(やばっ! 授業始まる前にトイレいっとこ)
花壇の花に水やりをしていて教室に戻る時間がギリギリになってしまった勃男。
割と頻尿のため、できれば授業前にトイレを済ませておきたい勃男は、
小走りでトイレに向かっていた。
地味で真面目な勃男にとって、学園生活はこれからも平凡に特に何事もなく彼女もできず碌に女子生徒ともしゃべれずに終わる予定だった。
だが運命は彼が花壇の花に水をやるという行為によって変わってしまう。
トイレに向かうための角を曲がろうとするとき、同じく教室に戻るため少し急いで歩いていた男子生徒と勢いよくぶつかってしまいそうになるのだが……
「うおぉわっ!!」
「わっ!!」
なぜかトイレ方面から来た男子生徒の足がまたもやもつれてしまい、勢いよく角を曲がってきた勃鬼倒れ込む。
その時運悪く二人の頭が鈍い音を発して衝突してしまった。
「ぐわっ!!」
「あり……」
本来であれば激しい痛みだけで終わるはずだったのだが、なぜか二人の身体は急激に重さとだるさを感じて、そのまま意識を失い倒れ込んでしまった。
「んあっ?」
目覚めた勃男はゆっくりと上半身を起こした。
「ここは?」
寝ぼけ眼で周りを見るが、カーテンで覆われている。
ベットで寝ていたことを考えるとどうやら保健室で寝ていたことに気づく勃男。
「あれ? なんでこんなとこいるんだっけ?)
ゆっくりと自分が起き上がる前の記憶を辿っていく。
(そうだ、確かトイレに行く前誰かとぶつかったんだっけ……え? でもそれだけで気絶しちゃったのか?)
頭に鈍痛を感じたが、果たして意識を失うほどだったのかどうか考えてしまう。
(そういえば今何時だ?)
気絶の原因を考え込んでいると、ふと現在の時間が気になる。
カーテンから分かる光の色はオレンジ色なので恐らく放課後だろうと予想はする。
ためしに勃男は起き上がってカーテンを開けようとするが、
(うわっ……なんか身体重い……フラフラする)
まるで自分の身体じゃないような感覚に足をふらつかせながらも、何とか立ち上がりカーテンを開けてみる
「おっ!」
そこにいたのは、保険医の先生と登呂太郎ともう一人、鱗竜斗だった。
「大丈夫か? 勃男? お前だいぶ寝込んでたみたいだぞ」
「え? うん……まぁ……何とか」
心配の様子で話しかけてくる登呂太郎。
保健室は夕焼けが眩しく差し込んでおり、完全に授業が終わった放課後の時間帯だということが分かる。
「意識ははっきりしてるかい? 珍くん」
保険医が確認のため優しく問いかけてきてくれる。
「はい。大丈夫です」
「君は昼休みの終わりから放課後の今まで意識を失っていたんだ。もう少しで救急車を呼ぶところだったよ」
「うぉ……そうなんですね」
自分がいかに重傷だったかを知らされて驚いてしまう。
勃男としては今さっきの出来事なのだが、どうやら意外と重傷だったようだ。
「すまん珍、俺の不注意で」
竜斗がいきなり頭を下げて謝罪して来たので、驚きながら慌ててしまう勃男。
「わわわっ!! いやいやこっちこそ急いでたし、ぶつかっちゃってごめん」
お互いが自分が悪いと言いながら謝罪合戦が始まったので、見かねて保険医が仲裁にはいる。
「まぁまぁ、ここはお互いが悪かったということでね。それだけ元気に動けてれば二人とも大丈夫みたいだね」
最後にもう一度だけ頭を下げあい、竜斗は保健室を後にする。
今回の事故に関しては勃男にも責任があるため、なんとなく明日からの登校が億劫になってしまう。
「まぁまぁ、そう気を落とすなよ。うっかりあいつのラッキースケベ属性で、お前の尻の穴にあいつの勃起チンポが入んなかっただけ良かったと思おうぜ!」
「ごめん全然意味わかんない」
登呂太郎の良く分からない励ましに、よくわからないながらもいつも通りの登呂太郎に安心感を覚えて安堵する勃男。
勃男の荷物などは登呂太郎が持ってきてくれていたので、そのまま帰宅しようとしたときに保険医に止められる。
「念のため身体にいつもと違う違和感を感じたらすぐに病院に向かうんだよ。いいね?」
「はい」
少し身体は重いが、特に気になるほどのものでもなかったため、勃男は登呂太郎と一緒に帰宅する。
夕暮れ時の帰り道。
「しかし今だによく続いてるなぁ~花壇の水やり。あれやってたから今日事故ったんだろ?」
