長くなったので前後編で区切りました。
ユニットメンバーである真乃と灯織、あるいは学校の同級生の女子――オフに誰かと一緒に遊びに出かけるというのは、心が躍るものだ。
特にめぐるは、プロデューサーと二人きりで出かけるのが一番好きだった。なぜなら、プロデューサーと二人きりのときは、その行為は単なる遊びではなく、恋人同士の「デート」になるからだ。
プロデューサーとのデートには、他の人と出かけるのとは違うドキドキがある。ウキウキすると同時に、少し切ないくらい胸がいっぱいになってしまう。そしてそれこそが、めぐるがプロデューサーに抱いている「恋心」の表れなのだ。少なくとも、めぐるはそう思っていた。
「ごめんなめぐる、待ったか?」
「ううんぜんぜん! ちょうどいま来たところだよー」
定番のスポットではなく、人気の無い場所での待ち合わせ。しかもめぐるは伊達眼鏡で変装している。しかしこれは仕方ない。めぐるはアイドルで、彼はそのプロデューサーなのだから。ファンや週刊誌記者に見つかったら大変なことになる。少し不自由でも受け入れるしかない。
「えへへっ」
「どうしたんだ、急に笑ったりして」
「だって、今日がずっと、ずぅ~っと待ち遠しかったんだもん! ……プロデューサーはそうじゃなかった?」
「――いいや、俺もずっと待ち遠しかったよ。めぐると同じだ」
「えへへ……」
それよりも、好きな人とのこんな当たり前のやり取りが、すごく嬉しい。口元が勝手にニヤケて、ちょっとやそっとでは戻らなくなってしまう。
めぐるはプロデューサーの腕にしっかりと抱き着く。そうすると胸を押し付けるような格好になるが、前までなら、「あんまりこんなことは人にしないほうがいいぞ?」とか、「めぐるはかわいいから、相手に誤解されるだろ」とたしなめていたプロデューサーが、いまは何も言わない。
なぜなら、めぐるとプロデューサーは恋人同士だからだ。恋人同士だから、こんなことをしてもかまわないのだ。
「でも、プロデューサー……本当にお仕事は大丈夫だったの?」
「ああ、もちろん。ちゃんと全部終わらせてきたさ。だから、今日は一日、めぐると遊べるよ」
「プロデューサー……」
めぐるはぐっと言葉を詰まらせた。プロデューサーの目の下には、薄っすらクマができている。――でも、それならなおのこと、今日は楽しまなければならない。
それから二人は、待ち合わせ場所から目的地のテーマパークに移動した。移動中の電車でも、テーマパーク入り口の行列でも、二人は隣に並んでいたが、あくまでも目立たないよう、必要以上にベタベタするのは避けていた。
しかし、テーマパーク内の人混みに紛れてしまえば、多少はしゃいでも、それほど人目に付かない。そう言わんばかりに、ゲートをくぐるや否や、めぐるは再びプロデューサーに抱き着いた。
「せっかくだから、今日はい~~~~~っぱい楽しもうねっ! プロデューサー!」
恋する乙女は美しいとよく言うが、そのときのめぐるのはち切れそうな笑顔は、例え彼女が「八宮めぐる」であるとは気付かずとも、多くの人を振り返らせた。
元気いっぱいにアトラクションを回る彼女の心に、憂いやわだかまりなど、何一つ無いように見えた。
(…………どうして)
だがその実、めぐるは内心で考えていた。
(……どうして……最近なにも言ってこないんだろう)
そう、「彼」が。めぐるを脅迫し、無理やりセックスフレンドにしている「彼」が、ここしばらく、何もめぐるに要求してこなかった。そのことが、少しだけ引っかかる。
(……学校でも話しかけてこないし…………エッチだって、最近ぜんぜん…………――?? ――!? わ、わたしったら、プロデューサーとデートしてる最中なのに、なに考えてるの!?)
