※この作品はR-18です。

世界中の男がTS異種族幼女化して女がふたなり化した世界 ~大好きなお兄ちゃんが角折マゾ奴隷にさせられていたなんて~   作:中の人

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1 長女編(次女視点)

 私のお兄ちゃんは凄い人だ。

 いつも優しくて頼りになる人で、交通事故でお父さんとお母さんが死んじゃってからはずっとお兄ちゃんが私たち四姉妹を守ってくれた。

 

 まだ小さかったころの私たちは、お兄ちゃんがどんなに苦労して私たちを育ててくれたのかなんてわかってなかった。でも今ならわかる。お父さんたちが遺してくれた財産を使えば、お兄ちゃんはもっと自由に、やりたいことを出来てたはずなのに。それなのにお兄ちゃんは、必要最低限以外ではそれを使わないで、いつか私たちが苦労することがないように、お金はどれだけあっても困らないなんて言って、当時通ってた大学をやめて働き始めた。

 仕事で疲れているはずなのに、お休みの日にはいつだって私たちに構ってくれた。私たちが困ってたら相談に乗って、寄り添ってくれた。お兄ちゃんがいたから私たちは寂しくなかった。みんなとそんな話を直接したわけじゃないけど、きっとみんなそう思ってる。

 

 あの事故から8年経って、私たちももう高校生になった。

 他のみんながどう考えてるかはわからないけど、私は高校を卒業したら就職するつもりだ。

 私は初姉(ういねえ)みたいに頭が良いわけじゃない。希(のぞみ)みたいな魅力もない。幸(ゆき)みたいに運動が出来るわけでもない。ないない尽くしの平凡人間だ。

 

 だから誰にでも出来ることで、少しづつでもお兄ちゃんに恩返しするんだ。

 

 それで、いつかはお兄ちゃんに並び立っても恥ずかしくない人になりたい。

 血の繋がった実の兄にこんな気持ちを持つのはおかしいことなのかもしれない。社会には認められないかもしれない。みんなには理解されないかもしれない。

 それでも良い。私は、城詰和(しろつめのどか)はお兄ちゃんが好きだ。お兄ちゃんのことを一人の男性として愛してる。この想いをいつかお兄ちゃんに伝えて、ずっと一緒に居たいって思ってる。

 

 そう、思ってたのに……

 

「のどかおねえちゃん! おかえりー!」

 

 学校から帰宅した私を能天気で可愛らしい声が出迎えた。

 とてとてと可愛らしく足を動かして玄関までやってきた緑髪の幼女は、勢いよく私に抱き着いて嬉しそうに頬ずりをする。

 

「えへへ~」

「……お兄ちゃん?」

 

 数日前、お兄ちゃんは未曽有の大災害で鬼の幼女になってしまった。

 でもそれはあくまで身体だけの話で、お兄ちゃんの心は何も変わってないはずだった。

 それなのに、こうして私に抱き着いてるお兄ちゃんは幼女そのもので……。

 

「ごめんなさい、和。私のせいです……」

「初姉」

 

 お兄ちゃんに続くように私を出迎えた黒髪を背中まで伸ばした物腰の柔らかな女の子、私たちの長女である初姉がとても申し訳なさそうな表情で立っていた。

 

 

 

・

 

 

 

 今からおよそ一か月前、世界中どんな小さな国、辺境の地域にも一切の例外なく降りかかった未曽有の大災害。人によってはそれを怪奇現象や世界改変とも言うらしい。正式な名称は未だ定められてないらしいけど、日本では便宜上『男性異種幼女化及び女性超人化現象』なんて長ったらしい呼び名が使われてる。なんて言っても、それは公的な場面だけの話でネットとかではTS病やふたなり病なんて名前が広がってる。私だって、そう呼んでるし。

 

 内容は呼んで字のごとくで、ある日世界中の男の人が幼い女の子、それもただの人間じゃなくて獣の特徴を持った獣人だったり、伝承に伝わる吸血鬼や鬼なんかに変化した。その種族の数はとても多くて、今でも全ての種族のことは把握出来てないらしい。それに何の種族かわかってもその種族の細かいことはまだまだわからなかったり、色々手探りな状態なんだとか。お兄ちゃんが変化した鬼のことも詳しいことは全然わからない。

 

 だけど大変なのはそれだけじゃなかった。変化したのは男の人だけじゃなくて、女の人もだった。女の人は力が今までよりもずっと強くなって、身体も頑丈に、感覚も鋭くなった。でもそれは元々あったものが強化されただけ。一番の変化はやっぱりアレ、男の人の象徴が生えて来たことだと思う。希いわく、ふたなりって言うらしい。