少し呆れた表情で登呂太郎が疑問に思っていた花壇の水やりについて問いかけてくる。
「なんていうか、もうルーティーン化しちゃってね。やんないと身体がムズムズするっていうか」
「お前それルーティーンって言いたいだけだろ」
「まぁ、それもあるよね。だってかっこいいじゃん花壇の水やり。青春モノの映画って感じがして」
「俺にはよくわからんよ。ていうか身体は大丈夫なのか?」
「なんか少し身体がいつもより重い感じはするけど、おおむね良好かな」
「身体が重いって、つまり金玉の精子が詰まり過ぎててパンパンではち切れんばかりって感じ?」
「ごめんそれはない」
とは言ったものの、勃男は朝から股間に感じる違和感を思い出してしまった。
だが、あれは朝からのものなので事故が原因ではないと思い特に気にしなかった。
「ところでラッキースケベ属性ってなに? そんなの鱗くんもってるの?」
ラッキースケベについては勃男も知っていたが、竜斗がそんな属性持ちの男だということは初耳だった。
「ああ、なんでもいろんな女子とぶつかったりして身体触りまくってるらしいぜ。つってもあくまで事故だから、本人じゃどうしようもないみたいだけど、それで美人の女子生徒と仲良くなったりもしてるらしいし、うらやましい限りだよ」
「へぇ~そんなラッキーな体質だったんだね」
竜斗の近辺にはカースト上位とは言えたしかに美女が多かった。
そのことに関してラッキースケベというからくりもあったことに内心うらやましがる勃男。
(いいなぁ~僕も運よく女子生徒とぶつかりたいものだよ)
下品な妄想をしながら歩いていると、登呂太郎との分かれ道に差し掛かる。
「じゃぁ、また明日な。体調やばかったら病院行けよ。今日はもう飯食ってシコって早めに寝とけ」
「うん、そうするよ」
登呂太郎と別れた後、自分の部屋へ帰りついた勃男は言われたとおりに、コンビニで買ってきたご飯を食べて、パソコンに向かいAV鑑賞に勤しもうとする。
親の教育上、学園入学と同時に一人暮らしをしている勃男は気ままなAV性活を楽しんでいた。
親と暮らしていないので、飯などは自分で調達しないといけないのだが、自慰行為の時に親の侵入がないというのがなによりうれしい特典だった。
(本当なら女の子とか連れ込めれば最高なんだけどな……)
ありえない妄想をしつつ、AVサイトを閲覧する勃男。
たまたま一本無料券を持っていたため、今日はそれを使って新たなAVを購入しようしようとしていた。
(パンズボコキもいいな……あ~でもディープキスしながらの手コキも捨てがたい……っ!? 正面からのベロチュウ素股!! よし今日はこれに……
悶々としながらAVを購入し、期待で股間がMAXまで膨らんだと確信したとき、突如としてすさまじい激痛が陰茎の方から襲い掛かってきた。
「痛たたったったったたたったたたたたたたったたたったっ!!!!!!!!!!!!??????????????????」
歯を食いしばり、悶絶しながらもなんとかしてパンツをズリ下し、自分の陰茎の状態を確認すると…………
「『チンチン爆発病』だね」
「はい?」
翌日、さすがに陰茎の痛みが異常だったので、学園に病院に行くうまを伝え、有名病院に診察に来た勃男。
そこで伝えられたのは世にも奇妙な病名だった。
「正式には『陰茎勃起破裂病』と言うんだが、我々は分かりやするチンチン爆発病と言っているんだ」
眼鏡を掛けた小太りの白髪の医者がそう伝える。
「具体的にはどんな病気なんですか?」
「興奮状態でペニスが勃起すると、強烈な痛みを発してしまうというものだ。そのまま放置しているとペニスが破裂してしまう病気だよ」
「は、破裂……」
恐ろしい病気を伝えられて頭が真っ白になる勃男。
「治す方法はあるんですか?」
「もちろんだよ。手っ取り早く治す方法はね、セックスすればいいんだよ」
絶望的な治療の仕方に放心状態になる勃男。
簡単にセックスすればいいというが、そんなに簡単にできるんだったらとっくに童貞など卒業しているだろう。
ここでふと、昨夜のことを思い出す。
「あれ、でもオナニ……自慰行為をしたら痛みはなくなりましたけど」
昨日、痛みを発したペニスを必死の思いで何とかしようと、思い切ってオナニーしてみると、みるみる痛みが和らいでいき、最終的に射精してもとの状態に戻ったのだ。