下腹部に感じる、じくじくという疼きを誤魔化すように、めぐるは首を振る。
「どうした、めぐる。頭なんか振って……蚊でもいたのか?」
「――え? ――う、うん! そ、そうなのっ! そうみたいっ!」
「そっか、まあ夏だもんな。刺されたりしなかったか? 虫除けスプレーあるけど、使うか?」
「わぁ~、用意いいね、プロデューサー」
その後も、めぐるはプロデューサーとのデートを楽しみながら、頭の片隅では、常に「彼」のことを考えていた。
彼のことだから、絶対にめぐるを解放しようとは考えていないはずだ。彼のことだから、必ず何か企んでいる。彼のことだから、もしかしたら今もどこかでめぐるのことを監視しているかもしれない。彼のことだから、彼のことだから、彼のことだから、彼のことだから――……。
(……あんなに、わたしのことを手放したくなさそうだったのに。なのに……どうして何も…………)
そうやって「彼」の顔を思い浮かべてしまうことも、一つの「支配」の証であるとも気付かずに。
めぐるとプロデューサーの楽しい楽しいデートの時間は、あっという間に過ぎていった。乗り物を全制覇する勢いで園内を回り、美味しいものを食べ、二人でお土産のマスコットの付け耳をつけて記念撮影をした。
日が傾き、キャストによる大規模なパレードが始まる。めぐるとプロデューサーは、ロマンチックな雰囲気に包まれながら、腕を組んでそのパレードを眺めていた。
そして夜になり、大人の時間が始まる。
園内にはまだ人が多いが、それでも静かな緑の多い公園のようなスペースを、めぐるたちは散歩していた。そこで、普段はどちらかと言うと受け気味なプロデューサーが、自分から動いた。
「……あの、さ、めぐる」
「……なぁに? プロデューサー」
「…………」
「……黙ってたら、わからないよ……?」
「……うん、あのさ。これ……一応、用意しておいたんだけど」
そう言って彼が取り出したのは、ホテルのルームキーだ。めぐるも知っている、テーマパークに併設された大きなホテルの名前が書いてある。
めぐるはもう「大人」だ。それが何を意味するか知っている。彼女の心臓は、とくんと跳ねた。
「……いいかな?」
大好きなプロデューサーにそう問われて、めぐるが断るはずがなかった。夜目にも分かるくらい頬を染めて、彼女はコクリと頷いた。
これから二人は、恋人同士として、ホテルで愛を確かめ合う。プロデューサーと担当アイドルという関係性をのぞけば、そこに不思議なことは何も無い。彼らを止められる者も、ここにはいない。
――だが、本当にそうだろうか。
不意に、プロデューサーの身体から、スマホの振動音が響き始めた。
「――ん? 電話……? こんな夜に、誰が……」
表示されているのは知らない番号だ。しかし、この社用スマホの番号を知っているのは、プロダクションの関係者を除けば取引先くらいしかいない。彼はちらりとめぐるのほうを見てから、電話に出た。
「――もしもし、283プロです。どちら様で――え?」
聞き覚えの無い声。しかしその声は、確かにプロダクションと付き合いのあるテレビディレクターの名前を名乗った。この声の人物はそのディレクターのアシスタントで、どうしても手の離せないディレクターの代わりに、彼に電話してきたのだそうだ。
プロデューサーは通話口に手を当て、めぐるのほうを向いた。
「ディレクターの礒橋さんだって。……この人は、礒橋さんのアシスタントさんだって言ってるけど」
「――っ」
めぐるが少し顔色を変えたのに、プロデューサーは気付かなかった。
「あ、もしもし、すみません。――え? 今からですか?」
電話の用件は、至急スタジオまで来てもらえないかというものだった。たとえこの業界に務める人間が24時間営業だとしても、こんな夜に――しかも、ここからそのスタジオまで、急行してもかなり時間がかかる。プロデューサーは戸惑った。
「いや、でも、明日というわけには――そ、そうですか」
彼の声と瞳に、迷いの色が見える。これがめぐるとのデートの最中でなければ、彼は一も二もなく呼び出しに応じただろう。だが今は――
