アイアンフィストトーナメントに参加したリリは対戦相手を確認して満面の笑みを浮かべた。
(風間飛鳥と一回戦であたるなんて! お互いまったく消耗していない、疲労を言い訳にできない初戦! もっとも注目される決勝であたるのがベストと考えていたけれど、これはこれで……今回は飛鳥と闘うという以外に目的はないし、この一戦にすべてをかけるわ!)
闘志を燃やしていると大会のスタッフがやってきた。
リリは首をかしげた。
「なに? ……検尿? そんなものこれまでなかったじゃない!」
「今回からですので」
「そんなの必要ないわ」
「検査を拒否されると大会には参加できなくなってしまいますが、よろしいですか?」
「なっ!?」
ライバルと闘えなくなるのは困る。
「わ、わかったわ。どうすればいいの?」
「ではさっそく」
お手洗いへと誘導された。
スタッフがなにやら筒状のものをとりだす。
尿を入れる容器だろう。
「お召し物を、下だけでいいので」
「はあ!? ちょっと待ちなさい!」
採尿容器をつきつけられ令嬢は声を荒らげた。
一緒に個室に入った時点でおかしいとは思っていたがまさかここまでとは。
「この容器に尿を入れればいいんでしょう? わかったから出ていって。あとはわたくしがやりますから」
「私が見ている前で採尿していただきます」
「はああっ!?」
令嬢は羞恥と怒りで顔を真っ赤にする。
「どうしてそんなことをしなくちゃいけないの!?」
「検査ですから」
「あなたが見ている前でやる必要はないでしょう!?」
「不正がないようにです。お茶でも入れられたら困りますから」
「そんなことしないわ!」
「規則ですから」
令嬢は唸った。
スタッフの前で放尿するなど恥ずかしくて仕方がないがアスカと闘えなくなるのは困る。
「……わかりました。でも、あなたではなく女性の方とかわってくださる?」
「できません。人員不足なので」
「はあ!?」
その後も令嬢は文句たらたらだったが、大会に出場するため、ライバルと闘うために検査を受けざるをえなかった。
下着を脱いで、スカートをめくりあげた。
白い肌、土手高の陰肉、その中心に走る深い縦皺があらわになる。
恥じらう少女の頬のような色素沈着があった。
ここが特別な場所であると示しているかのようでいやらしい。
令嬢の前には男がひざまずいて容器を持っている。
男の位置からだと令嬢の恥部がよく見えるだろう。
「もっともちあげてください」
「うっ、うるさいわね……」
アスカとどうしても闘いたいリリはスタッフの指示に従う。
股間はもちろん、へそまで見えるほどスカートをもちあげた。
「じろじろ見ないでくださる?」
「不正がないようにです」
「ぐっ……」
リリは顔をしかめた。
(どうせ何を言ってもムダでしょうね。さっさと終わらせてやるわ)
股間の下につきつけられた容器をにらみつける。
排尿しようとするが、出そうもない。
「そんなに見ないで……そんなに見られたら出ないわ……」
「慌てなくてもいいですよ。時間はたっぷりありますから」
「んぅっ……うぅ~っ……」
やはりこう見られていては出そうもない。
不正がないように、なんて言っているが、きっとそれだけではない。
令嬢はスタッフの男に穴が開くほど恥部を見られた後、ようやく尿を出すことができた。
「うぅ……♥」
(ああ、出てるっ……オシッコするところ、正面からじっと見られてるっ。お父様にも見られたことないのにぃっ)
花の色をした肉にある針で開けたような穴が口を開けて、じょぼじょぼと尿を吐き出す。
「もういいでしょう……」
「まだです。全部出しきってください」
「そんなぁ……」
全部出す必要があるのだろうかと疑問に思ったが、排尿を止めることもできないし、逃げ出すこともできない。
膀胱にたまっていたものを出し終え、令嬢はふぅっとため息をついた。
「これで満足かしら?」
涙目で男をにらみつけ、なげやりに言う。
「大きめの容器にしておいてよかった」
「なにか言いました!?」
「いえ。では」
「なにするの!? 自分で拭くから! よけいなことしないで」
「これも検査のうちですよ」
「え……?」
幼女のように股を拭いてもらう。
幼女ではない、立派なレディであるリリの顔は火が出そうなほど赤くなっていた。
「恥ずかしいわ……」
「大会に参加される方は皆やっていますよ」
「そうなの?」
男の前で羞じらいつつも放尿し、股間を拭かれるライバルの姿を想像する。
(羞じらい? 彼女は案外平然とやっているかも……うーん……)
ライバルのことを考えて羞恥を紛らわす。
「ご協力ありがとうございました」
令嬢の出したての尿がたっぷりと入った容器に本名がかかれたシールが貼られる。
(出すところをみられたうえに、出したものをこれから別の人にも見られるなんて……恥ずかしいわ……)
これがあのお嬢様の……思ったより……
お嬢様もオシッコをするんだ。
等々幻聴が聞こえて令嬢はふらりと倒れそうになった。
(けれどこれで風間飛鳥と闘えるわ!)
一回戦。
不戦勝を告げられリリは呆然とする。
「ちょっと待ちなさい! どういうことなの!?」
「だから不戦勝です」
「不戦勝の理由を説明しなさい! 理由を!」
スタッフの説明によると飛鳥は尿検査を拒否して失格となったらしい。
「はああああああああ!?」
「二回戦はこの日程で。直前に尿検査をしますので――」
「もういたしませんわ! 不戦敗で結構です!」
スタッフから渡された紙をビリビリと破き踵を返す。
(飛鳥と闘えると思ったからあの恥ずかしさに耐えたのに!! これじゃあなんのために恥をかいたのかわからないわ! )
怒りで顔を真っ赤にして歩を進める。
「どういうこと!」
「今回の目的はあんたと決着をつけることだけやったし、ええかなって……だって恥ずかしかったんやもん」
「なっ!? 私はあなたと対戦できると思って我慢して検尿したのよ!? なのに、あなたは……」
「え!? あんた検尿したん? あ、もしかして女の人やった? ウチはなんか男のひとやったから断ったんやけど」
「わたくしのところにきたのも男でしたわ!」
「あらー。ん? じゃあ男の前で小便したん?」
「う……」
「ま、まあ、検尿なんて、このぐらい大きな大会になればやるもんやから、そんなに恥ずかしがらんでもええやん」
「それは同性のスタッフの前でしょう!? 私は異性の前で……ああああああっ!思い出しただけで恥ずかしい! ゆるさないわ!」
「なんでウチに八つ当たりすんねん!? 大会の主催者に殴り込みにいけや!」