漆原麗迦は自身の持つ魅力を分かっている。
自分でも悪くないと思っている顔立ち。
女子校生にしては主張の激しい胸。
大きな乳房に対してウエストは細く、その細さがより胸の魅力を上げている。
下半身は程よく健康的な肉付きをしており、スカートから伸びる脚に目を奪われている男子生徒も多い。
実際に入学してからすでに何人もの男子生徒に告白されている。
その事実も彼女の女性としての魅力を自覚する上での自信につながり、より艶やかな所作などを意識するようにもなる。
「ほら、早く食堂行こ、竜斗」
「あっ、ああ」
そんな麗迦の魅力的な身体に見とれて、ついどもってしまう竜斗。
事故のような感じだったのだが、麗迦には勃起した陰部を見られたことはあるし、先の行為にまで発展しそうになったこともあるのだが、うやむやになったまま微妙な関係に終わっている。
とは言え麗迦はそんなことがなかったかのように振舞っている。
麗迦としても竜斗との関係を発展させたい気持ちはあったのだが、竜斗の周りの他の女の影、ラッキースケベによって仲良くなった女がいることにより、麗迦の感情をもやもやさせているのだ。
だがそれでも、恐らく自分は竜斗と恋人同士になるのだろうと思っている麗迦。
そんなことを考えながら竜斗と食堂に行こうとしている最中に、二人の女子生徒とすれ違う。
「キャハ♪ あんたら今から食堂行くの? 超混んでるよ♪」
麗迦たちの隣のクラスのギャル女子生徒の北村と、
「マジかよ、宝喜さんたちはどこで食べるの?」
「校舎裏」
「…………」
学園カーストを気にして気を使いながら生活している麗迦にとって、疎ましく思える存在はカーストを気にしないで気ままに生きている連中である。
そういった面では同じクラスの宝喜朔は麗迦にとっては気になる存在である。
北村と仲のいい朔はクラス内では孤立している。
だが当の本人はそんなこと気にしている様子もなく淡々と学園生活を送っているのだ。
しかもその容姿は麗迦も認めざる負えないくらい女としての魅力を持っている。
どこか冷淡さを感じるが明らかに端正な顔立ち。
右側の髪の毛を上げピアスを光らせた首元に何とも言えない色気が醸し出されている。
胸は麗迦の方が大きいが、朔も決して小さい方ではない。
そしてなんといってもスカートが覆っている大きな尻、そこから伸びる肉付きの良すぎる太い太腿には、思わず竜斗も目を奪われているようだ。
(絶対今、太腿見た……この女も……もしかして……)
竜斗と朔の微妙な距離感を見て、何かを察した麗迦。
答えはその通りで、朔もまた竜斗のラッキースケベ能力の餌食になっている。
そのせいもあるのか。あまり他人を気にしない朔の中でも珍しく名前を憶えている相手が竜斗だろう。
「竜斗って、宝喜さんと仲いいの?」
ギャル二人と別れて食堂へ向かう最中、思い切って麗迦は竜斗に朔との関係性を尋ねてみる。
「えぇ!? いや……仲って別に……挨拶する程度かな……ははっ」
「ふ~ん」
竜斗の反応を見て訝し気なジト目向ける麗迦。
(絶対これなんかあったでしょ)
さすがに幼馴染なだけあって二人の間に何かしらがあったことを確信する麗迦。
微妙な空気が流れる中、二人が角を曲がりそうになったところで、前から角を曲がろうとしていた男子生徒とぶつかりそうになる。
「きゃっ!?」
「わぁっああ!!! すっ、すみません!!」
寸でのところで避けた麗迦に、頭を下げながら謝る男子生徒。
「すっ、すみませんっ! だっ、だっ、だっ大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫」
「気を付けろよ」
「はい……すみません」
竜斗が注意したあと、トボトボと肩を落としながら去っていく男子生徒。
「大丈夫か? 麗迦?」
「うん。別に当たってないから」
男子生徒が去った方向を見て少し考えこむ麗迦。
(今のって……確か同じクラスよね……名前は……なんてったっけ?)