「……わたしは大丈夫だよ、プロデューサー」
しかしそのとき、彼の背中を押すように、めぐるがポツリとつぶやいた。
「……お仕事なんだよね? わたしは――……また今度でも大丈夫だから」
「う……」
どこか寂しそうなめぐるの笑顔。それはプロデューサーの心を切り裂いた。ここで問答無用で電話を切るのが、めぐるの恋人としては正しい道なのだろう。――しかし、彼は同時に、アイドル「八宮めぐる」のプロデューサーでもある。
めぐるの仕事に関わる取引先を無下にすることは、彼にはできなかった。
「わかり……ました。いまから向かいます。――はい、それでは。礒橋ディレクターによろしくお伝えください」
「…………」
「……ごめん、めぐる」
「ううん、いいよ」
めぐるが再び寂しく微笑む。さっきの笑顔と比較しても、プロデューサーには、自分とめぐるとの距離が、物凄く開けてしまったように感じられた。
「今日のデート、すっごく楽しかったもん。これ以上ぜいたく言ったら、バチが当たっちゃうよ」
「……ごめん」
「……プロデューサーは謝らないで」
めぐるは言った。そして思った。
そうだ。謝るべきなのは、彼のほうではない。
「礒橋さんの用が済んだら戻ってくるから」
「無理しないでね? 急いでプロデューサーがケガとかしたら、わたしいやだもん」
めぐるはプロデューサーからルームキーを手渡された。彼は戻ってくると言ったが、ここからスタジオまで移動して、仕事を終え、再びここに戻ってくるとなると、どう考えても明け方になる。
仮にだが、たとえいまの電話が「いたずら」だとしても、大して話は変わらない。
プロデューサーは言い直した。
「……めぐるは俺のことは待たないでいいから。……疲れてるだろ? 寝てていいから」
「…………うん」
そして、テーマパークのゲートまでは、二人は一緒に移動した。
「じゃあ、行ってくる」
「……うん、プロデューサー」
別れ際、めぐるは言った。
「……ばいばい」
頷いたプロデューサーの背中が、遠ざかっていく。彼はゲートを出て、めぐるだけがその場に残った。
やがてめぐるはうつむき、その肩がかすかに震えはじめる。堪え切れない嗚咽が、夜のテーマパークの片隅に響く。
「――っ」
不意にめぐるは、何かを決意したように、涙に濡れた顔を上げた。
いまならまだ、間に合うと思ったからだ。いまから全力で走って、プロデューサーの背中に追いつけば、まだ間に合う。そして彼に謝れば、めぐるはまだプロデューサーの恋人でいられる。――さっきのさようならを、本当にしなくて済む。
「プロデューサーっ!」
だから、彼女は足を前に踏み出し、息を切って駆けだした。
プロデューサーこそ、「自分の一番大切な人」であってほしい。めぐるはまだ、そう思っていたから。
しかし――
「違うだろ? めぐる」
足を前に出したと思ったのは、単なるめぐるの錯覚に過ぎない。彼女はただ、もう見えなくなったプロデューサーの背中に向けて、右手を力なく前に差し出しただけだ。その右手すら、背後からの声の主が手を重ね、そっと下ろしてしまう。
「プロデューサーさんには、もう『ばいばい』って言ったじゃないか」
『彼』は、めぐるの腰を背中から抱き締めて、異常な執着のこもった声で囁いた。
めぐるの頬に伝う涙が、地面に落ちた。
==
プロデューサーがめぐるのために予約しておいた高級ホテル。広い室内の大きな窓からは、テーマパークの夜景が一望できる。ルームライトしかついていなくとも、外のイルミネーションの明かりが差し込み、その部屋の中に立つ二人のシルエットが映し出される。
取り立てて特徴の無い平凡な少年が、スタイル抜群の金髪の美少女の背後から、彼女の身体をまさぐっている。少年の手が尻や腰や胸を這い回るたび、少女は口から熱く湿った吐息を漏らし、悩まし気に身体をくねらせる。
「君を放って仕事に行くなんて、本当に酷いプロデューサーだよね、めぐる」
