「…………出ないか」
めぐるのプロデューサーは、意気消沈しながらつぶやいた。渋滞に巻き込まれた車内。彼が何度コールしても、めぐるは電話に出てくれない。
(いくら取引先からの呼び出しだからって、デートを途中ですっぽかしたのは不味かったよな……)
やはり自分は、彼女の機嫌を損ねてしまったのだろうか。そう思ってため息をつく。
しかも、こういったことは今回だけではない。彼は、正式に付き合ってからも幾度にわたって、「仕事」を理由にデートの約束を反故にしてきた。今度ばかりは、めぐるを本格的に怒らせてしまったとしても不思議ではない。
(いや、めぐるだって分かってくれてるさ)
そうだ、自分がこうしているのは、あくまでもめぐるのためだ。だから納得してくれているはずだ。現に、彼女も大丈夫だと言っていた。そう、大丈夫だ。
(――それに、めぐるのことだから、案外もう寝ちゃったのかもな)
まだ高校生が寝るには早い時刻。しかしめぐるも疲れていた。今頃彼女は、ホテルの上等なベッドの上で、すやすやと眠っているに違いない。無理やり思考をポジティブなほうに持って行って、プロデューサーは運転に集中することにした。
だが、その頃――
「あー……めぐる、最高だよ」
「あ゛う゛……っっ♡♡ ぐ……っ♡♡ あ゛……ひっ……♡♡」
「お前とのセックス、何発射精しても全然チンポ治まる気がしないよ。こんな最高の『彼女』よりも仕事を優先するヤツなんて、忘れちゃえよ」
「い……や……あ゛っっ♡♡ だめ、そこだめぇっ! そこグリってするの――――お゛っっっ♡♡♡♡」
「何がダメだって?」
プロデューサーの恋人であるめぐるは、彼女のセフレである同級生の「彼」によって、膣内を含む身体の隅々の味を堪能されていた。
高級ホテルのベッドシーツとカーペットには、既に三個の使用済みコンドームが転がっているのに、彼がめぐるを貪る勢いは、全く衰えていない。
めぐるの豊満な胸をガラス窓に押し付けての立ちバック。テーマパークと都会の夜景を一望しながら、全国の青少年が憧れるアイドル「八宮めぐる」とセックスする優越感。それは彼を萎えさせるどころか、射精するほどさらに肉棒が硬くなっていく。
「ほら、ごらんよめぐる。綺麗な景色だと思わない?」
「あ゛うう……っ」
確かに素晴らしい夜景だ。テーマパークのイルミネーションが、別世界のように輝いている。どこか、めぐるたちのライブ会場と似た雰囲気もある。これを心が通じ合う恋人と甘い空気の中で眺められたなら、どんなに素晴らしかったことだろう。
しかし、いまのめぐるは、「彼」の片手にあごをグイっと掴まれながら、もう片方の手でクリトリスを愛撫され、膣内に深々と突き刺さった彼のペニスによって、子宮をグイグイと圧迫されていた。
彼とめぐるは対等ではない。彼はめぐるのご主人様で、めぐるは彼の性奴隷なのだ。
めぐるとプロデューサーは対等なのに。
めぐるは彼の言いなりで、彼のしたいように身体を差し出すしかできない。
「どう? 答えろよ」
「はい゛……とっても、きれいです……ぅっ♡」
「僕のチンポは? 気持ちイイ?」
「気持ちイイ……っ、おマンコ全部征服されて、気持ちイイの……っ♡♡♡ あ゛……だ、だめ……ソコ、触ったら……」
「素直に答えられたご褒美に、またすっごいのイカせてやるよ」
「だめぇ……っ! あ、あ、あ♡ あ゛ーっ♡♡♡ お゛っお゛~~っっ♡♡♡」
ガラス窓にへばりついためぐるが、精一杯無様なイキ顔を晒す。普段ファンたちを魅了する歌声を発する口から、濁音混じりのアヘ声が奏でられる。こんな自分を、めぐるは「彼」以外に見せたことが無い。
彼女の恋人よりもずっと若い――しかしずっと逞しいオスの肉棒が、めぐるの子宮を身体ごと持ち上げる。めぐるはつま先立ちになって、下半身をガクガクと震わせ、股間から透明な潮をガラスに向けて噴きだしながら、恐怖すら覚えるほどの性快楽に悶えていた。
