この世界には、『魔法少女』と呼ばれる存在が確かに実在する。
現実は空想ではなく、だから現実における魔法少女は誰もが想起する愛と希望に満ち溢れたハッピーエンドを迎える少女たちではない。むしろ、バッドエンドが約束された、空想とは真逆の存在。
魔法少女に至る契約に際し、どんな願いだろうと一つだけ叶えてもらえる代わりに、生涯を魔女と呼ばれる異形との戦いに捧げることを決意した少女たち。
キュウべえと呼ばれる謎の白い生き物を視認することができる少女だけがそうなる資格を持ち、そしていずれ魔女へ至る片道切符を手にした少女の総称。
魔女への成長途中の女性たち。そこに成長途中の女性を少女と呼ぶお国柄にキュウべえが合わせた結果、彼女たちは魔法少女と呼ばれる。
戦って命を落とす。あるいは、絶望に囚われ魔女に至る。
どちらにせよ待ち受けるのはバッドエンド。そんな少女たちに、それらに勝るとも劣らない程度には最悪な、第三の選択肢が落命を追い落とすように生まれたのは遥か昔のことだった。
『彼女たちを飼い殺しにするのはどうだろうか?』
人間の言葉で言えばリサイクル。たった一度の絶望、魔女に至る時にまで溜め込んだ負の感情をエネルギーにしても、一回ではたかが知れている。
強力な魔女の存在は魔法少女の死亡数を増やし、ひいてはエネルギーの負債の増加だって引き起こす。
であれば、搾れるまで搾り取るべきだ。そんな意見が出てくるのは当然のことで。
魔女に敗北した魔法少女がその代償として命の代わりに何を支払うことになったのか、それを環いろはは実感することになった。
「この……っ!」
いろはが転がるのは魔女の住処、通常の現実とは区切られた結界の中。数秒前まで彼女がいた場所に突き刺さった蜂型使い魔の針。その先端がまた魔法少女に向けられるよりもなお早く、彼女のクロスボウから放たれた光の矢がその肉体を貫く。
消滅する使い魔の先にあるのは世界間の境界。そこには魔女特有の言語が刻まれ、流動するように動き続けている。
それを視界に入れないように、近くにあった塔とも柱とも取れる障害物の後ろに転がり込みながら、魔女の命にて空間全域を
「早く魔女を見つけないと……」
いろはの顔に浮かぶ焦り。それは魔力だけの問題ではない。
魔法少女になるときにキュウべえから受けた説明。それが事実だというのならば、早く倒さねば彼女自身が手遅れになる。
だというのに蜂が世界を覆い尽くし視界で魔女を探すのは不可能で、彼らの羽ばたきが魔女の言葉すら遮ってしまう。
見つかりそうになっては使い魔を撃ち落とし、また別の場所に走る。それを幾度か繰り返し、もう一度と立とうとした瞬間に体に走った疼き。
その時になってようやく、彼女はついに自らが致命的な間違いを犯していたことを悟った。
「ぁ……」
環いろはは、清廉な修道女を思わせる白のケープと、桜色の髪が特徴的な白と桃の魔法少女。
けれど今、彼女はその純白によって上気した頬が引き立てられ、ヘソが透けて見えるような黒いインナーがじわりと肌の上に浮かぶ汗によってより色濃い黒に変わる。
首から下はほとんど露出していないにもかかわらず、半分裸同然と言えるほどボディラインがはっきり見えるほどの薄着ということを両立している魔法少女衣装。
ギリギリのバランスで成り立っていた、少女の可愛さと淫靡さを同居させる衣装。それが今、後者に傾き始める。
「ひ……ぁ……や、ダメ……ここで……」
スポーツブラ程度の丈のタンクトップの中で自己主張を開始するつぶらな突起。地面を濡らす液体の源泉はミニスカートの下に履いた黒いスパッツ、その内側にある少女の秘部。
負けられないのにと震える足で立ち上がろうとしても、空を支配する使い魔の羽ばたきが生み出す振動が、快楽を生み出す特殊な音となって少女の肉体を苛む。
瞳は快楽に蕩けそうで、それでも魔女を放置できないとわずかな意志をかき集め上を向いた、その瞬間。
「あ、ああああああっ!」
視界に入ったのは、境界線に浮かぶ魔女の言語。
かつては何の意味も持たなかった言語だが、今となってはそれを使うのは魔法少女を辱め、魔力を奪い自らを強化するために少女の操を喰らい、それによってキュウべえの望む少女達の絶望を引き出す存在だけが使うことを許される、魔女達に共通する特有の言語。
たとえ魔法に対する耐性があったとしても、長時間滞在すれば快楽耐性の減少は避けられない魔女の結界内というフィールド。そこで魔力を消費したいろはの耐性は容易に破られ、ただの