 あの日の朝は本当に大変だった。目が覚めたら全然知らない感覚がお又にあったんだもん。おっきな悲鳴をあげてお兄ちゃんに泣きつこうと思ったら、お兄ちゃんは角の生えた緑髪の美幼女になってて、それだけでももう限界だったのに初姉たちも私と同じようにアレが生えてた。

 私にはもう何が何だかわからなくて、怖くて、泣いてしまいそうだった。だけどそんな私をお兄ちゃんは抱きしめて、優しく頭を撫でてくれた。あんな姿になってもお兄ちゃんはお兄ちゃんなんだってわかって少しだけ安心した。

 

 その後も世界中が同じ状況で色々と混乱はあったけど、だからって人が動かないと社会は回らなくて、なんだかんだで私たちは変化に適応してなあなあに日常へ戻って行った。

 ただそうは言っても、何もかも元通りとはいかない。中でも私たちの日常で一番の変化は、お兄ちゃんに仕事を辞めて貰ったことだ。

 

 大災害で男性は幼女に、女性はふたなりになっちゃったせいで、男女の性の役割は完全に逆転した。なんでかはわからないけど女性が女性を好きになることは大災害前と同じくらい珍しいことで、基本的にはTSした男性、つまり異種族幼女を好きになる。TS娘同士では子供を作ることは出来ないけど、ふたなり同士なら子供を作れる。だから、女性の同性愛には種族的な障害はないはずなのに不思議だよね。

 それだけなら別に大した問題ではないんだけど、ふたなりになった女性の性欲は大災害前の男性をも大きく上回るって言われてる。元々男の人がどれくらい性欲強いのかなんて知らないけど、大災害前と比べて自分の性欲が強くなったのは確かだった。

 加えて、TS幼女にも性欲はあるらしいけど、ある条件を満たさない限りはふたなりや男性だったころよりも随分と弱いらしい。

 

 女性は支配する側に、男性は支配される側になった。

 

 ただでさえ、性犯罪は女性に比べて男性のものが多かった。それなのに性欲の差が更に広がったらどうなってしまうのかなんて、火を見るよりも明らかだ。しかも女性はふたなり化しただけじゃなくて、力も強くなってる。異種族に変化したTS娘だけど、超人化した女性とは外見年齢と同じ通りの腕力差がある。TS娘にまともな抵抗なんて出来ない。今でこそ多少は落ち着いてるけど、大災害直後はふたなりによるTS娘への性犯罪は全貌を把握できないほど横行してたらしい。

 

 当時の私たちは当然そんなことは知らなかったけど、自分たちの性欲が異常に高まってたこと、その性欲の対象がお兄ちゃんへ向かってたことを理解してた。私たちはお兄ちゃんのことを大好きで、大切に思ってるからこそ我慢できたけど、もしもお兄ちゃんをいつもどおり仕事へ行かせたらどこの誰とも知れないふたなりに襲われるかもしれない。ううん、間違いなく襲われてた。

 だからお兄ちゃんを仕事には行かせなかった。っていうか、辞めさせた。世界の混乱に便乗して、初姉が職場に連絡をしてそれ以来一度も仕事には行かせてない。それが非常識で、迷惑をかける行為だなんてみんなわかってたけど、それでも私たちにとってはお兄ちゃんを守ることの方が大切だった。

 

 お兄ちゃんは自分の身が危ないなんてこと全然理解してなくて、仕事を勝手に辞めさせられて家に軟禁されてることを最初こそ不満そうにしてたけど、お兄ちゃんが勝手に出歩かないように私たちが一日交代でお兄ちゃんと一緒に居ると、久しぶりに私たちと長く一緒に居られるのが嬉しかったみたいで機嫌は日に日に良くなってた。希と幸は中学くらいにはお兄ちゃん離れしてたから寂しかったのかもしれない。

 

 世界の混乱が収まるにつれて治安も戻っていった。一人での外出は今でも許してないけど、私たちの誰かと一緒なら普通に外出できるくらいには世の中も落ち着いた。あと少しも経てば、姉妹の中の一人が学校を休んでつきっきりになる必要はなくなるはずだった。

 

「~~♪」

 

 床に自由帳と長く美しいパステルカラーの緑髪を広げて、うつ伏せに寝そべりながら鼻歌を歌って絵を描くお兄ちゃんを見て、咄嗟に出そうになった溜息を何とか呑み込んだ。

 お兄ちゃんが幼女になった時も私はショックを受けた。あの優しくて頼りになるお兄ちゃんが別人になっちゃったみたいで。でも、言葉や行動の節々にお兄ちゃんの面影があって、心は変わってないんだって、お兄ちゃんはここに居るんだって思えた。