そうやって彼女の頭の中に摺り込まれていくのは、自分が「彼」の所有物なのだという実感。彼からはもう一生逃げられないのだという確信。
同時に、この快感を素直に受け入れてしまえば、もっともっと気持ち良く幸せになれるという堕落への誘いが聞こえてくる。頭の中はぐちゃぐちゃで、彼に触られている部分全てが気持ちイイということくらいしかまともに認識できないのに、その誘惑の声だけは、やけにはっきり明確に聞こえていた。
なぜなら、それはめぐる自身の心の声だからだ。
(イってる! すっごい気持ちイイ! 頭の中が痺れて、ジンジンして、ふわふわで、よくわかんないっ! でも気持ちイイっ! おチンポ気持ちイイっ! もっともっとエッチされたい! セックスしたい! おチンポでおマンコずんずんして欲しい! ダメっ、消えちゃう! ■■■ュ■■ーとの想い出、全部このおチンポにかき消されちゃうよぉっ! でもダメっ! だって気持ちイイんだもん! こんな気持ちイイのガマンできるわけないんだもん!)
もう認めてしまえば楽になれるのかもしれない。
こんなに気持ち良いなんて、普通は有り得ない。彼とのセックスでこんなに感じるのは、彼が自分の運命の人だからかもしれない。神様が、彼とセックスするために自分の身体を作ったからかもしれない。
もう後戻りなんてできない。そんな道は、とっくに失われていた。ただ自分がそれを認めようとしてこなかっただけだ。自分はもう、彼とのセックス無しでは生きられない。
そう思いながらも、激しく深イキしつつ、快楽に弱い自分が情けなくて涙を流しながらも、めぐるはプロデューサーを責めようとはしていなかった。
「イクぞめぐる! お前も一緒にイケ!!」
「はい……っ♡♡ ぐすっ、イキます……っ♡♡ あ゛っ♡ お゛っう゛♡♡ う゛っ♡う゛っ♡う゛っ♡お゛っ♡♡♡」
「うううっ!!!!!」
「――お゛~~~~っ♡♡♡♡♡ い゛っっぐ、あっ♡♡♡ い゛、う゛~~~~~っっ♡♡♡♡♡♡」
悪いのは全て自分だ。プロデューサーは悪くない。だから――
(……ごめんね、■■■ュ■■■…………)
顔さえぼやけて思い出せない恋人に謝罪しながら、めぐるは「彼」と同時絶頂し、あまりにも幸福な快楽の果てを味わっていた。
そして、まるでめぐると彼を祝福するかのように、テーマパークから打ち上げ花火が上がり始める。脳内麻薬に満たされためぐるの視覚には、咲いては散っていく色とりどりの火花が、かつて見たことがないほど美しく映った。
「……綺麗だな、めぐる」
「…………うん……♡♡」
めぐるはそうやって、彼と繋がってイキながら、恍惚とした表情でその花火を眺めていた。
ここには、二人だけの世界があった。ベッド脇に投げ捨てられためぐるのスマホ画面がぼんやり輝き、プロデューサーから着信があったことを通知している。しかし、そんなものが割って入れるほど、彼とめぐるの間にできた繋がりは浅くなかった。
==
「えっ……? もう退社された……ですか?」
「ええ、そうですよ。礒橋さんならもうとっくに」
「わ……かり、ました」
呼び出しを受けたスタジオに到着してみれば、彼を呼び出したはずのディレクターは、数時間前に帰宅したのだという。警備員にそれを聞かされて、プロデューサーは戸惑った。憤りが込み上げてきたが、相手はプロダクションの重要な取引先である。しかも直接関係のない警備員相手に、強くは出られなかった。
車に戻り、ドアを勢いよく閉めた。こんな事なら、めぐるとのデートをすっぽかした意味は何だったのか。渋滞に巻き込まれてまでここに来たのは、いったい何のためだったのか。腹が立つが、それをぶつけられる対象は、助手席のシートくらいのものだった。