「ゃ……ぁ……」
地を濡らしながら崩れ落ち、下腹部を抑えるようにして蹲ったいろはの視界に映ったのは、彼女の嬌声を目印に集まり始める蜂型使い魔。
これから何が起きるのかなんて考えるまでもないことだ。自分が一人では決して抜け出すことのできない淫らな地獄に陥ったことを理解し、それでもといろはは瞳に無駄な抵抗を宿す。
震える足で、それでも立ち上がろうとする魔法少女。その尊い意志を嘲笑うように、地中より飛び出した触手と思しき何かが少女の四肢を縛り付け、地に押さえつける。
少女の意志が快楽に塗り潰されるのは時間の問題だった。
環いろはの予想では、使い魔が持つ少女を犯す力は針にこそ宿っているものだった。
蜂という形状からすれば当然の想起であり、だから羽ばたきによる振動が少女の体に疼きを与える、なんて想像できなくても仕方のないこと。
けれどそれはいろはにとっては慰めにしかならない。そして同時に、使い魔の翅に力があったのだから針には何の力もない、なんて都合の良い妄想がまかり通るほど、現実は甘くなかった。
「や……ぁ……やめ、まっ……っ!」
四肢を地に押し付ける形で拘束され、尻を突き上げる形だと自覚したいろはに、けれどその体勢を自覚し顔を赤くする暇も与えられることはない。
集結する蜂の群れが羽ばたきによって生み出す振動によってもたらされる快楽。それが魔法少女の思考を奪い去りながら、同時に彼女を捕らえる結界として機能する。
内側は余白など一切なく快楽振動が満たす空間。その内側に魔女が姿を現したのは、獲物の動きの一切を封じた後だった。
無数のディスプレイが人型を象った魔女。ディスプレイの中には巨大な口が映し出され、現実に舌とも触手とも取れる謎の物質を具現させている。
身悶えするいろはの肉体を封じているのもその中の四つ。けらけらと笑う彼女の人間には聞き取れない言葉を受けて蜂群が向かったのは、誘うように突き出された臀部、その中でも淫らに自己主張する陰裂。
スパッツを濡らし、黒く薄いインナーに愛液を浸透させながら、布の許容量を超えてぼたぼたと地面に落ち続ける淫液の源泉。魔法少女の衣装に隠された秘奥に向けて、その針を向ける。
気づいた少女の懇願など、魔女も使い魔も考慮するはずがない。最後まで言い切られることのなかった制止の言葉を遮ったのは、一番最初に魔法少女の秘部の入り口にたどり着いた使い魔だった。
ぶすり。
針から滴る毒は魔法少女衣装の耐久性の一切を無視し、触れた瞬間に溶かし尽くす。少女が生涯を捧げる男性にのみ見せる場所は容易に晒され、異形を孕むための場所としてのみ吟味される。
突き刺すような針の侵入は、奇妙なほどにいろはの感覚に刺激を与えない。むしろ快楽振動に犯される感覚では貫かれたことにすら気がついていないかもしれない。
(どうにか……んっ、逃げ、ないと……)
動くこともできず、口を開けば振動結界にかき消される喘ぎ声以外の意味ある言葉を出すこともできない状況で、けれどいろははまだ諦めていない。
魔女の拘束が緩むその瞬間を、あるいは他の魔法少女が助けに来るその瞬間を、ただひたすらにじっと耐えて待ち続ける。
それに変化が生まれたのは、彼女の体を縛るのとは同種の触手、その発生源たるディスプレイに映った魔女の口からだった。
(……んっ、なに、あれ……魔女の、文字……っ、それ……まさっ)
「あ、あぁ、あ──っ!?」
魔女以外には何を言っているのか聞き取れない言語。ディスプレイの中の口から発せられたそれは文字の形をとって現実へと飛び出し、宙を舞いながら少女の体に打ち付けられる。
ぷしゃあ。次の瞬間、快楽振動すら越える勢いの快楽が突如として全身に走り、仰け反りながら愛液と小水を撒き散らす。
視界に入るだけで魔法耐性の低い人間の快楽を強制的に引き起こすその文字が、体に溶け込むように打ち付けられたことで、その効力を最大限に発揮する。
(言ってること、聞き取れ、ない……っ、で、も……意味、わかっ……)
心に焼き付けられるような言葉の数々。それはいろはの体に浸透し、彼女の魂そのものに記録として焼き付けられてしまう。
したことのない行為の数々が実際に行われたこととして彼女の体に刻まれ、その度に体が記憶に相応しい形に作り変えられる。