同じクラスなのは間違いない男子生徒の名前が思い出せずに、奇妙なイラつきを感じてしまう麗迦。
(まいっか……どうせ地味で目立たない奴だろうし……)
自分の学園生活には関わってこない部類の男子生徒の存在を気にしてもしょうがないと思った麗迦は今の出来事などすぐに忘れ、竜斗と学食へ向かう。
「ていうか朔さぁ、あんたいい加減彼ピッピの一人や二人作んないわけぇ?」
校舎裏のベンチ。
北村と朔はそこに座り、食堂で買ったサンドウィッチを食べている。
朔はその肉付きの良すぎる魅力的な脚を組んでいちごオレを飲んでいる。
傍から見たらギャル二人がだべっているため、一般学生からは近寄り辛い雰囲気を出している。
「んー……別に興味ないかな」
「ふぁー!! クールぶっちゃってまぁ♪ 結構男子に告られてんでしょ? いいじゃん一人ぐらい試しに付き合っちゃえば~♪」
「メンドくさい」
クールで冷淡そうに見えるとは言え、彼女の女としての魅力からもうすでに男子生徒何人かに告白されている。
だがそれを一度も了承することはなく、今まで彼氏などはいたことはない。
元来そこまで他人に興味がない朔は、人付き合いがそもそも面倒なのだ。
そこに面白がって彼氏を作れと進めてくる北村。
「あれとかどうよ、さっきの鱗っちとか?」
「あ~あれね、でも鱗って漆原と付き合ってるんじゃないの?」
ラッキースケベが発動し、身体を触られたことのある男子生徒。
そこから少し気にはなっていたが、麗迦とできていると思っている朔。
「いやあれはどう考えても童貞拗らせ男子と処女拗らせ女子の微妙な幼馴染関係っしょ♪」
「なにそれ」
確かに噂で二人が幼馴染だということは知っていたが、付き合っていないということに朔は少し呆れてしまう。
「あそこまでベタベタで付き合ってないってあるわけ?」
「まぁ~今の微妙な関係を楽しんでるってところもあるんじゃないの」
恋愛など今は興味を持っていない朔にとって、あそこまでいつも二人でいるのに付き合っていないというのは少し意味が分からなかった。
「ま、それか、鱗っちって結構モテるみたいだし、他の女が言い寄ってきてることに漆原が微妙な感じになってんじゃない? あ~あ、もういっそのこと鱗っちがハーレムとか作れば面白いなのなぁ~♪」
訳のわからないことを言っている北村に冷めた目を向ける朔。
と二人が座っているベンチから少し離れたところにある花壇に一人の男子生徒が来る。
どうやら男子生徒はじょうろを持って花に水やりをしているようだ。
二人が座っている場所は日陰になって暗くなっているため、男子生徒は二人の存在に気づいていない。
「小っちゃ、一年坊かなあれ? 偉いねぇ~花に水やりなんかして♪」
「あれって……」
どこかで見たことがある男子生徒。
だが存在がぼやけており、なかなか思い出せない朔。
「なになに、知り合い?」
「んー……確か……同じクラスだったような……でも名前が出てこない」
同じクラスだったということまでは何とか思い出せた朔だが、そこまでだった。
普段の男子生徒が地味すぎて名前すら思い出すことができない。
「マジっ! 同じクラスなのに名前すら出てこねぇの!? どんだけ他人に興味ねぇーんだよ朔!」
「しょうがなくない。だってあいつこっからでもわかるくらい地味そうなやつじゃん。背も私より低いし」
「意外とああいうヤツが凶悪なチンポ持ってたりすんだよ。試しに喰ってみれば?」
「何言ってんの。ヤるわけないでしょ、私がそういうこと」
北村の発言に呆れながらいちごオレを飲み、再び男子生徒に目線を向ける朔。
少し離れていてもわかるくらい男子生徒は低身長で地味ないかにも真面目そうな学生だ。
(さすがにあんなのと関係持つとかないでしょ……)
住んでる世界が違うような相手とのありえない可能性に、まだまだ彼氏などという存在はできそうもないことを考える朔だった。