アーシアが家に来てから四日目、朝。
「あ、んくぅぅぅぅう♪」
聞き覚えのある幼い矯声と射精後の気だるさで目を覚ます。
「おはよう、フィー」
「あ、イッセー、おはよ、うぅぅ♪」
かくかくと体を上下させながら淫らなダンスを俺の腰上で披露する。幼いため、少しぽこりといつもより腹が膨れているのが印象的で背徳感を覚える。
あーあー、ベットシーツが愛液でぐっしょりじゃねーか……ま、今日洗うつもりだったしいいか。……俺ってば、自分の女に甘いのかな。意外な発見点だ。
「それで? なんでやってんだ?」
「んぁっ、わかんない、なんか、したくなったのぉぉぉぁぁぁぁっ♪」
そう言いながら忙しなく揺すれる少女にいとおしさを覚えた。
「ああもう、可愛い奴め!」
「んにゃぁぁぁぁあ♪」
さっさと済ませて朝食作ってしまおう。やれやれだぜ……。ま、こういうところも可愛いんだけどな。
★
「んじゃ、いってきます」
「ん。いってら」
「学校頑張ってください!」
イッセーが扉を閉めると、アーシアとオーフィスの二人きりになる。
ちなみにだが、オーフィスにも料理くらい作れる。魔法や魔術を使っているのか、ふわふわと浮かんで作っているのをアーシアは何度か目撃している。
オーフィスは知識こそあれど無益な知識として使わず埃を被っていた。が、イッセーと暮らしだしてからそういった知識が役に立つ事を彼女は知った。
知識のみで実践がないだけなので、数回こなせば鼻唄混じりでふわとろオムライスから本格フルコースまでなんでもござれ。
そんな風に腕を振るえばイッセーが頭を撫でて誉めて可愛がってといいこと尽くし。
故に暇な時間は読書をしているわけだ。最近の愛読書は『時間短縮術―プロが教える家事の時間短縮!― 著:紅い館の冥土さん』だ。
これによりオーフィスによる掃除洗濯の時間が格段に縮小し、調理時間の調整までお手のものになるだろう。
普段なら拙いとはいえアーシアも手伝うのだが、今日に限ってはいない。
テーブルを高速で拭きながら疑問に思ったオーフィスだが、アーシアが家事を手伝わなくても問題はないので、武器ははたき、盾は雑巾、兜は三角斤、鎧はエプロンという装備に変更した。
夏場に出てきてすばしっこくて黒光りしてて光が苦手でたまに飛ぶ三億年前からの強者に立ち向かうため、
要するに冷蔵庫の下でG相手に小型化して無双するだけなのだが。服はともかくなぜはたきと雑巾まで小型化しているのかというと、そういう仕様だ。それ以来、奴等もオーフィスを恐れてシャバに出てこれなくなったという。
そんなオーフィスはさておき部屋に籠って考え事をしているアーシアはというと、悩んでいた。
もちろん命題は「悪魔になるか否か」。
悪魔になればイッセーとずっといっしょ。でも、それは背信行為なのでは? と。
しかし教会からは異端として放り出されたわけだし、でも信仰は捨てられない。
あーでもないこーでもないと思考するも、彼女は答えを出すことができていない。
(ああ神よ、これも試練なのですか?)
いるかどうかも怪しい神に祈るアーシア。
(こうして祈ることも、聖書を読むこともできなくなるのですよね……で、でもでも、イッセーさんのあんな悲しい表情……うううう!)
イッセーの変態思考など露知らず、真剣に悩むアーシア。
それに……。
(イッセーさんと一緒じゃないのは、嫌です……あぁ、でも神の教えに反してしま……あれ?)
神の教え。神の教えには、「悪魔になるな」というものは無かった。神がいるなら転生システム等を認めるはずがない。
なのに何故?
(……神は悪魔に惑わされるなという教えは残されましたけど、悪魔になるなという教えは……どうして?)
アーシアは疑問が湧いてしまった。湧いてしまった疑問は次の疑問を呼ぶ。
(神の教えは司教様や司祭様が教えてくださいました。でも、それは本当に正しいのでしょうか……?)
疑問は疑問を呼び、さらにアーシアを追い詰める。
アーシアは『頼る』ことを知らない。
だから、がんじがらめになってしまっていた。
アーシアは『妥協』することを知らない。
だから、うんうんと唸りながら考え続ける。
全ては、無知故に――。
そして彼女は気づいていない。路頭に迷うところだったのを救ってくれた
彼女は知らない、教会を追われた身である彼女には選択肢はもう残されていないということに。
彼女は知るよしもない、一誠による甘い誘惑に傾いているのを。
堕ちた少女が再び堕ちるのは――
「ぶい」
――少なくとも龍神様がGを殲滅する時間よりは長いであろう。