感度が上昇し、甘受する快楽振動もより強烈に感じられるようになり、いろはの中から快楽の証とともに犯されたことのない正常な部分が抜け落ちていく。
そうして手にした異常なまでの感度がなければ、次の絶望は気付かずにいられたかもしれないのに。
(え、こん、どぉ……っ、な、っ……)
ぷつり。
秘部を貫く蜂の針。それが子宮に届き、突き刺さった音。そして先端から魔力の塊となって子宮の中に溶けていく。
魔女の、あるいは使い魔の肉体が魔法少女の中に魔力となって溶ける理由は、その体を魔女にとって都合のいい形に作り変えるため。そんなどこかで聞いた話を思い出し、さあっと顔を蒼くするいろはだが、その恐怖も即座に言葉の鞭によって快楽に塗り替えられる。
少女が意識を向ける余裕もない中、走るのは魔力の塊が溶け込んだ子宮が作り変えられる感覚。変化後の姿は魔女と使い魔にとって最も便利な形、蜂の巣とでも呼ぶべき状態。
魔力が少女の卵巣を刺激し、卵子を強制排出。放出されたそれらが蜂の巣子宮にて魔女の魔力に犯され、使い魔の幼体を生み出し始める。
「や……っ、だめっ……こん、こんなのっ、ほかの……ひとがぁ……っ、やぁっ、むりっ、イっ……〜〜〜〜!!」
膣道を通り始める幼体。蠢く感触すらはっきりと理解し、それを刺激として絶頂を迎えてしまういろは。
けらけらと笑う魔女の舌触手が愛液の源泉に忍び込み、幼体が外に出やすいように強引に広げられる少女の淫裂。
そこから姿を見せる使い魔は、少女の愛液を啜ったことで魔力に満ちた個体。出口に近づくにつれ蜂型の使い魔としての形に変わり始め、浅い部分では翅を羽ばたかせて魔法少女を苦しめる快楽振動を体内で生み出し始める。
外と内から常に絶頂振動を叩きつけられるいろはが耐えられるはずもなく、結界内で展示されるのは快楽を逃がせない哀れな少女の姿だけ。
子宮そのものを作り変えられてしまった以上、もはや環いろはという少女はまともに生きていくこともできず、常に蜂を生みだすための快楽母体と変わってしまった。
「助け、て……」
かすれるような声で、悲痛な声で、同居している男の名前を呼ぶいろは。その姿を見れば、彼女がもうこれ以上ないほどに完璧な敗残者であることは明らかだった。
もう、どうあがいても一人で逆転などできるはずもない。
「いろはっ」
だから、彼女がその淫獄から抜け出すのは、他の魔法少女の力が必要だった。
少女が名を呼んだ男ではない。けれどいろはにとってはとても頼りになる魔法少女の先輩、七海やちよ。
彼女の力によって虚空に瞬時に形成された槍の数々。それらはいろはを嬲ることに夢中だった魔女が対応するよりもなお早く魔女の動きを拘束し、同時に桃色の少女を縛っていた触手を貫き、巨大な悲鳴が結界の中に轟く。
魔女は、魔法少女を嬲るもの。陰湿かつ狡猾に卑猥な攻撃を繰り返す異形は、だからこそ勝っている時には捕らえた相手を辱めることに夢中で隙が大きい。
取れる選択肢は二つ。犯された魔法少女を連れて即座に脱出するか、あるいはこの場で魔女を葬るか。
前者であればほぼ確実に逃げられるが、一時放置する故に被害が出るかもしれない。後者であれば最悪の場合ミイラ取りがミイラになる可能性もある。
(今なら殺せる……けどっ)
「一旦退くわよ」
やちよが選択したのは後者。自らの体液の水たまりに倒れ伏すいろはを抱え、即座に脱出。
魔女言語が刻まれた境界線を超える際に疼いた体は彼女もまた魔法少女であるという証。
鎌をもたげる快楽を求める心は今は小さく、むしろいろはを心配する気持ちの方が強い。
黒いインナーは大部分が溶け、素肌を晒している魔法少女。誰であろうと劣情を催してしまうような酷い有様の少女が人目につかないよう、やちよは帰るのだった。
〜〜今回の魔女〜〜
扶翼の魔女。その性質は嫌悪。
己のテリトリーに入り込んだ少女に、悪意なく快楽を与え続ける、無数の顔が映ったディスプレイで人型を象った魔女。
人が来るたびに悲鳴と共に放出される魔女の文字はかつて彼女が直接、間接を問わず受けた、与えた暴力の記憶を内包し、魔女という存在の性質と合わさって視界から流れ込む性的暴力の塊。
ディスプレイに映った口から現実に向けて伸びる器官は触手とも、かつて彼女が嘲笑と懇願を口にする際に見せた舌にも見える。
他の魔女のように特別な力などなく、だからこそ基礎的な性能は非常に高く、魔法少女が一度は膝を屈することになる平均的な魔女。