今日も朝練バイトに悪魔の仕事と忙しい。フィーに頼んで抜くのは朝だけにしてもらっている。夜抜くのはキツいからな……。
ぱたりとベッドに倒れこむ。といってもそこまで疲れているか、と問われると半分は気分の問題だと答える。
突如魔方陣が部屋に開かれる。リアスが魔方陣で跳んできたようだ。……ずいぶんと切羽詰まった表情で。
そしてそのリアスは口を開く。
「イッセー、お願い。抱いて。至急お願いするわ」
現在、全速力で俺のなかでリアス・グレモリーの株価が大暴落中だ。失望や驚愕より先に憤怒が来た。お前はそんな簡単に股を開く安い女じゃないだろう!?
「だ、抱けだと?」
戦く俺に構わず、平然とリアス・グレモリーは言葉を吐く。
「イッセーは経験があるのかしら?」
ぷつり、と何かが切れた。
★
「……」
イッセーの纏う空気が変わる。あからさまに激怒している。しかしリアスはそれどころではないため焦りながらも服を脱ごうとする。
だが、脱ごうとするだけだった。イッセーにがしりと腕を捕まれ、狼狽える。
「そんなにお望みならヤってやるよ」
ぎらりと、まるで刃のような瞳を宿す。その瞳は闇に黒く蠢いているようにも見える。
イッセーは素早くリアスの腕を捻り、ベッド下の収納スペースから紐を取り出す。革でできているであろうそれでしっかりと後ろ手を回して縛る。戸惑うリアスをよそに、他人事のようにイッセーは告げる。
「今からお前を犯す。意思なんか関係ない。どれだけ嫌がろうと昼夜問わず犯し続けて壊してやるよ」
イッセーは生まれて初めて女に激怒していた。多少怒ることはあっても、烈火のごとく怒ることはなかった。
それだけ、リアス・グレモリーという女性を高く見ていたのだ。
イッセーの闇を見たリアスは、ぎゅっと目を瞑って恐怖に震えた。今のまま肉体と精神を犯されて肉人形と化し、愛してすらもらえない、道具のような未来に恐れた。そして、なにより。ここでイッセーに犯され、無理矢理処女を奪われるという現実に恐怖した。まるで、罰を恐れる女児のように。
(リアスは悪い子。リアスは悪い子だからイッセーに犯されるんだわ)
脱出も半ば諦め、体は恐怖に震えていた。その気になれば消滅を使って逃げ出せるというのに。力関係は完全にリアスの方に分があるはずなのに、リアスは逃げ出すそぶりもせずただ震えていた。涙すら溢れはじめている。
そんなリアスを見ていたイッセーは、瞳を緩めた。穏やかな光が瞳に戻ってきていた。リアスはやはり安い人ではなかったと、安心したのだ。処女を失うことを恐れる女が、易々と股を開くものか。
「ほら、やっぱり怖いんですよ」
「え……」
イッセーの言葉にやっと自覚をした。己が処女を失うことをまだ恐れていることを。
「部長……いえ、リアスさん。貴女は、男に……まして下級悪魔の俺なんかに股を開くような安い人なんですか?」
革紐をほどきながらそう言うイッセー。リアスは、どこか目上の人が対等に、優しく接してくれているような錯覚に陥った。答えられずにいると、イッセーは優しく語りかけた。
「どうしてこうなったかなんて俺には解りません。でも……こんなつまらないことで処女を散らさないで下さい」
リアスは、呆然としながらもイッセーの言葉を心で反芻するだけだった。
★
ぜってー嫌われた。俺が感情に任せてあんなことしちまうなんて。リアスが安い女じゃないことくらい分かってたろ、俺よ。
リアスが呆然としていると、リアスの背後に魔方陣が現れる。なんだ? リアスの使うのとはちょっと違う。
「――ッッ!?」
現れたのは銀髪のメイドさんだ。左手の薬指にきらりと結婚指輪が光っている。
そのメイドの彼女は俺を見るや否や驚き絶句する。まさか、という驚愕の表情で。
数瞬して理性を取り戻したのか、氷のような無表情になる……いや、その表情でなにかを隠している? 兎に角無表情を努めているメイドさんは口を開く。
「……婚前の婚約者であるリアスお嬢様が殿方の部屋に忍び込むなど……リアス様?」
「……」
リアスは心ここにあらずという風に茫然としている。ぼーっとしていて、焦点があっていない。
メイドさんは俺を睨む。何故だ……って、んなの状況見れば分かるか。
「貴方、何者ですか?」
「リアス・グレモリー様の
「貴方が……あの赤い龍に憑かれた男ですか。これはいったいどういうことですか?」
怒ってるなコレ……不味いぞ、この人には勝てそうにない。ドライグは寝てやがるし。役立たずめ。……考えろ、まずは時間稼ぎだ。ことのあらましを素直にはなそう。
「分かりました、ことのあらましをすべて話します。ところで貴女の名前は? 生憎、素性の知れぬ相手に話せる内容ではないので」
些細なことでいい。まずは情報を集めるんだ……そして、なんとかこっちの有利な方向に持っていくしかない。
「申し遅れました。グレモリー家のメイドを勤めるグレイフィア・ルキフグスでございます」
グレモリー家のメイド? なんでメイドが、とも思うが仕方ない。それにルキフグスって悪魔だよな、たしか。
「ルキフグス……分かりました。グレモリー家の関係者なのですね。では……」
俺はリアスが夜這いに来たこと、理由は知らなかったがそれを脅しという強引な手で止めた、ということを告げた。
「それで、この放心状態ですか……婚前交渉ならともかく、処女を捨てるために夜這いなどと……」
む、婚前交渉という単語。そしてルキフグスさんの呆れたような声色。何かあるな。
「ルキフグスさん。貴女は彼女が……リアス様が純潔を捨てるという考えに至った理由をご存じですね?」
「……それはまた後日わかるでしょう。では、また明日お会いしましょう」
ルキフグスさんは茫然としているリアスを抱えると、魔方陣に消えていった。……あー、心臓に悪かった。心臓ばっくんばっくんだよ。
突如、がちゃりと戸が開く。
「イッセー、大きな魔力来てた。無事?」
「ああ、無事だぞ」
俺を心配してたのか? ……かわいい奴。ああ、もう辛抱ならん! 今まではりつめた空気だったから余計に……!
「無事だからな、存分に可愛がってやる」
「あんっ♪」
オーフィスをベッドに押し倒すと、キスを交わしてから彼女の秘裂へと指を埋めた。
★
「あぶなかった……」
グレイフィアはリアスをベッドに寝かせると、安堵のため息をついた。理由は、ただひとつ。
「まさか、兵藤一誠が……彼が大魔王の子……なんということでしょう……」
そう言いながらも、彼の家族の情報を調べていた。その情報は簡単に見つかる。
父、
母、
(旧姓が左端? さたん――サタン?)
はっ、となにかに気づいたグレイフィアはメモ帳に何かを書く。
兵藤一誠。
(違う)
左端一誠。
(……真逆)
サタン
これが、グレイフィアが気づいたものだった。
(闇の気配、下級悪魔なのに2対の翼、母方の旧姓にするとサタン一世……、つまり、
グレイフィアは魔力を使い紙を燃してしまう。いま、サーゼクスや他の悪魔たちの耳にいれるわけにはいかないと。
グレイフィア・ルキフグスは、思考を切り替えて業務へと戻っていった。恐怖のあまりに自らの身体が震えていたことも気付かずに……。
グレイフィアさんが戦慄している頃、イッセーさんはフィーとよろしくヤっているでしょう(爆)。