「くそっ! ……何だったんだ? いたずら電話か? ……でも、まあ仕方ないか。礒橋さんには明日電話するとして――……めぐるはどうしてるかな」
もう一度スマホに手をかけてみる。電話しようとして、彼は思いとどまった。もう深夜と言っていい時間だ。さすがに寝ているに違いない。大きくため息を吐くと、彼は車のハンドルに額を押し付けた。
「……めぐる」
彼女には、本当に悪いことをしてしまった。謝っても謝りきれないが、せめて謝りたい。本当なら直接声を聴きたいが、メッセージだけでも入れておこう。
「……今日はごめん。……今度絶対に埋め合わせするよ。……明日また、事務所で会おうな」
そうやってスマホをタップしていき、最後に「おやすみ」というメッセージを送った。
しばらく待ったが、返信はもとより、既読も付かなかった。
(明日、ちゃんと謝ろう)
明日も休日で、午後にはレッスンがある。そう決めると、プロデューサーは車のエンジンをかけた。一瞬、テーマパークのほうに車を走らせようかと考えたが、彼は思いとどまった。
(そうだな、明日もあるんだし、明日でいいよな)
明日のレッスンに、めぐるはちゃんと現れると、彼は信じていたからだ。多少不機嫌な顔を見せられても、そこでリカバーできるはずだと考えていたからだ。
しかし、まさにいま、大切な恋人が他の男のモノにされているなどとは、彼は想像もしていなかった。
==
「はっ♡ うっ、うぅっ♡♡ ひっあっ♡♡ お゛っ♡♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
高級ホテルの一室。ベッドで仰向けになった少年の上に跨って、金髪の美少女が自分から腰を振っている。少女は髪を振り乱し、玉のような汗をまき散らしながら、自分で自分の両胸を揉みしだいていた。
高価なベッドが軋みを上げるほど激しい腰振り。コンドームを被せた勃起ペニスが、ずちゅずちゅと音を立てながら、彼女の披裂をめいっぱい押し広げ、出入りしている。
少女の身体の下にいる少年は、少女の脚に軽く手を添えただけの一番楽な姿勢で彼女の痴態を眺め、チンポを包む極上の媚肉の味わいに感じ入っていた。
「はぁっ♡♡ あっ♡♡ イっ♡♡ ぐっ♡♡ ぐぅ~~っ♡♡ ――あっ♡♡ ――はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
声と音は際限なく昂っていき、やがてある一点に到達すると、少女の身体はブルブルとわなないた。彼女はそれから糸が切れたように脱力し、激しく息をついた。
「めぐる、騎乗位でヤるのどうだった? 僕が腰を動かさなくても、ちゃんとイケた?」
「う、うん……♡ はぁー……ふぅ~……これはこれで、すっごい気持ちイイよ。……ね、君もよかったかな?」
「もちろん。めちゃくちゃザーメン出たよ。僕のチンポがナカでビクついてるの、めぐるにはわからなかった?」
「ううん、わかってた……♡ おチンチン凄い膨らんで……わたしのお腹のなかで、い~っぱい暴れてたよ」
「そっか。――ほらめぐる、おいで」
「はい……♡ ン、ちゅ……♡」
めぐるは騎乗位の姿勢から自分の上半身を「彼」の上半身に重ねると、当たり前のように、彼との事後のキスを貪り始める。性快楽と恋愛感情の区別がつかなくなった。ねっとりとした甘いキスを彼に捧げ、彼の唇と舌を熱心についばみ、彼の唾液を飲み干していく。
彼らは抱き合いキスを続けながら、ごろりとベッドの上を回転し、上下逆になった。彼が唇を離すと、今度は下になっためぐるは、もう一度とねだるように目を閉じて唇を差し出す。彼は少し笑い、二人はキスを再開した。
「んぁ……っ♡ ハむ……♡ ちゅ……♡ じゅ……る……っ♡♡」