 でも、今のお兄ちゃんは完全に別人だ。それで嫌いになるほど薄情なつもりはないけど、私が好きだったお兄ちゃんはここにはいない。それがどうしようもなく辛くて……。

 

「本当にごめんなさい……」

「ううん、初姉は悪くないと思う」

 

 今日の朝に見たお兄ちゃんと今のお兄ちゃんの外見で、一つ大きく変わってる部分がある。それは角の有無。天を突くように伸びてた15cmくらいの二本の硬質な角が、根本の少し上あたりまでなくなって断面が平らに、かどは丸みをおびてる。

 

 今日は初姉がお兄ちゃんと一緒に留守番をする日で、そのお留守番中にお兄ちゃんは工具箱から小ぶりな金のこぎりを持ち出して初姉に頼んだらしい。自分じゃやり辛いから代わりに折ってくれないかって。

 前々からお兄ちゃんは、おでこの生え際辺りから伸びる一対の角を鬱陶しそうにしてた。先端は結構鋭利で危なかったし、寝るときに寝具に引っかからないようにとか、私たちにはわからない苦労があったみたいだった。

 

 だから初姉も驚きはしたけど、納得もした。お兄ちゃんが悩んでるのは知ってたから、覚悟を決めたんだって。

 お兄ちゃんは自分の角は爪とか髪みたいなもので感覚がないと言ったらしい。だから心配しなくて良いって。初姉はそれを聞いて一応インターネットで調べてみたけど、鬼の角に関する具体的な情報は出てこなかったそうだ。実際私が今スマホで調べて見ても、創作やフィクションがヒットするだけで現実のそれは何もわからない。

 初姉は万全を期して先端の方から削って見て、お兄ちゃんが何の痛みも感じてなさそうなことを確認してから根本付近を切断することにした。金のこぎりでガリガリと削ってる最中も、お兄ちゃんは何でもなさそうにじっとしてたらしい。

 そうして一本目を削り終え、もう一本も削り終わった時、異変は起きた。それまでずっと静かに大人しく角を削られてたお兄ちゃんが、幼子のように初姉に甘えだしたのだとか。たぶん、私が帰ってきたときみたいな感じかな。

 

 こうしてお兄ちゃんの希望によってお兄ちゃんの角は削り切られ、多分その結果としてお兄ちゃんの心は幼くなった。

 

「お兄ちゃんが、頼んだんだもんね」

 

 頭の良い初姉にしては思慮の足りない行動だとは思うけど、その場で頼まれたのが私だったら断れてたかわからない。私は少しでもお兄ちゃんの力になって恩返しをしたいって思ってるから、私にしかできないとか言われたら流されちゃうかもしれない。きっと初姉もそうだったんだと思う。

 

 ……はあ

 

「のどかおねえちゃん! アメあげる!」

「え?」

「はい!」

 

 いつの間にか私に近づいてきてたお兄ちゃんが、天使のように愛らしい笑顔を浮かべて握りしめた飴玉を私に押し付けた。

 

「げんきだして! おいしいよ!」

「……うん、ありがとう」

 

 少しだけ、驚いた。

 お兄ちゃんに心配をかけないよう、初姉を傷つけないよう、出来るだけ今の気持ちを態度に出さないように気を付けてた。それでも初姉には多分落ち込んでることはバレてると思うけど、まさか今の状態のお兄ちゃんに気づかれるとは思わなかった。

 

 そっか。姿が変わっても、少し幼く、アホっぽくなっても、お兄ちゃんはお兄ちゃんのままなんだ。私たちのことを大切に思ってくれてる、お兄ちゃんなんだ。

 

「初姉。お兄ちゃんのこと、私たちで守らなきゃね」

「……はい。そうですね」

 

 責任を感じてるのか、少しだけ間を置いて初姉はそう答えた。

 初姉は私たち姉妹の中で一番賢くて頼りになる人だ。いつも率先してお兄ちゃんを助けて、昔は忙しいお兄ちゃんの代わりに家事全般を担当してたこともある。今は姉妹でそれぞれ分担してるけどね。わがままだって言わないし、お兄ちゃんを除けば家族の中で一番しっかりしてるのは初姉で間違いない。

 

 お兄ちゃんは私たちに迷惑をかけたくないなんて言うかもしれないけど、私は迷惑だなんて思わない。それに、初姉たちに負担をかけるのも私が高校を卒業するまでの間だけだ。私が独り立ち出来たら、お兄ちゃんのことは私が幸せにする。

 

 待っててね、お兄ちゃん。

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