街中で女の子に声をかけても間違いなく逃げられる一郎。初対面の相手が挨拶を返してくれれば、目の前の女の子が待ち合わせの相手だと思い込むようになる。
拳を握りしめるように何度も「やった」と大げさに喜びを噛みしめるように漏らす。不安そうだった一郎の表情は心の底から喜んでいるというのが伝わるようなモノに代わり、目じりには涙を浮かべるありさま。
「待ってたんだよ…」
「来てくれるって信じてたんだ!」
「来てくれてありがとう…」
大きな戸惑いを覚える未来。初対面の相手に急に挨拶をされたことだけでも驚いていたのに、その相手が急にガッツポーズをしながら噛みしめるように喜びの声を漏らし始めている。内容を聞くと待ち合わせをしていたのだとはわかる。
返事をしただけで見たことのないような喜びの表情を浮かべる一郎。それまでの不安そうな表情とのギャップにが大きく、どれだけ中年男性が喜んでいるのかが初対面の未来にもはっきりと伝わる。
そんな様子をみてしまうと未来の中で葛藤が生まれる。真面目な性格が「人違いだと伝えるべきだよ!」と言い、未来の優しさが「おじさんがこんな喜んでいるんだから、少しくらい話を合わせてあげようよ!」と言う。
「何度も騙されたんだ…」
「友達(掲示板)にも馬鹿にされるし…」
「もう諦めようかと思ってたけど…」
「今回は詐欺じゃなかったんだ…」
「本当によかった…」
「来てくれてありがとね!」
「本当にありがとう!」
そんな悩みの中にいる未来にむかって矢継ぎ早にかけられる言葉。中には同情してしまうような内容も含まれている。そして感謝の言葉をなんども口にされてしまう。一郎の熱量と会話の流れに流されるように未来は思わず…
『は、はい…』
曖昧な返事をしてしまう。そう答えた後でハッと我に返る未来。少し常識しらずの部分もある未来ではあるけれど、頭の回転は非常に速い。現在の状況を少ない情報から推察していく。
こんな場所で待ち合わせをする年の離れた男女。自分は制服に身を包んでいるので相手の中年男性は、未来が未成年だということも理解しているはず。詐欺という言葉からは金銭の授受をうかがえる。
未来の中で出された予想は「これはパパ活というものでしょうか?」というもの。恐らく中らずとも遠からずという感じだと思える。そうして自分が返事をしてしまった意味を考えると顔が急速に赤みを帯び始めてしまう。
刺激されたのは羞恥心だけではなく、好奇心も同様に刺激されてしまう。未来らしく性的な意味での好奇心はまだ弱く、知的好奇心がかなり強い。自分の知らない世界を覗いてみたいというたぐいの好奇心。ただ、自分には性的な事はまだ早いと思いつつも興味がないわけではない。
待ち合わせに制服の女の子が来てくれたということでも十分に嬉しいことだけど、その上に驚くほどの美少女が来てくれたことに感動の涙すら浮かべていた一郎。そして生身の女の子らしく恥ずかしそうに頬をピンク色に染める未来を目の前にすると、感動とは別に性的な興奮を覚えてしまう。
ポケットからスマートフォンを取り出すと、撮影を開始する一郎。カメラのシャッター音が鳴ることで何をされたのか気づく未来。いきなりのことで動揺する未来に対して、一郎は当然というような様子で連続して撮影を行う。その一郎の堂々とした行動に未来の反応は余計に遅れてしまう。
一郎はまず未来の全身を撮影し、アップに切り替えると未来の顔を撮影する。少しずつレンズを下げるように角度を変えていくと、セーラー服やスカートをそれぞれ撮影する。そして、そこから伸びる細く奇麗な脚も撮影する。
セーラー服の胸元には校章のバッジやⅡと学年を表すバッジもついたまま。通常パパ活行為になれた人間であれば身バレの危険のある物はつけてこないはず。校則に合わせた着こなしに普通の大人なら違和感を覚えたかもしれない。しかし、興奮の中でもありパパ活の成功体験も少ない一郎は違和感を感じないために撮影は継続される。
一方で未来にとっては初対面の相手に許可もなく撮影をされるなんて想像の埒外の行為。唐突に始まった撮影行為に理解が追い付かず固まってしまっている。驚きから立ち直ると慌てて顔を背けて手で胸元をガードしつつ、体を隠す様に半身になる未来。
