながら、自分の指先、掌越しに伝わる『雄』の逞しさに魅せられていた。
「えっと……」
「構わん。準備が済んだと思えばやれ。俺はなにもしない」
「じゃあ……その、失礼、します」
挿れ方などアイズが知っているわけはないが、なにせ相手のモノが天を向いている。
アイズは自分の花扉を指で広げてオッタルのモノを口にする。
くぷっと硬く大きいその先が開かれた花扉をくぐり乙女の花園へと喰い込んだ。
「んっ……お、っきい」
抱かれていた昨晩までと比べて自ら求めることの違った難しさをアイズは感じた。
自分で腰を落とさねば奥へ届くはずもないのに、入口へ迎え入れたところで動きを止める。
とても自分の中にコレがはいるとは思えない。
(無理やりなら、はいりそう……? いや、はいるんだろうけどっ)
ふー、ふーっと『雌』の吐息を洩らして逡巡する。
よくこれまでコレが入ったと今更ながら驚いた。
アイズは間近で不動の姿勢を取っているようにみえるオッタルを覗き見た。目を閉じて腕を組んでいるその姿は本当にする気がないようだった。
(う……うごいて、ほしい)
いくら腰を落そうとしても、踏ん切りがつかない。
落としたいのに落とせない。
挿れたいのに挿れられない。
奥に欲しいのに届かない。
花扉が雄を迎え入れて口からよだれをたらし続けている。潤滑油の必要を疑うほどだ。
だが、欲していてもアイズはどうしても自分では挿れられなかった。
「いれようと力を入れるから、余計に狭くしている。力を抜け」
「おうじゃ……」
「お前は俺のモノを受け入れられる雌だ。力を抜けば自然と納まるところに納まる。……こい」
じれったいほど苦戦していた雌を導くようオッタルはアイズを抱き寄せた。
より密着すればするほど徐々にアイズの中へと雄が侵入していった。
「う、んっ。抱いて……ください」
抱きしめられながらアイズは抱いてと繰り返した。
ゆっくりと奥へ雄を迎え入れながら、分かってしまったのだ。
自分では動けないと。
それほど交わりに不慣れなのだ。
「抱いてくれれば……はやく、終わります。早く休めるから……っん、おねがい、します」
雌と雄とが子宮とペニスでキスを交わした。
深い深い雌の花洞の奥で交わった。
だが待ち望んだその接吻はより強い衝動をアイズにもたらした。
抱いて抱いて抱いて抱いて───!
自分を味わってほしい。貪ってほしい。
それが今の自分にできる目の前の『雄』を味わう唯一の方法だと理解したのだ。
「お前の言うことも……どうやらそのようだ。いいだろう。吐くことは許さん」
「ん。……絶対しません」
雌を満足させない方が問題だと判断しオッタルはアイズの尻をつかむとがっちり抑え込んだ。
「んらっ!? ら、これぇ♡ だ♡」
何の合図もなく、予兆もなく抑え込んだ雌を抉りはじめる。
子宮に喰い込ませ、自らの『雄』を味あわせる。
密着しているゆえに激しさよりもくぐもった音が漏れ聞こえ濃密さを感じさせた。
ぷちゃぷちゅぱちゅぱちゅじゅちゅっ。
結合部から雌のよだれが淫らな水音をお互いの耳に届かせる。
アイズは待ち望んでいた『雄』の味に震えた。
オッタルの背中に手をまわし、その歓喜の震えを味わった。
「これ、これがっ、ほし、ほしかっ、ぁ───っ♡」
何度も何度も達して刻んでしまう。
自分が誰のモノで誰の雌なのか、自分で理解してしまう。
(も、これ、これぇっ! これが……わた、しっ!)
ぶちゅっ。
潰れたような粘っこい水音とともに背筋を震わせて、爪をたてる。
花奥から響くような痙攣で雄を歓待しながら甘受する。
「うぅぁっ! あ、っぁ♡」
力一杯抱きついて離れない。
この夜、アイズは自分の『雄』に懇願しつづけた。
「も、もっと……もっと、ほ、ほしい、です」
もっと、もっと。
底の知れない【猛者】という『雄』が与える『雌』の幸せを感じ続けていたくて、求める声はやまなかった。
◇◆◇
【剣姫】と【猛者】は番になってから十年目に丁度十人目の子供を授かった。
周囲から「作り過ぎだ」と言われても本人たちとしてはどうしようもない気分である。
できる時は双子、三つ子と産まれてばかりだったのだ。
十人の子供の内訳は双子が二組、三つ子が二組と出産自体は十年で四回である。
「いや、それでも多いわよ」
一緒に子供たちを遊ばせているティオネが呆れたように言う。
しかし、彼女は双子が二組で四人の子供をこの八年で産んでいる。とても人のことはいえないのではないだろうかとアイズは思った。
「まだ作る気だから言ってんのよ。そのつもりなんでしょ? 一体何人産めば満足するのよ」
「んー……どうだろう? 私もあの人も、これ以上欲しくない、とは思わないから……」
たぶん、何人でも?
首をかしげたアイズに「そんな調子だから作り過ぎだって言われるのよ」とティオネは呆れたように言いつつも少し羨ましかった。
剣姫雌雄 4日目 fin 5日目に続く。
お読みくださりありがとうございます。
今回から前書きにちょい工夫をいれてみました。
コースメニューを見せる感じですね。
今回はすこしR18シーンを無理していれた感じがして、終盤手が遅くなりました。
正直描写が甘いと思いつつも、遅くなりすぎるのはよくないと思うのであげた次第です。
下手くそすぎる・・・・・・。
もっと脳内のイメージを文章にスパっとできるようにしたいものです。
またよければご感想くださいです。
飽きられてませんかね??
ありがとうございました。