「違う……違うもん、プロデューサーは、わたしのために……――んっ、ああっ♡ んぅ……っ、首にキスするの、やめて……やめてったらぁ……! ――はぁっ、ンっ♡」
「ふぅん、そっか、確かにそうかもね。アイツは『プロデューサーさん』だもんな。――つまりめぐるは、プロデューサーが自分のために働いてくれている最中に、僕とこんなことしちゃってるわけか」
「そ、それは君が――」
「僕が? 僕がどうしたって?」
めぐるは口をつぐんだ。
プロデューサーを呼び出した不審な電話が、「彼」がかけたものであると、めぐるはとっくに気付いていた。しかしだからこそ、彼女がそれを言うわけにはいかない。なぜなら――
「めぐるもわかってたんだろ? 僕がアイツに電話をかけたって。僕がお前とアイツのデートを監視してたって、知ってたんだろ?」
「うう……っ」
「わかってて、アイツに言ったんだよな? 『わたしは大丈夫だから、プロデューサーはお仕事に行って』ってさ」
「ちが――――アっ♡」
「プロデューサーがいなくなったら、僕にヤられちゃうってわかってたクセにさ」
「はっ、ううンっ♡ だめっ♡ そこっ、耳くすぐったいの……っ!」
「ていうことは、酷いのはアイツじゃなくて、めぐるのほうってことだよな?」
プロデューサーの代わりに、僕がお前にお仕置きしてやるよと、めぐるの耳を甘噛みしながら彼は言った。その瞬間、腰が砕け落ちてしまいそうなゾクゾクが、めぐるの脊椎から頭頂までを走り抜けた。
「――ひっ♡ ぐぅうっ♡♡♡」
「あ~あ、今頃アイツ、必死に『礒橋さん』のところに向かってるのかなぁ? ちょっと悪いことしたかもな」
全く――ひと欠片も悪いことをしたと思っていない声色だ。
彼はめぐるの背後から、円を描くように彼女の両胸を揉み上げ、片脚で彼女の膝を割り、股間に太ももをグリグリと押し付けてくる。彼はめぐるの全てを知り尽くしている。文字通り、めぐる以上に。その彼に本気で愛撫されて、めぐるの思考はあっという間に快楽に染め上げられていく。
(気持ちイイっ! 気持ちイイっ! 気持ちイイっ! すごいっ! これ気持ちイイよぉっ! ○○君に触られるの、全部気持ちイイ! どうして!? どうしてこんなに気持ちイイのっ!?)
恋人であるプロデューサーに対する酷い裏切り。そこから生じる罪悪感と背徳感。それは最早、快感を増幅するための一種のスパイスにしかなっていない。
「眼鏡とるよ? 伊達眼鏡のお前もかわいいけど、眼鏡付きでヤるのは今度にしよう。――ほら、こっち向いて舌出して」
「――は、はい……っ。――ンむっ♡ ちゅ♡ ちゅるぅ……♡ れろぉ……♡ ――ぷは……っ、はぁ……っ♡ はぁ……っ♡ はぁ……っ♡ はぁ……っ♡」
「ああ……すっごくエロい顔だよ、いまのめぐる。しばらくセックスお預けしてたもんな。アイツとのデート中も、ヤりたくてしょうがなかったんだろ?」
「ちが、違うもん……っ! 違うったらぁ……! わたし、そんなエッチな子じゃ……――ンぅっ♡ んむ……♡ ちゅぅ……♡」
めぐるが口答えしようとすると、彼がその口を唇で塞いでしまう。いつしか、めぐると彼は身体を正面に向けあい、言葉を交わすことも忘れてキスに夢中になってしまった。
めぐるは目尻に涙を浮かべていたが、彼女の両手は彼の両肩にそっと置かれ、自ら積極的に舌を動かして、彼との蕩けるようなキスにふけっていた。彼がめぐるのことを知り尽くしているのと同じように、めぐるにも、彼の求める動きがわかってしまう。二人の舌は、それこそ深く愛し合う恋人同士でも不可能なほど、ぴったりと息を合わせて交わり、絡みついていた。
「はぁ……♡ ん……っ♡ ちゅるぅ……♡ んぅ……♡」
ますます熱くなっていくめぐるの吐息と、粘りを含んだ水音。
もはやこれは、キスというよりも、舌と舌で行う交尾だった。
(○○君の舌……熱くてヌルヌル……。舌の裏とか……歯茎を舐められるだけで、頭の中、ジンジンする……。これ好き……でも……プロデューサー、ごめんなさい……)
彼から離れなければ、これからもっとすごいことをされてしまうのは承知している。だが無理だ。