そんな未来の反応に一郎であっても違和感に気づき心配になる。二人の理解の齟齬がかなり遅れた形でだけど浮き彫りになる。
「あれ…?」
「何か不味いことした?」
「ごめんね…大丈夫?」
「約束通りのことしかしないからね?」
何か未来が心配になるようなことをしただろうかと真剣に心配する一郎。そういう気持ちが表情にありありと出てしまうのは一郎の長所でもあり短所でもある。この場合は長所として働いた様子。
本当に心配するような素振りで、約束通りのことしかしないと言われれば未来は考えてしまう。待ち合わせなのだから事前に内容が決められていたのは当然とも言えて、その中に制服姿の撮影が約束されてたのだと考えが及ぶ。
ここでしっかりと約束の内容を確認しておけばこの後の過ちは起こることもなかった。性行為が撮影込みでOKされているとは夢にも思わない未来。そのために一郎を咎めることもなく受け入れてしまう。
一郎の性格からして咎められ人違いだと伝えられれば、平謝りの末に画像も間違いなく消去をし掲示板に晒すようなことはなかったように思われる。未来の性格からもここであったことを誰かに話したりせずに済まそうと努めたはず。そうしてお互いに上手に無かったことにもなったはずなのに…
『いえ…なんでもないです』
『大丈夫です…うん、大丈夫!』
心配している一郎の不安を取り除いてあげようと、不安な気持ちは強いけれど笑顔を無理に作るようにして答える未来。約束の内容を把握していたら作れなかった笑顔。
そんな笑顔に安心して本人の口から約束履行の了承を得たと思った一郎は、徐々に行動をエスカレートさせていく。次のステップへの手始めにと未来の前で体制を低くしていく。所謂ローアングルと言われる状態から撮影をしてしまおうと…
校則に則った長めのスカート丈。そのために一郎が大勢を低くしても、下着が撮影されることはないと思いつつ、強い羞恥心に顔を余計に赤くしてしまう。そして、そんな未来に追い打ちをかけるようにほとんど無風だったはずの公園に風がふく。強くはない風なのに、長いスカートの前を上手に巻き上げる。
一郎がレンズを向ける先で、捲れあがったスカート。未来の細身ではあるけれど奇麗に伸びる色白の脚…それを陽光のもとに露にする神風。
さらにその奥までもさらけ出してしまう。一郎の視線がその光景にくぎ付けになる。生地は学生が好みそうな物で、涼し気な水色の下着が見える。ワンポイントのピンク色のリボンが余計に可愛らしさを引き立てるもので、未来に良く似合っている。
釘付けになりつつも、その好機を逃すまいと一郎の指は反射的に撮影ボタンを押していた。驚き慌てる未来がスカートを押さえるまでに三度のシャッター音が響くことになる。
恥ずかしさにその場にしゃがみこんでしまいたいという衝動にかられるほどに羞恥心を覚えた未来。スカートの前を押さえてジッとしている。そんな未来の様子に余計に興奮を覚えた一郎。そして風がおさまると気まずい雰囲気が二人の間に流れる。
「…」
『…』
「立ちっぱなしも何だから…」
「少しベンチで休もうか?」
約束の内容を把握していないので一郎の真意を測りかねる未来。このまま人違いだと言わないままでいたら、大変なことになっちゃうかもしれないという不安はある。
でも、一郎の喜んでいた姿を思い出してしまうと人違いだと今も言い出せないまま。曖昧な返事を繰り返してしまったという事実が余計に未来の行動を縛り付ける。
そんな中での気まずい空気から逃れるように、一郎の誘いに小さく頷くことで答える未来。緊張しながらもベンチへと歩みを進める。その背後で一郎が必死にスマートフォンを操作していることに未来は気づいていない。約束がそもそも掲示板へのアップロードを許可していたことは未だに未来は知らない。
悪意か善意かの差、大小の差はあれど、お互いに罪を抱えている二人。パパ活という犯罪行為に手を染める一郎。いけないことだと知りつつも、勘違いを正さずに受け入れてしまっている未来。そんな二人の関係の行きつく先は…