「――……ふぅ、めぐる、キスはもうこれくらいでいいだろ?」
「やだぁ……♡ もっとぉ……もっとするのぉ……♡ ん~……っ♡♡」
「おいおい――んっ」
「ちゅ……ぱ♡ じゅるぅ……♡ はぁむ……♡♡ はぷ……♡♡」
そうしているあいだも性器同士は繋がって、腰がゆるゆると動いている。二人がしている行為は、誰がどう見ても愛し合う恋人同士の甘い性交だった。
もうテーマパークの花火は終わり、外は静かになっていた。ちょっと前に日付も変わった。それでも、彼らは交尾を止めようとしない。当たり前だ。こんなに楽しくて気持ち良くて幸せなことを、途中でやめる道理があるだろうか。体力が尽きるまで、彼らはセックスするつもりだった。
「ほら、めぐる、いい加減にしろって」
「ちゅ……♡ ん~……♡ ちゅ……♡」
「おいちょっと、やめないとくすぐるぞ? ――それっ!」
「――きゃっ!? んふふっ、あはっ、やめって、やめてよーっ♡♡ ――ふぁっ♡♡ ……またカチカチになってるね……♡♡ ――え? あっ♡ あっ♡ あああっ♡♡」
睦みあう二人。時間の経過と共に、室内に使用済みコンドームが散乱していく。めぐるもどこか吹っ切れたように、セックスを楽しんでいた。
セックスして、セックスして、セックスしまくって、身体中があらゆる体液でドロドロのグチャグチャになって、さすがに一度休憩してシャワーを浴びようということになった。
「ああんっ♡ ダメだよー♡ ダメだってばー! ここでシたら洗えないから……♡♡ ンっ♡♡ ……はぁ~…………♡♡ また入っちゃった……♡♡」
浴室からも、シャワー音に混じって、パンパンと肉と肉を打ち付け合う音が聞こえてきた。そのリズミカルな音は、くぐもった嬌声と共にしばらく続き、やがて途絶えた。二人がバスタオルで身体を拭きつつ、ホカホカと湯気を上げながら浴室から出てきたときには、使用済みコンドームが一つ増えた。
もしかしたら、めぐるは割り切り方を覚えたのかもしれない。プロデューサーへの愛情は愛情として大切にとっておいて、セックスはセックスとして楽しむ方法だ。それはそれで、十分に「堕ちた」と言える。
だが、「彼」は満足していないようだった。
「――? 何してるの?」
「いや? 別に」
とぼけて笑顔で誤魔化したが、そのとき、彼はめぐるのスマホを、めぐるに悟られないように彼女から見えない位置に置きなおした。「プロデューサー」からのメッセージ通知など、いまの二人にとっては邪魔なだけだと思ったのだろう。
バスタオルを身体に巻いためぐるが、朗らかにさえ見える表情で問いかけた。
「ねぇ……もう一回する?」
「もちろん。朝までするって言ったろ?」
めぐるはゴクリと喉を鳴らし、期待のこもった声で「そうなんだ……」とつぶやいた。
彼がめぐるを抱きしめる。二人はまた長いキスをして、互いの身体を性急にまさぐる。はらりと解けたバスタオルが、床に落ちた。
「――あ、ま、待って」
「ん? どうかした?」
「え、ど、どうかって…………ゴム、まだしてないよ……?」
「あれ? そうだっけ?」
「そうだっけって……そうだよ」
めぐるは頬を膨らませた。彼女のちょうどヘソのあたりに、彼のパンパンに張り詰めた亀頭が、むき出しの状態で突きつけられている。ひょっとして、自分にコンドームを付けてもらいたいのかなと、めぐるは考えた。
「しょうがないな~」
彼女はそう言うと、ヘッドボードに置かれた新しいゴムを取るため、ベッドのマットレスの上に乗った。白人とのハーフならではのキュっと引き締まったヒップを、彼に見せつけるように。
ここまでにだいぶ消費したが、コンドームはまだ何個か残っていた。朝まではもたないかもしれないが、まだまだセックスできる。一つを手に取り、めぐるが彼を振り向こうとした瞬間、彼女は急に押し倒された。