(だって……こんなに気持ちイイんだもん……こんなに気持ちイイこと、途中でやめるなんて無理だよぉ……。やっぱりわたしって、エッチな子なのかな……。こんな子は、プロデューサーの彼女になったらいけなかったのかな……)
恋人を裏切り、同級生のセックスフレンドとのディープキスに没頭するめぐる。彼女が彼の肩に置いていた手は、既に彼の後頭部に巻き付き、相手を自分のほうへと引き寄せている。彼もそれに応えるように、めぐるを抱きしめる手に力を込めてくれる。
確かに感じる体温。そこに自分以外の人間がいるという安心感。言葉よりも雄弁な、身体と身体、舌と舌によるコミュニケーション。めぐるがどんなに彼に対する怒りや嫌悪を奮い立たせようとしても、それと相反する暖かな感情が、春を迎えた野原のようにどんどんと芽生え、生い茂り、めぐるの心を絡め捕っていく。
何十分もキスを続けたあげく、ようやく二人は少し離れた。唇と唇の間に、銀色の粘液が橋を作る。それは淫靡にも見えたし、窓から飛び込むイルミネーションに輝いて、ロマンチックにさえ見えた。
そして、その橋をぬぐいとることもせず、めぐるは彼と見つめ合った。
「――あ……」
「めぐる」
彼はめぐるの頬を柔らかく撫で、優しい声で、短く彼女の名を呼んだ。その瞳はかつてないほど真剣で、彼が「本気」なのだということが、めぐるにはわかってしまった。
彼はここで、本気でめぐるを堕とそうとしているのだ。
「脱がすよ」
「…………はい」
だが、それを知ったところで、めぐるには今さらどうしようもできなかった。彼女はただ、頬を染め、しおらしい表情で頷いた。そう、そのときの彼女は、彼の前で、これまでプロデューサーにしか見せたことのなかった表情をしていた。
そこからの彼の手つきは優しかった。まるで、めぐるを抱いてくれるときのプロデューサーのように、とても紳士的だった。
プロデューサーのためにめかし込んだめぐるの私服が、彼の手によって、一枚一枚丁寧に剝がされていく。上着が――次にスカートがカーペットの上にふわりと落ち、あっという間に下着姿にされてしまう。
彼はそこで手を止めて、めぐるの引き締まった腹を、指でついっと撫で上げた。
「――きゃっ、んっ♡」
「綺麗だよ。服を着てるめぐるもかわいいけど、脱いだらもっと綺麗だ」
「はぁっ♡ はぁっ♡ はぁっ♡ はぁっ♡」
彼に押されて、めぐるは一歩ずつ後退していく。その先にあるのは、完璧にメイクされたダブルサイズのベッドだ。
膝裏にマットレスの柔らかさを感じた次の瞬間、めぐるはそのベッドの上に仰向けに寝かされていた。
「セックスするけど、いい?」
「――っ」
めぐるは溢れる唾を飲み込んだ。そして、彼女は答える。「ダメだよ。わたしにはプロデューサーがいるから」と。……そう答えたかった。
しかし、現実はそうはならない。
「いい?」
「……はい……セックス、してください」
「…………」
「わたしも……君とセックスしたいの。もう我慢できないの……。気持ち良く、なりたいの……! お願い……お願いだから……」
ごまかしきれない、抗いきれない肉の欲動に、めぐるは敗けた。あまりの自己嫌悪に涙を流しながら、彼女は正直に懇願した。
そして、少女の懇願を受けた彼は、優しく彼女の上に覆いかぶさり、暗闇でも輝く金色の髪を、よしよしと撫でた。
「めぐるは悪くないよ」
「う、うう…………」
「めぐるは、ぜんぜん悪くない」
「ぐすっ……ぐすっ……」
「めぐる、大好きだよ」
縋るように抱き着いてくるめぐるに愛の言葉を囁くと、彼はめぐるの下着を脱がせ、再び愛の言葉を囁き、愛撫を始めた。
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「……くそ、渋滞か…………」
ちょうどその頃、めぐるのプロデューサーは首都高で渋滞に捕まっていた。
めぐるを残してテーマパークを出たあと、彼は電車に乗り、プロダクションの事務所に向かった。私服から事務所に置いてあるスーツに着替え、ついでに社用車に乗るためだ。