「うん。自慰行為をすれば一時的にはペニスは元の状態に戻るんだ。しかし完治となるとセックスしなければならいない」
「その……それ以外の方法で病気が治ったりは?」
「あるにはあるよ。君は異性愛?」
「はい」
「じゃ、異性が出す、唾液や愛液、もしくは汗や尿を摂取することだ。そうすればセックスよりかは遅いが完治することができる」
〈いやそれが摂取できるんならもうセックスしてるだろ!!〉
無理難題を突き付けられてまたもや絶望に突き落とされる勃男、
「君、今彼女はいるの?」
「いません」
「お願いすればHさせてくれそうな女友達は?」
「女友達がいません」
「大学に入ったらヤリサーのヤリチンのチンポに簡単に負けて寝取られそうな感じの女子生徒の知り合いとかは?」
「心当たりはないですね」
「なるほど、それは困ったものだね」
落ち込んでいる勃男を見て少々考え込む医者。
「よし分かった。もしいざとなったら私に言いなさい。そういうお店に連れて行ってあげよう」
「え?」
思わぬ申し出に驚いてしまう。
「最終手段だけどね。本当は彼女を作るのが一番さ。学生だろ、好きな人の一人や二人、またはHしてみたい女子生徒なんかいるだろ。思い切ってアタックしてみるのもいいかもしれないぞ」
「はぁ……」
と言われたところで、勃男がアタックしたところで彼女になってくれそうな女子生徒など想像がつかない。
「一様勃起しても自慰行為をしていれば破裂することはないから、家で勃起をする分には問題ないよ」
「そうなんですか」
とりあえずは、今すぐにチンチンが破裂することはないことが分かっただけ安堵する勃男。
「でも正直、まだ何があるか分からない病気だからね、完治するに越したことはないね。今まではだいたい30歳を超えても童貞の男性とかが掛かっていた病気なんだけど、どうやら君は特殊みたいだからね」
それを聞かされてまたもや体が震える。
「まぁ、もし墜とせそうな女性がいたら君のペニスをフル活用してみるのも手だよ」
「どういうことです?」
「君のペニス、赤黒く肥大していつもよりグロテスクだったろ? この病気の特徴なんだよ。君の勃起した状態のペニスから少し特殊なフェロモンが出てね、女の子がHな気分になっちゃうんだ」
「はぁ」
そんなことを言われてもいまいちピンときていない。
「でもフェロモンと言ってもそこまで効果が期待できるものじゃない。この効果でHになるような女性は相当のドスケベか、もしくは陰茎を支配したいSっ気のある娘とかだろう。そこまで期待するもんじゃないけど、使ってみるのも少しはありかなという程度で覚えておくんだね」
「はぁ……」
「とりあえず、そこまで心配するような病気じゃないよ、痛みは相当だが、実際に破裂した人間は世界的にもかなり少数だ。発症しても自慰行為を欠かさず行うことだね。あと大丈夫だとは思うけど、学園ではあんまり勃起しないようにね。人にバレると恥ずかしいだろ?」
「そうですね」
学園で勃起はしたことがないので、その点に関してはそこまで心配していない。
「一様これ、痛み止めの薬ね。勃起状態だけど痛みは薄れるから、もし学園内で勃起してしまったら、それを飲んでトイレとかに駆け込んで自慰行為をしなさい」
「はい」
「あと、射精するときはなるべくコンドームを付けとくといいよ。君、昨日射精したんでしょ。なら、わかるよね」
昨夜射精したときに天井に着かんばかりの勢いで精液が噴出し、さらに量もかなり出てしまっていろんな場所に飛び散り、部屋を掃除するのに苦労した。
「つまるところ金玉の精子が詰まり過ぎててパンパンではち切れんばかりっていう状態だから、なるべく毎日射精するようにね。我慢できなくなったら私にいなさい。それとこれ」
医者が診断書を渡してくれる。
「私のサインが書いてあるこの病院の診断書だ。ここは有名だからね、それを見せればいざというときに病気だと説明できる。なるべく毎日肌身離さずもっとくようにね」
「ありがとうございます」
訳のわからない病気にかかったとはいえ、とりあえず命に別状はないと分かったが、病気が病気なだけに何とも言えない気持ちになる勃男。
(だけど落ち込んでてもしょうがないか……とりあえず恋愛に前向きになってみようかな)
医者に背中を押されたのが効いたのか、少し前向きになりながら頑張って学園生活を送ろうと決意する勃男であった。