「きゃっ!?」
めぐるを押し倒したのは、もちろん「彼」だ。その勢いで、めぐるの手からコンドームが離れた。めぐるの手首を掴んだ彼が、笑顔で――しかし目だけは真剣な顔で、めぐるに言った。
「な、なぁに……?」
「なぁめぐる、つけずにシてみようよ」
「え……」
「次はナマでセックスしよう。意味は……わかるよな?」
わかる。わかるが、どうして急に。
あれだけ射精したのに、なお硬く反り返ったモノが、彼の股間から伸び、めぐるに突きつけられている。
「ゴムなんかしないでさ、ナマでセックスしようよ。そっちのほうが絶対に気持ちイイよ」
「だ、ダメだよ」
「――? なんで?」
とぼけながら、彼はめぐるの首筋や鎖骨にキスを落とし始める。ツンと立った乳首を吸われて、めぐるの身体が跳ねた。
「――ひゃっ、うっ♡♡ だ、だって、コンドームつけなかったら、妊娠しちゃうよっ」
プロデューサーに申し訳ないからという台詞は、この段階では、もはやめぐるの口から出てこなかった。
「めぐる、今日は危険日なの?」
「それは――」
プロデューサーと初体験を済ませてから、そういった周期はきちんとめぐるの頭の中にあった。それによれば、今日は特に危険とは言えない。めぐるの表情を読み取った彼は、ニヤリと笑った。
「安全日ならいいじゃん。ヤっちゃおうよ」
「そんな、も、もし赤ちゃんできちゃったら――あっ♡♡」
「ナマのほうが絶対にイイって。めぐるも気持ち良くなりたいだろ?」
「なりたい――けどっ」
「じゃあいいじゃん」
実を言えば、彼の手にはもう一つ交渉材料があった。それは、めぐるのプロデューサーが、元カノと会っている現場の隠し撮りだ。それを見せれば、めぐるもプロデューサーに不信感を抱くかもしれない。――だが、彼はその手段を使わなかった。
「めぐるも、僕とナマでヤってみたいだろ?」
そんなものより、いまはめぐるの意志で流されて欲しい。そう思ったからだ。そして、めぐるはもう、この誘惑に抗えない。その確信があった。
「一回だけ、試しにさ」
「――あっ♡ うっ♡♡ ううっ♡♡」
詐欺師の常套句を口にしながら、開発しきった彼女の身体を手と口で蕩かしていく。鈴口から垂れ落ちるカウパーをめぐるのヘソ回りに塗り込んで、ペニスの熱さを彼女に伝える。
「……ほんとうに、いっかいだけ?」
彼女が恐る恐るそう言ったときは、それだけで射精しそうになった。その衝動を必死でこらえ、彼は優しく――いままでで一番優しく愛情のこもった笑顔で頷いた。
「もちろん」
「…………ほんと?」
「ああ、約束する」
「…………」
「めぐるが嫌ならしないよ」
彼は白々しくもそう言った。
それを耳にしたとき、めぐるの内側にはどういう葛藤があったのだろう。妊娠の恐れ、それによるアイドル活動への不具合、そもそも学生としてそんなことをしていいのか。色々なことを思い浮かべたに違いない。
ただ確かなのは、めぐるは確実に、彼が嘘をついていると知っていた。
一度許せば、彼は何度でもめぐるのナカにナマで射精するだろう。それからはコンドームを付けないことが当たり前になって、めぐるの子宮は常に彼の精液で満たされて、彼の匂いと色が取れないようになってしまうだろう。彼はそういう人間だ。めぐるはそれを知っていた。
受け入れてはいけない。100%その判断が正しい。めぐるの理性と良心もそう言っている。
だが――
「……いっかいだけ、なんだよね?」
「ああ」
「……いっかいだけなら」
「…………」
「いっかいだけなら……コンドーム、しなくても……いいよ」
快楽の虜になっためぐるの身体は、いともたやすく理性と良心を打倒してしまった。
めぐるは、自分の秘所に彼の熱いモノが押し付けられるのを感じた。