「やっぱり、電車のほうが良かったかな……くそ……」
だが、その判断は間違いだったかもしれない。プロダクションのロゴを付けたバンは、進むことも戻ることもままならない車の群れの中央にいる。
「めぐる……やっぱり怒ってるかな。……怒ってるよな」
取引先に呼び出された理由も気になるが、それ以上に気にかかるのは、恋人であるめぐるのことだ。
プロデューサーは、助手席に置いたスマホの画面をチラリと見た。できればめぐるにフォローを入れておきたい。だがしかし、運転中の通話は差し控えなければならない。めぐるも、事故だけは起こさないようにと気遣ってくれた。
「あー……くそっ!」
気ばかり焦ってしまい、彼らしくない言葉が口を突いて出る。そこでようやく、車の列がノロノロと進み始めた。
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「はぁっ♡ はぁっ♡ あっ♡ う゛ぅうっ♡♡ あっっ♡♡ そ、そこぉっ♡♡」
「ここがイイの?」
「うんっ、そう、そこっ。そこトントンされるの、すっごいビリビリくるの! あっ♡ あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡」
「めぐる、めちゃくちゃエッチな顔してるよ? そんなに気持ちいいんだ?」
「そ、そうだよっ! 気持ちイイのっ! おチンチン気持ちイイのっ! セックスするの幸せなのぉっ!」
汗だくになっためぐるは、何かのタガが外れてしまったように、素直に快感を口にしていた。ベッドに仰向けになっためぐるの両ひざを、「彼」が抱え込んでいる。彼はめぐるの長い脚をいやらしくM字に開脚させて、我が物顔でマンコにチンポを突っ込んでいる。
勃起した肉棒はピンク色のゴムに包まれていて、辛うじて避妊だけはしていることがわかる。しかし、そのゴム全体をぬらついた粘液が覆っているせいで、彼らが純粋に、快楽を追求するためだけにこの行為に勤しんでいることが強調され、より淫靡で背徳的な空気を作り出していた。
少年が前後に腰を動かすたびに、めぐるの胸にある二つのボールが奔放に揺れる。彼女の表情は恍惚としていて、口は半開きになっている。彼のチンポが膣内を往復し、めぐるの弱点を一定のリズムでピンポイントに突いてくる。難しい言葉は何も思い浮かばない。ただ気持ちいい。
「めぐる、そろそろ射精するぞ!」
「うんっ♡ 出してっ♡ わたしのナカで出していいよっ♡ 出していいから、わたしもイカせてぇっ♡♡」
「ああ、もちろんイカせてやるさ!」
「ひぃっ!? ぐっう♡ しょれっ♡ ぐりぐりしゅごいっ♡ しゅごぃいいっ♡♡」
彼に抱えられためぐるの脚が、指先までピンと張り詰める。弓なりに反った背中は、ベッドシーツとの間に隙間を作った。
プロデューサーが面倒を見てくれない、めぐるの内側にみなぎる性欲を解消するための、浮気相手との気持ちよすぎる寝取られセックス。する前とした後は自己嫌悪と後悔に襲われるのに、している最中は幸せで幸せでしょうがない。
彼とのセックスは、めぐるにとって、まさに高純度の麻薬のようなものだった。
「はっぐ♡♡ イっ、イグっ♡♡ イッぐ♡♡ もうらめっ♡♡ イクのガマンむりっ♡♡ イクっ♡♡ イクイクイクっ♡♡ イっっぐぅうううううう♡♡♡♡♡♡」
「ああああ!! めっちゃ締まる!! 出る!! ううううっ!!!!」
「あ゛っ♡ お゛っ♡ ひっう♡♡ お゛ーっ♡♡ あ゛ーっ♡♡ ひぅ……♡♡ おチンチン……ビクビクしてるよぉ……♡♡♡♡」
「ああああクソっ、久しぶりだから、ザーメン全然止まんないよ……!!」
「はぁ……♡ はぁ……♡ おチンチン……しゅごい……♡♡♡ えへへ……♡♡♡」
めぐるは全身を激しくビクつかせ、脳内で弾けるイキ快楽のスパークで頭を真っ白にした。知能指数が幼稚園児以下に低下した彼女は、だらしない笑みを浮かべながら、ゴムを破りそうな勢いで噴き出る間男ザーメンの熱さを、胎内で感じていた。