「ッ、イッセー先輩」
驚く小猫。そして、それを遮るように上空に現れる女────
「
ライザーの
「ふふふ……獲物を狩るとき、獲物が何かをやり遂げた瞬間がもっとも油断している……例えば、敵を倒してホッとしていたとき。そう、僅かな『安堵』は『油断』を呼ぶわ。こちらは多少『
ユーベルーナもまた、『傲慢』と『驕り』が『油断』を生んだ。しかし、彼女は『
──なら、簡単に沈められるほどの火力を出せばいい。
このご高説は、爆破から50秒が経過していた。
「ああ全くだ、何かをやり終えた獲物は──油断する」
『Boost!!』
背後からの声。
「何ッ!?」
「次の瞬間お前は『何故無事なの!? どういうこと!?』と言うッ!」
「何故無事なの!? どういうこと!? ……ハッ!」
声の主────イッセーは腕組みをして不敵な笑みを浮かべる。
「確かに爆破までの手際、見事だった────だが、俺はお前の上を行く。爆破されるとわかった瞬間、俺は魔力で全身を覆ってたのさ」
『Boost!!』
「馬鹿な、対応が早過ぎるっ!?」
イッセーの言葉にうろたえるユーベルーナ。その隙を見逃さず、イッセーは掌を彼女に向ける。
「そしてこれは8回目の倍加────
『Boost!!』
『Explosion!!』
イッセーの魔力が2の8乗、256倍のブーストがかかり、一時的に最上級悪魔クラスまで魔力が増加する。
「オラァ!」
魔力の塊とも言える砲撃を放つ。その赤い砲撃はユーベルーナを簡単に飲み込んだ。油断し、狼狽え、正常な思考を奪われていた彼女は砲撃への対処もせぬまま大人しくブッ飛ばされた。
『…………!! ライザー・フェニックス様の『
そのアナウンスを聞いた小猫は、イッセーを見る。イッセーは、三対の翼で羽ばたきなから、ニッと笑ってみせた。
『Reset』
「よーし、次だ」
「……はい!」
イッセーはそう小猫に声を掛けると、学ランを拾うべく降下していた。
☆
一方、ライザーは焦っていた。いくら頭脳がマヌケな存在でも、自分の眷属の最強格が倒されれば焦りもする。ライザーは馬鹿ではない。むしろ、搦め手を得意とするほどだ。しかし……イッセーの搦め手とライザーの搦め手では意味が違う。その場の戦闘を支配するのがイッセーならば、局面を見渡した戦況を支配するのがライザーだ。
ライザーはまず戦況を整理した。現存戦力は『兵士』5、『騎士』2、『僧侶』2、『戦車』1。そのうちの『兵士』三人は現在森の中なので、すぐさま引き返すよう命令しようとして──やめた。アナウンスで彼女たちが倒されたと分かったからだ。残りは『兵士』2、『僧侶』2、『戦車』1となる。相手は『兵士』『僧侶』『戦車』『騎士』『女王』がそれぞれ一人。相手の『僧侶』には戦闘力は皆無だが、『
戦力を運動場に集結。戦力を集中させて突破してくるはずなので、全力で『足止め』させる。その内に相手陣地に向かい、
─────実のところ、ライザーは婚約にあまり乗り気ではなかった。確かにリアスはいい女だが、自分と釣り合わないとどこかで感じていた。乳はでかいが……ぶっちゃけ属性枠はほかの眷属で埋まっているのだ。親が決めたというのもあまり気にくわない。故に出来るだけ婚約者であるリアスに嫌われるような行動を勤めてきた。あわよくば逃げられてしまえばいいとさえ思っていた。
しかしある時、『ベルゼブブ名義』の手紙が届いた。意訳すれば『フェニックスとグレモリーが婚約を結ぶのは魔王の意思である』とのこと。ライザーは仕方なく、結婚の事について進めることにした。
さて、結婚して最も困るのは誰か。現在次期当主となることが決まっているリアスが『嫁に出る』となると、跡継ぎには必然的にサーゼクスの子であるミリキャスが跡継ぎだ。
しかしミリキャスはまだ子供である。そんな子供が次期当主になれば……誰かに唆され、操られる可能性もある。ミリキャスは聡明な子だが、やはり子供は子供である。
そして、今後グレモリーの地位は間違いな上がるだろう。魔王排出、優秀な魔王の息子、今代の赤龍帝の確保……。
そしていつしかミリキャスに適当な嫁をあてがい、その子さえも傀儡にする。そうすればもう止められない。
さて、これで得するのは誰か。
ライザーは翼を広げ、炎を撒き散らしながら旧校舎に向かった。全てを終わらせるために。
☆
「きゃぁっ!?」
『ライザー・フェニックスさまの『
一方その頃、木場優美は罠にかかった兵士を始末していた。当然だ、優美にとって彼女達三人は罠さえもってすれば敵ではなかったのだから。
突然腕に衝撃。誰かに腕を掴まれたようだと瞬時に理解する。
「ッ、!」
反射的に魔剣を創造し、首があるであろう場所に突きつける。
「っお!? タンマタンマ! やめねぇか優美! 俺だ、イッセーだ!」
イッセーの言葉に動きを止め、その姿を見る。そこには煤けた学ランを着たイッセーの姿があり、その後ろには小猫がいた。
「ごめん」
申し訳なさそうに優美は剣を消し、頭を下げた。
「かわまねーよ。この霧の中じゃ誰かもわかんねーだろうしな」
「木場ちゃん先輩は悪くないです」
イッセーは気にしておらず、むしろ『つかんだ自分が悪い』とすら考えていた。しかし、実はイッセーに剣を向けたことをよく思っていなかった小猫は嫌味とばかりにそう言う。
「小猫ちゃん、もしかしなくても怒ってる?」
「いいえ」
普段無表情な彼女が、実に『いい』笑顔を浮かべている。それは一種の恐怖映像であった。猫に睨まれた鼠の心境だった。何故か。それは彼女から言葉に出来ない凄味を感じたからだ。笑顔なのに言葉には恐ろしいほど感情が乗っていないのもあったが。
『三人とも無事なようね。特にイッセーの働きは凄かったわ。まさかライザーの
すると、リアスからの通信が。三人はリアスの言葉に耳を傾けつつ警戒する。
「いえ、
籠手を指差しながらリアスにイッセーはそう返した。実際、
『そう、龍帝の力で……凄まじいわね。さすがは
「「「了解!!」」」
三人は返事をすると、霧のたちこめる森の中を進んでいく。
ついに